ちょうど中国の約百年前の話を書いたので、ついでに日本の百年前の話を書こうと思います。
現在、日本の葬式では黒一色の喪服を着ることが礼儀とされています。しかし同じ文化圏に属す中国や韓国は葬式の際は白一色の服の喪服です。実は、日本も百年前は同じく白一色でした。
詳しい起こりはわかりませんが、多分葬式で白一色を着るのは儒教の影響だと思います。そのため日本も明治時代までは白一色で葬式を行ってきていたのですが、日露戦争の頃、先進国との初の戦争と言うこともあり、日本軍はこれまでの戦争以上に多くの死者を出しました。その前の日清戦争と比較すると、日清戦争では約1万8千人だった死者が日露戦争では8万7千人と、実に日清戦争の5倍弱も亡くなっています。
そのため日本国内では毎日あちこちで葬式が営まれていたのですが、当時も今と同じく喪服は主にレンタルで使いまわされていたようです。しかし何度もあちこちで起こるもんだからレンタル業者さんも回しきれない、とてもじゃないが洗っている余裕すらない。それならばと言うことで、この際汚れが目立たない黒にしちゃおうじゃないか。そんなノリで、いつしか喪服には黒一色が使われるようになっていき、現在に至るらしいです。
この話は何かの本で読んだだけで詳しく確認は取っていませんが、事実としたら日本の黒一色で葬式に望むという伝統は意外に歴史が短いということになります。別に歴史が短いから今更それ以前の白一色に戻せとは言いませんが、必ずしも黒一色で望まなくともいいんじゃないかという気はします。もっとも、これだけ普及しているのならば逆にわざわざまた変えなくともいいのですが。
ですがこの喪服以上に強く主張したいのに、実は背広があります。現在、社会人はいつでもどこでも仕事中は背広を着ることを要求されますが、この背広とて普及したのは明治以後で、しかも今みたいにどこでもクーラーがあったわけでもないほんの30年くらい前は、今の高校生みたいに真夏は暑いということで上着は脱ぐことが許されYシャツ一枚でもよかったそうです。にもかかわらず数年前より始まったクールビズが取り上げられるや、「サラリーマン文化が壊れる」、「だらしない格好だ」、「お上になんでそんなことまで言われなければならないんだ(古館一郎)」といった意見が続出していました。
たかだか30年前にはなかった歴史の短いものに伝統文化なんて見出されても、ましてや不効率この上ない服の着方を固辞されても困るだけです。葬式の際の喪服はともかく、こっちの方くらいはとっとと変える、というよりは戻すべきでしょう。
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