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2008年9月11日木曜日

人の痛みを我が物とする人たち~前編~

 前々から何度か書こうとしては匂わせるだけで終わらせてきたこのネタですが、今日あたり腹をくくって書くことにします。まず結論から言うと、被害者意識ほど暴力的な感情はないということです。

 よくインターネットを見ていると、社会悪や政治的問題などに対して義憤や公憤を通り越して、自らの私憤を吐き出すかのような強い口調で批判する記述が多く見られます。しかしそれらの記述を見る限り、どう考えてもその記述をしている人間が怒りの対象から直接的な被害を被っているようには見えませんし、怒っているのはわかるが、果たしてその怒りの対象にどうなってもらいたいのかというのもよく見えてきません。

 こういった例に一番代表的なのは中国や韓国への罵倒です。確かに私自身も政治的問題などでこの二カ国に対して腹の立つことがよくありますし、過去に書いた「東シナ海ガス田問題における日中の駆け引き」の記事のように批判したりもします。
 しかし、この二カ国へのネット上の批判は八つ当たりに近いものも多く、中には事実のはっきりしない情報を元に滅茶苦茶なくらいにこの二カ国を見下げたり、罵倒したりするものもあれば、呆れるくらいにお粗末なことを言い出したりする人までいます。

 最近に私が一番呆れたのは、北京オリンピックを前にして景観をよくするために中国は枯れた芝などに緑のペンキを撒いている、中国人はなんて遅れた連中なのだ……という記事が今年の三月だか四月くらいにあちこちで流布されていましたが、知らない人のために言っておきますが、こんなの日本でもあちこちで行われています。特に行われているのはゴルフ場などで、冬でも芝がきれいな緑色なのはこれが理由です。中国を馬鹿にした人間は、一体どんな神経をして言っているのか不思議でしょうがなかったです。

 それに続いて流布されたのは、中国で風水のために山を黄色のペンキで染めたという記事でも中国を嘲笑する記事が多く目立ちましたが、あれこれ調べてみたところ、現地の人間もペンキで山を染めた人間に呆れており、現地警察などは染めた人物を取り締まったという情報もあったので、このニュースでもって中国人全体を嘲笑するべきではない事件だと私は思いました。もしこれでいちいち馬鹿にしていたら、スイカが腐ってたか腐ってなかったかで裁判になり、八百屋へ賠償金額800円(たしかこれくらい)が申し渡された事例を元に、日本も馬鹿な国だと言われてもしょうがないじゃないですか。

 ちょっと話が脱線しましたが、このようにネット上、果てには通常の世界でも社会悪や政治問題に対して、まるで自らが実害を被っているかのような、当事者のようなやや感情的とも取れる怒りの発言がこのところ目立つようになってきたと私は思っています。
 しかし韓国を批判する人、中国を批判する人たちはなにか実際にそれらの国の人にひどい目に遭わされているのでしょうか。私の想像だと、恐らくネット上で批判している人の大半はほとんど接触らしい接触を、私のように中国人に実際にハニートラップを喰らわされた経験を持つ人なんていないでしょう。にもかかわらず、彼らはこの二カ国を憎んでいる。この構図、なにか見覚えはないでしょうか?

 勘のいい人ならすぐ理解できると思いますが、これは伝え聞くところの韓国や中国の人が日本を憎むという構図と似ているように私は思います。この二カ国の人、この際若者と言った方がいいですが、自分たちが直接日本との戦争体験をしたわけでもないのにも関わらず、過去の戦争の門で日本を激しく責める、憎むという構図です。自分たちは何も日本人に銃を持って追いかけられたというわけでもないのに、軍国主義日本は悪だという認識を持ち続ける、自分たちが日本との戦争の被害者だと思い続ける。

 こうして考えると不思議なものです。日本と中国、韓国の人間はお互いに接触がないのに、何故だか互いに憎み合う。しかもそのどれもが被害者意識を持ち、やれ政治的に圧迫をかけられただの、相手国の犯罪者が日本でひどいことをしているなど、どれも抽象的で自らの体験による具体的な例がどれも欠けます。
 こうした事を言うと、じゃあお前は中国や韓国に日本が好き放題にやられても黙ってろと言いたいのか、とか、同胞がひどい目に遭わされているのに同情するなと言いたいのか、と言われそうですが、それでも敢えて私はこうした批判をする人間に対して批判を行います。

 私は何も、社会悪や政治的な問題に対して怒りを持つな、同情するなと言いたいわけではありません。しかし最初に言った通りに、怒りにはそれぞれ正しい持ち方があり、特にこうした社会的な問題に対しては被害者に同情するあまり、感情的な怒りを持つのは非常によくなく、またそれ自体がひどい暴力性を持ってしまうことに対して警告がしたいのです。
 自分とてこのブログで結構きつい表現で何かを批判することがあり、必ずしもこうして自分が言っているようにできていない所もありますが、それでも冷静に社会悪に対して怒るよう心がけています。

 多分今晩一晩、何気に帰宅したのが九時を過ぎていたので無理だろうと考えていましたが、案の定書ききれなかったので、何故この過度な被害者意識を持つことが危険なのかについては、また明日に細かく書きます。

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