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2009年2月28日土曜日

中国における日本アニメの浸透について

中国”動漫”新人類(日経ビジネスオンライン)

 本日リクエストがあったので、上記に貼った中国における日本のアニメの浸透の記事について解説します。
 まず中国で日本のアニメが流行っているかどうかですが、正直なところ微妙なもので、少なくともヨーロッパやアメリカのようなブームにまでは至っていないというのが私の所感です。

 私自身は2005年から2006年まで中国北京にいましたが、テレビなどで放映されるような熱狂的な日本アニメファンの中国人は見たことがありませんでした。その代わりといってはなんですが、日本に帰ってから知り合った中国人留学生の友人などはまさに根っからのオタクで、別の友人から「ガンダムが好きで日本に来たんだよ」とまで言われる位の執心ぶりでした。
 リンクに貼った記事では一見すると北京大学の学生らが非常に日本アニメに執心しているような印象を受けますが、私はそれは実際のところごく一部の学生でしかなく、ブームというほどの現象にまではなっていないのではないかと思います。とはいえ中国はいわずと知れた人口大国であるので、全体の中のほんの一部といってもそれだけでも相当な人数が集まってしまうので、記事中にもあるように同人誌の即売会などに多勢の中国人が参加したというのもあながち嘘ではないでしょう。

 では何故中国人たちの一部が記事に書かれているように日本アニメにハマるかですが、基本的に日本のアニメを見るのは日本語を学ぶ外語系の学生が多く、日本語を最初に学ぼうとするあたりから日本文化に元から親近性が強いということが予想できます。私自身中学生の頃から中国語を学ぼうと考えていたのもあり、割と中国の文化というか匂いが肌に合っていました。
 そうした学生がどのようなところで最初に日本アニメに触れるかですが、まず一番多いのはテレビ放送でしょう。私自身、留学中に中国のテレビ局で徳弘正也氏の「ジャングルの王者ターちゃん」のアニメが放映されていたので見ていましたし(さすがに一部の下品なシーンはカットされていたが)、人づてに話を聞くとちらほらとそういった日本のアニメ番組が中国でも放送されており、特にジャンプでやってる「NARUTO」も放送されていたのですが、その放送を向こうの子供はみんなよく見ていました。

 そうしたテレビ放送を通して始めて触れる一方、ある意味今日の本題となるもう一つのきっかけこと、海賊版による影響も小さくありません。
 まず一体どれくらい中国に日本のアニメやドラマの海賊版が溢れているかですが、それこそ道端の露店からその辺の本屋さんに至るまで、あちらこちらで際限なく売られています。北京で恐らく一番大きくて権威のある王府井の本屋でも、地下に行ったらありえないくらいの海賊版が売られていたのには驚かされました。値段はDVDやCD一枚あたり大体20元から30元くらいで、日本円に直すと300円くらいから450円くらいで売られています。

 私自身はそういった海賊版を買うことはありませんでしたが、日本人留学生でもアニメに限らずドラマや欧米の映画などをよく買っては暇つぶしとばかりに見ているのもたくさんいました。実際現地での雰囲気を見ていると海賊版があまりにも溢れているので、海賊版を買って何が悪いのといわんばかりの空気だったような気がします。
 やはり日本贔屓の中国人に聞いたりすると、そうした何気なく手にとった海賊版から日本のアニメにハマったという人が多かったです。入手がしやすく、また気軽にそういったアニメやドラマが見れることから、こうした海賊版が中国人が日本に対して興味を持つ取っ掛かりになるということは確かに私もあると思います。

 そうした意味でこうした海賊版のアニメは日中の交流の架け橋となっていると見ることもできるのですが、日本の各メディアでも言われているように著作権が根本から無視されていることから、しばしば双方の争いの種となっていることも少なくありません。一番日本で有名な例は向こうでテレビ放送されて人気になった「クレヨンしんちゃん」(中国タイトルは「鉛筆小新」)が中国で勝手に商標登録されて、日本のおもちゃメーカーが中国でおもちゃを販売しようとするのを差し止めたり、逆にゲーム会社のKOEIがなぜか「三国志」を商標登録しようとして中国人が怒ったりと、実際の視聴者の外では壮絶な争いが主に製作会社間で行われています。また単純に海賊版が出回ることで正規版の販売収入がなくなり、いわばタダ見されること自体を問題視する声もあります。

 こうした問題があることは重々承知ですが、二つ目のタダ見については私はどんなものかなと思うところがあります。私が日本のアニメを見る手段は主にレンタルビデオですが、やはり周りにはファイル交換ソフトで見るという人もおり、中国の海賊版を現在批判したところで日本国内でもタダ見している人間は数多くおり、今更こういうことをどうのこうのとか正規版の販売収入といってももうどうにもならないと思います。それにタダ見してる人がもし海賊版やファイル交換ソフトが撲滅されたところで、素直に正規版を買うかどうかといったら正直疑問です。かといってその二つの違法手段があっていいというわけではありませんが。

 ただこうした海賊版から入った中国人がその後熱狂的なアニメファンになることで、将来的に日本のコンテンツ産業へお金を落とすようになっていったり、日本に対して理解を深めていくということは現実に起こりつつあると思います。私の友人の中国人なんかまさにそうですし、やはりアニメゆえに入りやすい、興味を持ちやすいという特徴は確実にあると思うので、やや複雑な感情になってしまうのですが、一概に海賊版を否定するというところにまでは私は入っていけません。
 また留学中に日本アニメをよく見ていた同級生のフランス人の姐さんからも、「何であんたはネット上で無料公開されている動画を見ないの?」と言われたことがありましたが、日本以外の大半の国ではネット上の違法公開動画などを見ることが半ば当たり前視されているのではないかと私自身思います。こうした違法視聴を徹底的に叩くべきか、それとも見過ごすことで将来の購買層ことアニメファンを増やしていくべきか、実際にアニメを製作している人のことを考えると悩みが尽きません。

 ただ先ほども言ったとおりに、「NAROTO」や「ちびまるこちゃん」といった少年少女向けのアニメは正規に中国のテレビ局から放送されており、こうした番組を子供時代に見ることで将来的に日本に対して好感を持つ中国人が増えていくことは日中間にとっては悪くはない気がします。しかしこれは確か2006年だったと思いますが、中国政府が国内のアニメ産業を保護する目的で、ゴールデンタイムに外国のアニメを放送するなという通達を出したことがありました。その後この通達が本当に実行されているのかまでは確認してはいませんが、私としてはそんなけち臭いことは言わないでほしいというのが本音です。

  おまけ
 以下は私が海賊版を見ていた友人から聞いた、中国語字幕の妙な翻訳例です。左側がアニメの中の日本語セリフで、右側がそのセリフに対する字幕の誤訳です。

・こざかしい!→小坂茂!
・鈴鹿越え→鈴籠へ

2 件のコメント:

  1. 早い上に詳しいですね〜。たしかに著作権の問題は解決困難な問題ですよね。僕も5年ほど前に上海に行ったときには、ほぼCDとDVDは違法なコピーだったように記憶しています。

    現在はインターネットがあるので、もっと状況が複雑かもしれませんね。中国のyouku.comというサイトでは日本のアニメ、ドラマがほぼ全て閲覧可能な状態になっています。日本からはアクセスを遮断するという情報もあったので、今はどうか分かりませんが、フランスからは問題なくアクセスできている状態ですよ。

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  2.  アクセス遮断の話は私も聞いていますが、その後続報がないので恐らくまだ日本でも見れるのかと思います。私はやったことないけど。

     著作権の問題についても、今後はこれまでどおりには行かないでしょうね。ただ日本アニメがDVDなどの販売収入をあてこむようになったのはほんの十数年前からで、それ以前はおもちゃの販売などで採算を取ってきたことを考えると、今後は簡単にコピーできないグッズの販売などを当て込んだ方がいいのかもしれません。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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