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2009年3月17日火曜日

どういう風に職業を選べばいいのか

 このところ東京駅の高速バスの停留所の辺りを通ると、休日でも朝早くなのにスーツを来た若い大学生と思しき人たちをよく見かけます。時期が時期なので彼らは恐らく地方から高速バスに乗って就職の説明会や面接にやって来た学生たちだと思いますが、遠いところから来るなど改めてその活動振りには頭が下がる思いがします。
 そんなわけなので今日はまた就職の話をしようと思うのですが、よく就職情報誌などの質問コーナーなどを見ると、「どんな職業が自分にあっているのか」という自分と職業とのマッチングに関する質問が多く見かけられ、果てにはYES,NO式のマッチングフローチャートなども大抵の雑誌には載せられています。

 つまりはそれほどまでに自分に合った仕事を見つけることが重要だと考える学生が多くいるようなのですが、私はというとそうした考え自体があまりよくないのではないかと、実は一人で危惧をしてしまいます。というのもよく仕事の向き不向きなどは職業論での議論の材料にはなりはしますが、何か一つの仕事に対して強い適性を持っている人間なんて現実にはほとんどおらず、大抵の人間にとって好みの問題はあれこそ、何かの職業が特別向いているというようなことは全くと言っていいほどないと思うからです。
 それこそ他の仕事は一切手につかなかった水木しげる氏(軍隊でラッパも吹けなかったので前線に飛ばされた)のような超特別な人間なら話は別ですが、大抵の一般人にとって世の中一般の仕事は言うなればやるかやらないか程度の問題で、「これしか出来ない」とか「この仕事こそが一番自分に合っている」なんていうことは現実にはほとんどの人にはありえない事態だと思います。

 それでも世の中を見ているとどこか運命論的に、「どこかに必ず自分の転職と呼べる職業があるはず」といったような言質がよく聞こえてくるのですが、ひどい場合には何か一つの職業や職種を挙げてこれ以外はもう考えられないと、自らの就職先の選択を徹底的に狭めようとする人もいます。
 ですが企業なんて入ったところで必ずしも自分の希望する部署に入れるかもわからず、また本当にその企業が自分の思った通りの仕事をしているかもわからないことが多く、人づてに聞くとそうした特定の職種や職業に強いこだわりを持つ人間ほど五月病にかかりやすいそうです。

 では何故学生たちは自らの適性にあった職業を半ば決め付けようとするのかですが、先ほども私が言った通りに、自分の存在価値を職業を限定することで強く自分自身に意識させようというのがあるからじゃないかと個人的には思います。というのもこれは私が中学三年生だった頃に友人が、
「花園君はなりたい職業はある?」
「出来れば作家になりたいけど、なんで?」
「俺にはなりたい職業がわからないんだ。こんなんでいいのかなぁって思って……」
 と、中二病バリバリの時期にこんな会話をしたことがあります。この友人の当時の心境を勝手に推察させてもらうと、なりたい職業がないということはこの世に存在する価値もない、という風にもしかしたら考えていたのかもしれません。

 このように、大抵の人は職業選択の幅を自ら狭めよう狭めようとするのですが、確かに一人で何百社も就職活動をすることは出来ないのである程度狭めることは決して間違いではないのですが、極端に狭めることはかえってマイナスですし、それで希望通りでなければショックを受けると言うのは非常にもったいないでしょう。ではどういう風に選択幅を狭めればいいのか、どんな仕事を自分に見繕えばいいのかですが、私がお勧めするのは最低ラインを定めるという方法です。
 これなんか私が学内で自分の専門性を決める際に使ったのですが、世の中に出ればどんな仕事に出くわすかもわからないが、少なくとも大好きな中国に関わる仕事であればどんなに辛くとも、「チャイナならしょうがねぇ」と思ってまだ我慢できるだろうと思い、中国に何かしら関われるように中国語を専門に勉強することを決めました。

 この方法は「自分に何が合うだろうか」ではなく、「自分は何なら我慢できるか」と、自分と仕事に対して妥協点を探る方法です。この方法なら職業選択の幅を極端に狭めることもなく、また割と一致しやすい範囲で自分の適性と仕事を結び付けられることが出来るのでなかなか使い勝手がいいんじゃないかと思います。また私の場合は「中国」と限定していますが、消去法的に人見知りだから散々人に会うのは勘弁という人は警備会社とか経理関係とかに絞ったりなどとする方法もあります。
 とにかく、何かしらの仕事や企業を自分の天職と考えて限定するのはかえってよくないので、どこまでなら自分は我慢できるのかという価値観で就職活動を行うのを私はお勧めします。まぁ、このご時世では「正社員ならどこでも」と思ってもなかなかうまくいかないかもしれませんが……。

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