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2010年8月11日水曜日

続、児童虐待致死の厳罰化機運について

母親を殺人容疑で再逮捕 2幼児遺棄 「食事与えず死んだ」(産経新聞)

 上記リンクに貼った大坂での二児放置事件の詳細についてはすでに各所で報じられているのでわざわざここで説明しませんが、何度もこんな事は繰り返してはならないと事件のたびに報道されるもののまたもこうして痛ましい事件が起きてしまったというのは残念な事この上ありません。

 さて以前に私は「児童虐待致死の厳罰化機運について」という記事にて近年次々と明らかになる児童虐待事件を受けて、社会的にも虐待を行った親に対して厳罰化、具体的にいうなら現在主に適用される「保護責任者遺棄致死罪」ではなく「殺人罪」、もしくはもっと重たい刑が課されるような法改正をすべきだという機運が高まっており、早晩法改正が行われるのではという意見を書きましたが、すでに現時点で司法界もそのように認識が切り替わってきているようです。

 先にも述べました通り、これまでの幼児や児童の虐待致死事件では上記リンク先のニュースにも書かれている通りこれまでは「保護責任者遺棄致死罪」という刑法によって虐待を行った親は裁かれるのが一般的だったのですが、今回のこの大坂の事件では幼児らに対して明確な殺意があったとして(死ぬとわかってやっていた)初めから「殺人罪」で起訴される事となりました。またこの事件が目立ってこちらはやや隠れがちですが、

女子高生、乳児殺害容疑で追送検へ 神戸・側溝遺棄事件(朝日新聞)

 こちらの事件は女子高生がトイレで生んだ赤子を放置して死なせたという悲しい事件ですが、こちらも大坂での事件同様に殺人罪で起訴される運びとなっております。

 なんだかんだ言って、検察も昨今の社会的影響を考えてか児童虐待に対して厳罰を以って望もうとしているように感じられます。全部が全部、社会的の空気に影響されて物事の基準が変わるというのは問題ではありますが、私はこの児童虐待については倫理上でも社会的観点からでも厳罰化は歓迎すべきだと考えております。

 ここで話は少し変わりますが、今回の大坂の事件とよく似たケースとして1988年にこんな事件がありました。

巣鴨・置き去り事件(オワリナキアクム)

 この事件は主演の柳楽優弥氏の好演で話題となった「誰も知らない」という映画のモデルとなった事件ですが、今回の大坂の事件同様に母親が幼い子供五人を部屋に残したまま殆んど家に帰らず、たまに長男にだけお金を渡して何年にも渡って置き去りにしていたという事件です。結果から言えばこの五人の兄弟のうち二人は死亡していたのですが、この事件の最も奇妙というか理解しがたいというべき点として、近所に住む大人たちが誰もこの家族の存在に気がつかなかったという点です。同じく親に見捨てられた子供の話でも死刑判決を受けた永山則夫の例では見かねた近所の住人が福祉事務所に連絡を行っていますが、大坂の事件でもこの巣鴨の事件でもそういったことはついには起こりえませんでした。

 別にそれで近所の連帯がどうたらこうたら言うつもりはありませんし、いまさらそんな牧歌的な時代に立ち戻ろうとするよりも目下の虐待を防ぐためにも児童相談所といった行政の権限を強める事の方が大事だと私は思いますが、100歳以上の高齢者で行方不明者が相次いでいる件と絡めて考えると、今の日本社会は誰とも付き合わなくともそれなりにやってけるようになったと感じます。それを退化と取るか進化と取るかは人それぞれですが。

 最後に巣鴨の置き去り事件について、この事件の裁判で子供を置き去りにした母親には「懲役3年、執行猶予4年」の判決が下りていますが、仮にこの事件が今年に起きていたらまず間違いなく執行猶予はつかなかったでしょう。この差についてちょっと表現し難い感情を持ちえますが、時代の違いだと言って割り切るしかないでしょうね。

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