私が高校生だった頃、ある日の生物の授業で遺伝が取り上げられておりました。教師は遺伝の概要を説明するとともにすでにクローン羊を生み出す事に成功している事に触れ、理論上はもう人間もクローンを作れる状態にあると説明し、仮に作れるなら自分のクローンを作ってみたい人はこの中にいるのかと尋ねたところ、手を上げたのは私と私の友人の二人だけでした。
この時何故私が自分のクローンを作ってみたいと思ったのかというと、仮に自分のクローンを自分で育てた場合、自分と同じ性質の人間に成長するのかどうかを試してみたいと思ったからでした。要は人間の性質は先天的な要素か後天的な要素、どちらの方が影響度が高いのかを試してみたいと率直に考えたからです。まぁ自分で育てたらあまり意味ないかもしれませんが、その辺も含めて比較しようと。
ところがこんな風に考えるのはやっぱり少数派だったようで、案の定と言うか授業の後には見事に友人らから気味悪がられました。
「お前なんでクローンなんか作りたいと思うんだよ?」
「面白そうでいいじゃん。別にこんなの人それぞれじゃないか、気味悪がる事ないだろ」
「いや、お前がクローンを作りたいと思った事よりも、お前とあいつ(私と一緒に手を挙げた友人)の二人だけがクローンを作りたいと思った事が気持ち悪いんだよ」
こういうのもなんですが、この時に私と一緒にクローンを作ってみたいと手を挙げたその私の友人は控えめに言ってもかなり変わった友人でした。性格ははっきり言ってわがままそのもので、よく授業が終わった後は資料集を持って延々と教師に対して質問を通り越して個人指導を申し込み、あんまりにもしつこくやるもんだから終いには教師に怒られる事もあった生徒でした。
そんなこの友人ですが、何故だか私と馬が合って高校時代はよく一緒になって行動を起こしていました。確かセンター試験会場を下見に行く時も一緒に行った覚えがあります。
現在、この友人は社会人経験を経て国立大学の医学部を目指して勉強をし続けております。この経歴自体が特筆に価するほどその友人は面白い人生を歩んでいるのですが、今思うとあの時私と一緒にクローンを作りたいと考えただけあって好奇心が人一倍強い性格は未だに変わりがないようです。対する私は理系ではなく文系に進みましたが、好奇心はともかくクローンを作ってしまえという無鉄砲さは未だに持ち続けているような気がします。
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