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2010年8月25日水曜日

住宅ローン破産の増加について

 先日、つっても二週間前の朝日新聞の記事で、近年住宅ローン破産が増加しているとの報道がありました。

住宅ローン破綻増加、競売6万戸 甘い審査が落とし穴(朝日新聞)

 私がこのブログを始めた当初に書いた「日本版サブプライム問題」の記事にて、経済評論家の荻原博子氏が「ゆとりローン」の問題性を指摘しこのような住宅ローン破産が今後増えると指摘していた記事を紹介しておりますが、その予想は見事に当たり、その後のリーマンショックを受けて景気が大幅に悪化したのを受けてこのような住宅ローン破産は増えているそうです。

 今回朝日新聞の記事にて取り上げられたローン破産者のケースは住宅購入以前に消費者金融に借金があったにもかかわらずローンを組んでおりお世辞にも計画性があるとは思えず私はそこまで同情を覚えませんが、実態的には堅実な人生設計をされていた方でもローン破産に追い込まれて家を手放さざるを得ない人が多数いるかと思います。
 ただこれら住宅ローン破産で本当に怖いのは、家を手放さざるを得ないと言う事以上にその後も手放した住宅のローンを支払い続けなくてはならないという事です。

 わざわざ説明するまでもないかもしれませんが車にしろ住宅にしろ、新品で購入した時点でその財産の資産価値はどれも半減します。ですので2000万円で住宅を購入して500万円までローンを支払った後で手放したとしても、販売価格は多く見積もっても1000万円で、差し引き500万円を最初の住宅購入者はその後も支払い続けなくてはなりません。しかもローンは三者は家を手放したのだから今度また新たに自分が住む部屋を借りなくてはならず、その部屋の賃貸料も合わせて支払っていかねばなりません。これは姉歯元建築士の強度偽装事件でも同様で、強度の足りていない住宅を出た元居住者には二重ローンという大変重い負担がのしかかり社会問題となりました。

 そんな住宅ローン破産ですが、つい最近に知ったのですがアメリカではこのような事態は起こらないそうです。というのもアメリカでは住宅ローンが払えなくなった場合、居住者は担保となっているその住宅をローンを貸し付けている銀行に差し出す事で一切の返済を免除されるそうです。

 最初これを聞いた時は私も少し驚きましたが、後から冷静になって考えてみると日本の制度、というより日本の銀行が行っている住宅ローンのやり方のほうがいびつな様に思えてきました。
 日本の住宅ローンの場合ですと、銀行は住宅購入資金を購入者に貸し付けた時点で利息分の儲けがほぼ確定します。それゆえに今回の朝日新聞の記事で取り上げられた例やかつての住専問題のように、実際には支払能力のない、将来ローン破産を起こしかねない人間を半ば騙す形で貸し付けたとしても全く損害を受けるどころか安全に利益を得られます。それに対し住宅購入者はローン破産というリスクを持たされた上で銀行に対してローンの支払いと共に利息を払い続けねばなりません。

 私は商道というものは基本的に、リスクを持つ者が利潤を得るべきだという風に解釈しております。然るに日本の住宅ローンの場合はリスクを全く抱えない銀行が安全に利息を稼ぐ一方で、巨大なリスクを抱える住宅購入者が銀行に利息を払っており、どう考えても銀行がずるい商売をやっているようにしか見えません。実際にこのような制度ゆえに日本の銀行はローン開設者への審査が甘いといわれ、ローン破産者の発生を誘発させているという指摘もあります。

 こういう風に考えるのであれば、不用意に支払能力のない人間にローンを組ませると銀行がしっぺ返しを食らうというアメリカの制度の方がずっと理に適っている気がします。まぁそれゆえにサブプライムローン問題では銀行が一気に不良債権を抱える事となって大混乱となったわけですが、私はこの際日本の銀行もアメリカを見習って、ローン破産が起きた場合には残った債権額を破産者と折半させるくらいのリスクを持たせた方がいいと思います。

 こういうところがあるから、銀行屋はどうも好きになれない。

2 件のコメント:

  1. 実際には競売で家を失った後の住宅ローンを払っていない人も
    いるようです。というのもリストラや給料削減で住宅ローンを
    払えなくなった人の場合、残りのローンを請求しても支払う事
    自体が不可能な訳です。銀行は競売後の回収の見込みの薄い
    債権を、サービサーに格安で売却します。サービサーは買い
    取った債権に利益を上乗せして元居住者に請求します。
    元居住者はサービサーと交渉して支払いをする人もいれば
    自己破産で全ての借金をチャラにする人もいます。

    テレビの特集では家を手放した後も住宅ローンの借金は
    残るという所までは報道しますが、その後どうするか、
    についての報道はまったくないですね。せいぜい賃貸
    に引っ越す所を写すぐらいで、支払い義務はあるが事実上
    返済が不可能な住宅ローンをどう処理すればいいかに
    ついては全く触れていません。

    ※もちろんサービサーとの交渉、自己破産による借金の消去
    はあくまでひとつの方法であって決して万能な手段では
    ないです。自己破産にもデメリットがありますので。

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  2.  もしかしたらもう読まれているかもしれませんが、出張所の方でもこの記事について現役の銀行員の方に注意を受け、書いたおきながらやや債務者を贔屓して書きすぎたと反省しております。

     出張所にコメントをくれた方によると銀行側としてもわざわざローン破綻するような人間にお金を貸したいわけでなく、図らずも破綻しそうになったのであれば早くにと銀行に対して返済方法の変更などを相談してもらいたいそうです。
     Masataka様も指摘されていますが、銀行としては回収不能となってしまった債権を回収屋に売りたいと思うのも自然ですし、サービサーと交渉する事になるのも一定度債権者の責任があるでしょう。そうなる前に銀行と相談するか、早くに自己破産するか。選択肢は幾つかありますが具体的にそれぞれの選択肢の結果がどうなるかは確かにテレビでは見ませんね。気になるのに。

    返信削除

コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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