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2010年10月21日木曜日

逆境下の日本人

 今日は昨日の記事の続きです。昨日は「自動車の燃費について」というタイトルで純ガソリンエンジンとしてはかつてなら考えられない燃費性能を達成したマツダを取り上げましたが、この記事で私が言いたかった内容は割りと日本人は追い詰められた際に真価を発揮するということで、これが長所でもあり短所でもあるのではと私は考えています。

 追い詰められる、というより無茶な要求にも意外にも応えてしまうという方が適当かもしれません。昨日取り上げたマツダの例ではハイブリッドエンジンの開発が遅れていたことからガソリンエンジンで燃費を追求した結果、ハイブリッドエンジンにも大きく引けをとらない性能のエンジンを作ってしまったことを紹介しました。こういうことは何も日本以外でもあるとは思いますが、日本に限って言えばかつての太平洋戦争初期に無類の強さを発揮して米英軍から「見つかったら逃げろ」と、敵前逃亡しろなどというとんでもない命令を出させたゼロ戦も、

「このくらいの高度と、このくらいの速度が出せる飛行機をこの予算で作って」

 という、軍上層部からのかなり無茶な要求を当時の技術者が本当に実現してしまったがゆえに出来たと言われています。まぁその分、機体装甲が果てしなく薄くなってパイロットの死亡率も非常に高かったそうですが。

 技術に限らなくとも日本人は納期や製造などといった各方面でも割合に上からの要求に応えてしまうところが多いように思えます。私なんか無茶な要求に期待させるようなことを言っちゃ駄目だと考えているもんだから無理だと思ったらすぐに無理ですと言って、「もっと言い方ってものがあるだろ!」と相手によく怒られた経験がありますが、こうした言い分が通るあたり日本人はたとえどんな無茶な要求や要請にも一応は対応し、応えねばならないという考えが強く浸透しております。

 もちろん常識では無茶だと思われるものに取り組んで実現していこうという精神は立派でもあるし非常に大切だと思いますが、その一方で無茶だとわかっていながら引き受け、結果やっぱり駄目だったせいで各方面で足を引っ張ることになるという話も日常茶飯事のように聞きます。特にこういったものでよく聞くのはIT業界での納期や対応で、受注段階で労力やシステム内容から言って明らかに相手の希望に応えられないにもかかわらず安請け合いして、残業に次ぐ残業をしながら納期に間に合わず結局発注元に怒られ、発注元もスケジュールが遅延してあれやこれやと。

 またIT業界に限らず、一部の業界ではかなりきつきつの納期設定を行っていてほんの少し予定がずれただけで全方面に玉突き事故のように出荷に支障が出るということも聞きます。かくいう私も一回そんなのに巻き込まれて、物は届いているので早めに出荷指示を出してくれれば海外への輸出手配を行えたのに何故だかなかなか指示が来ず、やっときたかと思ったら急いで出してくれと……。二時間ごとに荷物が今どこにあるのかと電話鳴らされた際はいろんな意味でいい迷惑でした。

 恐らく普通の社会ならば、こちらの希望通りにそうそう事は運ばないと考えて納期や日程にある程度余裕を持たせることでしょう。ただ日本の場合は案外希望通りに事が運んでしまう、運ぶように相手が努力してくれるがゆえか、何事に関してもタイトに物事を考えてしまうところがある気がします。私もあまり人のことを言えませんが、電車がわずか五分程度遅れただけで激怒する人とか見ているともはや精神病じゃないかとつい思ってしまいます。
 私に限らずこのようなタイト過ぎる日本社会を批判する声はあり、一部の経済学者からは日本全国で納期を一日ずつ余裕を持ち合えばGDPは減るどころか増加するという意見もあり、私もこの意見に賛成です。

 ホッブズの「リヴァイアサン」に書かれた有名な一説に、「万人の万人に対する闘争」というものがあります。この記事の内容だけじゃないですが、このところこの一説がしょっちゅう頭にもたげ、今自分を含めた周囲の人間らは何と戦っているのだという疑問をよく持ちます。ライバル会社以上に同じ会社の人間に憎悪を持つ人とか見てると。

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