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2011年1月28日金曜日

デフレと過重労働 後編

 ようやく金曜日で明日は休めるーって思ってたら、2/1から十日間も旧正月休暇に入るので今週は土日も出勤だと今日になって言われてややブルーです。中国の長期休暇前は大体こんなもんだって前から噂で聞いてたけど、まさか自分もその渦中に加わるとは夢にも思わなかった……。

 そういうプライベートでどうでもいいことは置いといて、前回に引き続きデフレと過重労働の関係性についてまとめます。
 前回の記事ではデフレという現象の説明に終始しましたが基本的にデフレというのはモノやサービスの値段が下がる現象を指しており、デフレ下では大体どれもこれもそれ以前より値段が下がります。ただ値段が下がるといっても下がりやすい物もあれば下がりにくい物もあって経済が混乱するのですが、その下がりにくいものの中で非常に扱いの難しいものが給料こと人件費です。

 現在、大体どこの日本企業でも不況ゆえに役員クラスはみんな本来受け取る報酬額を減らしているでしょうし企業によっては課長クラスまでもが給料カットがされている状態ですが、圧倒的大多数の一般従業員はボーナス額が一部カットされることはあっても毎月の給料まではまだそれほど手をつけられてはいないと思います。管理職となる役職付きの従業員に対して一般従業員は労働法の保護や最低賃金の条例などがあるため会社側も定期給与には手をつけづらいのですが、それ以前に人間のモチベーションというか感情的にも、定期給与は一度もらってしまうとそれより少ない金額へ下げられることに強い抵抗感が生じます。
 たとえばの話でそれまで時給1000円のバイトで働いていたら不況だから来週から900円に下げるねと雇い主に言われたとすると、恐らく大抵の方はその晩に友人か家族に対して延々と愚痴を綴るか別のバイト先を探し始めるかと思います。

 これはなにもデフレ下に限るわけではないのですが人件費というのは一度上げてしまうと非常に下げ辛いと一般にも強く認識されており、このことを経済学用語では「人件費の下方硬直性」と呼ばれ、以前と比べて成果主義が大分一般化した現代においてもよほどのことがない限りは下げることが出来ません。また下げようったって先ほど挙げた最低賃金などの法規則の壁もあり、実際のところは残業代は支払わないのが当たり前だしこの最低賃金も無視して違法で働かせている企業はうんさかありますが、どれだけ状況が悪いとしても賃金を減らすという方法には限界があります。

 これがデフレとどのように関係するかですが、デフレというのは何度も言うように同じ金額が以前以上の価値を持つ状態です。デフレ下とデフレ前では同じ1000円でもデフレ下の方がより多くの買い物が出来るようになるわけですが、これを給料に置き換えてみるとずっと月収20万円をもらっている人はデフレになると同じ給料でそれ以前よりたくさん物が買えるようになって消費生活上は得をします。
 しかしこれが給料を支払う会社側からすると、ただでさえデフレでは物の値段が下がって売り上げが落ち込む中、従業員に対してはそれ以前と同じ金額の給料を支払い続けなければなりません。言ってしまえば同じ20万円でもデフレ以前では25万円くらいの価値を会社は支払っているような状態で、昇給も何もしていないの給与額を増額して支払っているような状態となって自然と経営は圧迫されるようになります。だからといって、「デフレで貨幣価値は上がっているから、前と同じくらい買い物のできる給料だよ」として、給与額をいきなり16万円に下げようものなら石くらい投げつけられるかもしれません。

 理屈では同じ価値だとわかってもいざ実際に額面が下がろうものなら結構心に堪えるため、会社側は売り上げや利益が減っているとしても人件費を減らすことは出来ません。仮にそのままの状態を放置するのであれば経営は悪化する一方なのですが、ならばどうするかといったら一般的な企業が取る方法としては給与を減らすのではなく給与を支払う人員を減らすこと、社員のクビを切るのが大体常です。
 そのためデフレ下というのは企業に残って以前と同じ額面でも価値の上がっている給料を受け取り続ける人と、クビを切られて収入が急減少する人とで二極化が起こります。言えば早いですがこれが今の日本で起こっている状況で、ただ失業者が増えるだけでなく給料をもらい続ける人の収入は同じ額面でも増え続けるというのがミソです。

 ただ収入価値が増えるからといって、給料をもらって働き続ける正社員が必ずしも幸福かといえばそれはまた別問題です。何故なら企業側が人件費を減らすために人員を減らした分、普通に考えれば残った社員にはその分の仕事が回ってくるのが当たり前です。そのため定期給与の収入価値は確かに上がっているかも知れませんが増えた仕事によってサービス残業が増え、変な話ですが時給に換算すると価値上でも前より給与が下がってしまうということも十分に起こりうるわけです。実際に私が人伝にあちこちから話を聞いているとどこの企業でも多かれ少なかれこういったことが起こっているようで、給料下がってもいいから人員増やして欲しいというようなことを言っている人もたまに見ます。

 これが私の主張する、デフレと過重労働の関係性です。流れとしては

 デフレで企業の売上や利益が減る
→ほかの経費は減らせても一人ひとりの給与額は減らせない
→給与額を減らせないため、給与を支払う人員の数を減らす
→残った人に仕事が集中してしまう


 このようにして片一方では仕事を失い困る人が現れ、もう片一方では仕事が増えすぎて困る人が出てくるのがデフレです。はっきり言えばこれは不幸でありナンセンスです。
 ではどうすればいいかですが、感情的に納得できるかどうかは別として単純に給与額をみんなで減らすことで人員の削減をせず、むしろ仕事を分け合うように増やしたりすればよいのではという意見を言うことは出来ますが、これはやはり疑問です。それこそ最低賃金額を減らしたところで企業は人員を増やすとは限らず、残って働く方が同じ仕事量でより給料を下げられたりするのに悪用される可能性が高いからです。

 ここでは具体的に対策案についてはそれほど煮詰めませんがこの問題については賃金だけに拘らず、労働法や解雇規則、果てには社会慣習など多方面に渡って対策を考えるべきでしょう。ただ今回の記事で私が強く言いたいのは、最低賃金というのはただ高ければ高いほど労働者を助けるということにはならず、状況によっては給与をもらう側も追い詰める可能性もあるということがあるということです。

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