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2011年4月2日土曜日

攻めに強い経営者が求められる中国

 中国の経済紙を見ていて不思議というか違和感をいつも覚えることに、「○○、収益が15%減」というニュースがあります。こういった見出しの記事の中身は大抵、「売上高が増加したにもかかわらず収益が□%低下した。低下した要因は……」という感じでまとめられているのですが、読んでていつも、「黒字保ってんだからいいじゃないか別に……」と思います。もっとも私がこういう風に思うのも日本にいたころにあまり経済紙を読んでいなかっただけかもしれませんが。
 あくまで私の主観ですが、こっちでも企業の収益が赤字になればそれはそれでニュースになりますが、どうも中国では成長率が前期比を少し下回るだけでもニュースになる、というより同程度がそれ以上の成長率を出して当たり前というような風潮があるように感じます。それこそ去年は収益が20%増加したのだから、今年は25%くらいないとおかしいというようなくらいに。

 しかし生まれてこのかた日本の景気が落ちるところしか見たことがない私からすると、たとえ売上や収益がいくら落ちようが黒字を保てれば企業としては立派なものだという風に考えるところがあり、たとえばユニクロのような毎年急成長を続けていた企業で成長率が低下したりした場合は話は別ですが、どうもこの辺で中国企業のニュースを見ていてギャップのようなものを感じさせられることが多いです。
 ただ中国では何もしなくともいい位に景気が上り調子ですので、成長率が落ちる方が確かに問題なのかもしれません。ちなみに最近だと、ここまで露骨にやらなくともいいだろうと思うくらいにデザインをパクリまくっている、自動車会社のBYD汽車の成長率減少のニュースが取り扱いが大きかったです。

 とまぁこの程度の内容だったら記事にするまでもないのですが、こうしたニュースに触れていてこのところちょくちょく思うこととして、今の中国には攻めに強い経営者しかいないのではというものがあります。攻めに強いというのは文字通りに積極的に業務拡大を行っていけるような経営者で、具体的には販売拡張や支店、営業所の設置、人員拡大などといったことをばんばん効率よく行っていける経営者のことを指しておりますが、実際に企業家のインタビューなどを見ていると如何に売上を伸ばすかという点を強く語る人が多いような気がします。
 攻めに強い経営者というのはそれはそれで資質に問題があるというわけではなく、経済が拡大している今の中国にとっては確かに必要とされる人材です。そういう意味では需要の多い人材が数多く世に出てきていると捉えることができるのですが、その一方で守りに強い経営者が存外少ないのでは、ということを覚えます。

 攻めの経営者に対して守りの経営者というのは、これまたあくまで私の定義ですが売上高が減少する中で以下に採算を守るか、赤字を出さないように経営の効率化を図れるような経営者を指しております。基本的に今の日本の経営者はこの手のタイプが重宝されており、敢えて有名なのを出すと日産のカルロス・ゴーン氏のような、やり方についていろいろ批判されてますが経費を徹底的に削減するコストカッターと呼ばれるような経営者です。日本の場合はデフレ下で売上が減少して当たり前なので、もちろん売上も伸ばせるのなら越したことはないですが、減少していく中で採算を確保することが今の経営者に一番に求められる資質です。

 いつものごとくまた前置きが長くなってしまいましたが、概して攻めに強い経営者というのは守りには滅法弱いところがあり、景気が全体で収束していくような時代ではかえって会社の経営を危うくする人間も少なくありません。それこそ日本のバブル期に名経営者と呼ばれた人材はバブル後になると評価が一転した人物も少なくなく、中にはかつての名声はどこにやらという感じで割と寂しい晩節を迎えた人もいます。大抵こういう経営者は売上が減少すると広告費や営業社員を増やせばまた上がるとして逆に資金の追加投入を行いますが、失われた十年の時代ではそうしたことをしても経費が増えるだけで売上も収益も伸びず、代表的な例だとダイエーの中内功氏のように結局一代で作って一代で駄目にしてしまった人もおりました。

 今の時代の中国においてはこのような心配は無用以外の何者でもないですが、不動産を筆頭に今の中国の経済はいくらかバブルの傾向があり、成長が鈍化したりマイナス成長時代に入ったりすれば対応できる守りの経営者がおらず、日本のバブル後同様に傷口を広げてしまうのではとやや気の早い予想をこのところしております。そういう意味で今の中国の経営者や会社員らには、「今の日本をよく見ておけよ」と、やや自虐的ですがこういうことを伝えたいなと思ったりします。

 逆に今の日本は文字通り守りの経営者ばかりで攻めの経営者はいるかですが、IT業界なんかにはそういう人も多くいるような気がするので、驚嘆に守りばかりに偏っているわけでもない気がします。もちろん理想を言えば攻めも守りも両方できる人材がいればそれに越したことはありませんが、そんな都合のいい人材はそうそういないのでやっぱり時代ごとに表に立つべき人間をしっかり見極め、選ぶことが重要かというのが今日の私の意見です。

  おまけ
 今の中国の不動産市場は明らかにバブルで、実際に住む目的よりも投資目的で購入する人の方が多いです。そのため去年から二件目の住宅の購入の際にはいろいろと条件を課す、固定資産税を導入(今までなかったというのがちょっと驚いた)するなど各都市ごとに制限を実施し始めておりますが、今のところまだ大きな効果は出てきておりません。ただ先月に初めて、中古住宅ではありますが平均価格が始めて前月比で下回りました。ちなみに私は友人(♂)から、誕生日プレゼントには上海の一等地の高級マンションがほしいとねだられているのでこの頃宝くじを買い始めました。

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