先日、PSPの「ジャンヌ・ダルク」というシミュレーションゲームをクリアしました。名前からして英仏百年戦争をモチーフにしたゲームですが、固い歴史シミュレーションではなく恋愛あり変身ありキャンプファイヤーありのファンタジックな内容でなかなか楽しめました。またこれ以前にも私は「BLADESTORM 百年戦争」という、こちらも同じく英仏百年戦争をモチーフにしたゲームにはまったことがあり、何かとこのテーマのゲームをよく遊んでいるという気がします。
そんな英仏百年戦争ですが、私が言うまでもなく一般的に知られているのはどちらのゲームでも主役となっているジャンヌ・ダルクが活躍した後半期のごく一部の期間だけです。百年というだけあってこの両国の抗争は長く、序盤と後半では様相も形成も大きく異なっているので、ちょうど歴史物が不足しているのもあるので一つ簡単に解説しようかと思います。
まず百年戦争の発端となったのは、イギリスとフランスの王家が近親関係にあってどっちからでも王位継承権を主張できたことや、イギリスのスコットランド統治に対してフランスが茶々をかけていたということもありますが、やはり第一義的にはフランスにあるフランドル地方における経済的摩擦が最大の原因だと私は考えています。
このフランドル地方は当時、羊毛織物が盛んだったのですが織物の原料となる羊毛はイギリスから輸入されており、経済的結びつきで言えばフランス本国よりイギリスとの関係が深い地域でした。そうした背景もあってか、かねてから様々な問題で対立していたことからイギリスが中国のレアアース問題よろしく、フランスへの羊毛輸出を禁じると途端にフランドル地方は大打撃を受け、フランスの支配から離れイギリスに忠誠を誓う、俗にいう「フランドルの反乱」が起こり、このフランドルを支援するイギリスと支配下に戻そうとするフランスの間で火蓋が切られることとなったわけです。
こうして始まった戦争ですが、序盤はイギリス軍の圧倒的な優勢で事が運びます。歴史家によると当時のイギリス軍には長射程の長弓が装備され、旧態依然のフランス軍を遠距離から次々と破っていったそうで、この間に大活躍した人物としてエドワード黒太子の名前が挙がっております。なんで黒大使かというとなんでも黒っぽい鎧を着ていたからだそうですがそもそも後世の創作とも呼ばれており、実態的にはどうだったかわかりません。ちなみにこの黒太子はその後に病気にかかり、イギリス王である父親より早くに亡くなって国王即位はしておりません。
話は戻って百年戦争の経過についてですが、エドワード黒太子の活躍でフランス王であるジャン2世まで捕縛されてフランスは一巻の終わりというところまで一旦は追い詰められましたが、ここに至って摂政(後に国王即位)として国勢の表舞台に出てきたジャン2世の息子ことシャルル5世というのがまた立派な指導者で、税制を定めて資金力を補充すると、ベルトラン・デュ・ゲクランなど優秀な将軍らを採用して奪われた領土を一挙に取り返すことに成功しました。しかもエドワード黒太子が1376年に病死し、さらにその翌年にはその父であるイギリス王のエドワード3世が死去したこともあってこのままフランスが旧領奪回かと思われたのですが、フランスが征服したブルターニュ地方の併合に当たって激しい反発が起きるなど、まだまだ安定には程遠い形勢でした。
しかも1380年にシャルル5世が食中毒で急死してしまい、和平に向けた話し合いがはじめられた矢先に両国で国王が突然変わるという異常な事態に突入します。幸いというか両国ともに新国王が内政重視、というか権謀術数渦巻く宮廷での政争を優先して1396年に一旦は休戦へと持ち込まれます。
ただ何もこれは英仏に限らずですが、一旦戦争が終わると目前の敵がいなくなってほっとするというかはしゃぎだすというか、内戦・内乱が始まるのは世の常です。イギリスでは新国王のリチャード2世が政争の末に議会派によって逮捕の上に退位に追い込まれ、ロンドン塔に幽閉されて新国王ヘンリー4世が立てられます(ランカスター朝はここから始まる)。フランスに至ってはもっと悲惨というか、こっちの新国王であるシャルル6世が突如精神に異常をきたして発狂し、取り巻き連中が幅を利かせたことから宮廷は二派の派閥(オルレアン派とブルゴーニュ派)に分かれて大激闘。暗殺が横行しただけでなく両派ともに、「相手を倒すために援軍を出してくれ!」と昨日の敵は今日の友、そして明日には敵となるイギリスに出兵を要請するほどの内戦へと突入します。
指導者が良くなると形勢逆転し、悪くなると駄目になっていく見本のような歴史ですが、両派の要請を受けて再上陸を果たしたイギリス軍が再びフランス領土を侵攻をするところから後半戦が始まります。というわけなので、続きは次回に。
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