昨日の記事に続き、英仏百年戦争をさらりと解説します。詳細にやってたらいつ終わるともしれないし。
昨日は一時は優勢だったイギリス軍が逆襲を食らってフランスから追い出され、一旦は休戦となったところまで解説しました。ただ休戦とはなったもののフランス本国では貴族たちが互いの勢力争いに明け暮れ、ブルゴーニュ派とアルマニャック派(=オルレアン派)の二大勢力が対立するようになります。こうしたフランス側の混乱を見逃さなかったのは当時のイギリス国王、ヘンリー5世で、適当な名目を立ててフランスに上陸すると主流派になりつつあったアルマニャック派を撃破し、フランス領土の侵略を開始します。
このヘンリー5世の侵略にさすがのフランス側もあせり、ブルゴーニュ派の首魁であるジャン1世と、アルマニャック派からは当時は王太子であった後のシャルル7世が連合を模索して会見を取り持ったのですが、何故かここでジャン1世がアルマニャック派に暗殺されて余計に仲が悪くなるという無残な結果となりました。
いきなり父親を殺されたジャン1世の息子のフィリップ3世はそのままブルゴーニュ派の代表となり、当然と言えば当然ですがイギリス側と手を組みます。ちょっと説明が遅れましたが当時のイギリスとフランスはお互いに国という概念を持っておらず、当時の貴族たちからすれば自己の保身を鑑みて強い方につけばいいという感覚しかなかったと思います。イメージ的には日本の戦国時代における領主たちみたいなもんでしょうね。
話は戻りますが、ブルゴーニュ派と連携したイギリス軍はこれでフランスは取ったも同然な状態だったのですが、なんとここに至ってまたヘンリー5世が急死してしまいます。なんかこの百年戦争を通して休止する人間がやたら多いのが気になりますが、彼の急死によってイギリス王の地位はわずか生後9カ月のヘンリー6世が継ぐこととなり、アルマニャック派というかシャルル7世に逆転のチャンスを与えることとなってしまいます。
ただヘンリー6世が即位した当時に、シャルル7世の父親であるシャルル6世も逝去していますが、フランス領土をほとんど取られていたシャルル7世は即位式を上げられず田舎の大将よろしく中途半端な地位で宙ぶらりんしてました。しかも母親であるイザボー・ド・バヴィエールが、「シャルル7世は実は不倫相手との子供だ」と言い出して、身内からも正当性が疑われる始末でした。ほんとのところはどうだか知らないけど。
こんな具合でかなり絶体絶命の状態だったシャルル7世の前に突然現れたのが、何を隠そうジャンヌ・ダルクです。通説によると、「あんたが王様になんないと駄目なのよ。あたしがランスに連れてってあげる(#゚Д゚)ドルァ!!」っていうノリで軍隊率いると、包囲されて陥落寸前だったオルレアンをあっさり解放した上に、敵軍のど真ん中を突っ切るような進軍ルートでランスまでたどり着いてしまいます。
無事にランスに着いたシャルル7世は念願の戴冠式を行ってフランス国王として正式に即位しますが、この後ジャンヌや後に元帥として活躍するリッシュモンらタカ派勢力とは距離を置き始めます。
ジャンヌのその後については語るまでもないですが、敗戦した際にブルゴーニュ派に捕えられ、イギリス軍に引き渡され火刑となります。この間にシャルル7世は身代金を出さずしてジャンヌを見殺しにしてますが、一応はブルゴーニュ派に、「ひどいことをしたら捕虜に同じ処置を科す」と脅してはおります。このジャンヌ見殺しの経緯から講談ではシャルル7世はほぼ100%暗愚な人物として描かれますが、実際の彼は一旦は遠ざけたリッシュモンを再び登用し、ブルゴーニュ派との和睦も成功させ、フランス領土内からイギリス軍を駆逐することに成功します。さらに戦争で荒廃した国内の復興事業を広げるなど、事績で見れば間違いなく名君と言っていい人物です。
最終的に百年戦争は、ジャンヌの火刑から23年後の1453年のフランス軍によるボルドー攻略成功によって終結します。この結果、イギリスはカレーを除き大陸の領土をすべて失い、戦争開始前の領土線に近い形で終わります。
この百年戦争全体を通して言えることですが、まず第一に英仏両国ともに一貫した外交政策や対応が取れなかったことが長期化の原因でしょう。もっとも当時は絶対王政が確立されていないばかりか貴族の力も比較的強く、国王の死によって政策方針がひっくり変わることもあながち自然なところがあります。
あとジャンヌ・ダルクについていえば、変な話ですが仮に火刑に遭わなければ今ほど有名にはなっていなかったでしょう。これはイエスの磔にも言えることですが、悲劇的な末路がかえって伝説せしめたところがあり、普通に戦争中に敗死していれば「こんな人もいたよ」で済まされていたかもしれません。更に付け加えると、彼女が有名になったのはナポレオンがプロパガンダとしてフランスの救世主だと大きく取り扱ったことが発端とされています。なかなかアイデアマンな処置ですが、なんていうかこの二人は馬が合うような、自分からして同じにおいを感じる人物たちです。
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