かなり以前に友人がこのブログで、「技術的な摺合せが求められる自動車産業には協調を大事にする日本人が向いているが、画期的なデザインや機能性が要求される電子産業には保守的な日本人は向いていない」という旨のコメントを書いてくれましたが、我が友人ながらもっともなことをいうものだと非常に感心し、よくほかの人にもこの話を聞かせております。先日にも社内の同僚にこの話を聞かせてみたのですがその際に、国ごとに向いている産業、向いていない産業というものはあるのか、あるとしたらどんな国にどんな産業が向いているのかといった内容で簡単な議論となりました。
まず日本人に関して言えば、上の友人の言う通りに自動車産業が明らかに向いていると私も思います。片っ端から挙げていくだけでエンジン、マフラー、ラジエーター、トランスミッション、内装部品、デザインと、全く専門分野の違う人間同士が集まって一つの車体を設計しなくては鳴らず、一台にまとめるためには各分野で主張したり妥協し合ったりする必要があります。ただ「妥協するなら俺に任せろ」と言わんばかりの日本人にとってはこうした作業はお手の物というか、容積の小さいコンパクトカーや軽自動車であれだけ高い性能の車を作るのはやはり世界屈指な気がします。逆に冷静に上海で走っている車を見ると、GMなど米メーカーの車というのはどれも性能の割に無駄にでかい車(中国人には受けるのだが)が多く、多分アメリカ人はお互い妥協できず、無理矢理詰め込もうとしてあれだけ車体がでかくなるのだなという風に推察しています。
逆に電子機器分野においては、こちらも友人が言うように今の日本人には競争力がないと言わざるを得ないでしょう。かつてサイクルの速い業界、それこそ「昨日の勝者が今日の敗者」というくらい流転の激しい業界としてIT業界が代表格でしたが、今や電子機器業界もそれに負けるとも劣らないくらい業界サイクルが早まっていると言わざるを得ません。日本国内で見ても5年前に日本で最も勢いのあった電器メーカーのシャープが創業100周年の今この時に経営の危機になっておりますし、中国でも太陽電池メーカーとしては世界最大手だったサンテックパワーが経営危機に瀕しており、つい先週もそろそろナスダックで上場廃止になるという記事を私も書きました。
そんなサイクルの速い電子業界で何が求められているのかというと、やはり培った技術以前に革新性が今一番求められているかと思います。この革新性でどこが強いかと言ったらそりゃなんといってもiPhoneに代表されるアップル意外にほかなく、後はインドで「鍵付き冷蔵庫」とか「音楽プレイヤー付き洗濯機」とかを出しているサムスンが続くでしょう。ちょっと話が飛びますが、以前に「スティーブ・ジョブズが何故日本で生まれないのか」という記事が出ておりこれについてネットの掲示板でも取り上げられていましたが、その中で見受けられた意見に、「そりゃ数ヶ月もシャワー浴びず、ジーパンサンダル履きで他社とのミーティングに出てくるような奴が日本で会社勤めできるわけない(ジョブズの実話)」という一言がありこれに勝る回答はないと私も感じます。私の方から更に付け加えると、ジョブズはエレベーターで乗り合わせた社員に対していきなり、「やぁ久しぶり。ところで君、明日らもう来なくていいよ」と平気で解雇通告とかやるような奴だったらしいです。まぁこの後、自分が役員らに追い出されることになるんですが。
ただこんなジョブズでも、アメリカという国は受けれてしまう度量の深さがあります。どれだけ私生活に問題を持ってても、一般常識がなくとも会社に価値をもたらすのであればきちんと採用して活かしてしまうところがあるため、革新性という領域においては他国の追随を許さないでしょう。逆に日本社会はどれだけとんがった才能があってもネクタイを締めていなければ人間として扱わないところがシャレや冗談抜きであり、一分野にどれだけ優れていても何か一つ欠けていれば全く相手にしません。そんな環境で革新性なんて生まれるわけなどなく、革新性を持つ人間は会社に属さない漫画かなどの分野でしか見受けられない気がします。なお敢えてジョブズに近い人間だったと私が思えるのは、故横井軍平だったのではないかと密かに考えてます。
上記のような日本人とアメリカ人の違いをスポーツにたとえると、打撃も守備も両方とも上手くなければならない野球が好きな日本人と、蹴る人間と走る人間と壁を作る人間ではっきり役割が分かれているアメフトが好きなアメリカ人だと説明しております。技術力とか教育以前に、やはり国民性というか文化がどの産業に向いてるかというのを決めるのではないかと言いたいわけです。
ここでまた話は変わりますが、ならば中国人はどんな産業が向いているのかということが社内での議論で一番盛り上がりました。結論から言うとローコストオペレーションが強いのではないかという話になり、たとえば中国の自動車メーカーの多くは自分の会社でエンジンとか主要部品は一切作らず、それこそ日本の自動車メーカー(比較的多いのは三菱)からエンジンをそのまま調達し、その他の部品と組み合わせて1台作るということが多いです。
中国人企業家の多くは、「安い費用で調達出来るのなら自前にこだわる必要がない」と割り切る人が多く、場合によっては知的財産権すら平気で無視してその場で集められるものでぱっと作ってしまうところがあります。日本の企業家と比べて決断の早いところも加わり、安い材料を集めて製品化するという分野においてはなかなか競争力が高いのではという風に議論が進んだのですが、そのかわりせっかちな性格が災いして長期的な開発計画なんかは苦手で、安価大量生産モデルからやはり脱却できないのではという意見も出てきたわけです。
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