前回書いた小渕元首相に関する記事で私は、現在に至るまで続いている自民、公明の連立政権を作ったこそが彼の最大の功績だと評しました。また二党の連立は日本政治史においても非常に大きな意味合いを持っているとも考え、さすがに55年体制が出来た保守合同ほどには行かないまでもその後のパワーバランスを大きく方向づけた一事件としてもっと注目、研究すべきだと日頃考えます。ついては今日はその意義と背景、さらに今後の展望についていろいろ書いてみようかと思います。
既に書いてある通り、自民党は1999年の小渕政権時に公明党と連立を組むことで合意し、その後は一貫として協力政党同士として政策や選挙などで関係を保っております。文字にするとたった一言ではありますがこの協力関係が続いている期間は今年で実に13年にも達しており、さらにずっと与党であったのならともかく自民党は一度は野党にも転落しておりますが、この野党時代も両党は歩調を合わせた活動を取っております。このように政党同士の協力関係がこれほどまで長く続くというのは戦後の日本政治史にはなく、またはっきりとは言えませんが世界的にも非常に珍しいように思います。既に安倍総裁は自らが総理に就任する次期政権で公明党と連立を組むと発表しており、まだまだ協力関係は続きそうで下手したら20周年とかにも行くかもしれません。
一体何故この両党はこれほどまでに長く協力関係を保てたのか。一言で言えば公明党の他の政党にない特殊性が最大の要因でしょう。公明党の特殊性とくれば言わずもがなでその支持母体が宗教法人の創価学会なのですが、先に断っておくとよく「公明党は支持母体が創価学会なので政教分離に反する」と言う人もいますが、あれこれ宗教政策に口出したり自分とこだけ優遇する政策を取るならともかく、投票行動だけでこういう風な批判をするのは問題外といわざるを得ません。宗教勢力が組織票となるのはどの国でも一緒ですし。
話は戻りますが公明党は上記のように創価学会が支持母体であるゆえに、以下の点で自民党と相性がいいと私は見ます。
1、政党支持層が被っていない
2、外交方針を始め政策方針にとやかく口出ししない
1番目の点については、公明党の支持層は比較的低所得層が多いのに対し、自民党は中間~高所得層を支持層に持っております。こうした支持層の違いから選挙では投票者が被らず、お互いに協力した選挙戦を展開しやすいという利点があります。ただ現在においても唯一公明党批判を続けている平沢勝栄議員はちょっと特別で、この人は「政界窓際族」といってもいい立場から好きなこと言えるというのもありますが、選挙区の関係から公明党などと支持層が重なるという事情があります。ま、それ以上に本人の性格によるところの方が大きいかもしれませんが。
次に2番目の点ですが、連立相手として見るならば公明党は非常に聞き分けのいい政党であります。基本的に主張するというか自民党に飲ませる政策といったら社会保障政策、それも内容面で結構妥協してくれるのでパートナーにする政党としてはやりやすい相手です。
個人的に私がよく公明党が飲んだなぁと思うのは小泉政権の頃の自衛隊イラク派遣です。これは小泉元首相が公明党はおろか自民党内、果てには国内世論を押し切って実行したというのが大きいですが、それ以前の公明党からしたら絶対に飲めない内容だったように思えます。それだけにこれすらも公明党は飲んだことによってハードルが下がったというか、外交面では自民党に大きく妥協するようになって協力関係が深まったといえるかもしれません。
そんな公明党と対照的なのは、言っては悪いですが社民党と国民新党です。どちらも民主党政権発足時に連立を組みましたが、議席数で大した貢献もしなかったくせに随分態度がでかいというかむちゃくちゃな要求ばかりしてきて、はっきり言いますが分をわきまえない行動が目立ちました。民主党も、こんな連中と組むくらいならねじれ国会覚悟で単独で政権運営しておけばよかったものを。
話は自公に戻りますが、公明党としても全国すべての選挙区に候補者を擁立するほど体力を持っていないこともあり、自民と選挙協力をすることで得られるメリットが高いと言えます。あまり言われてはいませんが個人的に今回の選挙で一番驚いたのは、公明党は小選挙区すべてで全勝していることです。議員数で言えば比例当選がメインではあるものの、妥協は迫られるものの一度も裏切らずに自民党と組み続けたことによって無傷勝利を実現するまでの実力までも身に着けたかと感心しました。更に言えば、自民党が野党に落ちても歩調を合わせ続けたことによって再び与党に返り咲けたとも言え、結果論ではありますがあんな頼りない谷垣自民党相手によく我慢したものだとも思えます。もっとも野田内閣不信任案に同調しなかった点を見るといろいろな考えるところはあったのでしょうが。
こんな具合でさっきから相性がいいと言っている両党ですが、今のところ仲違いする火種もないことから今後もしばらくは連立を組み続けることになると私は予想します。ただ一点だけ指摘すると、公明党は先にも書いた通りに選挙では比例制度に大きく依存しているところがあるため、選挙制度改革では比例制度廃止を飲むことだけは絶対にないでしょうし、仮に自民党がそれを実行しようものなら決裂に至る可能性すらあります。
しかしかねがね主張しているように今の日本の選挙制度における最大の癌はこの比例制度にほかならず、よく小選挙区制度が自民党を弱くしたから中選挙区制に戻すべきという意見がありますが、自民党が弱くなったのは比例制度によって老害となる議員が復活当選してくることが大きく、むしろ中選挙区制に戻せば自民党はさらに弱くなる可能性があると思えます。
それだけに私としては比例制度は早く廃止してもらいたいものですが、自公連立が続く間はそれを望むべくもありません。そこで敢えて公明党にも飲める内容として提案するなら、要は小選挙区で有権者にNOを突きつけられた議員が復活当選することが最大の問題なのだから、小選挙区と比例の二重立候補を禁止すれば少しはよくなるかもしれません。説明するまでもありませんが小選挙区で立候補する議員は比例名簿に名前を載せられないようにするだけで復活当選ができなくなり、重鎮というだけで居残る議員は追放することが出来るようになります。先にも書いたとおりに公明党は今回、小選挙区で全勝したのだからこれくらいならまだ飲めるかもしれないので、もし誰か見ているのなら真剣に検討してもらいたい内容です。
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