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2013年5月26日日曜日

「第三のエコカー」のディーゼル乗用車について

 自動車関係に詳しい方であれば当たり前の話ではあるのですが、そういう業界にいない人からの反応がやけにいいので今日はディーゼル乗用車とその世界での普及度合いについて私なりに紹介しようと思います。

 まずディーゼル乗用車とは何ぞやですが、日本で一般的なガソリンエンジンを積んだ乗用車と違ってディーゼルエンジンを積んだ乗用車を指します。ディーゼルエンジンはトラックなどには日本でも載せられておりますが、はっきり言って乗用車カテゴリにおける普及率は非常に低い状況です。それどころか東京都等で実施されている排ガス規制の影響を受け、ディーゼル車は黒煙を出すため環境にはよくないというイメージを持っている人が多いように思えますが、残念ながらこのような見方は日本独特なもので、欧州をはじめとする地域ではハイブリッド車、電気自動車に続く「第三のエコカー」としてディーゼル車に期待する声は大きいです。

 ディーゼル乗用車が何で環境にいいのかというと、ガソリン乗用車と比べ二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないのと、熱効率が高いためガソリンではなく軽油でも走らせられることから石油消費量が少なくて済むからです。ただそのかわりにディーゼルエンジンは地球温暖化の原因物質と指摘される窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を黒煙の形で多量に排出するため、日本では負のイメージが強いばかりか「ガソリン車と比べてCO2排出量が多い」という事実とは真逆の知識を持つ人すらたまに見受けます。
 回りくどくせずに話を進めると、これらの概念はもはや過去のものです。フォルクスワーゲン(VW)を初めとする欧州の自動車メーカーはこれらディーゼルエンジンの弱点を徹底的に改善し、NOxやSOxの排出量を劇的に減少させております。無論、CO2排出量は以前のように少ないままです。

 このように環境能力の改善が進んだことから元々普及率の高かった欧州では先程も述べたように「第三のエコカー」として人気を集め、欧州自動車工業協会によるとここ数年の欧州における年間の新車登録台数に対するディーゼル乗用車が占める割合は50%前後にも達しております。また自分も調査中に驚いたのですが、日本同様にディーゼル乗用車の人気が今ひとつ高くなかった米国でも2011年のハイブリッド車の新車販売台数が前年比2.2%減だったのに対し、ディーゼル乗用車は27.4%増と大幅に増加しております(バウムアンドアソシエートの調査による)。

 このようにディーゼル乗用車は世界で評価が高まっているものの、日本では未だに低い認知度に甘んじております。なんでこうなっているのかというと先ほども述べたように排ガス規制の負のイメージが強いことと、日本はハイブリッド車を基軸にエコカーを普及させようとする自動車業界、または国の政策方針がもしかしたらあるんじゃないかと私は睨んでいます。まぁ確かに日本のハイブリッド車技術は世界一ではあるんだけど。

 ただこのようにディーゼル乗用車の認知度が低い日本の状況下に対し、マツダがこのところ大きな風穴を開けております。この辺だったら知っている人も多いんじゃないかと思いますが、マツダは2012年2月に「CX-5」というSUVを発売しましたが、従来のガソリンエンジン搭載した仕様に加えてマツダが自主開発したディーゼルエンジン搭載した仕様(クリーンディーゼル車)も用意されました。エンジンの専門家ではないため具体的に何がすごいのかはわからないのですがどの自動車評論家もマツダが出してきたこのディーゼルエンジン仕様のCX-5を高く評価しております。実際に2012年におけるCX-5の販売台数は35438台に達して国内のSUVでトップとなり、しかもこのうちの8割はディーゼルエンジン仕様だったそうです。
 あとこれは伝聞ですが、ディーゼル乗用車の本場である欧州でもマツダが出してきたディーゼルエンジンの評価は高いそうです。最近だとCX-5だけでなくモデルチェンジした「アテンザ」にもディーゼル仕様を設けてますがこちらも人気は高いと報じられており、「ディーゼルは燃費もよく環境にいい」という認識を今後も日本で広げていくように思います。

 最後にもう少しだけディーゼルエンジンの特徴について触れておくと、ガソリン車と比べ燃費効率や環境対策能力は非常に高いものの、部品点数が多くなることから生産コストは割高となります。また同等の能力を持つガソリン車と比べ大型で重くなる傾向もあり、あと稼働時の振動も大きいことからSUVのようなやや大型の車じゃないと搭載し辛いという欠点も抱えております。もっとも各メーカーは振動対策にも力を入れており、最近だとVWやマツダみたいにセダンにも載せてくるメーカーも出ておりますが、コンパクトカークラスに載せるのは重量配分的にまだ厳しいのではないかと私は見ております。

 ざっと以上のような内容が私の知っているディーゼル乗用車に関する知識ですが、今回ここで書いた内容は自分が前職中に書いた特集記事がベースとなっております。ここからは余談になりますが中国でもエコカー推進対象としてディーゼル乗用車に対して補助金を出すような観測が出てきたので私が翻訳記事を書いたのですが、当時の上司から「ディーゼルが何でエコなの?」と聞かれ、「いやぁその見方はもう古いですよ。今のディーゼルエンジンは凄まじく進化しております」などとあれこれ説明してたら、「花園君は詳しいなぁ。折角だからその方面で一本まとめ記事書いてよ」と言われてしまって、調子に乗ってしゃべり続けたために仕事を増やしてしまいました。今に始まるわけじゃないですが、知識は過剰にひけらかすものではないと反省する羽目となりました。

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