自衛隊の関連法案が審議に上ってきた(ほんとはこっちより派遣法を話題にしてほしいが)ことからこのところ憲法に関する、それも起草当時について触れる記事を見る機会が増えてきました。そう言った記事の中でちょっと気になったのが、「占領軍の素人が数日間でつくり、押しつけた憲法」という主張で、これは今年3月に安倍首相が議会でこれと同じ内容の発言をしたことからやや独り歩きしている節があるのですが、これにはやや異論があるというかちょっと黙ってられないので個人的な意見を書いていくことにします。
・極秘で起草、徹夜の議論=敗戦が生んだ「革命」憲法【戦後70年】(時事通信)
現在の日本国憲法はどのようにして誰によってつくられたのか、結論から言えば日本政府が出してきた草案に満足しなかったマッカーサー率いるGHQの職員チーム25人で作成されたということは紛れもない事実です。また戦争放棄をうたった憲法九条については日本政府から提案されたとかねては伝えられていたものの、現代ではマッカーサーが九条を追加したが敢えて日本政府からの提案を受けたふりをしていたという意見が強いです。半藤一利氏によると、「マッカーサーは嘘つきだからなぁ」だそうです。
話しは戻って憲法起草のメンバーについてですが、参加メンバーで最も有名なのは当時22歳だったベアテ・シロタ・ゴードンで間違いなく、法学部における憲法学の授業でまず出てくる名前でしょう。彼女、というより彼女の父親のレオ・シロタについては以前に評伝を書いておりますが、よく彼女の存在を取り上げては、「まだ22歳で、憲法についてド素人である小娘に作らせた」などという揶揄を見たりしますが、正直に言ってこれらの意見は私にとって不快です。
実際には彼女は英語、日本語に堪能であるだけでなくロシア語にも精通していたため、憲法の起草に当たっては国会図書館に通ってドイツやロシア、フィンランドの憲法条文を参考にしてきては日本語の独特なニュアンスをほかのメンバーに伝えるという才女ぶりを見せています。憲法学のバックグランドこそなかったものの、それを持って「ド素人」などと批判するのはやや筋が違う気がします。
ほかの起草メンバーに関しても同様で、確かに憲法を専門に学んだことのあるメンバーはいなかったものの何人かはアイビーリーグの大学で法学を専攻しており、三人ほど弁護士資格保有者もいたそうです。 実際に起草された日本国憲法は少なくとも日本政府が最初に出してきた前時代的でほとんど何も変化のなかった草案よりもずっと内容が充実しており、特に女性の権利保護については、女性の普通選挙参政権がほとんど認められなかった時代でありながら本国アメリカ以上に先進的な内容を取りこんでおりました。そのほかの内容に関しても、戦後70年以上何の変更も加えられないながらも機能している点を鑑みると大した憲法だと私は考えています。
確か田原総一郎氏だったと思いますが、「少なくとも戦後、日本は一度も戦争に巻き込まれることがなかったのは間違いない」という評価を下しており、この一言に尽きるでしょう。
私自身は憲法自体はそろそろ変えるべき点も出てきたし、硬性憲法だと弊害が大きいとも考えるため改憲派でありますが、起草メンバーを「ド素人」とするこの意見に関しては生理的に怒り、言い方を考えると聞いてるだけでなんか腹立ってくるのでここで強く異を唱えます。第一、法律に対する価値観でアジア人が欧米人に文句言うってのもちょっとなと思えるし。
真面目な話、日本の法整備は憲法以上に喫緊の課題です。民法の保証人制度なんて気違い極まりない法律だと思えるし、住宅ローンに関しても日本では時と場合によっては二重ローンがあるというと外国人みんなに驚かれます。はっきり言いますが日本には本当に法律の専門家がいるのか、それこそド素人ばかりなんじゃないかと密かに考えてます。
日本の憲法を改定すべきでしょう?
返信削除改定すべき。自衛隊の件に限らなくても、今の状態だと問題が多い。
削除