今国会内では安保関連法案の採決で一番盛り上がっておりますが、曲がりなりにも選挙で決まった議席で採決しようとしているのだから籠城などの戦術で採決を遅らせようとするのはちょっとナンセンスかなと思え、安保法案については納得できない面も少なくないもののこのまま可決されるのもまた仕方ないと考えております。むしろ野党の様にわけのわからない行動を取るくらいならこの法案の不足している点や問題点を見つけ出して、修正なりを求めていく方が建設的でしょう。
なわけで安保関連についてはもうこれ以上語りたくないものあり今日は先日少し話題になって急にしぼんでしまった、大不評だった軽減税率の還付案について書いてみます。結論から言うと小一時間ほど「お前、頭おかしーんじゃねぇの?」って問い詰めたくなる内容でした。
この軽減税率の還付案について詳細を知りたい方はニュース記事などを読んでもらいたいのですが私の方から簡単に説明すると、消費税率を2017年度に10%へ引き上げるのに合わせ、食料品など生活必需品の購入に関しては消費者の負担を下げるべく現在の税率を据え置く軽減税率を導入しようと以前から議論されていました。しかし食料品だけ消費税を増税後の10%ではなくたとえば現行の8%に据え置こうものなら処理はどうするのか、普通に考えたってスーパーのレジで大混乱が起こりそうな気配がプンプンです。そこで財務省が先日提示してきた案とは、一旦消費税10%を支払った後で差引き2%分を還付するという案でした。
この還付方式自体は問題なく、他国でも税金還付の方式として採用しております。しかし問題なのはその還付する手段で、これから日本国民に発行する予定のマイナンバーを使い、その情報を含んだマイカードを使って認証するというやり方を財務省は提示してきました。しかも還付額は一人当たりの年間上限が4000円とされ、発表するや否や各方面から激しい批判が出てきました。
この還付手段のどこが問題なのかというとたくさんありすぎて説明する方も大変なのですが、まず最初に言えるのは認証に使うマイナンバーがまだ発行されてないことはおろか利用実績もな意ということです。普及も何もそもそもまだ存在していないツールを頼りに政策を運用しようだなんていくら何でも突飛過ぎる話で、また本当にマイナンバーを使う場合、すべての小売店にカードを認証する装置を導入する必要が出てきますがその費用はどこから、誰が負担するのか。さらには認証に当たって不具合は起きないのか、個人情報の塊であるマイナンバーから情報は流出しないのか、もうどこから突っ込めばいいのかわからなくなるほど現実を無視した絵空事としか思えない構想だったでしょう。
こうしたマイナンバー関連のみならず、還付額が年間上限でたったの4000円だったということも大きく批判されました。批判する声の中には、たったの4000円しか還付されないのであれば面倒な手続きをやりたくないとか、還付金の上限を越えるほど食品を買っても一切還元されない、この制度を維持するのにシステム面などでどれくらいのコストがかかるのかなど、至極もっともな意見が取り交わされておりました。実際私であっても、年に一回4000円返してもらうために役所に通うのなんて馬鹿馬鹿敷く思います。
結局、こうした世論、そして与党内部からも批判が続出したことから財務省はこの還付案について一旦はひっこめると発表しました。しかし財務省の魂胆としては、余所でも言われている通りにこの還付案と抱き合わせでマイナンバー、そしてそれに付随するマイカードを普及させて天下り団体を作ることにあると思われ、多分まだあきらめてはいないと思います。逆に言えば、この制度自体があらゆる点において無駄であることを知っておきながら強引に推し進めようとしていたのが実態でしょう。
ただそれにしたっていくらなんでもこの制度設計は杜撰の一言に尽き、もっとまともな案を出せなかったのか、政府も出す前に「これはやばい」と止めるだけの正常な判断力を麻生財務相を筆頭に持っていなかったのかと、はっきり言えば神経を疑います。麻生財務相に至ってはこの制度の何がおかしいと言わんばかりでしたが、まぁ期待するだけなぁ……。
最後に少しだけ真面目な話すると、こんな杜撰な内容で政策が出てくること自体が日本の行政の能力低下を表しているのではないかと本気で心配になってきます。手っ取り早いのはこの制度を立案した人間を即刻更迭することですが、そうはならないのが官僚の世界なんでしょうか。
軽減税率を導入すると、会計システムやレジスターの改修が必要となり、また税額の算出方法もかなり複雑なので事業者には大きな負担となります。
返信削除そこで少しでも事務処理負担や設備の改修費を押さえるためにマイナンバーを利用した還付方法を提案したのでしょう。
個人的には財務省は軽減税率の導入には否定的で、あえて国民が反発するような案を出して、単一税率維持という流れを作ろうとしてるように思いますが・・・
最後に、既にチェック済みかもしれませんが、税務大学校の先生が執筆した論文のアドレスを掲載しておきます。軽減税率導入慎重派の論文です。
https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/46/takada/hajimeni.htm
ああそっか、単一税率維持って視点が抜けてました。ちょこっと頭に浮かんでたものの記事書く時は忘れてた。
削除紹介してくれた論文は読んでいませんでしたが、読んでみた印象としては久々にアカデミックな読み辛い文章を読んでしまったという感しかありませんでした。なんであんな無駄に仰々しく回りくどく書くのか、やっぱり自分はアカデミズムの世界に行かないで正解だったとちょっと再確認しました。