中国コラムを書いている他のライターとネタの相談、打ち合わせをする際、「一体何が日本人にとって珍しい中国の情報なのだろうか……」という点でよくお互いにため息をつきます。というのも、中国での生活がそこそこ長くなってくると、日本人にとっては「なにそれっ!」て思われる中国の習慣や特徴についても、「普段見かけるよくある光景」にしか見えなくなり、日本人に受けるネタであることに気づかなくなってしまうからです。
そのためJBpressで書いているコラムも、割と自分にとっては当たり前なんだけど日本にいる友人とかに話したら、「そんなの全然知らなかった、面白い!」と言われてじゃあ書くかって感じで書いているのも少なくありません。前に書いたごみ分別の記事なんてその典型もいいところで、あれが日本人に反応されるなんて私自身はそれほど期待はしていませんでした。
その逆というか、自分を含め中国ネタを書くライターたちにとって珍しい、面白いと感じる内容は決まってディープな中国ネタ、具体的には中国で流行っている韓流アイドルとか、日本人なら絶対に知らないアパレルブランドとか、日本人には言われてもピンとこない個人所得税改革とかそんなのばっかで、仮にそういうのを日本語媒体で記事化しても誰にも反応されないことは目に見えています。
そういうわけから我々中国ネタライターにとって、「いかに普通の日本人でも反応できるような、自分たちにとっては当たり前だけど、一般日本人には当たり前でないネタ」を提供することが仕事を左右します。簡単に書くけどこれって案外難しく、他のライターとかが書いているネタを見て、「あー、これもいけたのか………」って嘆息することも珍しくありません。
現実にというか去年の秋頃に出した(書いたのは真夏だったが)、中国のPM2.5濃度は下がってて最近青空も多くなっているという私の記事も、やはり周りでは「そんなのずっと前からじゃん」、「自分もそう思ってた」という感想が多く聞かれました。逆を言えばそういう感想が得られるネタほど美味しいわけで、この記事に関しては我ながら「自分にとって当たり前の事実」をうまく再発見できたと考えています。
こうした中国ネタ同様に、私にとっては歴史ネタも同じような問題にぶつかります。はっきり言えば自分もかなり歴史知識を持っていることから生半可なネタじゃ「だから何(゚Д゚)ハァ?」って感じで満足できず、かなりディープな解説、江戸時代の流通事情やマネタリズムとか、鎌倉時代の栄養状況などそういった方の話のほうが喜んで調べます。しかし、こんなネタが一般受けするわけないことは私もわかっており、いちいち記事化することはありません。
なので中国ネタ同様、歴史ネタで記事を書く場合は如何に、「自分にとっては珍しくもなんともない事実だけど、一般人がまだ興味を持てる範囲で恐らく走らないであろう事実」を探して書くことが求められます。簡単に言うけど、これは決して簡単じゃありません。
ではこういった知識ギャップを埋めるにはどうすればいいのか。基本は、その方面の知識の少ない人に、「こういうネタがあるんだけど」といって話して聞かせ、その際の反応を見るのが確実です。このとき相手に「面白い」と言わせたらほぼ大丈夫ですが、相手も専門知識を持つ人間だったらあまりあてになりません。
ただこの方法、既にネタを見つけていることが前提です。ネタがなければ話して聞かせるなんてできないわけで、そもそものネタ探しにおいては使えません。
ならネタ探すにはどうすればいいのか。自分のやり方としては、最近「1984」のリバイバルブームで見ることの増えた単語の「二重思考」こと、中国に来たことのない日本人の思考で物事を見つめ、そのなかで面白いと感じたものを拾うというやり方を持っています。
もう一つの方法としては、初めてその情報に触れたときの感覚を思い出すというやり方です。これは「初心に帰る」をそのまんま実行するという手段ですが、記憶力が極端に言いこともあってか、割と実際に最初に触れたときの心境とか思い出そうとすれば簡単に思い出すことができます。その時の感覚を現在の自分の視点で客観視して、記事化するというのが割と自分の得意パターンです。
ただ、自分で書いてて二番目の方法は他の人にできるかと言ったら多分無理だという気がします。つい先日も通りを歩いてて、八年前にここを初めて通った際にはこの店の前にはモップがあって、子猫が遊んでて、ああいう格好したカップルが歩いていたなとか普通に思い出せますが、やはり自分のほうが異常な特徴を持っているということを自覚しています。というかたまにフラッシュバックすることもあって、日本国内のどこそこの通りを時速30キロ強で自転車で走りたくなる欲求が突き上げてくることもあります。
どちらにしろ、記事を書く場合は読者との知識ギャップを意識して書くのと書かないのとでは大きな差があり、一般の記者ならともかく、IT系の記者はやはりこの方面への意識が欠けるのではという印象を常に覚えています。
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