最近自分語りが多いような気がするから、たまにはフラットな話題として中国語学習のポイントについて触れようと思います。なお前文を呼んで、「最近じゃなくいつもじゃん」とか思った人は私のことをよく理解してくれている人な気がします。
さて単刀直入に結論から述べると、少なくとも日本人における中国語学習において最大の課題と言えるのは中級から上級への指導方法、テキストが極端に少ないという点にあると断言できます。初級から中級レベルの中国語学習テキスト(中国語検定4~3級、HSK1~4級)は非常に豊富であり、一般向け学習サービスもたくさんあるものの、こっから上に行くとなるとまずテキストが少なく、なおかつ指導方法もあまり確立されていないように見えます。
それでも中国のドラマ見るのが好きだったり、私のように業務上で中国語使う必要ある人なんかは時間とともに上達していくのですが、日本国内にとどまっている人となるとなかなか中級からのステップアップが難しく、効果的な手段としては留学くらいしかないのが現状な気がします。
その上で、私の場合は文章処理がメインということもあるので中国語の高難度な文章を読むテクニックをここでいくつか紹介すると、一番のポイントとしては「まず最初に動詞を見つけること」に尽きます。
そんなの当たり前だろと思う人も多いでしょうがもう少し説明すると、中国語は言うまでもなく漢字ですべて構成されており、そのため動詞と名詞の区別が困難な言語に当たります。適当に拾ってきた文章で一例を用いると、
「动画动漫等行业迎来爆发式增长」
上記文章には「增长」という言葉があり、これはそのまま「増加、増える」と訳されがちですが、実際には「成長」という意味です。「増加」と間違えるのは「增」という漢字の印象に引っ張られているだけで、明確な間違いです。なおひどい場合には常用漢字に直すだけで「増長」と訳す人もいますが、これだと完全に別の意味になります。
話は戻りますが、「成長」と訳せる単語があるからこれが動詞だと思って、「動画アニメなどの業界が爆発的に成長するのを迎える」という風に訳す人もいるかも知れませんが、大きく間違いではないものの、これだと10%くらい少しずれた訳し方です。何故かというとこの文章の動詞は「增长」ではなく「迎来(迎える)」で、先程の「增长」は名詞として訳さなければならないからです。その為正しい訳は、「動画アニメなどの業界が爆発的成長を迎え……」という風になります。
確かに「增长」という単語を「成長する」という動詞として扱うこともないわけではなく、むしろ結構な頻度で動詞として使われます。しかし上記の文章のように、普段動詞として使われる単語がそのままの形で動名詞(「~こと」)として出てくるパターンが中国語には多く、本来名詞として扱わなければならない単語を動詞として読んでしまって、全体の訳が崩れるパターンが多いです。
それこそさっきの例文だと、「動画アニメなどの業界を迎え、爆発的に成長する」みたいに、動詞を二つつけて訳してしまうケースも散見されます。
こうしたミスを避ける上で最も効果的なのは、最初に挙げた通り「その文章の中の動詞を見つける」ことです。同一対象に複数の動作を及ぼす(「調べ、分析する」みたいな)場合を除き、基本的に一文において動詞は一つだけです。そのため、まず何が動詞なのかをしっかり見つけ出し、その動詞を中心に前に名詞、後ろに目的語をつけてく具合に訳していくとミスが少なく訳せたりします。そのため読解、翻訳においては文章の腰に当たる動詞を特定することが重要だとよく周りにも言っています。
その動詞の見分け方で敢えてもう一つポイントを挙げると、「并」という単語があります。これは接続詞なのですが、同じく接続詞の「和(及び)」と同一視して「及び」と訳されている事が多いですが、実際には順接として、「~し、」みたいに訳すとすんなり行きます。というのも「和」は「名詞+和+名詞」のように名詞同士を並列させるのに対し、「并」は「動詞+并+動詞」のように動詞同士を並列させます。
そのため例えば「观看大熊猫幼仔,并拍摄视频」という文章だと、「パンダの赤ちゃんを観察するとともに、動画を撮影する」という風に訳せます。もっとも私はさっき書いたように「并」は順接の方が美しいと思うので、「パンダの赤ちゃんを観察し、動画を撮影する」と訳すでしょうが。
この「并」という接続詞が実は動詞の特定で非常に役に立ち、さっきも書いたようにこの文字は動詞同士をつなぐ役割を果たすため、前後にある単語が確実に動詞であると特定できます。また基本的に「并」が使われるのは構造の複雑な複文であるため、複文文章構造を解き明かすのにもすごい使えます。先の例文だと「并」の直後に来ている「拍摄(撮影する)」が動詞と判断できます。
なおこの単語も動名詞化することが多く、その際は「撮影」と訳します。
問題は対となるもう一つの動詞の特定です。もっともここまで来ていたら文脈からすぐ「观看(観察する)」が対の動詞で、「大熊猫幼仔(パンダの赤ちゃん)」が目的語だとすぐ読めるでしょう。この例文はまだ状況がわかりやすい文章ですけど、法律や契約関係の文章だと状況がわからず、何のお金がどっちからどっちへどう動くのかとイメージしづらく、そういう際にこうした接続詞と動詞から主語や目的語を特定するやり方が効果を発揮したりします。
もう一つこの動詞の特定がいかに中国語で重要であるかという理由を説明すると、中国語には漢字一文字の単語も珍しくありません。何が厄介なのかという、漢字二文字の単語1個を漢字一文字の単語2個にも読めてしまうことがあるからです。
それこそさっきの「观看大熊猫幼仔」の「观看」も「观(観察する)」と「看(見る)」の二つの単語に分けて読むこともできます。その場合、「パンダを見る動物の赤ちゃんを観察する」という風に訳せないこともなく、意外とこうした単語の識別ミスでえらいことになるパターンが多いです。これを防ぐ上でも最初の段階で、「观看」二文字で一つの動詞と見分けなければなりません。
以上のポイントは私が一定度中国語を学んだ状態で身につけた技術で、中級クラスの時はあまり意識していませんでした。そういう意味で上級クラスに踏み入る上で重要なテクニックとなりうると考え、ここで紹介することにしました。
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