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2023年8月1日火曜日

10年前、20年前の中国とインドの評価

「中国はもう終わり、これからはインドの時代っすよ!」

 上のセリフは約20年前、当時「○○ハイツ一の武闘派」を自称していて学生だった私に対し、後輩が言った言葉です。なお武闘派といっても特定の団体には所属せず、やっていたことは雨が降りそうな時に後輩の部屋のベランダに干したまんまだった布団を取り込むくらいでした。

 そういうどうでもいいのは置いといて、20年前、時期にして00年代中盤においては「BRICs(ブリクス)」という言葉がまだ存在しました。これは当時の経済新興国であったブラジル、ロシア、インド、中国(チャイナ)、南アフリカ(サウスアフリカ)の頭文字を取った言葉で、中でも同じアジア圏にあることから中国とインドが日本人の中では特に比べられていたと思います。
 あれから20年を経て、「アジアNIES」がとっくに死語となっているように、このBRICsももはや死語になっているというかここ5年内には確実に一度も耳にしたことがありません。もっともBRICs自体、2008年のリーマンショック辺りから語られることが少なくなり、それぞれが単独で議論されるようになっていった気がします。

 中でも中国はドイツ、日本を追い抜きいまや世界第二の経済大国で、少なくとも先の後輩の言う通り、00年代中盤で「もう終わり!」でなかったことは間違いありません。ただ最近色々な記事にもでているとおり、調査媒体にもよりますが中国の人件費というか給与はこの20年で約20倍も上昇しており、もはや低賃金国と呼ぶには相応しくありません。経済規模もさることながら個人レベルであってももはや発展途上国とは言えないまでに発展したものの、このところ書いているように今年、というより去年の上海ロックダウン辺りから目に見えて不況感が強まっており、俗にいう「中所得国の罠」に陥りつつあります。

 自分が中国に係わりだしたのは約10年前ですが、その頃も大分所得は上昇してはいたものの、まだ発展途上国らしい気風が強くありました。逆に、今は当時のようなアニマルスピリッツに溢れた若者は減り、起業家精神は大きく後退していると断言できます。そういうことを振り返るならば、ちょうど転換期の中国を自分はうまく観察できる時期にいたのでしょう。

 一方、「これからはインド」と後輩に言われたインドですが、ロシアやブラジル、南アフリカと比べるならばこの20年で比較的順調に成長を続けているという気がします。日本国内で報じられているかは分かりかねますが、2022年の自動車販売台数で1位は中国、2位は米国で3位はこれまでずっと日本でしたが、去年にインドが日本を追い抜いて3位に入っています。人口の差があるとはいえ、世界3位の自動車大国となるまでにインドも経済成長しており、かつて同ランクと扱われた中国とは今も差があるものの、発展潜在力でいえば20年前の予測の通りだったというべきでしょう。

 とはいえ今もインドは犯罪やカースト制による社会的差別が色濃く、経済成長における足かせは少なくない気がします。20年前の時点で私はまさにこうした社会的制約が中国に比べて圧倒的に強く、また旅行でインドを訪れた際に停電が頻発していたことなどからも、比較的に言えば中国の方がずっと成長しやすい土壌があると当時考えていました。
 もっとも、最近のインド事情について自分もあまり把握していないだけに、そのような社会的制約は以前に比べたら今はだいぶ改善しているのかもしれません。また中国と比較するならば、米国と第二の冷戦のような対立が強まる中で、中国の周辺国に対する投資や経済移転を米国がこのところ主導しているだけに、インドにその恩恵が今後降りかかる可能性も十分あるような気がします。だとした場合、インドの時代とやらはまさにこれからの10年かもしれません。

 まぁインドの時代が来るとしても、旅行で訪れた際のあまりの暑さ、ほこりっぽさ、殺伐とした風景から、たまに旅行で行くならともかくここに住んで働きたくはないなと思っただけに、仕事で赴任となると多分普通の日本人は持ちこたえられない気がします。確かに国同士が仲が悪いから中国企業の進出が弱く日系が進出する余地はあるっちゃあるんですが。

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