確か99年の月刊アスキーの記事だったと思いますが、秋葉原が今のようなオタクの街に変わっていったことについてある記者が、
「それまでは大人のホビー街という雰囲気の秋葉原であったが、大体96年頃の新世紀エヴァンゲリオンのヒットからこのようなオタクとアニメの街へと変わっていった」
と記述していました。
この意見に対して私も同意見で、元々秋葉原は転身の早い街で戦後は問屋街だったのがアマチュア無線ブームの頃に電気街となり、その後エヴァのブーム以降からアニメ、マンガ、ゲームの三大柱を掲げるようになって現在のようなオタクの街へと変貌を遂げています。言うなれば今の秋葉原があるのはエヴァのおかげなのかもしれません。そう考えると、アニメが街を動かしたってことになるのか。
それでもはや語るまでもないほど有名なこのアニメ作品の「新世紀エヴァンゲリオン」はテレビ放映当時の95年は視聴率も振るわず、お世辞にも成功したとは言えない作品でした。しかし最終回の意味不明さが評論家の間で議論されたことから俄かに注目を浴び、再放送された96年に大ヒットしてその後97年の映画公開によって十年後の今にも続く人気を不動にしました。
それこそ当時から一体何故エヴァは成功したのかという議論が行われており、いくつかそこで出たヒットの要素を挙げると単純にキャラクターのデザインとか、世界観、シナリオなどとある中で、今思うと違うなと思う要素には当時に流行していた「癒し系」という言葉とかけて作品のテーマ性に「癒し」が込められているという意見も当時は結構強かった気がします。エヴァの中に「癒し」があるかといったら、ちょっと私にはわかりませんが。
ここまでの「失われた十年」の連載を見てきた方ならここで私が何を言いたいのかというのもわかると思いますが、要するに私はこのエヴァンゲリオンのブームは、この作品の内容が難解であったからではないかと考えています。
このくだりは「その十八、終末思想」で書いていますが、失われた十年の間は何故か「よくわからない」ものほど流行し、作品もヒットしています。確かにこのエヴァンゲリオンはキャラデザから演出効果などでも当時としては画期的に優れた作品ではありましたが、やっぱり大ヒットの最大功労者となると「難解なストーリー」にあったのではないかと思います。
またこの作品の大ヒットは他の作品にも広く影響を与え、前にも書きましたが当時はメンヘラ(自己があまり確立されていないよう)なキャラクターがいろんな作品で量産されていき、そうやってメンヘラなキャラが流行したことによりこれまた私の私見ですが、どうもその後からなにかと刹那的な生き方というものが実社会でももてはやされるようになった気がします。具体的な現象名を挙げると女子高生の援助交際がゴールデンのテレビ番組でも大きく平然と取り上げられるなど、今から考えると随分と滅茶苦茶な時代が展開されていました。なお女子高生の援助交際について私は結構前からあって多分今も全くないということはないでしょうが、少なくとも表立ってあれだけ話題に出来たのは90年代後半から2000年初頭の間だけだった気がします。
とまぁそういうことでエヴァンゲリオンのブームがが社会心理に与えた影響というのは以上までですが、折角なのでエヴァがアニメ業界へ与えた影響についても列記すると、まずアニメ業界の販売業態がこの時期に大きく変わりました。それまではアニメの放送と共に関連する玩具の販売で生計を立てていたアニメ業界ですが、エヴァンゲリオンでは作品内容を納めたビデオの販売が大きな収入源となり、以後のアニメ作品でもそれまでの玩具からビデオ販売をメインの収入源へと変更していきました。凄いのになると、最終回は放送せずに見たければビデオを買えという詐欺のような作品も前にありましたね。
またこのブームと同時期の97年に放送された「剣風伝奇ベルセルク」が深夜時間枠の放送をすることによって、当初懸念されていた放送に当たる残酷描写の問題をパスしたことによりそれ以後深夜時間枠に主だったアニメ作品が放送されるようになりました。
この二つの変動によって何が大きく影響されたかというと、アニメ作品の対象年齢です。それまでは玩具販売がメインであったために小学生くらいの子供が主な対象であったアニメ作品は玩具より比較的高額なビデオの販売を収入源とすることによって対象年齢は上乗せされ、現在に至っては中高生、というよりもう成人を相手に商売やっているようなもんです。まぁちゃんと小学生対象のアニメもワンピースなどを中心に行われているので、むしろ成人対象のアニメも作られるようになったと言うべきでしょうか。
ただこうした対象年齢の変動にはもちろん先ほどのエヴァとベルセルクの影響も大きいのですが、それ以上に少子化という現実こそが主原因でしょう。少子化によって対象の小学生が減ることにより収入が減り、新たに成人を対象に商売をするようになったのがアニメ業界の実情でしょう。
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