前回の記事からの続きで、またもインドでの旅行中の話です。
さて前回ではインドに到着すると次の日には首都デリーを観光し、そのまま夜行列車に乗ってベナレスへと向かう辺りまで書きました。ベナレスというのは現地の発音では「バラーナスィー」とも「バーラナスィー」などといろいろと呼び方がありますが、日本語でのベナレスという地名はあまりメジャーではありませんでした。それでこのベナレスには何があるかですが実はここがインドを代表するガンジス川の中で最もポピュラーな沐浴地で、インド観光においてはタージマハールのあるアグラと並んで人気のスポットです。
そんなベナレスに早朝に到着した私と友人のK君、そして同じツアーの従兄弟同士の二人の女性とで滞在するホテルに荷物を置くと、前日からの約束どおりにみんなで揃って観光へと繰り出していきました。
ホテルを出るとひとまずはガンジス川に行こうとタクシーを取ろうとしたのですが、ここでちょっと解説をしておくとインドのポピュラーな乗り物は三輪バイクこと「リクシャー」という乗り物で、これは音からも想像しやすいように日本の人力車から発展した乗り物です。何でも明治に日本を訪れた日本人がインドでもやり始め、それがそのままエンジンを乗っけてタクシー化したようで、インド中のどこの街でもけたたましく走っています。
そんなわけでデリーでは四輪の普通自動車タクシーしか乗ってなかったのでここではリクシャーに乗ろうと手を挙げてみるのですが、あっという間もないほどの一瞬でたちまち三台ものリクシャーが私たちを取り囲み、やいのやいのと客である私たちの奪い合いを始めました。これは日本からすると想像しづらいのですがインドではごくごく当たり前の光景で、物売りなども観光客を見つけるとすぐに道をふさいでは売り込みをかけたりと非常にインド人はアグレッシブかつパワフルな人ばかりです。中国でも、ここまでは凄くなかった。
話は戻りますが、リクシャーの運転手たちは自分らで勝手に言い合いを続けていてなかなか埒が明かないので、痺れを切らした女の子の一人が「シャラップ!」と言って一発で黙らしてくれました。なんでもアメリカに留学した経験のある子で、英語がほぼどこでも通じるインドでの交渉事はこの後全部彼女にお願いしていました。ひとまずこちらが納得する料金で乗れればいいと皆で相談し、四人全員で……確か40ルピーだったっけなぁ、ともかくかなり値切った値段と条件をこちらから出したところ、一人の若い兄ちゃんの運転手がすぐ前に出てきたのでそのまま彼に任せることにしました。
そこで早速リクシャーの初乗りと運んだのですが、所詮はオート三輪というか、後部座席に三人が乗るともはや空いたスペースがなくて残った私はどこに乗るんだと聞くと、運転手は自分の隣を指差し、なんと本来一人分の運転座席に無理やり二人で座って、合計五人を乗っけた状態で景気よく運転手はバイクを走らせ出しました。正直に言って乗った当初は非常に恐く、しかもガンジス川周辺は古い路地が続いていて走っている間ずっと壁が目の前に迫ってきたり、野良犬が道を塞いで寝ていたりしていたのですが、運転手はそれこそ神業のドライバーのようにすいすいと障害物をよけては、あっという間にガンジス川にまで運んでくれました。
そうしてガンジス川を眺めていたら昼時に差し掛かり、運転手にこのままどこか知っているレストランに運んでくれるように交渉してとあるホテルのレストランへとそのまま向かいました。レストランへと向かう途中、最初はあれだったがきちんと仕事をしてくれるので運転手の彼にも昼食をおごろうかと皆で相談もしましたが、向こうではこうして客をレストランに連れて行くと運転手もレストランからマージンがもらえるので、彼ももらう取り分があるのだから今回は見送ろうという結論にしました。
連れて行ってもらったレストランはきちんとしたところで、別にここに限るわけじゃありませんがインドなのでもちろんカレーを食べました。なお向こうのカレーは日本で言えば激辛に分類される味が通常で、おいしいのですがたくさん食べられないというのがもったいないところでした。あとこの時は女性のいる手前、ちょっと見得はって自分が全員分の食事代を払っています。
そこまで観光してその日はもうホテルにまでまたその運転手に運んでもらったのですが、確かにいい仕事をしてもらったのですが当初の交渉どおりに結局40ルピーしか払わず、運転手も心なしか残念そうでしたが特に文句は言い返してきませんでしたので、なおさら悪いなぁという気がしました。
その日はその後、移動の疲れもあってK君と一緒に部屋の中(相部屋)で昼寝し、夜はガイドのスレーシュさんと一緒にホテルの近くにあるレストランでまたカレーを食べて寝ました。ただ就寝する前に一緒の女性たちと明日も一緒に、今度はお土産屋を中心に周ろうと約束してから部屋に戻りました
そして翌朝、この日も一日ベナレスに滞在予定だったので当初の約束どおりにホテルのロビーに皆で集まると、既にそこには前日のリクシャーの運転手が待っていました。本当は前編、中編、後編の三話で終えるつもりでしたが、まだなんかしばらく続きそうです。というわけで、続きはまた次回に。
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