2009年6月9日火曜日

プライドの売り方、買い方

 昨日の記事で私は、信長は家中に茶道をわざと流行らせることで茶器や茶碗といった茶道用具を信長から下賜されることを名誉に思わせるように家臣に仕向け、そうすることで恩賞に与える土地を節約したのではと解説しました。もっとも、佐久間信盛みたいにあまりにお茶にハマりすぎて逆に信長に追放されたのもいましたけど。

 ここで話を現代に戻しますが、信長の茶道への扱いほどではないにしろ私はこのような報酬のやり方というか、従業員に対して金銭的な報酬の代わりにいわばプライドを売ることで彼らを掌握する経営方法は現代でも応用が利くのではないかと思います。また従業員、というよりある程度生活の安定した現代の日本人の側としても、逆にそうしたプライドという報酬を得るために働いている比重が増えてきているではないかという気もします。
 このような例の代表格は言うまでもなくボランティア活動で、この行為は無報酬での勤労だからこそ従業員(この場合、ボランティア活動者)は納得をして、またそれなりに満足感を得られるのだと思います。仮にそのボランティア活動と同じ仕事をものすごい安い時間給でやらされるかたと比較検証をすると、仕事内容に対しての満足度が段違いに変わってくると思いますし、フェスティンガーの認知的不協和の実験でもそうと取れる結果を出しています。

 単純に言い換えるのなら、別に今に限らず昔も今も人間が働くのは金銭的な報酬のためだけでなく、自らのプライドこと自尊心を得るがために働いていたと思います。前にも一回引用しましたが、イギリスの労働党支持者のある男性がなぜ労働党を応援するのかというと、

「社会主義が間違っているのは間違いないが、人間は労働を通して初めて自尊心を得て人生を充実させることが出来る。労働党はイデオロギーはともかく労働を第一に考えてくれるから俺は投票するのだ」(昔の文芸春秋の塩野七生氏のコラムより)

 といっており、私としてもこの男性の意見に同感で、普段あまりお金を使わない性格というのもありますが自分が働いているのは金銭的なものより働いて世に貢献しているという実感を得たいがためという比重が大きいです。また私に限らず友人らも、給料は多少下がってもいいからもっとやりがいのある仕事をしたい、とほぼ皆で口を揃えて私を含めてぼやいています。
 さらにもう一つ引用を入れとくと、大体失われた十年が終わって就職状況が少しずつ良くなって来た頃に学生らに就職先を選ぶポイントは何かというアンケートをとると、大体ほとんどの調査で「やりがいのある(やりたい)仕事ができること」が上位に来ており、失われた十年期の「企業の安定性」を上回っておりました。今はさすがにどうなっているかはわかりませんが。

 このように、マズローの段階欲求説を引っ張ってくるまでもなく日本人の生活がある程度裕福になっているというのが主要因だとは思いますが、私は現代の日本の若者は金銭的な報酬よりプライド的な報酬を求めている割合が高いのではないかと思います。だとしたら私は日本の企業は現代の若者に対して仕事でやりがいを与える、もしくはそれを認識させることで彼らにそれほど高い給料を与えなくともてなづけられる可能性があるということになりますし、優秀な人材も集められるのではないかと思います。
 無い袖は振れなくて当たり前なのですから、経営者たちもそんな中でどのようにして従業員のやる気を引き出し、またやりがいを実感させるような環境にするかを不況の今だからこそ考えるべきでしょう。

  追伸
 今に始まったわけじゃないですが、最近アニメーターの薄給激務がよく話題になってくるようになってきました。前に読んだ記事によると手塚治虫氏が始めた虫プロの創成期は今以上のものだったらしく、残業も一月で300時間は下らなくて当たり前だったそうです。そんな厳しい世界でありながらまだこの業界が続いているのはやっぱり今日ここで語った、従業員がプライドを感じられる業界だからだと思います。もちろん本人が納得しているのだからアニメーターは今のままの待遇でいいなんて言うつもりはありませんが、せめてこのようなやりがいを他の業界でも感じられるような世の中にしてみたいものです。フリーコストでみんなで明るくなれるんだったらさ。

1 件のコメント:

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

    返信削除

コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。