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2013年6月18日火曜日

ブラック企業が当たり前に存在する世の中

 なかなか面白い記事を本日見つけたのと、前からブラック企業ネタで一本書こうと準備していたので今日はこのテーマを取り上げます。
 もはや日本語において一般名詞化したと過言ではない「ブラック企業」という言葉ですが、このところは普及を通り越して過剰なまでに一般化し過ぎではないかと少し懸念を覚えております。敢えてこまっしゃくれた言い方しましたが言い直すと、今の日本ではさもブラック企業が存在するのが当たり前のようになってきているように感じます。

「ブラック企業」の台頭とうつ病(西多昌規)

 そんな風に感じていた矢先に見つけたのがこの記事なのですが、記事中にMy News Japanの記事が引用されており、折角だから(越前康介がわかる人も少ないだろうな)私も引用すると、下記のような衝撃的な内容が書かれてあります。
 就職人気企業225社のうち60.8%にあたる137社が、国の過労死基準を超える時間外労働を命じることができる労使協定を締結していることが、労働局に対する文書開示請求によって明らかとなった。1年間で見た場合の時間外労働時間ワースト1は、大日本印刷(1920時間)、2位が任天堂(1600時間)、3位がソニーとニコン(1500時間)だった。労使一体となって社員を死ぬまで働かせる仕組みが、大半の企業でまかりとおっていることが改めてはっきりした。人気企業の時間外労働の上限が網羅的に明らかになったのは今回がはじめて。
なかなかに衝撃的な内容で私以外にも引用している方がたくさんいるのですが、確かにいい仕事をしております。このMy News Japanの記事を引用した上で西多氏は日本人の働き方、また過剰なまでにサービスを強要すれば回り回って自分に返ってくることについて重要な提言をしているのですがそれは今回置いといて、私の主張を一本に絞って展開します。今日ここで私が言いたいのはただ一つ、労働法によって労働時間の上限が規定されているにもかかわらず、日本全国それを破る企業がいるどころではなくもはや誰も守っていない状況にあり、しかもその状況を当の日本人自身が当たり前に受け取っていることはもはや危機的状況なのではないのかということです。

 あらかじめ書いておくと私自身は労働時間をピッタリ守って仕事が回っていけると信じるほど理想主義ではなく、多かれ少なかれ残業は必然的に生まれると思います。ただその必然的に生まれる残業に対して企業側が支払うべき賃金を支払わず、あまつさえ出社規定時刻の30分前には出社するよう社員に求める会社というのはやはりおかしく、さらにというか見ていて呆れるのですが、そういう会社に限ってタイムカードを押すよう強制していて、「何のためにこれ存在するの?」と大声で突っ込みたくなってきます。
 そしてこのような企業が世の中に大半ある中で、本来監督するべき立場の労働基準監督署が何も動かないというのは、もはや法律はあってないも同然の世の中です。それこそ石を投げれば違反企業に当たるほど多いというのに摘発されたという話はとんと聞いたことがなく、むしろ逆に「残業のない会社なんてあるわけない」、「社会人になったら少なくないサービス残業を我慢しなければ駄目だ」といった、現状を肯定するような意見ばかりよく聞こえます。

 少し抽象的な話をしますが、貨幣というのは信用があって初めて成り立つというのは経済学の基本です。法律学ではどうかはわかりませんが私が思うに基本は一緒で、法律というのはそれが守られるという信用があって初めて成り立つ概念だと考えており、言うなれば「信なくば立たず」です。
 中国の戦国時代にいた法家の先祖といってもいい商鞅などはこれを実践しており、法律を国内に広めるに当たってまず最初に、「この木の棒を向こうまで持っていったら賞金を与える」というお触れを出し、実際に運んだ男に約束通りの賞金を与えることによってお上の出す法律は確実に守られるという概念を植え込んだと言われております。つまり仮に法律があってもそれを守る人が少なければ、赤信号をみんなで渡るかのようにその法律は有名無実化していってしまうということです。

 現在の日本の労働法などはまさにそのような有名無実化の一途を辿っており、「守らないのが当たり前」、「守る奴の方が馬鹿だ」と言わんばかりの状況です。もうこんな状況で労働基準監督署も正す気がないなら労働法自体を廃止したらどうだと内心思うのですが、仮にそうやったら優秀な外国人人材は日本を去り、日本人からも頭脳流出が起こる気がします。そしてなによりも今以上にブラック企業が勢いづくことによって精神疾患などで体調を崩す人間が増え、社会負担もどんどん増していっていくというのがオチじゃないかと思います。

 ブラック企業の弊害についてはこれまでも散々主張してきたので細かくは書きませんが、ブラック企業経営者は雇用を作っていると主張するものの、彼らがいなければもっと大きな雇用が生まれる可能性もあり、また過重労働から解放されて娯楽時間が増えることによって消費拡大も期待できることからその存在は百害あって一利なしだと私は断じます。なので一応は労働時間を縛る労働法があるものの全く機能していないので、この際だからブラック企業を規制する新たな法律を作ってみるのも手かもしれません。
 ただこのブラック企業についてこのところよく思うのは冒頭にも書いたように、いつの間にか存在すること自体をみんな当たり前のように思ってきていて、そうした企業への批判が異常に緩くなっていることです。そしてこうした空気の中で、まだ恥を感じることが出来るなら救いがあるものの、むしろブラックで何が悪いと堂々と居直るようなブラック企業経営者も出てきているというのが日本の変な所だと強く感じます。

 そんな居直るような会社ってどこなのかですが、言ってしまえばワタミです。そういうわけで次回はみんな楽しい陽月秘話流のワタミ特集です。我ながら、いやらしい書き方をしてくるなぁ。

2013年6月16日日曜日

大卒内定率データは正しいのか

 コメント欄でちょこっと聞かれたのと前から興味があったので、日本の大卒内定率について思うことを書いて行こうと思います。

平成24年度「大学等卒業者の就職状況調査」(平成25年4月1日現在)(厚生労働省)

 まず現状で最新となる2013月卒の学生の内定率データですが厚生労働省によると前年同期比0.3ポイント増の93.9%だったそうですこの数値から言えば、大学生100人中94人が内定を取得していたという計算になるのですが、果たして額面通りに受け取っていいものか疑問に感じます。というのもそんなに内定率が高ければ就職状況は非常にいいと言ってもいい状況だというのに、報道を見る限りだと今年も例年通り、学生は内定取得に苦労しており卒業間際になっても進路の決まっていない学生が多いように見えます。

「内定率」カラクリ 実際は60~70%? 留年組は「就職希望者」に含まれず ブランド校もずらり(産経新聞)

 そんな私の疑問に答えてくれるかのように、「内定塾」の創業者である宮川洋氏は上記リンク先の記事を書いてくれております。この記事によると、厚生労働省が発表している内定率調査は偏差値の高い大学の学生しか対象としておらず、言うなれば実態を反映した数字ではないそうです。では実際の内定率はどの程度かというと見出しにも書かれている通り、60~70%くらいが実態ではないかと予想しております。
 あくまで私の肌感覚ではありますが、宮川氏の言う通りに半数にあたる50%よりやや多い、60%くらいが適当な数字だと私も思います。ただそれにしたって厚生労働省の統計発表とは隔たりがあるようなという気もするのですが、改めて厚生労働省のレポートを仔細に見てみると確かに妙な記述が目に入ります。

 一番気になるというか諸悪の根源に当たる調査対象の項目ですが、そのまま引用すると下記の通りです。

「調査対象は、全国の大学、短期大学、高等専門学校、専修学校の中から、設置者や地域などを考慮して抽出した112校、6,250人です」

「調査校112校の内訳は、国立大学21校、公立大学3校、私立大学20校、高等専門学校10校、専修学校20校。調査対象人員6,250人の内訳は、大学、短期大学、高等専門学校併せて5,690人、専修学校560人」

 この説明でおかしなところは、調査対象校を「無作為抽出(ランダムサンプリング)」で選んだとは書いていない点です。はっきり言いますが(はっきり言わないことの方が珍しいブログではありますが)このような統計調査ではランダムサンプリングで調査対象校を選ぶのが当然で、仮に地域を考慮するのであれば人口比から換算して九州は10校、関東は50校と学生数に比例して調査対象校の数を決め、その上で各地域ごとにランダムに対象校を選ぶ層化抽出法を取るのが自然です。しかしそういった調査手法を取っているとは全く書いておらず、やはり宮川氏の言う通りに恣意的に内定率が高く出る学校を選んでいるのではないかという気がしてなりません。

 その上でこちらは決定的に数字がおかしい点ですが、調査対象校の区分内訳として「国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校」という数字を出しておりますが、ナレッジステーションのデータによると日本の大学数は783校で、区分内訳は、

  国立:公立:私立=86:92:605(実数)

 となっており、1の位を切って大まかな比率を求めると「8:9:60」という計算になります。この数字に対して厚生労働省の調査対象校の数は「21:3:20」(実数ベース)という具合に、実数的には7倍超も開きのある国立大学と私立大学がほぼ同数という奇妙な選ばれ方がされています。いうまでもなく国立大学は一般的に私立大学より高く評価されやすい面があるため、同じ偏差値でも国立出身の学生の方が内定率は高くなると予想されます。

 もうここまで来たら厚生労働省は確信犯的に内定率を高く見せるためにデータを弄っていると言わざるを得ません。どうも日本や中国といったアジア人というのは何かと統計データに感情をこめたがる傾向があり、実態を正しく理解するための統計数字を歪ませることが多いのですが、こんなことやって誰が得するのか非常に疑問です。というか、この調査を主導した責任者は明らかに能力に問題があるのだから早めにクビを切るべきでしょう。

 最後にもう一つ参考になるデータとして、下記の記事を紹介しておきます。

新卒ニート3万人は本当か、内定率改善も依然厳しい就職戦線(日経BP)

 こちらの記事は2012年10月に出されたやや古い記事ですが2012年3月卒の大卒就職率について、厚生労働省はは93.6%と発表したのに対し文部科学省は63.9%と発表したと報じております。この数字の開きは厚生労働省は就職希望者を母数にしているのに対して文部科学省は卒業者数を母数にしているためだとしていますが、それにしたって開きすぎもいい所ではという気がします。
 その上で文部科学省の調査では、

「(文部科学省の)学校基本調査によれば大学を今春卒業した約56万人のうち、進学も就職もしていない人が8万6000人(15.5%)を占める。そのうち5万3000人は進学準備や求職活動を行なっており、残りの3万3000人余りが分類では『その他』となっている」

 と書かれているようで、「その他」というのはニートに当たるのではと日経BPは書いております。この辺りの方が社会実態をよく表しているのではないかと私自身思います。それにしても今日の記事は引用ばかりであまり気分良くないな。

2013年6月15日土曜日

気象庁に物申す(#゚Д゚) プンスコ!

 今日、午前に出ていた関東地方の天気予報では昼過ぎから激しい雨になるとのことだったので、朝4時半まで漫画喫茶でマンガ読んでたこともあり、当初のサイクリング計画を捨てて午後の1時から4時まで昼寝していましたが、その間の関東地方はやや雲がありつつも晴れ渡っていました。ちなみ雨はその後も降らず、ついさっきの11時くらいからようやく降ってきましたがしとしとぴっちゃん程度で、とても「激しい」なんていう表現は使えない程度です。
 それにしても、昼日中の時間帯を全部昼寝に使ってしまったというのはさすがにもったいない気がしてならないな。寝ていた自分が悪いのだが。

 天気予報なんてものはあくまで予想なのではずれたからと言っていちいち目くじら立てるべきではないと思うのですが、このところというか近年の気象庁発表はいくらなんでも大はずれし過ぎだと密かに、このブログに書いてる時点で密かじゃないですがとにかく思います。今冬は記憶にも新しいとかと思いますが「雪は降らない」といったその日が記録的大雪になったかと思えば逆に、「激しく雪が降るから早や前の出発を」と言ったその日は全然降らず、フェイクに騙されたJRが間引き運転をして通勤が混乱した日もありました。

 極めつけは長期予報です。今年は「例年よりかなり早い」と言って5月に梅雨入り宣言してから、今週に入るまでほぼ全く雨が降らず、全国的な水不足な状態になっているという始末です。気象庁も梅雨入りの時期を修正するかもとか言っていますが、修正以前に「間違ってました」と一言入れたらどうかという気がします。
 また今年に限らなくても、このところの長期予報はちょっとひどすぎます。毎年夏も冬も「例年並み」としか言わず、例年より暑いか寒いかについて言及を避けようとする傾向が見られます。実際に今冬は平均気温がその「例年」より低かったそうで、見事に予想を外してくれたようです。

 以前にも一回書いておりますが、天気予報というのは外出をするかどうかを決めるに当たって大きな指標になるため、飲食店関係者にとっては売り上げを左右する大きな要素です。前に寄った和食屋のおばさんも、「雨が降ってお客さんが減るならまだしも、晴れなのに雨だと予報が出てお客さんが出るのはどうにもかなわないねぇ」と言っており、毎回当てろとは言いませんが、無用な悲劇を生まないためにも気象庁はもっと奮起してもらいたいです。

  おまけ
 昨晩は夜12時から朝4時半まで漫画喫茶で適当に漫画読んでました。帰りしな、道のあちこちで猫が集会開いてました。

  おまけ2
 昨日はセリフが多くて読むのに時間がかかる「銀魂」ばかり読んでましたが、ちょうど読んだ回が天気予報を外し続ける結野アナを助ける回でした。にしてもこの漫画、よくもまぁあれだけ下ネタを展開し続けられるなぁ。

留学生を増やすべきなのか

 本日は一家言ある内容なので、二日連続で休んだ後もあるため気合入れて記事を書いていこうかと思います以前からも感じておりますが楽を狙って簡単なテーマの記事を書くよりも少々重厚で解説のし甲斐のあるネタの方がこっちも書いてて楽しいし読んでる側も面白いと感じてもらえるのではと思います

首相「留学生増加に努力」 有識者会議の提言受け(日経新聞)

 安倍首相政府はこのところ第三の矢こと経済成長戦略方針を矢継ぎ早に発表しておりますがその中の一つに上記リンク先に挙げた海外渡航する日本人留学生増やすという案がありますこの案について安倍首相は以前に海外留学を希望する学生が全員留学できるように、奨学金などの制度を整備していく」とも発言しており、例のグローバルな人材を増やしていくことが大きな目標だと語っております。
 結論から述べると、恐らくというかこんな意見を言うのは間違いなく自分だけでしょうが、私はこの留学生を増やしていく方針に反対で、こんなものに税金を使うべきじゃないという立場を取ります。

 まず誤解してもらいたくないので先に言っておくと、海外に留学するのはその人自身の長い人生で見て非常に価値ある行為だと考えており、行けるものならもちろん行くべきだと考えております。私自身も中国の北京市に一年間行ってきてその辺はこのブログの「北京留学記」のラベル記事にまとめてありますが、日本国内では得られない視野や経験が得られたことはもとより、現地人やその他の国の学生と交流できたことは今でも大きな財産となっております。
 にも関わらず何故留学生を増やすべきではないという立場を取るのかというとこれは単純明快で、日本国内にそうやって海外留学で実力と経験を培ってきた人材に対する受け入れ先がない。言い換えるなら彼らを活用する企業、果てには仕事がないために折角の人材を無駄に食い潰している現状があるからです。

 私がこのような主張を展開するのも、私自身の体験から来るものが大きいです。私自身も中国への留学を果たしたものの、こんなブログを毎日書くような資質による影響のが大きいでしょうが、新卒採用では中国語や留学体験を生かせるような職場にはとうとう巡り合うことが出来ませんでした。このことだけが原因ではありませんが、今でも恩は感じていますが拾ってもらった会社を離れて単身で中国に渡り、現地採用の職を引き当てるに至って初めて留学経験を活用できた次第です。
 そしてこれはちょうど二年前の話になりますが、上海でたまたま再会できた留学時代の友人が、「あの時に一緒に留学していた日本人仲間はみんな中国とは全然関係ない仕事に就いていて、仕事で中国語を使っているのは俺と花園君くらいだ」と教えてくれました。その友人によると、自分と彼を除いた留学仲間の中で中国で働いている人間はもう一人いるそうですが、その人は韓国のゲーム会社(確かハンゲーム)の中国法人で現地採用で働いているそうです。もう国籍的になにがなんやら。

 このように留学を果たしたところでその留学経験を活かせる職場は日本だと限られており、極端な言い方すると9割方の人間は関係ない仕事を選ばざるを得ないと思います。私もそうですが、恐らく留学経験者としてはやっぱり自分の努力してきたことを生かしたいと考えるだけに関係ない仕事に就くという妥協はストレスにしかならず、当人にとっても受け入れた会社にとっても不幸な関係になりかねません。では留学体験を生かせる職場を見つけるにはどうするかですが、これは私の実体験から言って、日本での収入の下手したら半分以下になること覚悟で現地採用で臨まざるを得ないのかもしれません。事実、私がまさにそうだったんだし。
 また、運よく新卒時で留学経験を活かせるような職場に入ったとしても必ずしも上手く行くとは限らないということも報じられています。

企業からは「使いにくい」の声も……。“エリート養成校”国際教養大学の問題点(週プレNEWS)

 ちょうどタイミングよくいい記事が出ていたので引用すると、この記事は創立から短い期間で急激に入学偏差値を上げたことで有名な(と言いつつ、今回初めて知った)、秋田県にある国際教養大学(AIU)の卒業生に関する記事です。この大学は学生に対して一年間の海外留学を義務付けているほか寮での共同生活も課すなど面白いカリキュラムがあり、その甲斐あって就職率も非常に良いと評判だそうですが、卒業生らのその後の「社会人生活」はパフォーマンスを十分に生かし切れず、順風満帆とは限らないことが書かれております。
 見出しにもある通り企業側からは「使いにくい」という声が出ているほか卒業生の側からも、

「自分のほかにも日本企業の古い体質と合わずに会社を辞めた人間は少なくないし、みんなが英語を生かせる仕事をできているわけではない」就職四年後に退職した卒業生

 というように語っており、就職において卒業生と企業間のマッチングが上手くいってないことをうかがわせる証言が載せられています。それにしても、週刊プレイボーイはいい記事というかネタを持ってくるなぁ。

日本企業に就職した各国留学生たちの不満が爆発!(ガジェット通信)

 こちらは私も以前に記事を引用してもらったガジェット通信さんの記事ですが、日本にやってきて日本企業に就職した外国人留学生らもなにやらマッチングが上手くいっていないことが書かれてあります。記事によると彼ら外国人留学生らは会社から5~10年は教育期間だと言われ補助的な作業ばかり回されているようで、それに対して留学生の側から出てきた言葉が、

「会社は5年~10年で教育と言っているが、世界の変化のスピードを知らなさ過ぎ。5年も補助的で基礎的な同じことを日本の中だけでやっていたら、30歳の頃には世界に通用しない人材になってしまう」

「せっかく言葉もいろいろ話せるし、母国も経済が急成長していて、自分たちは勝手を知っているのだから、母国の現場を任せてほしい」

「日本の現場を知ってからというが、日本の現場のやり方は自分らの国では通用しない。それに会社にも自分にも時間がないことがわかっていない」

 というような、私としても「うん、そうだね……」としか言えないような言葉ばかりです。

 既に大分長い記事となっておりますのでここらで簡単にまとめると、私から見て日本企業は語学も出来てグローバルな視野を持つ人材を生かしきれないどころか食い潰しかねないような企業風土があり、留学生の供給数を増やしたところで意味がない。それよりも日本企業の思考を転換させて彼らをうまく活用できるような風土を作るなり、こうした人材がパフォーマンスを十分に発揮できるような企業とのマッチングを進めるなどといった努力を先にするべきだと私は言いたいわけです。でなければ極端な話、留学経験のある日本人人材はみんな日本を離れて現地で就職してしまうかもしれず、何のための留学支援なのかという状況にもなりかねません。
 その上で言ってしまえばこうした供給側に対して需要側の調整を行わずに留学生支援を始めでもしたら、現在のロースクール制度による司法試験合格者や公認会計士などのように路頭に迷う人を増やすだけでしょう。なんでもって政府というのは人材に関して需要を考えずに供給ばかり増やそうとするのか気がしれません。

 最後に蛇足となりますが今まさに私自身が日本企業の国際感覚のなさ、ひいては日本の仕事に対する無意味な価値観に直面しております。またきわどいことを言いますが、日本の社会人はその業界、下手したらその会社内でしか通用しない仕事経験をやたら重要視するところがあるように見えます。言ってしまえばそんな仕事経験は業界や会社を離れたら即無価値となるので、それよりも幅広い業界で使えるような知識や経験を求めた方がいいのに、むしろそういったものほど価値がないとして否定するところがある気がします。反発を受けることで主張させてもらえば、「微に入り、細に入る」という価値観はもはや悪習で、こうした価値観を保つ限り日本企業にはグローバルな人材など育たないでしょう。
 内容濃いけど、ほんと短時間ですぐ書けたなぁ(´∀`*)ウフフ

2013年6月12日水曜日

プロ野球の統一球問題について

 当初はスルー使用かと思ったけど、こういうネタは検索に引っかかりやすいので一つ書いておくことにします。

ファンにおわび…「飛ぶボール問題」でNPB(読売新聞)

 既に選手、または球界関係者の間で「今年の統一球はやけによく飛ぶ」と言われておりこれまでのホームラン数も去年に比べ大幅に増加しておりましたが、案の定というかボールの反発力が去年に比べ大きく引き上げられていたそうです。かねてから反発力を弄ったのではないかと声が上がる中で日本野球機構(NPB)はそんな事実はないと否定していながらも、昨日になってようやく実は引き上げていたと白状し、その上で統一級を作っていたミズノに対して口外しないように口止めしていたことが明らかになりました。

 この一件に対する私の意見を述べると、つかなくてもいい嘘をついて失敗するという、馬鹿の見本のような例だと思います。統一球にしたはいいけど極端に飛ばなくなって去年までのプロ野球は極端な投高打低こと、投手が有利であるのに対して打者が不利な状況が続いており、点とってなんぼのスポーツなだけに見栄えがしない傾向もあったのでそれを見直す目的の下で堂々と反発力を引き上げると言ってれば、恐らく誰も反対はしなかっただろうし選手会らも諸手を上げて賛成したでしょう。
 にもかかわらずNPBは秘密裏に反発力を変え、しかもインタビューによると「飛ばないボール」こと去年までの統一球は今年のオープン戦まで使われていたようなのですがその理由というのも、「在庫が余っていたから」だったそうです。在庫があるかどうかで使用する球を選ぶというのも本当に呆れます。

 この問題、野球を見る側にとってはホームラン数も増えることだしそんなに影響はないのですが、仮に選手、そしてチームの側から見るとやはり大問題です。というのも去年までの飛ばないボールではホームランが出辛いため、長距離にかっとばす打者よりも確実にヒットで出塁して盗塁が出来るバッターの方が戦略上、有利な選手となりやすいわけです。恐らくどのチームもこのような考えを多少なりとも持って今年のチーム編成を行ったのでしょうから、ボールという前提からひっくり返されでもしたら非常にやり辛いでしょう。

 その上で個人名を二人挙げるとしたら、このボールの変更によって大きな影響を受けたのは横浜のブランコ選手、巨人の小笠原選手だと思います。ブランコ選手は昨オフシーズンに中日から横浜へと移籍してきましたが、元からよくホームランを打つ選手でしたが今年はさらに輪をかけて打つようになり、ボールが変わったことによってより真価を発揮し始めてきたように見えます。そのため横浜としては非常にいい補強となりましたが、中日側からすると痛い流出だったと言わざるを得ません。
 そしてもう一人が我らがガッツこと小笠原選手。去年、一昨年共に「今年の戦犯」こと高年俸の割に全然役に立たなかった選手の筆頭として挙げられるほど不振が続いておりますが、彼の不振が始まったのはまさに統一球に移ってからです。飛ばないボールになってからはホームランどころかヒットすら覚束なくなりスタメンの座も追われましたが、今年は代打としてサヨナラホームランを打つなど復調の兆しが出ており、それだけに統一球の導入によってキャリアが大きく翻弄されてしまった選手のように見えてしまいます。もちろん、統一球に対応できてれば問題はなかったのでしょうが。

 この問題でNPBの加藤コミッショナーは、ボールが変更されていたことを初めて知ったのは昨日で、もし知っていたら必ず発表していたと話しており、自身に責任はなく辞任はしないと述べています。もしそうだとしたら私も加藤コミッショナーには責任がないと思うので辞任とかはいいと思いますが、リンク先の記事にもある通りこの問題を主導した下田事務局長は責任を取って辞めるべきでしょう。こういう時はトップが責任を取るべきだという意見もあるでしょうが、さすがに独断専行で、しかも報告すらされていなかった問題でクビ取られるというのはあまりにも不合理すぎる気がします。
 それにしても、こんな責任不要論を自分が言うのも珍しいな。

2013年6月11日火曜日

中国における就職難

 久々の中国ニュースネタですが、今日は新華社を中心に有人宇宙舟「神舟10号」発射の話題がどこもトップニュースです。それは置いといて一つ気になったのは以下の記事です。

日本频换权首相商品走俏 菅直人T恤一周卖百件(法制晚報)

 書かれている内容はClubTが作る日本の首相Tシャツの話で、殊勝が頻繁に変わるもんだから種類も増え、売り上げも上々というような話です。これだけだったら「ふぅん、中国でも報じられるんだね」で終わるのですが、記事の中身をよくよく見てみると「日本の新首相、管直人の
Tシャツがバカ売れしている」と書かれています。今の日本の首相は安倍晋三なのですが記事の日付を見ると今日の日付である2013年6月11日がクレジットされており、これは如何なものかと少し調べてみたら下記の記事にぶち当たりました。

「Yes We Kan」!菅首相のTシャツが大人気(AFP)

 こちらはAFPによる2010年6月9日の記事です。恐らくですが中国語の記事はAFPの英語版記事を見て、今年の6月9日に出された記事だと勘違いした記者が中国語に翻訳したのだと思います。結果的に言えば、3年も前の古い記事を間違って翻訳してしまったというところでしょう。
 馬鹿にした風に書いていますがここだけの話、自分も全く同じ経験をしたことがあります。中国の大手企業の話だったと思いますが大規模投資のニュースがあって今日はこれを書こうと思って全文読み終えた後、やっとその記事が1年前のものだとわかって「無駄な時間を使ってしまった……」と思うことがいくらか。さすがに紙面に載せるまで誤解したことはなかったけど。

 また雑談が長くなりましたが本題に入ると、前にも一度取り上げていますが、このところ中国のニュースサイトを見ると「大卒の就活状況が悪化している」というニュースを非常に多く見かけます。一部記事を読んでみると「文系女子が最悪となっている」と書かれており、状況的には今の日本とほとんど相違がないような印象を覚えます。
 またこれは以前に自分も記事というかコラムで書いた話なのですが、中国も近年は給料は高いけどバリバリ働く外資系への就職はあまり望まず、実利が大きくのんびり働ける公務員への就職志望が高まっており、なんと卒業後も就職浪人を続けるという若者も少なくないそうです。この辺も日本と被る。

 大体2008年くらいから大学を卒業しても必ずしも納得のいく就職が出来ないなどと中国でも言われるようになっていたのですが、今年は民間企業が新卒採用を絞る傾向があり、また物価が上がっているとはいえ賃金はこれ以上増やせないという企業も多いことから学生の希望給与額と初任給額がマッチングしないとも言われております。
 これはあくまで私の推測ですが、給与額というか生活費の面で今非常に大きな問題となっているのはやはり家賃でしょう。中国では去年一年間、不動産税の導入をはじめとした政府の出した住宅販売抑制策によって住宅価格の高騰が一時抑えられたのですが、今年に入ってからはこれらの抑制策が継続されているにもかかわらず高い伸び率で高騰が続いています。そして住宅価格の高騰共に賃貸住宅の家賃も上昇し続けているとされ、都市部で就職する若者からすれば家賃代で初任給が全部すっ飛ぶような事態になりかねない状況だそうです。

 このような中国の状況を見ると、まだ日本の若者はマシなのかもなぁという気もします。少なくとも家賃に初任給の半分以上を取られることはほとんどないだろうし、ルームシェアする人もそう多くないでしょう。もっとも、仕事の充実度で言えば一応まだ市場が拡大している中国の方が感じられるかもしれませんが。

2013年6月10日月曜日

韓国の近現代史~その十五、全斗煥の台頭

 そろそろラッシュを決めてかないといけないと思っている韓国史の連載です。まだ随分と期間が空いてしまったなぁ。

 前回では独裁者であった朴正煕の死後、代わりに大統領になった崔圭夏が戒厳令を緩めるなどして民主化の機運が高まった「ソウルの春」を紹介しました。この時期の韓国は朴正煕時代は夜間外出すらも禁じられるほど統制の厳しかった時代の反動もあって自由に対する意識が高く、政権側もそれに応じるような姿勢を見せていたのですが、結果論を述べるとその希望は見事に打ち砕かれます。というのも、この後に政治の実権を握ったのは朴正煕の後輩ともいえる全斗煥による軍事政権だったからです。

 全斗煥は士官学校出身の根っからの軍人で、朴正煕が軍事クーデターを起こした際は士官学校生徒を率いて真っ先に支持に回り、朴正煕からの信頼を勝ち得て昇進していきました。天気が起こったのはいうまでもなく朴正煕の暗殺事件後で、当時は保安司令官だった全斗煥は同じ軍部の重鎮である鄭昇和陸軍参謀総長と主導権を争い対立します。
 両者の争いは派閥抗争へと発展していくのですが、全斗煥と士官学校時代に同期で後にこちらも大統領となる盧泰愚は1979年12月、電撃的に鄭昇和を朴正煕暗殺時の対応に問題があるとして逮捕し、鄭昇和の息のかかった部隊へ攻撃を仕掛けました。

 この時の一連の行動は「粛軍クーデター」と呼ばれ、韓国大統領府はおろか米軍にすら何の連絡や通達がないままソウルは内戦状態に陥ります。全斗煥は大統領府を制圧すると崔圭夏大統領など文民政治家に対して鄭昇和の逮捕を認めるよう迫り、崔圭夏も当初は抵抗しましたが、軍部に味方がおらず孤立した状況の中で最終的には要求を呑むよりほかがありませんでした。
 こうして全斗煥はライバルを追い落とし軍部の実権を完全に握り、政府に対しても半ば脅迫的に意見を言える立場を確立するに至ります。ここに至って全斗煥は自らの大統領就任も視野に入れて行動を開始し、1980年5月に金泳三や金大中といった民主派活動家の行動を大きく制限する非常戒厳令を出します。この措置に対して韓国国内では反対運動が起こったのですが、こうした動きに対して全斗煥は断固たる措置を取り、後の自身の大統領就任へとつなげるわけです。

 そういうわけで次回は、この時の政治弾圧で有名な光州事件を解説します。