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2013年7月4日木曜日

漫画レビュー「進撃の巨人」

 自分が書く漫画レビューは決まってマイナーな作品が多いのですが、たまにはアクセスアップを目指してメジャーな作品を取り上げようと今日は「進撃の巨人」について私の目線で紹介しようと思います。かなり昔にこのブログでも書いていますが、よく周りから私はその知識量をとかく評価されがちですが自分が最も他に比して鋭さを持っているのはほかならぬ観察力で、そういう意味でこういうレビューや情勢分析を書く時が鍛えに鍛えた表現力と相まって一番真価を発揮するような気がします。

進撃の巨人(Wikipedia)

 まず知らない方に向けて簡単に説明すると、この「進撃の巨人」という漫画は文句なしに今一番売れている漫画で、先月なんか今も放映中のアニメ化を受けて、全漫画の販売冊数トップテンのうち半分以上をこの漫画の単行本が占めるという驚異的なヒットを続けております。本格的に売れ始めたのは今年のアニメ化以降からですがそれ以前、というより連載開始当初から作者である諫山創氏はこれがデビュー作という新人ながらも、その有り得ないと言いたくなるようなストーリー展開とハードさが大いに話題となり通常ではあり得ない人気作でありました。

 私がこの漫画を知ったのは去年に一時帰国した際、好きな本を買ってくれるあしながおじさん的な友人から「この漫画が売れてるらしいよ」と紹介を受けたからで、早速その晩に漫画喫茶で読んでみましたが確かにすごい作品だと一読して感じました。大まかなあらすじを簡単に述べると、タイトルの通りというか人間の何倍もの大きさを持つ巨人が徘徊する世界で人類が時には食べられつつ、時には踏み潰されつつもあの手この手で駆逐しようと戦っていくという話です。このほかにも非常にさまざまな設定があるのですがストーリー解説が主題ではないのでここでは割愛させていただきます。

 まず一読した直後の私の率直な感想を述べると、「これは海外で売れる」の一言に尽きます。海外、特に日本の漫画がよく売れる欧州地域では「鋼の錬金術師」のようなダークファンタジーや近未来SFがヒットする傾向にあり、ジャンルとしてはダークファンタジーに属するであろう「進撃の巨人」もグローバル規模で売れるとまず思いました。またこの作品も「鋼の錬金術師」同様に近代くらいの西洋をイメージした世界が舞台で、東洋人は今のところヒロインのミカサ(腹筋が割れているヒロインは漫画史上初かもしれない)だけという徹底ぶりで、この点も欧州での販売に大いに貢献する設定のように感じました。

 さらにというか、ストーリー展開のハードさと意表を突く裏設定も見事なものだと太鼓判を押します。作中では先ほども書いた通りに人間が本当に紙屑のように巨人に食われる描写が描かれてあり、主要キャラも割とすぐ殺されます。そして人間を食べる巨人も描写が見事というか、これは作者も意図的に描いていると言っていますが、その表情が巨人ごとに常に同じに描かれています。笑っている巨人はずっと笑ってて、怒っているのはずっと怒ったままの表情を浮かべていて、これがなんとも不気味というか表情があるのに人間味が全くなくて巨人の迫力を大いに増させる演出だと感じられます。

 以上のような具合でなんていうかずっとべた褒めが続いていますが、私は間違いなくこの作品は2010年代(2011~2020年)における最大のヒット作になると考えています。2000年代(2001~2010年)の最大のヒット作は私の中では「鋼の錬金術師」なのですが、ジャンルも先ほども言ったように同じダークファンタジーであることから、完全にこの系譜を受け継ぎ海外市場における強力なジャパンコンテンツになると見ております。

 最後に蛇足かもしれませんが、この漫画というか作者の画力についてちょっと感じるところがあります。というのもほかのレビュアーの方もいろいろ書いているのですが、率直に言ってあまりうまい絵ではなく、特に最初の方なんか人物の描き分けがよく出来てなくて、「あれ、この人って前食われてなかったっけ?」などと私もしょっちゅう見間違えてました。あと動きのある描写もコマ割りが悪いのかいまいちイメージが出来なかったりして困らせられましたが、この点は最新刊だと大分改善されつつあります。
 ただそうやって貶しておきながらなんですが、逆に諌山氏の絵をほかの漫画家が真似して描けるのかと言ったらまず無理でしょう。諌山氏の絵は一見すると雑ではありますがそのかわりに個性がはっきりと備わっており、その溢れる個性がハードなストーリー展開とマッチしていてこの作品の成功につながっていると言い切ってもいいです。

 そんな諌山氏の絵を見て何を感じるのかというと、流行というか時代の変遷です。あくまで私個人の意見ですが、1990年代から2000年代にかけて漫画の絵は劇的にきれいになったというか、スクリーントーンをふんだんに使用してアニメの絵に近くなっていった気がします。こうした流れを作った代表的な漫画家を私目線であげると「BUSTARD!!」の萩原一至氏、「封神演義」の藤崎竜氏、「天上天下」の大暮維人氏の三人ではないかと睨んでいます(狙ったわけではないのですが三人とも絵は確かに上手いものの、ストーリー展開では風呂敷を広げ過ぎて最後に畳めなくなるのも共通している)。
 こうした絵の発達の流れを受けてやや雑な絵の漫画は排除され、逆にストーリーが悪くても萌え絵の漫画は連載が続けられたりというような傾向が各漫画雑誌で少なからず見えたのですが、今回取り上げた「進撃の巨人」を筆頭に、近年になって多少絵に難があっても個性の光る漫画が評価されるようになってきたかと思います。ほかの作品でパッと思い浮かぶのは「暗殺教室」ですが。

 最終的に何が言いたいのかというと、ここ2~3年で漫画の流行が明らかに変わってきたと感じるということです。多少個性がなくてもきらびやかな絵の漫画よりも、他の人に同じ展開を描くことは出来ないというような個性のある漫画が勢いを増してきており、これからの趨勢を決めていくのではないかと勝手に妄想する次第です。

2013年7月3日水曜日

韓国の近現代史~その十八、ラングーン事件

 ついにやってきましたラングーン事件。前にも書きましたがこの事件こそが今回の連載を始めるきっかけとなったもので、その理由というのも誰に聞いても「そんな事件知らない」という回答が返ってきたからです。年齢がやや上の世代ならわかるかもしれませんが私と同年代の人間はまず知らないでしょうし、それだけに取り上げる価値があると思い、それならば韓国の近現代史をまとめて書いてしまおうと思ったのがこの連載開始のきっかけでした。
 どうでもいいですが、「ラングーン事件」と聞いて「ブラック・ラグーン」を連想した人は多分私と趣味が合うでしょう。

ラングーン事件(Wikipedia)

 ラングーンというのはビルマ(現ミャンマーのヤンゴン)の地名です。
 事件が起きたのは1983年、当時の全斗煥韓国大統領がこの地を訪問した日でした。当時の全斗煥はソウル五輪の誘致活動を活発に行っており、この時の訪問も誘致支援をビルマに取り付ける目的があったのですが、こうした動きに対して苛立ちを覚えていたのはほかでもない北朝鮮でした。
 北朝鮮から見ればソウル五輪などもってのほかで、なおかつ韓国が活発な外交を行うことによって孤立化することを恐れたため妨害工作を準備していました。そしてその舞台となったのがこのラングーンで、多分世界的に見ても稀な第三国でのテロを実行することとなります。

 ビルマを訪れた全斗煥大統領一行は10月9日、現在も活躍されている民主活動家のアウンサン・スーチー氏の父親でありビルマ建国の父である、アウンサンを祀ったアウンサン廟への訪問を日程に入れておりました。このアウンサン廟への訪問はビルマを訪れる外国VIPにとっては定例といってもいいイベントで、それがためかえってテロの標的にされてしまったのでしょう。

 事件の経過を語ると、その日のアウンサン廟では迎え入れの準備が進められており、韓国やビルマの閣僚などは先に入って全斗煥大統領の訪問を待っておりました。そして午前十時半ごろ、全斗煥が乗っていると思われた車が廟に入ったその瞬間、廟の天井で突如爆発が起こり、韓国の外務大臣や副首相を含む21人が爆死、47人が負傷するという大惨事となりました。ただ最大の標的と言ってもいい全斗煥は到着がわずか2分ほど遅れたために難を逃れ、全斗煥が乗っていたと思われた車も韓国の駐ビルマ大使のものでした。

 事件後、ビルマ政府はすぐさまテロ実行犯の追跡に取り掛かり、捜査の過程で北朝鮮の工作員3人が犯人として浮上します。この工作員をビルマ警察はすぐに追い詰め、銃撃戦の末に1人を射殺、2人の逮捕に成功します。
 逮捕された北朝鮮の工作員のうち1人は事件の全容を自白し、事件前日にクレイモア地雷を仕掛けたことや北朝鮮当局からの指令だったことなどを明かします。北朝鮮の仕業だとわかったビルマ政府は断固たる措置を取り、それまで中立を保って韓国、北朝鮮のそれぞれの大使館設置を認めていたものの、北朝鮮大使館に対しては国外退去を命じるとともに国交も完全に断絶しました。
 なお北朝鮮側はこの事件に対し、韓国側の自作自演だと発表していました。

 この事件ではアウンサン廟がテロの舞台として使われていますが、これを敢えて日本に例えるなら、明治天皇のお墓に当たる桃山御陵を爆破するようなテロで、ビルマ政府が激怒するのも深く理解できる話です。なおかつビルマ政府が事件後に北朝鮮に対して断固たる措置を取ったことは見事な対応で、逆に未だに朝鮮総連の活動を認めている日本は何をやっているんだという気持ちにもさせられます。
 それとこの事件で真に着目すべきは、北朝鮮がなりふり構わず第三国においても韓国に対するテロ活動を実行に移してきたことです。というのもこの後に北朝鮮はあの大韓航空機爆破事件を起こしているだけでなく日本人拉致事件も起こしており、なんていうか見境のないテロ行為に手を染めていきます。そしてこの時期に金正日が実権を握りつつあったということを考えると、もうあれやこれやと考えが出てきます。

 そういうわけで次回はいよいよというか、大韓航空機爆破事件を取り上げます。

中国での戸籍異動制限の緩和方針について

中国、小規模都市・町の定住制限を全面撤廃(人民網日本語版)

 ちょっと時間が経ってしまっておりますが、非常に重要な中国ニュースなので私も取り上げておくことにします。

 まず前提の知識として、中国の戸籍制度について簡単に説明します。今現在の世界で戸籍制度がある国と言ったら私が知る限り日本と中国だけで(韓国は数年前に廃止)、日本の場合は部落出身者を区別するという要因が強いため残されていますが、中国では農民の都市への大量流入を防ぐためにこの制度が残されております。

 中国の戸籍は大きく分けて都市戸籍、農村戸籍の二種類に分かれており、都市戸籍の保有者は比較的どこでも簡単に戸籍の異動を行うことができますが、逆に農村戸籍の人間は別の農村ならともかく、都市部への異動は厳しく制限されています。もちろん都市戸籍を持たなくても都市部に住むこと自体は可能ですが、戸籍の異なる都市では様々な行政サービスが受けられなくなり、たとえば住宅購入が制限されたり、子供の公立学校への就学が認められなかったりして不自由な点がいっぱいです。
 一方、都市側の行政としてもいろいろ厄介な点が多いです。というのも個人への税金はその人の戸籍がある行政に納付されるため、税金を払っていない非戸籍者に対しても最低限の行政サービスを実行しなくてはなりません。それが100人は200人相手ならともかく、数万人ともなると行政コストは馬鹿にならなくなります。

 こうした戸籍の違いからくる行政問題の主役というのは言うまでもなく農村から都市部やってきた出稼ぎ農民、いわゆる農民工なのですが、多かったら多かったらで問題だし、かといって彼らが都市部に来なければ3K労働の労働力が足りなくなるというジレンマがあり、中国における社会問題の最たる課題と言っても差し支えないかと思います。無謀にも、これを卒論のテーマにしようとして私も失敗したことがありますが。

 ここで話を最初にリンクを結んだニュースにようやく戻ります。このニュースでは中国での内閣に当たる国家発展・改革委員会(発改委)がこのほど、都市に限って農村からの戸籍移動制限を緩和する方針を示したそうです。具体的な時期はまだ明らかにしていないながらも小規模の都市においては移動制限を完全撤廃、中規模と大規模の都市に関しても徐々に制限を緩和していくとのことで、これまでの中国の歴史から言っても画期的な発表のように私には思えます。

 中国政府としてはやはり、付加価値の低い農業からより付加価値の高い工業やサービス業への産業転換を図りたいと考えているようで、とくにサービス業の発展には都市部での消費額向上が欠かせないため今回の戸籍移動制限の緩和に踏み切る方針を出したのでしょう。もちろん北京や上海といった超大都市への戸籍異動制限は今後も続くでしょうが、地方の中小都市部への異動制限を緩和することによって大都市への一極集中を緩和させる効果も期待できるうえ、地方都市の発展につながるかと思えます。
 逆にデメリットとしては言うまでもなく食料生産で、勝手に推測するなら農業の大規模集約化も同時に進めていくかもしれません。むしろそうしないと国が持たないのだけれど。

 あともう一つ付け加えると、このブログでも何度も書いていますが去年あたりから中国政府はよく「城市化(都市化)」というスローガンを掲げています。このスローガンの言わんとするところは文字通り、地方の都市発展を推進するもので、これまで外国からの投資や輸出に頼った経済ではなく国内消費を活発化させることによって経済全体を盛り上げていこうという内容です。
 このスローガンと今回出された戸籍移動制限緩和は完全に軸が一致しており、日本みたいに言うだけ言って実行に移されないのとは異なり、きっと近いうちに具体的な政策が出されるかと思います。もっともリンクを結んだ記事にも書いてありますが、各都市がどれだけの人口流入に耐えられるか、人口の急増に行政サービスが間に合うのかという課題も残されており、今後こうした問題への対策案を注視していく必要があるでしょう。

2013年7月1日月曜日

限度額がわずか160円も、中国のクレジットカード

 ちょっと笑える中国ニュースがあったので取り上げます。

白领月薪2000多没房没车 办张信用卡额度仅10元(長江日報)

 リンク先の内容は簡単な中国語で書かれているので、中国語が読める方は是非そのまま読んでみてください。読めない方はこのまま私の文章の続きをお読みください。ちなみにニュースの見出しを翻訳すると、「月収2000元(約3万2000円)の家なし車なしのホワイトカラー、クレジットカード限度額は10元(160円)」となります。
 ニュース記事によると、民間企業に勤めるある女性が国有銀行でクレジットカードを発行したところ、クレジットの限度額は2000元程度になると聞いていたのに、いざ実際に届いてみると10元に設定されていたそうです。このあまりの限度額の低さに女性も、「これじゃ歯磨き粉2本も買えないじゃないのヽ(`Д´)ノプンプン」とコメントをしております。にしても、なんでここのたとえに歯磨き粉が出てくるんだろ。

 商業銀行の関係者によると、クレジットカードの限度額は基本的に下限が定められているわけじゃなく、銀行側によって恣意的に決められるそうです。そのため信用度の低い顧客に対しては当然低くなるわけで、場合によっては「0元」という、一体何のためのクレジットカードなのかわからなくなるギャグのような限度額設定もあるみたいです。しかもそれでいて、年会費はちゃっかり取るという鬼畜さ。

 一応の対策方法も書かれてあって、デビットカードとして買い物に毎月500元を使用していれば三ヶ月後には限度額は500元、半年後には2000元に引き上げてくれるそうです。それにしても、中国はたまにこういう有り得ない冗談みたいな話が現実に起こって報道されるから楽しい国だと思います。

2013年6月30日日曜日

韓国の近現代史~その十七、全斗煥の大衆政策

 真面目に不人気で仕方がないこの連載ですが、たとえ読む人間がいなくても最後までは貫徹しようという意気込みです。もっとも今回辺りから割と時代が近くなるので、自分も書いてて解説とかしやすくなる分、前よりは面白くなってくるんじゃないかという気がします。
 さて誰も覚えていないであろう前回では光州事件を取り上げ、全斗煥が大統領になるまでの道のりを簡単に紹介いたしました。光州事件に代表される政治弾圧によって見事大統領になった全斗煥ですが、彼は軍人出身でありながらこれまでの朴正煕とは一線を画す政策によって国内経済紙の振興、そして自身の支持率維持に努めました。

 最も代表的な政策と呼べるのが夜間外出禁止令の廃止です。朴正煕以来の韓国では一般市民の夜間外出を禁止していたのですが、全斗煥はこれを緩和して市民の自由な外出を認めます。それとともに市民の興味を政治に向かわせないために実行したとされますが、それまでほとんど認めていなかった大衆娯楽も解放しております。
 これら一連の政策は3S(スクリーン、スポーツ、セックス)政策とも呼ばれていますが、結果的には国内での消費が活況化することによって一時はGDPがマイナス成長に陥っていた韓国経済を再興させるのに影響させたのではないかと私は睨んでいます。

 こうした政策のほかにも全斗煥は、外交でも緊張融和路線を取ります。韓国の大統領としては初めて日本に公式訪問、昭和天皇との会見も行って経済支援を取り付けるだけでなく、1988年開催のソウル五輪招致にも成功しており、こうした「開かれた政策」に関してはなかなかの手腕の様に思えます。
 一方で国内の政治弾圧は一切手を緩めず、先に結末を話すと大統領職の退任後、全斗煥は一連の政治弾圧と汚職から死刑判決(後に恩赦で釈放)を受けることとなります。ただ皮肉な話というか、全斗煥に恩赦を与えたのは政敵でもあり後に同じく大統領となる金大中ですが、彼も大統領退任後に不正蓄財で捜査を受けて晩年はパッとしないところがありました。そして金大中は既に死去していますが、全斗煥はまだ存命というのもいろいろ思うところがあります。

 ちょっと早い気がしますが全斗煥に対する人物評を述べると、粛軍クーデターの際の手際といい大統領在任中の政策といい、その手腕は政治家としても軍人としてもなかなか見事なものだという印象を覚えます。韓国国内でも政治弾圧に関しては批判されるべきとされながらも評価すべき点もあるのではないかと再評価が進んでいると聞きますが、時代が時代とはいえ、政治弾圧がもしなければ名大統領として名を残せたのではないかという気がします。

 次回以降もまだしばらく全斗煥時代について書きますが、次回はいよいよというかこの連載を始めようと思うきっかけとなったラングーン事件を取り上げます。

2013年6月29日土曜日

テレビCMに対する苛立ち

 先ほど、NHKのスポーツニュースを見そびれたのでテレビ東京の「neoスポーツ」で野球の結果を見ようとしたのですが、そのCMの入れ方にあまりに腹が立ったのでここで愚痴を書こうかと思います。

 まず私がテレビの前に陣取ったのは放映開始5分前。もちろん番組が始まる前なのでこの間ずっとテレビCMが流れているのですが、それはまぁしょうがないと特に怒りを覚えることはありません。問題なのは番組開始後で、まず10時半になって番組が始まると、「今日は○○選手について徹底取材」などと短い映像と簡単な構成説明が1分程度流されて、そのすぐ後にまたCMに移りました。まぁこれくらいならどこもやってることだしと、まだ自分も我慢できます。

 とはいえさっきから延々と同じようなCM見させられて、「早く試合の結果だけ教えてくれよ」という感じて見ていたのですが、CMが終わると今度は番組司会者が「こんばんわー」って挨拶し、続いて解説者(緒方耕一氏と前園真聖氏)の紹介、そして二人が今日解説する内容を1分くらい紹介し、そのすぐ後にまたCMに移りました
 この時点で多分周りに誰もいなかったら、決して冗談ではなくテレビ画面に向かってリモコン投げつけていたことでしょう。一体どんだけCMを流すんだ、これは通販番組かと憤懣やるかたない状態でしたが一応は我慢し続けてそのまま待ちましたが、結局この番組が今日のスポーツ結果を報じ始めたのは10時38分頃、つまり番組開始から8分経ってようやく報じるという有様でした。ちなみにこの間、私は番組開始前と合わせて10分以上もCMを見させられたことになります。損だけ待ってようやく始まった番組でしたが、野球からではなくゴルフの試合結果から始まったのでそこでテレビの電源を切りました。もう絶対にneoスポーツは見ないぞ。

 あくまで個人的な違憲ですが、視聴者がCMにイライラするのはそのCM放送時間よりも、コマ切れにして出されることの方が大きいような気がします。上記のneoスポーツの様に番組はなかなか始めようとせず、1分くらい映像流した後にすぐまたCMに移す。この行為はいくらなんでも視聴者をなめたやり方じゃないかと個人的に思います。逆に10分インターバルでCM流すならまだ許せます。

 それにしても自分はこの頃本当に丸くなったと思います。若い頃だったらリモコンを投げようとするとかそういうレベルじゃなくて、こんだけ腹立ったらテレビに向かって横蹴りかフックを確実に入れていたことでしょう。血気盛んじゃなくなって良かったと思う一方、前ほど情熱的じゃなくなったことに少しさびしさを覚えます。

次回参議院選挙に対する私の見方

 先週末に都議選が終わって、日本の政界はいよいよ7月21日に行われる参議院選挙へと関心が移ってきました。かくいう私も三度の飯より政治と中国史が好きだというだけあって現時点でかなりワクワクしており、今日は思う存分に今回の選挙に対する私の見方をどがっと書いていきます。

 まず選挙結果の予測ですが、予測も何も自民・公明が勝利して大量の議席を獲得することはこの前の都議選の結果から言っても明らかで、むしろ与党がどれくらいの議席を獲得できるかが論点でしょう。前回の都議選でもそうでしたが今年に入って与野党間では何かを軸にした大きな論争は全くなく、選挙を前にした現状においても争点らしい争点は何も存在しません。強いて挙げれば憲法改正問題がありますがこれは有権者の間で関心が低く、選挙の争点としたところで野党は得るものはほとんどないでしょう。

 ではほかの分野は争点になるのか?結論から言えばNOとしか言いようがなく、経済分野では多少の批判はあるものの一定度の成功を収めているアベノミクスを批判するのは逆批判を受ける可能性が高く財界からも支持を失います。外交分野でも安倍政権は失敗らしい失敗はなく、中国や韓国とは依然と仲が悪いままですがそれは以前からだし民主党政権時代もそうでした。
 仮に野党がこれまでにこれらの分野で対案なり、独自政策案を出しているのならまだ話は違いますが今回においては、少なくとも私が見ている限りではPRしてきた対案などはなく、安倍政権がやることに対してなんか黙ってみていたような感じにしか見えません。恐らく野党としては安倍政権が何かしらミスったらそれを批判しようと待ち構えていたところ、なんとなくそのままアベノミクスとかがうまくいっちゃったことから何もしないで国会が終わってしまったってのが真相な気がします。昔話(中国伝来)の「待ちぼうけ」じゃあるまいし。

 この敵失(エラー)を待つという政治戦略ですが、皮肉な話であるもののここ数年の日本政治では有効な戦略でした。それが今回に限って何故うまくいかなかったのかというとアベノミクスが比較的成功したことはもとより、大臣を始めとする与党の有力議員が致命的な失言を犯さなかったことが大きいです。
 この点で私は自民党を今回高く評価しているのですが、以前と比べて本当に失言が減った気がします。議員自体が気を付けるようになったのか、失言をする人間を大臣にしなかったのかはわかりかねますが、実に守りの堅い陣営で臨んでいるように思え、自分が記憶する限りですと先日の高市早苗政調会長の「福島原発事故でも死亡した人間はいない」という発言以外では失言らしい失言がこの半年、全くありませんでした。あの麻生財務大臣ですら失言がないのはかえって気味が悪いが。

 このような観点から、次回の参院選では与党大勝利、野党大敗は最早確定していると言っても過言ではなく、与党が過半数を奪い返してねじれ国会も解消することは固いです。ねじれ国会が解消するのは素直に歓迎すべき事態で、あとはほかの改憲政党と合わせて三分の二の議席が取れるか、取れたら完勝ってところですが、非改選議席もあるのでこちらはそこまで簡単じゃありません。でもこのムードならいきかねないと少し思うところもあるのですが。
 ちなみに与党+改憲政党がギリギリで三分の二の議席に達しなかった場合、恐らく野党の間から離反者が出てくると思います。そしたら野党は組織が瓦解まではいかないまでもにっちもさっちもいかなくなるので、この際だから敢えて大敗してみた方が次につながるのではないかとも思います。大勝したら与党も気が緩んで失言をしたりするかもしれないんだし。

 ただそんな野党に対し、「こうすればいいのに」という案が実は一つあります。もったいぶらずに言うとそれは自民公認で立候補してくる渡邊美樹前ワタミ会長を徹底的にやり玉に挙げて批判することです。渡邊前会長については私も記事を書いて批判をしておりますが、折しもブラック企業に対する批判が社会的にも高まっているようにも感じられ、身近な話題と企業であることから有権者の感性にも訴えやすい気がします。
 ワタミは昨日発表された第二回ブラック企業大賞にも見事ノミネートされており、このような社会通念上、問題のある企業の元代表を公認する自民党の姿勢はどういうものか、法律違反を行っている企業を堂々と認めるようなものではないかといった具合に、どうせほかの論点では勝ち目がないのだからワタミ批判に絞って選挙戦を展開したらまだ得られる議席もあるんじゃないかという気がします。

 念のため補足しておきますが安倍首相と渡邊前会長は以前から昵懇の仲で、第一次安倍政権時も教育再生会議のメンバーに入っております。今回の公認も安倍首相の肝いりであることは間違いなく、それだけに野党側としては付け入る隙もあるのではないかと、具体的なことには言及せずにここらで筆を止めます。

 故水野晴郎じゃないけど、政治って本当にいいものですねぇと言いたくなる夜です( ´ー`)