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2008年6月11日水曜日

スピード社の水着解禁について

 せっかく書いたネタなので、結末も出たので感想とともに報告します。

 さて皆さんもすでに知っての通りに、昨日の夕方に水泳連盟がオリンピックで選手が使う水着について、国内メーカー三社に限定しないという事を発表しました。この発表の後、国内メーカーのミズノとかねてよりスポンサー契約を結んでいた北島選手も声明を発表し、この連盟の決断を喜ぶとともに、これまで応援してくれたとしてスポンサーのミズノにも感謝すると述べていました。

 結論から言わせてもらうと、この決断は至極当然のものだと言えます。なんせ、日本新記録がこの水着を着た選手から次々と出るわ出るわ。本来この時期はオリンピックを控えた調整の時期で、パワプロで言うなら調子が上向いていながらも、まだ本調子でない不調な時期に当たります。にもかかわらずこれだけの記録が出るなら、この水着だとオリンピックでは更なる記録の更新が望めるくらいです。

 私も当初は水着でこれほど成績が変わるのかと思いましたが、これだけの結果をつきつけられると頷くよりほかがありません。そして残念ながら、現在のところ日本のメーカーの水着はこれほどの性能を持ち合わせていないことも露呈しました。確かにこれまでスポンサーとして選手や連盟を応援してきてくれた事を考えると心苦しい気持ちもありますが、仕方のない結果だと思います。

 報道によるとこの水着問題のそもそもの発端というのは、オリンピックの水着の規定について一部の表現が変えられたことによるそうです。それまでの表現に対して、スピード社の水着のような異様な疎水性を持つ水着もあり、とも取れる表現に変わり、そこにうまくスピード社が付け込んだとのようです。逆を言えば、この表現の改定に対して国内メーカーが無頓着だったというのがここまで差をつけられてしまった要因になったと見られています。

 ただそれをおいたとしても、この騒動を総括するに当たり、私個人としてはミズノ、アシックス、デサントの三メーカーを褒めるべきだと思います。なんでもアメリカの方では未だに国内メーカーがぐずぐず文句を言っており、一向にこの水着問題が解決されていないといいます。それに比べるとまだ早いこの時期に選手の立場を考え引いてくれたというのは賞賛に値する……と、言いたいのですが、唯一の懸念というのが、以前の投稿で紹介した、山本化学工業の件です。
 まだオリンピックまで二ヶ月あります。決して時間がないと言うわけではないので、この三メーカーには努力を怠らず、山本化学工業に対してもきちんと対応して、スピード社に負けない水着を作ってくれることを陰ながら祈っております。

2008年6月10日火曜日

iPHONE参入に見る日本の携帯電話市場ついて

 なんか今日は珍しくブログに書くネタが思い浮かばないので、以前にもこの話題を書いたので今日は携帯電話について書きます。

 先日、欧米でバカ売れしているiPHONEがソフトバンクから日本でも発売されることが報じられました。このi-PHONEは去年から欧米では非常に売れ行きがよかったのですが、日本は先進国の中ではなかなか発売にこぎつくことができずにいました。私自身があまり詳しくはないのですが、なんでも日本の携帯電話の使用電波領域というのはほかの国と比べて特殊で、ただiPHONEを輸入してもすぐに使えないというのが原因らしいです。恐らく、今回ソフトバンクから発売されるのはそういった障害を克服する目処がたったからだと思います

 それでこのiPHONEですが、詳しい機能はまだ把握していないのですが、目玉はやはり日本でも普及しているiPODとの互換性のようです。このiPHONEそれ自体でiPODの変わりになるようで、それどころか通常のiPODにはない機能もあれこれ追加されているらしいです。なのでターゲットとなる販売層も、iPODユーザーとなるでしょう。

 それでこっからが私の意見となりますが、このiPHONEの投入によってなにか、この日本の携帯電話市場が大きく動く起爆剤にはならないと思います。というのも、日本の携帯電話市場はもうかなり成熟しており、また海外の一般に使われる電話機と比べ、日本の電話機はもとより高性能な機能を持っていると言われています。いまさら高機能が売りなiPHONEが来たところで、そりゃ発売日には騒がれるでしょうが、その後はそれほど大きな動きにはならないと思います。

 かといって、まったく売れないという事はないと思います。それこそ日本に駐在している外国人会社員などは買ってくだろうし、日本人でも物珍しさから買う人も出てくると思います。しかしそれ以上にこのiPHONEの売れ行きを左右するのはハードとしての機能より、マーケティング戦略によるでしょう。折も折で、あの白犬のCMでぐんぐんとシェアを奪っているソフトバンクからの発売です。ひょっとしたら思いもよらぬ広告を行い、私の予想を裏切ってiPHONE旋風を起こすかもしれません。

 それにしても、以前に書いたhttp://imogayu.blogspot.com/2008/04/ntt.htmlの記事で私はえらく挑発的なNTTドコモの、「そろそろ反撃してもいいですか ドコモ2.0」というキャッチコピーを批判しましたが、案の定というか、反撃どころかドコモはこの一年は防戦一方でした。そしたら今度また新しいコピーができたら「アンサー23」とか、またよくわからないコピーを打ってきました。過度に狙わなくともいいから、もう少しまともなコピーを考える事ができないのでしょうかね。そろそろ私も、ソフトバンクに変えようかな。

2008年6月9日月曜日

日本人のコミュニケーション力とは

 どうでもいいですが今日、初めて溶接というものにチャレンジしてみました。思っていた以上に難しく、溶接工がこのところ日本で不足し始めているという話を聞いて、うなずける話だと納得しました。

 そんなわけで今日のネタですが、以前に友人らと話をしている時にある一人が、
「そもそも、日本人というのは相当なコミュニケーション下手だと思う。じゃなきゃあんなに本屋にコミュニケーションに関する本なんて並んでいないと思う」
 と、言っていました。結論から言うと私もその通りだと思っており、なんだかんだとコミュニケーションを重視する発言が多いくせに、日本人と言うのは非常にコミュニケーションが下手過ぎる気がします。

 私が思うに、日本人はコミュニケーションを取る際にルールに頼りすぎているから下手なんだと思います。相手がとる言葉、態度に対して自分がどう思うかではなく、一般的な価値観に適合しているかどうかで判断する癖があるように思え、一つの例として下の二文を見てください。

 1、俺は先日、先生のお言葉を聞いて非常に感銘を受けました。
 2、私はこのまえ、先生の話を聞いてとても勉強になりました。

 恐らく、大抵の日本人は1より2の方が丁寧な表現と考えると思います。その理由と言うのも自認称が「俺」か「私」かというだけで、あとの文章はあまり考慮に入れないからです。
 ちょっと極端な例ですがこんな具合で、日本人は言っている内容よりも言い方でその表現が丁寧かどうかを判断している気がしてなりません。言っている内容では1の文章の方が先生に対する尊敬の気持ちを強くだしていますが、恐らくこの表現だと「俺」が入っているために丁寧ではないと切り捨てられるでしょう。

 何もこういった言葉尻だけでなく、頭の下げ方(角度)とか歩き方、服装などでいちいち丁寧かどうかなんて測るべきではないと思います。私などは頭を深く下げる人よりも、相手の話をじっと聞いてくれたり何かと言葉をかけてくれる人の方が好感を持ちます。

 これは先日にある掲示板で見た内容ですが、そもそも就職面接などで「コミュニケーション力」というあいまいなもので何で測られなければいけないんだ、という話が載っていました。これは私も以前から思っており、このコミュニケーション力というのは非常に定義があいまいですし、世の中にはある人には非常に馬が合うが別の人とはまったく合わないという相性もあります。たかだか十数分の面接で、どういった基準によってこのコミュニケーション力というものが測られるのかはなはだ疑問です。言ってしまえば、それはコミュニケーション力というよりは面接で言うべき言い方をしたかどうか、つまり表現の形式を守ったかどうかしか測っていないのだと思います。

 私自身、この手の面接で非常に苦労した覚えがあります。私は普段使う言葉から外れて突然その場に合わせた表現を行うというのは、二心があるようでどうにも馴染めませんでした。このほかいろいろ書きたいことがありますが、もうすこし日本人はコミュニケーションという言葉の本質について考えるべきではないでしょうか。

2008年6月8日日曜日

犯罪の伝播について

 先ほど、例の水着問題で日本のメーカーも了承したようで、スピード社製の水着も着用が許されるようになったようです。北島選手なんて今日は世界新記録を作ったようですし、これで認められなければさすがにまずいしなぁ。

 それはそうと、今日秋葉原にて通り魔事件が起こりました。犠牲者の方も数多くおり、まずはご冥福をお祈りします。
 それにしても、気のせいかもしれませんがこのところは通り魔事件がよく起こっているような気がします。三月ごろには北関東の駅にて起こりましたし、それ以外でもこのところしょっちゅう見ている気がします。また四年位前に名古屋で、「赤いフェアレディZの女」という通り名の犯人が通り魔を行った時期も、しばらく似たような事件が続きました。

 ちょっと犯罪については詳しく研究はしていないのですが、傍目に見る限りでは多少の流行り廃りがあると思います。特に、通り魔なんて耳目を引く事件のためか、一度目立つのが起こったらしばらく頻発する傾向が高いように思えます。
 犯罪ではないのですが、私が以前に個人的に研究したのは集団自殺でした。調べた当時は2004年で、当時で練炭を用いたこの集団自殺で亡くなった方の人数は百人を超えていましたが、その自殺者の人数や傾向を測っている際、いくつかの傾向を見つけたのでここで紹介します。

 1、自殺者の平均年齢が低い
 2、発生が集中する
 3、手段が同じ

 まず1ですが、一般的に自殺を行うのは高齢者の男性が大半で、50代以上の方で全体の八割を超えます。しかしこの集団自殺は確か平均年齢で28歳くらいで、一般の自殺と比べて遥かに自殺者の年齢が低い事がわかりました。これはまぁ、ネットを介して集まるという事からネットに普段から触れている若年層になりやすいとも思いますが、もう少し深く掘り下げられそうですがそこまではやっていません。

 次に2ですが、この集団自殺といわれる最初の事件は、確か2001年に起こりましたが、一般に多く知られるようになったのは2003年からです。というのもある集団自殺を大きくマスコミが報じたのがきっかけですが、やはりその時期に集団自殺の件数が集中して増加しています。しかし、それから数ヶ月もするとマスコミの報道も収まり、それに合わせるかのように件数も減少したのですが、2004年にこれまでで最も多い、一度に七人が集団自殺を行った事件が脚光を浴びると、また集中して件数が増加しました。その後はあまり調べてはいませんが、現在はコンスタントに件数は増加しているらしいです。

 そして最後の3ですが、集団自殺の手段はその時まで基本的に練炭しか使われませんでした。最近になって塩素ガスが増えてきましたが、楽な自殺の方法ならまだまだいっぱいあると思うのですが、非常に固定的な印象を覚えました。

 何も私が説明しなくとも、自殺の心理学に「ウェルテル的自殺」という概念があり、何かの衝撃的な事件をきっかけとして、見ている人も自殺を模倣するようになるというのがあるらしいです。よくあるのはアイドルの自殺をきっかけとしてのファンの後追い自殺ですが、この集団自殺にも同じにおいを感じますし、通り魔事件の頻発にもなにかしら、同じものを感じます。
 その度に思うのですが、人間というのは思っている以上に周りに影響されてしまうんだなと感じます。キリスト教では人を迷える羊にたとえていますが、あながちそのたとえに間違いはない気がします。

サマータイム導入制度について

 先日、日本睡眠学界が今検討されている「サマータイム制度」の導入に反対する声明を出しました。サマータイムというのはいちいち説明するまでもないと思いますが、日照時間が長くなる夏季などに時間を通常より一時間くらい早める制度のことを言います。たとえば、それまで九時に出勤するのが一時間早められ、同じ九時出勤ではあるが、実際には八時出勤になるといった具合です。欧米では多くの国がこの制度を導入しているのですが、この制度を導入することによって、通常よりまだ日が昇りきっていない時間から活動して通常より早く退勤できるため、冷房などの設備を現在より使わないで済むということから温暖化対策によいと宣伝されています。

 現在、環境についてあれこれ言われるようになったことから、政府はこのサマータイムの導入について検討を行っていますが、それに対して真っ向から意見したのが今回の日本睡眠学界です。彼らの言うところによると、サマータイムを導入すると日本人は睡眠サイクルが狂い、健康が悪化するなど弊害が多いという報告をしています。実際に札幌にある企業にてこの制度を導入してみたところ、大半の人間が健康を悪くして、労働効率も悪化したといいます。

 これについて私が見ている別のブログの人なんか、日本人で定時に退社する人なんてほとんどいないので、あまり意味がないのではと言っていましたがその通りだと思います。また、欧米の夏というのは地域によっては異様に空が明るい時間が長いことが多いのです。私が滞在したことのあるアメリカのワシントン州などは午後九時を過ぎてもまだ夕焼けが残っているくらいでした。こういった国と日本とでは、そういう環境がまず違うので、一概に向こうで成果を挙げているからといって真似する必要はないと思います。またこれもそのブログの人が言ってましたが、日本人というのはとにもかくにも時間に細かい性格の民族ですので、一時間もずらされたら頭がおかしくなるのではとも言ってましたが、大いにありうるでしょう。

 そんな感じで、サマータイムの導入には私は反対です。それよりもイタリアやスペインを見習って、昼の一時から二時までシエスタを導入してもらいたいです。シエスタがどんな制度かというと、要するに昼寝の時間です。中国だってあるところはあるんだし。

2008年6月7日土曜日

スピード社の水着問題

 最近時事問題の投稿が減っているので、たまにはホットな話でも書きます。

 さて昨日の水泳のジャパンオープンでは、早速スピード社の水着を着た選手が日本新記録をバンバン出して来ました。平泳ぎの北島選手に至っては、最初の予選ではミズノの水着を着てたくせに最後の決勝でスピード社の水着を着ての日本新記録です。奴め、勝負水着のつもりだったのか。
 ちなみに、水泳というのはタイム決勝という最初に泳いだタイム順に順位を決めるという試合形式以外では、最初に各組ごとに予選を行い、その予選で上位のタイムを出した者を最後に集めて決勝戦をするという形式をしています。なので、大抵の選手は二回くらいは同じ試合で泳ぎます。

 とまぁのっけから楽しい結果を残してくれて、ますます激しくなりそうなこの水着問題です。なんでも日本の水泳選手はオリンピックにて、日本水泳連盟とスポンサー契約を結んでいるミズノ、アシックス、デサント以外のメーカーの水着は着てはいけないことになっているらしいです。北島選手に至っては確か個人的にもミズノとスポンサー契約とか結んでいますし、こう考えると日本の三社が文句をあれこれ言うのもわかります。

 しかし、ここである情報を載っけます。ネタ元はYAHOOニュース(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080604-00000021-nks-spo)からですが、それによると日本の素材メーカーである「山本化学工業」がこの三社に対して、スピード社に負けない程に抵抗の少ない水着の新素材を提供を申し出たところ、二社から採用の返答があったものの、その後に二社へ選手の感想や意見を聞いても何も答えてくれないとのことらしいです。山本化学工業からすると、水着に対する選手の要望や感想を聞きたいと思っても、中小企業であるゆえか直接連絡を取る手段がなく、そこで採用した二社を通して聞いても、「情報を開示する理由はない」とむげなく断られたらしいです。

 このニュースは個人的に気になるニュースです。というのも、自分も昔は背泳ぎを専門にして水泳をしており、このスピード社の水着を着てみたいと思っている一人だからです。しかし日本企業でもこうしてスピード社に負けない(と主張している)水着素材を提供しているという会社がありながら、どうも話題の俎上に上ってこないのが不思議な気がします。しかも結局、ネタ元のニュースに書かれているように、山本化学工業はマスコミ各社にFAXにて自社の窮状を訴えるという異常な事態にまで発展しています。こうしたスポーツ材料というのはメーカーと選手の相互の連携が非常に重要だと聞きますし、山本化学工業の言っていることが事実だとすれば由々しき事態です。

 そして結論を言わせてもらうと、やはりこれだけの結果を残しているのですから水着の選択は選手に任せるべきだというのが私の意見です。確かにスポンサー企業になっている手前、日本企業の三社については可哀想だとは思いますが、やはり最大限の努力を払ってでもオリンピックというスポーツには望むべきでしょう。それをスポンサーだからという理由ではじくというのは、言い方が悪いですがお金のために努力を抑えるということになるのではないでしょうか。現状ではスピード社の水着が一番実績を上げているので、ここは水泳連盟も認めるべきだと思います。
 しかし、これはあくまで現状です。それこそ先ほどの山本化学工業の素材が実績を挙げるのなら、そっちを使えばいいだけの話です。今後はこの点に注目して推移を見守っていこうと思います。

2008年6月6日金曜日

猛将列伝 ~宮崎繁三郎~

 さっき見てみたら広告のところに、「派遣会社リサーチ」というのが貼られていました。多分、グッドウィルの記事を書いたからだと思いますが、なんかえらく皮肉っぽい広告になってますね。

 さて今日の猛将列伝、このシリーズでは私が以前に歴史上の名将を全部まとめて書いてみたいと思ったことがあり、それをこのブログでやってみようと少しずつ書いていますが、これまでと違って今回は近代戦の部隊長、旧日本陸軍の宮崎繁三郎氏を取り上げます。

 旧日本陸軍とくればこれまでにも、映画「硫黄島からの手紙」で一躍有名になった知将栗林忠道、ラバウルにて終戦まで守りきった聖将今村均、シンガポールとマレー半島にて大暴れしたマレーの虎こと山下奉文など、戦闘指揮能力については誰が最も高かったかで挙げられる人物は数多くいます。しかし、現実に誰が一番かというと、あの水木しげるをして「日本陸軍、最強の将」と言わしめた、この宮崎繁三郎を私も推します。

 この人がどんな人物かというと、言ってしまえば「無冠の将」といったところでしょうか。戦史に記録されている中でも、この人が関わった戦争で勝利した戦争は一つもありません。しかし、彼が関わった戦争というものは傍目にも、異常な環境にあるものばかりです。
 まず挙げられるのが「ノモンハン事件」。これは満州とソ連の国境争いが元に起こった紛争ですが、基本的に戦争で部隊とは半数でも死傷者がでれば大損害なのですが、この戦いでは日本軍は確か一個師団がほぼ全滅になるくらいコテンパンにやられたと言われています。そんな中、局地戦ながら唯一勝利した部隊というのがこの宮崎繁三郎氏の部隊で、しかもこの人は戦闘に勝利して高地を奪い取るや、その場所に自らの部隊名と奪取した日付を書いた石碑を埋め、戦後の国境画定の際に石碑を掘り出し、その高地は日本軍が勝ち取った場所だということを証明して日本側に有利に国境を広げています。この行為にはソ連軍も驚嘆したそうです。

 そして彼が関わったもう一つの戦争というのが、あの悪名高き「インパール作戦」です。これはインドの独立活動家に東条英機が泣きつかれ、無計画にインドを攻めるために行われた作戦です。この戦争では全体で八万の兵士が出征し、七万人以上が帰って来なかったというほど凄惨を極めた作戦で、しかもその死亡原因の大半は餓死によるものだという、補給線を無視した最低の作戦と今でも語り草とされています。因みに以前に読んだ記事によると、栄養不足による病死を含めた広義の餓死が、旧日本陸軍の兵士死亡原因の七割にも及ぶそうです。本当に、馬鹿な戦争をやったと思います。

 さてそんなインパール作戦ですが、最初から無茶な作戦であるにもかかわらずこの宮崎氏の部隊は連戦連勝。しかも、足りない食料などの補給を敵から奪い取りながら進み、現地で略奪行為はほとんど行わなかったというくらいですから神懸り的です。そうして奪った奥地の拠点のコヒマにて補給を待ちますが、そんなものとても運べるような計画ではなく、いつしか英米軍に包囲されてしまいました。そんな絶対不利な状況にもかかわらず、一ヶ月以上持ちこたえたというのですから大したものです。また、その後の撤退戦でも見事な奮戦振りを見せ、見事部下とともに帰還を果たしています。

 しかし、彼を「最強の将」と呼ばしめるのは、このような絶対不利な状況でも持ちこたえる彼の指揮能力だけが理由ではないと思います。というのも、彼はどんな状況下でも部下を見捨てず、自ら負傷兵を担架に担いで撤退を行うほどだったようです。また部下達も宮崎氏のことを戦後も賞賛し、また戦闘でも彼の命令を忠実に守ってお互いに負傷兵をかばいあったというほどですから、その名将ぶりが伺えます。

 そんな宮崎氏ですが、晩年には何度もうわごとで、「分離した部隊を間違いなく掌握したか?」と何度も呟いたそうです。エピソードから類推できる彼の性格を考えると、どんな思いでこのうわごとを呟いたか、胸が詰まる思いがします。
 何もこの宮崎氏に限るわけではありませんが、旧日本陸軍ではこうした活躍した士官ほど権限も低く地方に飛ばされ、失敗を何度も犯す無能な士官ばかりが中央で出世しています。どの組織でも大事ですが、信賞必罰こそ唯一組織を維持できる鉄則だと私は思います。

  今回の参考文献
「昭和の名将と愚将」
 半藤一利+保坂正康 文春新書 2008年出版