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2009年7月11日土曜日

書籍返本制度の変動について

「返本率4割」打開の一手なるか 中堅出版8社、新販売制「35ブックス」(ITメディアニュース)

 上記のニュースは日本独特の書籍販売制度である「返本制度」に対して、中堅出版社らが連合して制度改正に向けて動き出したことを伝えるニュースです。まず最初に返本制度について解説しますが、日本では出版社が印刷会社などで刷った本を一般の本屋である小売店に販売する際、小売店側が受け取る利益に当たるマージンは低く設定されているものの売れ残った場合には返本すれば仕入れ値と同額が返金されるようになっています。いわば小売店側は仕入れを行うことに対して何のリスクも抱えず、売れそうだと思ったらどんどんと仕入れて売れ残ったらどんどんと返本することで幅広いジャンルの本を店内に並び立てることが出来る、というのがこの返本制度でした。

 しかし近年は出版不況とまで言われるほど本が全く売れないために出版社と本屋は揃って苦境に陥っているいうことで、上記のニュースではこのような出版不況を打開するために書店側のマージンを増やす代わりに返本が利かない販売方法を出版社側は導入しようとしていることを伝えています。
 このニュースに対して私の感想はと言うと、結局どっちの道を選んだところで両者の破滅は必至ではないかというのが正直なところです。それはどういう意味か、下記にてくわしく解説します。

 実はこの返品が利かない販売方法にて出版された本の中で非常に有名な作品がありました。何を隠そう、今度また新しい映画が公開される「ハリー・ポッターシリーズ」の2004年に発売された第四巻、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」です。
 このいわゆるハリポタシリーズの日本語版を出版した静山社はお世辞にも大きな会社ではないため、いくら人気シリーズとはいえ大幅な売り上げを見込んで大量に発注して返本の山を築いた場合には会社の存立が危うくなることが当初から心配されていました。かといって前三巻の日本語版が発売された際は全国の書店で品切れが続出して古本屋でも高値で取引されていたほどで、また印刷数を少なくすればあちこちから文句が来るのも目に見えていました。

 そこでこの出版社は書店のマージンを増やすかわりに返本を受け付けない、仕入れ後の一切の責任は書店側に持たせるという形でこの第四巻を発売しました。結果はというと確かに売り上げは悪くは無かったのですが、前三巻は品切れが続いた事が逆にプレミアを持たせて販売量が時と共に増えていったのに対し、どの書店に行っても並んでいた第四巻の発売当初はそれまでのように爆発的に一挙に売れるとまではいかなかったそうです。
 私がこの事実を知ったのは当時の文芸春秋での記事でしたが、その記事中では図らずもハリー・ポッターが返本制度に一石を投じて今後日本の書籍販売制度は大きく変革されるかもしれないとまとめられていました。

 その記事から五年後、知り合いに聞くと岩波書店などは前から返本を受け付けていなかったそうなのですがようやく他の出版社にも返本制度の廃止がこうして現実味を帯びるようになってきたというのが最初のニュースです。
 確かにこれまで返本制度があるがゆえに売れないであろうと思われる本でも仕入れるだけはタダですからどの本屋も一応並べていたのに対し本当に売れるであろう本だけがこの制度改革によって精選されていくという期待はありますが、その一方で注目されていないが実はいい本が全く本屋に並ばなくなる可能性もあります。そう考えると在庫数で圧倒的な力を持っており、千葉だけでなく今度は大阪にも大きな配送所を作ろうとしているご存知絶好調のアマゾンがより販売を増やすのではないか、というのがこのニュースの私の第一印象でした。

 在庫数に限らず現在どの本屋も苦しめている万引きについてもアマゾンではその恐れも初めから全くなく、弱点とすれば一定額以上の販売におけるアマゾン負担の送料くらいですがその他のコストを既存の本屋と比較するとこんなものなんてごく小さなものです。
 こうした元からあるアマゾンの優位に対し、返本制度を改革したところで出版社と本屋になにか劇的な変動が起こるとはあまり思えません。むしろ先に書いたように売れ筋の本だけしか本屋に並ばなくなって、本屋がアマゾンに対して持っている優位性の一つと思える、「手にとって本を選べる」という行為がなくなる可能性もあってかえって余計に寄り付かなくなるんじゃないかという気すらします。

 そもそもの話、出版不況の根本的な解決方法として私は販売方法をあれこれ考えるよりいい本を作って並べることが第一にして唯一の策だと思います。一例を挙げると佐藤優氏の本はノンフィクションの属していてはっきり言って売れるジャンルの本ではないにもかかわらず、処女作の「国家の罠」は数ヶ月で70万部を越えるベストセラーになりやっぱりいい本はきちんと見てもらえるのだと私は思います。にもかかわらず小手先の改革に力を入れている時点で、私は出版不況と言うのは自業自得な部分も多いのではと言うのがこのニュースの結論でした。

  おまけ
 前ほど読まなくはなりましたが私が一ヶ月の間に読むのは10日発売の文芸春秋に加えて六、七冊程度です。そんな私がよく寄り付く本屋というのはやっぱり思わぬいい本を見やすく置いていてくれているとこで、いくらでかいからと言って並んでいる本がつまらないものばかりの本屋にはあまり行きません。今までで一番ハマったのは京都にいた頃に自宅近くにあった本屋でしたが、そこでは中国関係の本も充実しているだけでなく水木しげる氏の文庫マンガもやけに充実しており、異様にお金をそこで使っていました。

2009年7月10日金曜日

佐藤優氏の有罪確定について

 大分時間が経ちましたが、先週に私も中国語でいうなら「熱烈愛好的」な元外務省職員の佐藤優氏に最高裁にて有罪判決が下り、有罪が確定したことから外務省もようやく彼を晴れて免職させることが出来ました。佐藤優氏の容疑については私も何度もこのブログで書いてありますし、それより佐藤氏の著作の「国家の罠」を読む方が事件の概要を理解するうえで役に立つはずです。

 今回の有罪判決について私の感想はと言うと実はあまりなく、佐藤氏も主張していますが元々この裁判は結論ありきの裁判であったためにえどう抗弁したところで結果は見えていたことなので、下りるものが下りただけという感想しか覚えませんでした。ただこの佐藤氏の有罪確定についての報道について、こちらもまた「相信一点的」な田原総一朗氏が面白いことを書いておりましたのでここで紹介しておきます。

小休止の麻生降しについて(BP net)

 この記事の前半は自民党内の麻生降しの現状についての解説ですが、リンクを張った部分からは佐藤氏の有罪判決に対する各メディアの報道振りへの田原氏の批判が書かれています。具体的にどんな内容かと言うと各メディアはこれまで佐藤氏のコメントや評論といった著作を載せているあたり彼がこの事件において冤罪であることを承知しているであろうにもかかわらず、今回の判決時には「有罪確定」という見出ししか書かず、この裁判の背景や外務省の内部文書が紛失していて佐藤氏が不正をしたという証拠がないなどというおかしな点の解説を行わなかったマスコミの問題性を追及しております。

 田原氏が言っていることに対して私も全く同感で、足利事件での菅家氏の冤罪が明らかになったばかりにもかかわらず佐藤氏の裁判についてマスコミは素っ気無い対応だったと感じていました。マスコミといっても新聞、テレビ、雑誌など一般人が思っているほどに私は各メディアが一体であるとは考えておらずそれぞれの利害関係や対立があるという話も直接聞いていますが、もうすこし何かしらに特化したメディアがあってもいいような気がします。
 以前の記事でも書きましたがこの佐藤氏の事件を初めとして私は今の日本には何よりも司法改革が必要だと感じております。何かこういった司法関係に特化したブログを別に立ち上げようかと構想中ですが、そもそもの話として私が法学部出身でないためにあれこれ口を出すのもどうかと悩んでしまいます。

2009年7月9日木曜日

北京留学記~その六、留学生の国籍

 本日は中国に留学しに来る留学生の国籍について解説します。
 中国に来る留学生の国籍比率を測れば近年ではやはりダントツで韓国人が多く、次いで日本人が多くて事実上この二強で全留学生の三分の二を占めます。私が以前に見た資料では中国全土では数万の韓国人留学生が来ており、その仲でも特に韓国人が多い大学となると留学生を多数受け入れている私の通った北京語言大学になるのですが、同じクラスの韓国人によるとほかの大学では確かに語言大学ほど韓国人留学生数は多くは無いそうですがそのかわりに他の国の留学生がいないため留学生国籍比率はほぼ韓国で占められ、いろんな国の留学生と交流するために語言大学にきたそうです。

 実際に私がいた頃を思い出すと大学内はそれこそ右も左も韓国人ばかりで、やっぱり欧米人ともなると多いことは多いですがややレア度が高かった気がします。しかしその韓国人に次いで多く来ている我らが日本人の数も同様に半端ではなく、日本人留学生たちの間では語言大学に行くと日本人とばかり話してて中国語が上達しないとまことしやかに囁かれていました。こういった噂を留学前に私も聞いていたので、敢えて私は現地ではなるべく他の日本人とは距離を置くようにしてましたが、果たしてそれがどれほど効果を上げたかはまだ未知数です。一応、中国語は話せるようになって帰ってきましたが。

 それで先ほど韓国人が言った内容に戻るのですが、確かに語言大学は外国人に中国語を教える目的で作られたと言うことから今も全世界から留学生を集めております。マイナーな国を挙げるとルワンダやスイス、果てには自分のルームメイトだったルーマニア人なども来ており、そういった国の方々と一時とはいえ交流できる留学先というのはなかなかなく、中国においては北京大学を除くとまずほとんどないといってもいいでしょう。もしかしたら精華大学にもいっぱい来ているかもしれませんけど……。

 そんな留学生たちの国籍の中で、意外に多かったと私が感じたのはロシア系でした。ロシア本国にウクライナやベラルーシ、カザフスタンといったロシア語圏こと旧ソ連系の留学生は何故だかよく見かけ、実際に私のいたクラスでも当初はロシア人、カザフスタン人、ウクライナ人がおり、個人的に仲良くなったウクライナ人からは更に別クラスのロシア人とも引き合わせられ、日本に帰国後に私がロシア語の基礎を学ぶきっかけになりました。

 元々中国と旧ソ連は1950年代は非常に仲が良くて核技術もその伝手で中国に伝わったのですが、その後旧ソ連でフルシチョフが第一書記に就任するや急激に険悪化してそのロシアからの脅威に対抗するためにアメリカ、ひいては日本と中国は国交を結ぶこととなりました。それだけ仲が悪かった旧ソ連ですがこれが崩壊して現在のロシアになり、そしてプーチン政権下では国境が接していることから両国間の通商が急激に発展し、現在はかつての蜜月時代を思わせる位に両国の関係は良好です。
 この背景にはかつてとは逆にアジアにおいて日本を中露が押さえ込む目的も含まれていると思われるのですが、2005年にはロシアとの友好40周年(元年がいつどのように決まったのかは知らないが)ということで大々的なキャンペーンを中国は国を挙げて行っていました。

 こうした背景から、一番にはロシア国内において中国語の需要が高まっているというのは間違いないでしょうがロシア系の留学生が大量に中国に来ている理由だと私はにらんでいます。それを言ったら日本と韓国も同じことなのですが。

2009年7月8日水曜日

ウイグル暴動について

 本日友人からリクエストを受けたので、現在も報道が続いている中国新疆ウイグル自治区の暴動についてコメントします。最初に断っておきますが私は中国関係の解説には自信がありますがこのウイグル問題についてはこれまであまり扱ってきたことがないため、本当はコメントするだけでもおこがましいのですが現在持ち合わせている知識と知見から今回の騒動について書かせていただきます。なのであまり内容は鵜呑みにしたりせず、あくまで一つの意見としてご覧ください。

 まず本日届いたばかりのニュースですが、今日から行われる予定だったG8サミットこと世界首脳会議に出席する予定で開催地のイタリアにまで来ていた中国の胡錦濤首席が今回の新疆ウイグル自治区にて起きた暴動の影響を受けて急遽帰国しました。サミットには代理の人間が出席するようですが、今回のサミットは発展途上国の中でも世界への影響力が近年非常に高まっている中国が北朝鮮の核問題ひとつとっても重要な位置となると見られていただけに、それをキャンセルしてまで帰国することとなったのは相当の事態になっていると見ていいでしょう。
 その帰国するきっかけとなったウイグル自治区での暴動ですが、死者数などが百人を超えたとすでに中国系のメディアも報道していますが元からこれは信用できない数字なので、実際にはこれの倍以上が死亡している可能性が高いと見ています。現地の映像はイランでの選挙後の混乱時ほど海外のメディアにはまだ流れていませんが、一部で報道されているウイグル人の証言によると暴動に参加していない成人男性も片っ端から連行されているらしく、まぁ中国ならやりかねないと私も思います。

 それでこの暴動の背景についてですが中国政府とメディアは今回の暴動は外国の独立派、というよりウイグル自治区を中国から分離独立させて中国の弱体化を図ろうとしている団体の扇動によって引き起こされたと主張していますが、この見方についてはやや見当はずれではというのが私の意見です。元々ウイグルはかねてより中国からの独立派がいて海外に亡命したウイグル人などは人権問題を主張して中国からの分離独立を長い間唱えていますが、別に現地へ武装蜂起を行うようにバンバンと銃火器を送っているわけでもなくただ国際社会に訴えているだけで、今回の暴動(政府が公開した映像を見る限りはそういった銃火器は見られない)に対してはオーバーな表現だと言わざるを得ません。第一、中国は本国、それも同じ漢民族の農村などからも暴動が起こる国なのですから説得力自体が疑わしいものです。
 ただ中国政府としたらこの地域が分離独立されると困ると言うのは間違いではありません。というのもこの地域には最近になって天然ガスなどの資源が豊富にあると判明し、意外と資源が不足している中国としたらむざむざ手放すには惜しい地域でしょう。

 ここでちょっとウイグルの歴史について軽く解説しますが、元々ここは漢民族とは異なる突厥系(チュルク系)の民族が住んでいた地域で、チベット地域同様に中華人民共和国の成立後に人民解放軍によって事実上侵略されました。侵略後は現地の住民の土地は片っ端から収奪されて漢民族の入植が進んだというのは他の自治区と同様なのですが、この地域の特有の歴史と言うのが核汚染です。
 なんでも中国が核爆弾を研究する際にこの地域が実験場として選ばれ、数十回の核実験によって相当な地域が汚染されただけでなく被爆によって数万人のウイグル人が亡くなったと言われております。

 これだけのことをされたらそりゃ暴動も起こって当たり前だろうと思えるのですがさらにこの地域における特別な要素として、ウイグル人の宗教がイスラム教という点も見逃せません。知っての通りにイスラム教はその戒律の厳しさゆえに他の文化の慣習となかなか馴染まないところがあり、現在のイラクやアフガニスタンのように抵抗活動が始まるとなかなか終結しない傾向があります。元々宗教勢力というのは日本の一向一揆でもそうですが非常に根強い団結力があり、宥和政策ならまだしも強権によって屈服させるのは至難の業です。

 先に書いた通り、中国政府は今回の暴動が外国の勢力によって引き起こされたと主張していますが私はこれは中国政府にとって非常に大きなミスとなる発言だと思います。そう強がって発言するしかないというのもわかりますが、仮にこのまま国際的な注目がどんどん集まってアフガニスタンなどにいるイスラム教の国際テロ組織などがウイグル独立派を本格的に支援することとなれば恐らくその被害の大きさは今回のものとは比べ物にならなくなるのは確実です。
 去年の北京五輪前にもウイグル自治区のバスが連続で爆破された際に「トルキスタン・イスラム党」なる団体が犯行声明を出しましたが、本格的に銃火器などが密輸されることとなればそれこそアフガニスタンの二の舞となる可能性があります。

 そのため今回の暴動に対しては海外からの扇動という言葉は使わずに現地住民の一部が暴徒化したという表現に止め、適当な人間をでっちあげてもいいから見かけだけでも話し合いの姿勢を見せる必要があったと私は考えます。もし政府の言っている通りに海外からの扇動が今回の暴動の原因であったとしても、その扇動を跳ね除ける現地住民の慰撫策が失敗していることをもっと認識しなければますますこの問題は拡大するでしょう。

ネイキッド・カウボーイとブリーフの思い出

ネイキッド・カウボーイ(ウィキペディア)

 数年前にあるテレビ番組で見た際、私が一発で名前を覚えたのが上記リンクに貼った「ネイキッド・カウボーイ」です。この人はニューヨークのパフォーマーで文字通り街中をブリーフ一丁でギターを抱えながら練り歩く方なのですが、その強烈なキャラクター性ゆえにすっかり現地では溶け込んでおりなんでも日本にもこの格好のまんまで来たこともあるそうです。この人を知った際に私はまず、「何故裸にカウボーイ?」と思いましたが、元々奇妙なものが好きな性格ゆえにこの強引な組み合わせを一目で気に入ってこうしてわざわざ記事にするにまで至りました。
 それにしてもこの人、ネットで検索するとM&Msで有名なチョコレート会社を著作権侵害で訴えているそうです。まぁそれだけアメリカでこのキャラが浸透している事なのでしょうけど。

 仮にもしこの「ネイキッド・カウボーイ」を日本でやるとしたら、やっぱりブリーフは外せないのでちょんまげを結って三味線を持ち、「ネイキッド・サムライ」として売り出せばそこそこ人気が出るのではと何故だか今日の昼間に思いついたのですが、ブリーフとくれば私には忘れられない思い出があります。
 多分日本人男性の方ならわかってくれると思いますが、中学校に入る頃までみんなパンツはブリーフなのがませた奴がトランクスを履き始める中学校二年くらいから急激にトランクスが広まり、一挙にブリーフが駆逐されてトランクスへとパンツが一斉に履き変えられる時期が日本の学校にはあります。私のいた中学校もそうだったのですが私は昔から何かしらの流行に流されるということが大嫌いで、周りが一斉にパンツを履き変えるのに対してかえって意地になってブリーフを高校まで履き続けました。

 そうしているうちに体育の授業の着替えなどから私だけがブリーフを履き続けていることを周囲も知りだし、いつしか「ブリーフの花園」とか「ブリーフを見たら花園と思え」などという言葉が学年の間で広まっていました。もちろんそんな噂は気にせずに私は履き続けていたのですが、ある日この話をうちのお袋に話したらお袋が変に気にしてトランクスを買ってきたので試しに履いてみると、例によって体育の授業にそれを見た級友らが「トランクスを履いたらお前じゃない!」などと一騒ぎとなりました。
 結局、その後おふくろはトランクスしかパンツを買ってこないので私もそれがデフォルトになったのですが、こうして「ネイキッド・カウボーイ」を見るにつけかつてのあの時代を思い出します。どちらにしろ、ブリーフはキャラクター性としては非常に強い武器なのでもっと活用する人がいてもいい気がします。私はもうやらない……と思うけど。

2009年7月7日火曜日

自民党の混迷と気になるアイツ

 このところ選挙も近いせいで政治系の記事ばかり書いていてたまには気の抜ける記事も書きたいのですが、今日の記事もあまり間隔を空けられないニュースなだけにまたもや政治系記事です。そんなふんだりけったりな気持ちで書く今日の内容は、選挙前にもかかわらず混乱に拍車がかかってきている自民党についてです。

 一昨日の日曜に行われた静岡県知事選ではすでにニュースでも報じられている通りに民主党が推薦していた川勝氏が見事当選し、四月以降の民主党の地方選挙での連勝も継続し続けています。この静岡県知事選の結果について自民党の幹部らは「所詮は地方選挙で、国政選挙に強い影響を与えないだろう」(細田幹事長)といった内容で口を揃えて振り返っていますが、もともと静岡県は自民党の地盤が強い土地であるうえに民主党は推薦候補者を川勝氏に一本化できずに海野氏もともに推薦していて票が割れたことを考えると、投票結果では自民推薦の坂本氏と僅差ではあるものの実際的には自民離れが相当なものであるということを強く裏付ける結果であると私は考えます。

 また宮崎県の東国原旋風以降は地方選挙に対しても全国規模で関心が高まっており、今回の静岡県知事選でも投票率が前回44.49%から61.06%へと急増しており、次回の東京都議選も投票日まで時間がまだあるにもかかわらずさながら国政選挙かのように各国会議員が応援に駆け回っていることを考えると、「所詮は地方選挙」と見るのはたとえ強がりで言ったとしても見識が甘いのではないかと思います。
 その自民党ですが、肝心の国政選挙に対しても現時点で明らかに準備不足で、なおかつ大きな混乱振りが以下のニュースより伺えます。

10年内に国会一院制、自民がマニフェスト(読売新聞)

 上記のニュースでは自民党が次回選挙に向けて製作しているマニフェストの草案内容が書かれているのですが、その内容をリストアップすると、

・10年以内に参議院を廃止して一院制に移行する
・同一選挙区内における3親等以内の世襲議員の立候補を次々回の選挙より禁止する
・国直轄事業負担金の廃止
・3年後に幼児教育費を無償化する

 といった内容なのですが、まず確実にこれらは画餅に終わると私は断言できます。
 まず最初の一院制の移行についてですが恐らく自民党の参議院議員からすれば寝耳に水の話で強い抵抗が起こって、恐らく盛り込まれるとしても「~に向けて議論する」で終わるでしょう。そして二番目の世襲禁止についてもこの前に散々にもめて結局大半の幹部らの強い抵抗によって潰されたのに、この草案を作ったのは菅氏だそうですがこの人の執念もここまでくるとたいしたものです。

 ただそういったこと以上に、このマニフェストの草案がこうして表に出ること事態がそもそも問題です。というのも一度掲げた政策を後で引っ込めるほど格好の悪いものは無く、事実麻生政権は選挙をやると言ってはやらず、道路特定財源を廃止すると言っては鞍替えしただけ、郵政民営化に至っては実は反対だったと背筋の無い姿勢が一番支持率低下につながったのがこの一年でした。それだけにこのマニフェスト草案、内容は確かに非常に思い切りがよくてこれがそのまま通るのであればまぁ大きくプラスにはならずともマイナスにはならないでしょうが、恐らくこの後どんどんと表現が弱められて有権者にかえってますます支持離れを起こさせてしまう可能性があります。別にマニフェストに限らないですが、もっとしっかりと内容を煮詰めて今後変更の必要の内容にしてから表に出すのは政治の基本でしょう。もっともこの点は民主党にも同じことが言えますが。

 それゆえにこの草案が表に出てきたことひとつとっても、自民党内に相当な混乱が起きているのではと思わせられます。事実もはや解散権は錆びた宝刀とまで言われるほど効力をなくしており、麻生降しも公然と行われる今になっては統制が取れていなくとも不思議ではありません。
 そんな状況で、私がこの一ヶ月で一番気になる人物がおります。何を隠そうその人物と言うのも小池百合子元防衛大臣です。政界軽業師とまで揶揄されるほど最高のタイミングで次々と政党を鞍替えし、前回の総裁選挙では初の女性候補にもなった小池百合子氏ですが、何故だかここ一ヶ月ほどテレビなどで姿を見ることが一回もありませんでした。一つ考えられるのは死に体の麻生政権に与していないように見せるために敢えて姿を隠しているのでは、とも思うのですがそれにしたってインタビューでも全く見えないというのは異常です。

 一体どこで何をしているのかとネットで調べると、5日にフジテレビの番組に出演して麻生政権を支えると言ったそうですが前歴が前歴であるだけに私はそう鵜呑みにはできません。いくつか予想を書くと、麻生降し後の総裁選挙を狙っているとか選挙後に民主党へ移るとかいろいろあるのですが、知名度があるだけに去就が非常に気になります。私としては能力は買っているので、後はどれだけ政治を面白くしてくれるかその立ち回りを小池氏に期待しています。

2009年7月6日月曜日

書評「歴史を「本当に」動かした戦国武将」

歴史を「本当に」動かした戦国武将 松平定知著(Amazon)

 ちょっと前に書店で並んでいたので買っとけば親父も読むだろうと手に取ったのが、上記にリンクを貼った「その時、歴史が動いた」で有名な元NHKアナウンサーの松平定知氏の著作、「歴史を「本当に」動かした戦国武将」でした。この本では戦国時代に時代をリードした信長や秀吉といった名だたる戦国大名の傍らに控え、実質的な切盛り役であったいわゆるナンバー2の武将たちにスポットを当てて彼らの業績や決断、果てには処世術を解説しております具体的に取り上げられている人物を挙げていくと秀吉の参謀であった黒田官兵衛を初めとして現在大河ドラマで盛り上がっている直江兼続に、石田三成、本田忠勝、藤堂高虎、片倉景綱や細川藤孝といった人物が取り上げられています。

 本の全体の感想としては松平氏の口語体で書かれているため、なんといいうか文字で「その時、歴史が動いた」を見ているような感覚ですらすら読めていけただけでなく、この本に書かれている内容は私が歴史好きということもあって大体の事実は知っていましたが、石田三成と藤堂高虎についてはそれまで知らなかった内容もたくさん含まれていて充分に楽しめる内容でした。

 ただそれ以上にこの本を読んで思ったのは、歴史的人物の評価のポイントが時代と共に大きく変わってきたなという実感でした。それこそ登場人物を挙げろといわれたら楽に百名以上は名前を言えるくらいの三国志マニアである私は小学生の頃、どうして日本はいわゆる軍師という地位の武将にスポットが当てられないのだろうかとずっと不思議でしょうがありませんでした。私が小学生の頃に三国志を読んだ際、曹操や劉備といった大将ももちろん活躍するのですがそれ以上に諸葛亮や周喩、荀彧や程昱といった軍師が大活躍するのを見て、日本にはこういった軍師はいないのではないかと考えていました。

 もちろん当時はまだあまり日本史をよく知っていなかったという無知なのもありましたが、やはり当時の90年代と比べて2000年代に入ってからはそういった軍師級の人物に対して急に日の目が浴びるようになったと思います。
 一つの指標としてこのところNHKがやっている大河ドラマの主役をみても、今年の「天地人」の直江兼続を初め一昨年の「風林火山」でも山本勘助が主役をかっさらい、組織のトップではなくその補助役ともいうべきナンバー2が俄然注目されるようになったのではないかという気がします。

 私としてもそういった黒子として活躍した人物が好きなので満更でもないのですが、最近は一部で「責任忌避社会」とまで言われるほど管理職になりたがらない会社員が増えているとも聞くので、この傾向もそういった社会的背景をやや反映したものかもと邪推ながら思ってもしまいます。肝心の私はというと、周りからはよく意外に思われるそうなのですがやっぱりできることならプレイヤーでありたいと願っていますが、そうもうまくはなかなかいきません。

 最後に私が一番好きなナンバー2は誰かというと、大岡忠相も捨てがたいのですが僅差で陸奥宗光を取ります。あまりまとまった評伝がこの人には無いので、今度小説にして書いてみたいのですが、大抵企画段階で終わってしまいます。