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2011年5月29日日曜日

飛ばないボールと今年のプロ野球

 現在中国にいるせいでなかなか一試合ごとの内容を楽しむことが出来ませんが、日本のプロ野球の話です。
 現在セパ交流戦が開催されていますが例年の如くパリーグのチームがセリーグチームに圧勝している構図は変わらないまでも、どうもニュースを見ていると去年と今年で各チームの試合内容が大きく変化しているように思えます。具体的に何が変化しているのかと言うと投手と打者の成績で、投手防御率はトップは1点台がずらりと並ぶほど好調な一方で打者は打率が3割に達する選手はほとんどおらず、それどころか往年の名打者たちが不振に苦しむことが多くなっております。代表的な選手を挙げると巨人の小笠原選手、阪神の城島選手などで、まだ開幕してそれほど時間が経っていないもののホームランを量産する長距離打者ほど目に見えて成績が下降しているように思えます。

 一体何故このようなことになっているのか、結論を言えば私はやはり今年から導入された統一球こと「飛ばないボール」が影響しているように思えます。日本のプロ野球界ではこれまで各球団ごとに反発係数の異なるボールをそれぞれ勝手に使っていたのですが。WBCなど国際対抗戦が増えてきたことを受けて米国でも使用されているボールの仕様に今年から統一することになりました。
 その結果これまでより打っても飛ばないボールになり、長距離打者の多い巨人を筆頭に開幕したらどうなることやらとささやかれていましたが、案の定というか開幕前に有力視されていたチームほど苦しみ、逆に注目されてなかったヤクルトが現在セリーグで首位となるなど見事な番狂わせが起こっております。

飛ばないボール「低反発球」でプロ野球はどう変わる?(週プレニュース)

 リンクに貼ったニュースは3月22日のニュース記事ですが、このニュースの中で野球解説者の大塚光二氏のコメントとして以下のような内容が引用されております。

「セなら中日、パなら日本ハムが最も有利でしょうね。言うまでもなく、ともに打線のつながりで勝つスタイルが定着したチーム。また、昨年リーグ最多の148盗塁を記録したソフトバンクも力を発揮するでしょう」

 またこのコメントを受けこの記事を書いた記者も、

「また、本塁打が減るということは、「投手有利」ということ。岩隈、田中将の両エースを抱える楽天や、前田健太を有する広島が浮上する一方で、巨人や西武のような大砲揃いのチームが苦戦するかもしれない。その結果、僅差の試合も増え、最終回まで緊張感が持続するだろう。」

 開幕前ながら見事なまでの予想というべきか、両者が言うように打線のつながりを重視する小技が強いチームが確かに現在上位についております。ヤクルトなんか典型的ですし、日ハムやソフトバンクなんか交流戦入ってからも調子がいいままです。逆に巨人、西武、阪神などと去年まで強打で鳴らしたチームは前評判と比べて低い順位に喘いでいます。楽天については岩隈選手、田中選手という球界屈指のエースピッチャー二人がいるのに弱いのは監督のせいのように思えますが。

 さらに今日ちょっと個人成績をいくつか見てましたが、やはりホームランバッターが低い打率に苦しんでいる傾向が強いです。意外と言っては可哀想ですが選手層の割には健闘している広島カープも去年の主軸を担った梵選手の打率は未だ二割台前半で、好調を保っているホームランバッターと言ったら巨人のラミレス選手くらいしかいないように思えます。逆に元から安打の多かったヤクルトの青木選手は好調を維持しており、さすがと言うところです。
 またこのほかにも、どうも成績が急落する選手はパリーグよりセリーグの方が多いような気がします。パリーグは去年も打っていた選手は今年もよく打ってますし、比較的ボールへの対応を見せております。

 その中でも一際目を引くのは今年横浜ベイスターズからソフトバンクホークスに移籍してきた内川選手です。目下打率はパリーグ一の三割後半という恐ろしい成績もさることながら、通常セリーグからパリーグへ移った打者は成績が下降しやすいのに(その逆は上がりやすい)、並みいるエースピッチャーを相手に変わらぬアベレージヒッターぶりを見せています。
 前回WBC決勝戦ではイチロー選手の勝ち越し安打がよく取り上げられることが多いですが、私個人的にあの試合の最大の見せ場はレフトに飛んできたボールを内川選手が見事なグラブ捌きでワンバウンドキャッチして返球するシーンで、あの日から内川選手のファンとなりましたが自分が贔屓するソフトバンクで活躍していてうれしい限りです。折角だから統一球になっても比較的成績を保っている村田選手も来年来てくれればいいのに(´∀`*)ウフフ

2011年5月28日土曜日

産業ガス販売カルテルと高圧ガス業界

産業ガス販売でカルテル認定 4社に課徴金141億円(朝日新聞)

 このニュース自体は一昨日に出ていて本当なら昨日のうちに片付けてしまいたかったのですが、昨日は私の部屋で突然ネットが仕えなくなってしまってそれも叶いませんでした。部屋の管理業者の人に見てもらって今朝修復したけど、何が理由だったんだろうか。

 それでニュースの内容ですが、リンク先を見てもらえばわかるとおりに産業ガスメーカー4社が2007年頃から直接会合を以って価格を調整するカルテルを結んでたことがばれて、公正取引委員会に総額約141億円の課徴金を課されたそうです。この産業ガスメーカーのカルテル自体は実は2009年の段階で取り沙汰されており、当時はリーマンショック後の大引けによる価格下落を防ぐためあちこちの業界で結ばれたのか、景気が悪いのでカルテルを取り締まっても経済に大きく影響しないと当局が判断したのかはわかりませんが世界各国でこのような取締りが相次ぎました。
 もともとこのようなカルテル系のニュースは大メディアはスポンサーの関係からあまり取り上げようとしない傾向があるので、以前の陽月秘話では縛りがないのだからと積極的に取り上げていて今でもどのようなカルテルがあったのか多少なら覚えています。ただそうして取り上げた中に、実はこの産業ガスカルテルについては私は知ってて敢えて取り上げませんでした。

 理由を話すとなかなか情けない限りなのですが、実は当時日本で私が在籍していた会社というのはここで取り上げられているガスメーカー四社からガスを購入して卸すガスディーラーだったからです。人物が特定されるはずはないだろうし会社にばれてもだからなんだという風には考えていましたが、万一私の行動で当時在籍していた会社が影響を受けることとなってはよくないと考え、大人の事情でこのカルテルについては手を触れませんでした。
 内心ではカルテルを結んでいたガスメーカーに対して自分らディーラーに高い値段をふっかけやがってという腹立たしい気持ちがあり取り上げたいのも山々でしたが、その勤めていた会社には本当にお世話になっており、軽はずみな行動で迷惑をかけるようなことはしてはならないと自重する気持ちが勝りました。

 すでに何度も書いている通りにお世話になったといいながらも私は去年にその在籍していた会社を辞めて中国へ転職にきましたが、今でもその会社への感謝の気持ちは一日たりとも忘れてはいません。実際に辞めるかどうか当時非常に悩みましたが、こうして海外へ転職できるのも若いうちだけだという年齢の壁と、恩を返すことは未来にも出来ると踏ん切りをつけたのが決め手となりました。
 奇しくも私が退職した日は新入社員の頃から、下手すれば面接の時から明らかに私を取り立ててくれた役員の方の退社日と重なりました。私が退職の意思を伝えた際にはその役員の方にもわざわざ引き止めてもらい、今でもその時のことを思うとあの時の決断は正しかったのかと悩むのと同時に非常に心が痛みます。

 人間、心ならずも折角知り合った人間と別れなければならない場面が人生には数多くあると思います。その別れる理由も引越しなどの物理的な理由による別れから、喧嘩や考えの相違などといった不和による別れもあるでしょう。ただどの別れにも別れ方というような最低限の礼儀という作法が存在するように思え、過去の事例を引用すれば諸葛亮が尊敬していた楽毅の例でもあるように、別れる際には余計な怨恨などを互いに残さぬようにして別れる必要があると思います。自分はお世話になったその会社へはそのように別れられたのか、未だ納得する結論は出ません。

2011年5月26日木曜日

今日のニュースについて

 最近社会関係の記事を書こうとしても全くニュースがなくて困っていましたが、今日は気になるニュースが二つもあったので早速取り上げたいと思います。

新潮社に賠償命令 部数水増し訴訟「真実相当性なし」(産経新聞)

 以前の陽月秘話でも取り上げていた新聞社の押紙の問題です。押紙というのは新聞社が新聞を印刷、販売する新聞店に対して実際の講読者数より余計に増刷させて無理矢理買い取らせる慣習のことですが、これのどこが悪いのかと言うとまず新聞店は新聞社に対して売れるはずのない新聞を無理矢理刷らされただけ余計な費用を払わなければなりません。断ればもう印刷させてもらえないし。
 これだけでも新聞点側としては小銭が入ってきますが、それ以上に大きいのは広告費の問題です。というのも広告費というのは「どれだけの人間に対して見られているか」というのが価格を決めるため、新聞や雑誌では購読者数や発行部数が大きな指標となります。そのため部数が多ければ多いほど新聞社は広告費を多く取れるため、売られることはなく刷られた後にすぐ捨てられる押紙でも環境を気にせず無駄に刷って部数を大きく見せようとするわけです。

 それで今日のこのニュースですが、なんでも週刊新潮でこの押紙を取り上げて、「読売新聞の公称部数約1千万部のうち、30~40%が実際は販売店から読者に販売されず処理されていると指摘」したところ、逆に読売に訴えられて賠償金の支払い命令が新潮社に出されたそうです。実際の週刊新潮の記事を見ていないのではっきりとは言い切れず、新潮は以前にも偽の赤報隊事件犯人を仕立てたこともあるので会社としてあまり信用しておりませんが、きちんと証拠を押さえられなかったんだろうなと私は思いました。
 押紙についてははっきり断言しても言いますが確実に存在します。新潮はその量は全発行部数の30~40%と言っているようですが私の感覚でもそのくらいです。というのも昔は本気で50%近くが押紙だったそうでしたが、世間の目が厳しくなったのと新聞店側から猛抗議を受けるなどして徐々に減っていたと聞いており、現状であちこちから話を聞くとやはりこの30~40%という数値を上げる人が多いからです。

 何を根拠にそんなことを言い切れるんだと思われるかもしれませんが、これについては私は一切譲るつもりはありません。というのもうちのお袋が実際に新聞店で働いててこの押紙の問題を始めとして新聞拡張員、販売促進費といったブラック企業も真っ青な新聞社の実態について直接見聞きしているからです。多分この辺だったら下手な新聞社員より詳しいと思います。

 そういうわけで今回新潮社に言いたいことは、去年朝日新聞が検察の証拠捏造事件を暴いたようにぐぅの音も出せないような証拠を頑張って揃えて記事にしてほしいということです。むしろ新潮にとどまらず、文春から現代まで雑誌メディアはスクラム組んでこの問題をしっかりと追及したほうがいいでしょう。新聞店取材すりゃすぐ出てきそうなんだし。

「虚偽証言強要」選挙違反事件で有権者 埼玉県警は反論(朝日新聞)

 このニュースを見た時の私の最初の感想は、「第二の志布志事件だ」ということでした。

 志布志事件を説明するより今回のこの埼玉の事件を説明したほうが早いのでこっちのニュースを先に解説しますが、今年行われた埼玉県深谷市議選にて有権者を飲食にて接待したとして市議二人が公職選挙法違反で埼玉県警に逮捕されたところ、この市議二人から無料にて接待を受けたとした有権者らが「飲食費は払った」と証言して反論していると報じられています。確かに選挙期間中に候補が無料にて飲食を振舞えば公職選挙法違反になりますが、今回反論している有権者が言うようにまともな額の会費をきちんと支払っていれば何も問題ありません。
 今回私が問題視しているのは事の真偽以上に警察の捜査の仕方です。志布志事件という悪例がありなおかつ去年には検察が厚生労働省の村木さんの事件で証拠を偽造するという前代未聞の不祥事を起こしていながらも、またも自白を強要する、自白を唯一の証拠として頼る捜査をしていることです。現時点でここまで書くのは急ぎ過ぎな気もしますが、警察のこのような無茶な捜査ぶりと、別の報道では当日の会費支払いを家計簿に記入している有権者もいると報じられていることから、この事件は冤罪の線が高いと見ております。鹿児島で起きた志布志事件と全く構図が似ているのもありますし。

 最後に、現在ある大きなニュースが連日連夜報じられておりますが敢えて私は無視して取り上げていません。理由は発端となった記事からして背景に曖昧さを強く感じさせられる内容で、思った通りにその後の報道が二転三転していて結論や構図がはっきりしてから取り上げたほうがいいだろうと考えたからです。
 なおその発端となる記事を書いたのは読売ですが、このところの読売の記事はそれに限らず怪しいものばかりです。元々怪しい産経はおいといてこの読売の迷走ぶりは目に余り、今騒がせているニュースが落ち着いたらまとめて書き上げます。

 逆に、今私の中で急激に株を上げているのは朝日新聞です。今日取り上げた志布志事件も朝日が大きく取り上げたことで日の目を浴びた事件であり、系列テレビ局の朝日放送はニュース内容が一番まとまってて日本にいた頃は指定チャンネルにしていました。その上、なんといっても凄まじかったのはちょっと太鼓叩き過ぎな気もしますが、これも今日取り上げた去年の検察の証拠偽造事件で、多分裁判を追ってれば誰でも気がついた可能性のある糸口を丹念に調査して一撃で検察を降伏させたのは壮絶そのものでした。高校時代までは一番嫌いな新聞で、悪口言い過ぎて今度名古屋に栄転する親父にまで「もう許したってや」とまで言われたのに人間変わるものだ。

2011年5月25日水曜日

ゲームレビュー「428」

 最近語尾に「あの地球人のように……」をつけると何でも面白くなることに気がつき、スカイプで話す際に多用するようになりました。元ネタはドラゴンボールですが、同年代の友人はちゃんとわかってくれました。

 先日親父が上海に遊びに来た際に、PSPソフトの「428」(チュンソフト)を持ってきてもらいました。このゲームは一部では伝説扱いされている「街」というゲームと同じシステムを持っていることから発売前には話題になり、私の友人も早々に手に入れて遊んでおりました。「428」と「街」はサウンドノベルというジャンルに属するアドベンチャーゲームで、どちらも現代の渋谷を舞台に複数の人間の話を同時並行で進めていくシステムこそ共通しているものの、ストーリー本体には関連はありません。

 まず先に「街」について話すと、このゲームについては当時子供だった私も大いにハマって、プレイ当時はリアルに姉と奪い合いになりました。ある日なんかたまたま帰りの電車で鉢合わせちゃって、自転車を漕ぐ速度の差で私が先行を握った程でした。
 具体的にこの「街」のどこがよかったのかと言うと、実際にプレイしてみないとわかり辛いのですがアドベンチャーゲームとしては現時点で最高峰とも言える革新的なシステムに加えて盛り込まれたストーリーも趣深く、なおかつゲーム内の登場キャラクターを演じた俳優らがどれもキャラが立っていたことなどが挙げられます。この「街」に出演した俳優らはその後有名になった人間もいくつか出ており、あの窪塚洋介氏もヨースケという古い芸名で脇役ではありますが出演してます。

 それで本日の本題の「428」についてですが、現時点ではメインシナリオを終えた段階でサブシナリオはまだ未プレイですが、結論から言うと確かに見事な出来ではあるもののとうとう「街」は超えられなかったというのが私の感想です。「街」の発売年は1998年で、「428」はちょうど十年後の2008年であることからゲームにおける表現技術などは格段に改善されたことを推しても、先にやってた友人が「期待すんなよ」と言ってた通りの結果となりました。

 具体的に不満というか気になった点を挙げると、プレイしていて「余計だなぁ」と思う演出がちらほら見られたことがまず挙げられます。なんていうか、しつこいというかやらなくてもいいだろと突っ込みたくなるような画面効果などが多く、年寄りくさいですがアドベンチャーゲームなんだからもっとシンプルに作って欲しかったです。
 次に、個人的にこれが一番でかいのですがキャラクターに全く感情移入が出来ませんでした。「街」では八人の主人公がそれぞれ癖があってどれもこれもゲームをしていて応援したくなるようなキャラクターたちばかりだったのに対し、今度の「428」では一応キャラ付けはされてはいるものの、刑事の加納というキャラクターを除いて最後までどれも好きにはなれませんでした。御法川というキャラに至っては最初から最後まで嫌いだったし、脇役も見ていてイライラするのばかりだったし。

 とはいえ、メインシナリオとそれを形作る選択肢の内容は秀逸そのものでさすがはチュンソフトと思わせられました。まぁ「街」を越えろといってもあまりの完成度の高さからそうそうできるものじゃないんだし、高望みしてもしょうがないとは思いつつも、やや残念さが残るゲームでした。
 さて、今度は「テイルズオブエターニア」に取り掛からないと……。

2011年5月24日火曜日

大国主と天孫降臨について

 前回の歴史記事で因幡の白兎を取り上げましたが、今日はその話に出てくる大国主について解説します。

大国主(Wikipedia)

 大国主は出雲神話における主人公ともいえる人物で、出雲大社にて祭られています。大国主がどんな人物かと言うとちょっと一言では言い表し辛く、この辺が神話のいい加減なところなのですが複数の人物を無理やり一人の人物に仕立て上げられているところがあり、古事記と日本書紀ではその立ち位置や経歴が異なってしまいます。
 特にはっきりしなくてちょっと私もイライラする点としては、大国主はヤマタノオロチ退治で有名なスサノオノミコトとの関係です。ある史料ではスサノオの子孫とされていますが別の史料ではスサノオの娘婿と書かれており、どちらかと言えば後者のほうが一般的なエピソードとしては幅を利かせております。

 さてそんなスサノオ関係者の大国主ですが、彼の大まかな経歴を話すとありがちな話ですが若い頃には苦労したけどその甲斐あって日本(出雲)の国王となります。ただ国王となったのもつかの間、天界とされる高天原にいる天照大神が孫のニニギに地上を治めるように命令し、その露払いとばかりに高天原からはタケミカヅチなどといった神々が大国主の下に送られ、国の統治権を譲るように大国主を脅します。大国主はこの時に素直に国を譲りましたがその息子のタケミナカタは延々と反抗したそうで、あんまりにも粘るもんだから最後は長野県で降伏したとされます。こうして地上が平定されたのを受けてニニギは地上に降りてきて統治を開始し、その子孫が後々に天皇家となるのが古事記の大まかな流れです。

 結論をとっとと言ってしまうと、天界こと高天原というのは現在の朝鮮半島でほぼ間違いないと思われます。この大国主の国譲り、そして天孫降臨の過程というのはあまり表立っては言えませんが、元々日本を治めていた豪族に対して朝鮮半島から来た豪族が侵略し、征服した過程を指しているのだろうと考えられています。この話でミソなのは大国主はスサノオの親類縁者という前提が作られていることで、降りて来るニニギの遠い親戚であるために一方的な征服じゃないとフォローを入れている点です。
 ただこうしたフォローが入れられている点に加えその他の好意的なエピソードから考えるに、大国主は比較的従順に降伏したのではないかと私は思います。最後まで抵抗してたりすると土蜘蛛とか鬼などといった悪者に描かれて退治されてしまうのが神話の常で、それに比べると大国主の扱いは破格と言ってもいいでしょう。

 この朝鮮半島からの侵略については私はほぼ間違いないと私は考えていますが、その侵略ルートとなるとまだ議論の余地があります。資料に書かれた地名通りならば朝鮮から北九州、そして山陰へという侵略ルートですが、遺跡などから考えると山陰などより北九州の方が当時は文明も発達しており国のような集団が存在してそうな気がします。となると資料に書かれている大国主が治めていた国は現在の島根県ではなく北九州のどこかだったのかということになるのですが、となると後の大和朝廷を始めとした政権は何故近畿に本拠地を構えていたのかということになります。
 進入口は北九州で間違いはなさそうですが、そのまま山陰へ進撃したのかそれとも最初は九州にとどまったのか、これがどっちかというのはかなりミステリーです。というのも中国の後漢時代には北九州の奴国から使者が来たとはっきりと歴史書にも書かれており、その時に授与された金印は実際に江戸時代に出土(見つけたのは権兵衛)して現在までも伝わっています。この奴国は征服王朝なのか、それとも征服される前の王朝なのかも考えねばなりません。多分私は後者だと思うけど。

2011年5月23日月曜日

グッドウィルを振り返る

グッドウィル(Wikipedia)

 当時にも取り上げていますが、ちょっと思うことがあるのでまた取り上げます。
 グッドウィルというのはかつて存在した企業グループで、介護人材サービスのさきがけとなったコムスンを含む人材派遣業を中核事業として一時期急成長し、2008年に破産した会社です。今ではすっかり当たり前となった日雇い人材派遣ですが、小渕政権時の規制緩和を受けて2000年ごろから同業のフルキャストともに急拡大し、会長の折口氏は一時は政財界にも顔を出すなど大きな影響力を持つようになりました。

 しかし平家も久しからずと言うべきか、2007年に「データ装備費」という、一回の派遣労働につき労働者から200円のマージンを取っていたことが突然槍玉に挙げられ、その後も次々と同社の事業を糾弾する訴訟や摘発が相次いで最初の「データ装備費」の問題が表面化してからたった一年後の2008年には廃業に追い込まれることとなりました。以下に当時問題とされたグッドウィルが行っていた事業内容を列記します。

・「データ装備費」という中間マージンの搾取(二重取り)
・労災隠し
・二重派遣
・製造現場(工場)への派遣

 細かいのを洗えばほかにもありますが、代表的なものは以上四つです。ただこれははっきりいいますが、確かにこれらの違法行為はそれ以前から法律で規制されてはいたものの、グッドウィルに限らずどこの派遣会社でもさも当然のようにやられていたことで、これらが違法であるならば日雇い派遣業はすべてが違法だったというくらいに一般化していたものでした。現実に私の周りでも普通に工場へ派遣されて作業をしてた友人もいますし、「データ装備費」についてはフルキャストも同時期に摘発を受けています。
 私自身はグッドウィルが摘発される以前からNHKが作って見事に普及させたワーキングプア問題を調べていた関係でこれら日雇い人材派遣会社を比較的激しく批判していた立場でしたが、2007年の突然のルール変更によるグッドウィル叩きに対しては悪いことだとは思わなかったものの、運が悪かったなと気の毒には思いました。

 私が何故この話を三年も経った現在に掘り返したかと言うと、当時はまだ景気がよかったことからああいったワーキングプア問題も取りざたされたものの、現在に至っては派遣でも仕事があるだけマシと言うべきか、人材派遣会社への批判がほとんど聞こえなくなったことからでした。もちろんこれらの違法行為が完全に根絶されたから批判が起きないというのであればそれに越したことはないのですが、どうも人から話を聞いていると当時はあれだけ叩かれたのに工場への日雇い派遣はまだ続いているそうですし、誰もケチをつけなくなりましたが二重派遣もまた堂々とまかり通っているからです。

 久々にこの言い回しをしますが、勘のいい人ならもう察しがついているでしょうが私が今回この記事を書こうと思ったもうひとつのきっかけは東電の原発作業員です。東電の原発作業員は福島原発の事故が深刻化している現在はもとより以前からも危険な作業ゆえになり手が見つからないため、非常に複雑な経路と幾重ものの仲介業者を経由してホームレスなどといった人を半ばだますような形でつれてきていたと言われております。実際に先日、関西での募集を受けたある男性が当初受けていた説明とは異なり福島原発につれていかれて作業をさせされたというニュースが報じられましたが、これについて男性を雇った仲介業者は「複数からの募集を裁いていて派遣先の割り振りを間違えてしまった」などというコメントをしていましたが、はっきりとは言ってはいないもののこれは普通に二重派遣で問題ないのかとと頭を抱えました。

 さらにこれの何が一番怖いのかって言うのは、かつてグッドウィルが摘発された際に散々批判していたメディア達がこの原発作業員らの二重派遣についてはなにも違法性を言及していないことです。もちろん今はそんなこと言ってられる場合じゃないってことはわかりますが、かねてからも指摘されていたように原発での作業は東電本社は一切手につけず、協力会社と呼ばれる企業がさらに人材派遣を雇って実施していたのは周知の事実で、私にはそれが本社と現場の情報疎通の齟齬や本社の危機管理に影響しているのではないかと思うがゆえに放っておくべきではないと考えています。それが何故か、不気味なくらいに大メディアは二重派遣問題については揃い合わせたかのように指摘がありません。

 私は何も一部で言われているようにこれだけの問題を起こしたのだから東電社員自らが直接原発に行って作業しろとまでは言いません。ただ非常に重要な作業をやるのだから、下手な派遣業者や協力会社を通すのではなく東電が直接ハローワークなりで募集してマージンを抜かさず作業員に給金を渡すべきなのではないか、というのが本日言いたかったことです。

2011年5月21日土曜日

2011年5月、私の現在の立ち位置

 時期も時期なのでそろそろ白状しますが、実はこのブログを通して私は一つ嘘をついてきました。

 このブログは中国への転職に伴い、以前から続けてきた「陽月秘話」を引き継ぐ形で去年の十二月から開始しましたが、その際に私は勤務地を「上海近郊」と敢えてぼかして書いてきましたが、実際には上海市ではなく浙江省のどこかで働いていました。一体何故このような嘘をついたかというと、その浙江省のどこかも在住日本人が少ないわけではありませんが上海と比べるとやはり数で劣り、警戒するまでもありませんでしたが人物を特定されないためにこのような嘘をつくことにしました。
 その上で私は今年三月頃の記事で引越しをしたと書きましたが、その引越し先こと現在の居住地は紛れもなく上海市内です。ただ一体何故浙江省から上海に引越しをしたのかというと、こちらで再度の転職をしたことが原因でした。

 私は去年の九月に一念発起してお世話になった日本での会社を辞めて転職活動で上海を訪れ、ある日系メーカーから内定をもらいました。そして去年十二月から勤務を開始しましたが、ビザ取得書類が送られてくるや一日でも早く急いで来いとやけに急かされて来てみるや仕事をするのに必要なパソコンを会社側が購入しておらず、入社から一週間はその会社で何もせずに過ごしました。
 この時点でなんか変だと思ってはいましたが、図らずもその予感は当たりました。その会社ではほぼ二週間に一回程度の割合で拒否権なしの強制参加による飲み会があり、面接の段階でアルコールにはあまり強くないと伝えていたにもかかわらず度々、というよりほぼ全部一気飲みを強制され続けました。各飲み会での具体的な回数を書くと、

・ビールコップ二杯、焼酎水割りコップ二杯、ウィスキー水割りコップ一杯
・ビールコップ二杯、ワインコップ三杯、紹興酒コップ三杯
・ビールコップ四杯、紹興酒コップ二杯
・ビールコップ二杯、ワイングラス四杯、紹興酒コップ一杯
※上記すべて一気飲み

 もちろん強制でつれてかれた飲み会は上記四回どころじゃないですが、飲んだ回数を細かく覚えているのはこんなもんです。さすがにビールの一気飲みならともかく、ワインや焼酎といったアルコール度数の高い飲み物の一気飲みを強制された際には耳を疑いました。ワインなんて、こんなもったいない飲み方したら作り手に悪いし。
 すでに書いている通り私は広島に左遷されていて今度は名古屋に栄転することとなったうちの親父同様に生来アルコールには弱く、汚い話ですが飲み会の度に何度も吐かされていました。その回数は一回の飲み会で二桁に上ることもあり、吐き続けると最後は胃酸しか出なくなるというのを身を以って知りました。

 こうした飲み会は予告なくウィークデーだろうと無理やり連れて行かれ、ある時などは泊り込みということを私のみ知らされておらず、ほかの全員が仕事用のノートパソコンを持ってきた中で私だけ持ってきておらず、次の日に一日仕事が全く出来なかったということもありました。当時の仕事はメールが一日百件近く来て八十通くらい返信していたので、この一日のロスはその後しばらく重く付きまといました。
 このような具合だったので、情けない話ですが今年一月頃には早くも真剣に退職を考えるようになりました。ただ退職するといっても二十代で二回も退職経験がつけば次の転職に響くことは予想に易く、ただでさえ不況真っ只中の日本に逃げ帰ってももう正社員職につくことは出来ないと思い大いに悩みましたが、ただその頃には本当に何もないところでも度々えづくようになっており、このまま体を壊しては仕事も何もないだろうということから何もかもうっちゃってしまうつもりでした。

 そんな中、ひょんなことで上海市内のある日系企業が募集をかけているのを知り、どうせ辞めるのなら駄目元でとばかりにその会社の採用試験を受けてみたところ、当時は自分でも信じられませんでしたが再びその会社から内定を得ることが出来ました。どちらにしろ春までには日系メーカーは辞めるつもりだったので一も二もなく内定承諾の返事を出し、日系メーカーへは退職の意思を伝えました。
 なお退職の意思を伝えた時に日本人上司は、「そんなに飲めないのであれば断ればいいのでは」と言いましたが、ほかならぬ私に最も一気飲みを強制してきたのはその上司でした。ある時などは私の様子(すでに五回程度吐いている)を見て周りの中国人社員が必死に止める中でもワインを注いで一気飲みを強制したことがありましたが、そのことを話すと本人は覚えていないと返事しました。さらについでに書くと本来の支払い月から一ヶ月が過ぎて私も何度も催促しているにもかかわらず、その日系メーカーからは未だ退職月の未払い賃金を受け取っておりません。蛇足でしょうし過激なことこの上ありませんが、権力を握ったら日本の本社ともどもどんな手を使ってでも必ず潰すつもりです。

 そうして三月に現在の会社へと転職を果たしましたが、今の会社は名前はもちろん明かせませんがある経済ニュースの通信社で、そこで編集・記者職として雇われました。以前の陽月秘話でも書いていましたがこんだけ長い文章を毎日書くだけあって私は元々ジャーナリスト志望で、新卒でその業種に関係する企業に就職できなかったことからもう縁はないだろう、やるとしても自分で会社を立ち上げるしかないだろうと思っていただけに、こんな形で念願が叶うとは夢にも思いませんでした。特に前職が前職だっただけに、その人生の流転振りには我が事ながら信じられない思いがします。

 私が上海を最初に訪れたのは北京に留学中の2005年に旅行で来た時です。その後去年の二月に友人を訪ねて二回目、そして十月に転職活動で三たび訪れ、今回の転職による定住で四回目となります。ここにくるまで随分と回り道をしてきたものだと思いますが、現在の仕事はやりがいもあり、職場の人たちもいい人ばかりで非常に充実しています。
 思えば中国に来てからちょうど半年が過ぎ、未だ一度も日本には帰っておりません。この半年の間に二度も会社を移るわそのたびに引越しするわで非常に慌しく、これまでどれだけ時間が過ぎたのか感覚がちょっと薄いです。ただ梅雨のない上海では近頃気温が上がってすっかり夏らしくなり、季節感を感じることでようやくここに至ったんだと感じられるようになりました。