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2014年7月20日日曜日

死刑賛否に対する世論の潮目

 様々な意見があることは承知であるものの、近年の日本では死刑に対する賛否において賛成派の方が大勢を占め、なおかつ増えてきているように思えます。あくまで個人の実感ではありますが私がまだ子供だった頃などはもう少し反対派の方が多かったような気がするのですが、賛成派が反対派を上回った時期というか潮目について、日本では二つのターニングポイントがあったように思えます。
 
 一つ目のターニングポイントはオウム事件です。言うまでもなくこの事件は日本犯罪史上過去最大のもので主犯の麻原彰晃を始め数多くの人間に死刑判決が下りていますが、普段は死刑反対を標榜する大手メディアであってもこの事件の死刑囚に関してはどこも擁護しないというか死刑に反対するような報道が見られない気がします。大手メディアはちょっとダブルスタンダードではないかという気もするのですが、仮にオウムの犯人の死刑に反対するような報道をすれば間違いなく市民から大反発を喰らうであろうし、また市民もオウムに対しては強く死刑執行を望むような世論があるだけに、「死刑はやっぱりなくてはならない」と思わせられる事件だったように思えます。
 
 もう一つのターニングポイントは光市母子殺害事件です。事件の詳細についてはもはや詳しく語りませんが、犯人の個人的資質や犯行もさることながら弁護を担当した安田弁護士の常軌を逸していると言ってもいい弁論に強い憤りを覚えた市民も少なくなかった気がします。実際に私の周りでもあのような弁論の展開に怒りを覚えむしろ犯人を死刑にすべしだと言う人間も多く、皮肉なことに安田弁護士の頑張りは死刑賛成派を増やす結果を生んだように見えます。
 
 現時点で一部のメディアや団体はまだ死刑反対の意見を述べたり、死刑執行について政府の横暴などという報道を行いますが、世論はどうかというとそうしたメディアに対して冷ややかな視線を送っているように見えます。また司法も世論の厳罰化を望む流れを汲んでおり、かつては永山基準と言って「二人以上の殺害」が死刑判決が下りる条件として存在しましたが、近年は一人殺害のケースにあっても動機や手段が残忍である場合は死刑判決が下りるようになっており、もはや永山基準は事実上、機能していない過去の存在となりつつあります。
 私自身はかつては死刑反対派でありましたが、その理由というのもどちらかと言えば宗教的理由で「人が人の生死を決めるべきではない」という主張でしたが、先ほどの光市母子殺害事件といい、殺すよりほかのない犯罪者を見るにつけこうした考えも吹っ飛んでいきました。まぁ死刑反対派を標榜していた頃から、一日一回は「あの野郎、ぶっ殺してやる」っていうようなことを日常的に口走ってたけど。

2014年7月19日土曜日

美濃加茂市長の逮捕・起訴について

 
 最初の報道からやや時間が経っているのでニュース内容を忘れた方もいるのではないかと思うのですが、当選時に全国最年少だったということから話題となった美濃加茂市の藤井浩人市長が6月24日、愛知県警、岐阜県警の合同捜査本部によって収賄容疑から逮捕されました。逮捕から約3週間後の今月15日には同容疑で起訴され、藤井市長は現在も警察によって拘留されたままとなっております。結論から先に述べるとちょっと気が早い気もするもののかといって今声を上げないのはおかしいと思うので書きますが、現時点で私はこの事件は冤罪の線が濃厚ではないかと考えております。
 
 事件の背景を簡単に説明すると、逮捕容疑となったのは藤井市長が市長に当選する前の市議だった昨年3~4月、地下水供給設備会社の社長から中学校に取りつける雨水濾過機の件で便宜を図るよう依頼され現金を受け取ったと警察は主張しています。金銭は二回に分けられ受け取ったとされ、それぞれ10万円と20万円、合計で30万円だったということですが、この時点でこの事件には無理があるように感じます。
 建前上は収賄に金額は関係なく、受け取ったか否かが重要ですが、それにしたって30万円の収賄でいきなり逮捕だなんて今まで聞いたことがありません。30万円と言ったら楽天イーグルスにいた一場元選手が学生時代に阪神タイガースから栄養費として受け取った額と同じ(巨人は確か200万円)で、収賄事件として扱うにしてはあまりにも小さすぎる金額です。別にタイガースがケチというわけじゃないが。
 同じ収賄疑惑と比較するにしても、この前辞めた東京都の猪瀬前知事に至っては5000万円が現金そのままで見つかったにも関わらず逮捕には至っておらず、仮に藤井市長の水準で逮捕されるなら猪瀬前都知事は166回も逮捕されなければなりません。まぁ実際に166回も逮捕されたらギネス記録でしょうが。
 
 この時点でもうグダグダですが、それ以上にグダグダなのは藤井市長が現金を受け取ったとする警察の根拠です。あくまで報道ベースですが私が聞いた情報だと、「業者社長と藤井市長が会ったその日に、社長の口座からそれぞれ10万円と20万円が引き出されている」という理由を真面目に挙げています。これだと私が10万円を口座から引き出してその日に政治家にあったら収賄で起訴できちゃうような論理です。あと私個人の感覚で言わせてもらうと、普通現金渡すなら最低でも会う前日、もしくは一週間前に下ろして封筒とかに入れて保管しないかな。
 その上で興味深いのは、藤井市長と業者社長が会ったその場には中立な第三者が同席しているという点です。この第三者は別の議員秘書だそうですが、藤井市長と社長が現金、もしくはそんなのが入ってそうな封筒を受け渡す現場を見ていないと主張しています。そしたら警察は「第三者が席を外した隙に渡した」と展開したものの、第三者は「一度も席は外していない」とすぐさま打ち返す始末で、警察の言い分と当時の状況について早くも食い違いを見せております。
 
 改めて言うまでもないでしょうが、この事件で一番重要なのは藤井市長が収賄を行った証拠が全くないという点です。警察が証拠として挙げているのは先ほどにも書いたように社長の口座から現金が引き出された記録だけで、そのお金が藤井市長に行ったという根拠が全く何もありません。これほど根拠薄弱、さらに金額が小さいにもかかわらず自治体の長たる市長をいきなり逮捕した上で長期間拘留するというのは異例というか常識外れとしか言いようがなく、さらに逮捕してからもこれという証拠や供述も出てこないばかりか、警察のあやふやな対応の方が目立つだけに冤罪ではないかと思えてきました。
 
 自分はこういう記事を書く際は比較的慎重に、本当にその容疑がクロなのかシロなのかはっきりしない段階で憶測を書くのはよくないと考えるため興味は持っても記事化は控えるようにするのですが、さすがにこの事件に関しては「おかしいのでは」と疑問を呈さず黙っていることの方が間違っているように思え、今回藤井市長を応援するような意味合いで意見を出すことにしました。
 地元ではどうかはわかりませんが全国規模だとそれほどホットイシューにはまだなっていないように思えますが、仮にこの事件が冤罪だとしたら警察は一体何をやろうとしたのか、それこそかつての村木厚子氏の事件の再来となるかもしれません。これは憶測ですが、藤井市長に対していきなり逮捕だなんて、裏で何かしらの意図が働いているのかもしれません。それこそ藤井市長の政敵が仕組んだとかそういうのだとか。
 
 あと最後に今回の記事を書くに当たってネットで過去の報道を調べていたところ、藤井市長が犯人であることを前提にニュース記事をまとめただけの人がいることに気が付きました。
 
 
 全体に渡って藤井市長を亜酒て批判するようなまとめ方がされており、私に言わせると公平性を欠いた内容に思えます。ただ中見出しに「情けない 情けない 情けない」となんか妙なフレーズ書いているのは妙に印象に残り、これって自分のこと言ってんのかな、これで冤罪だとしてもこのまとめ記事は残るのかななんて皮肉っぽく覚える次第です。まぁネットってこういうところあるしな。

2014年7月17日木曜日

小保方氏論文に対する早稲田の対応

 最近時事批評ばかりでオリジナリティのある記事が書けてないなと我ながら思うものの、昨日書いた「不死身の弁護士」という記事に関しては久々に読み物としてそこそこ面白く感じられるものが書けたと自画自賛に浸っていたところ、潮風大使さんからもコメントもらってなんかちょっといい気分に浸りました。
 そもそも時事批評が増えているのは単純に「これ書きたい!」とか「これ解説してみよう!」というような意欲がこのところ湧かず、とりあえず更新するために一応やっとくか的にその日に浮かんだものをパッと適当に書くことが多いためです。なんでこんなの増えてるのかというと何度も愚痴ってていい加減にしろよと自分でも思いますが、今借りている部屋の有り得ない騒音に集中力がかなりかき乱されるため、マジでやる気が失せているからです、今日なんかも過去最大音量、自分が全力で壁叩くよりもでかい音が室内で延々となってたので、引っ越してまだ二ヶ月弱ですがさすがにそろそろまた引っ越そうかと思います。引っ越す前に大家に向かって、「てめぇ知ってて黙ってたのか?」と一回くらいは凄もう。
 
 
 そういうわけでまた時事批評ですが、上記リンク先などの報道によると、STAP細胞の捏造で今年の流行語大賞も視野に入りつつ偽科学の歴史に名を刻んだ小保方氏がかつて早稲田大学で提出したコピペ論文について早稲田大学は、提出時の手違いということで小保方氏の博士号を取り消さないという発表を下しました。結論から述べると早稲田大学の理工学部は底辺もいい所だと思うのと同時に、今年この学部に受験する奴の顔とか見てみたいなと言ったところです。
 
 件のコピペ論文は私の記憶が確かなら全体の半分に当たる箇所がまるまるどっかのホームページからの引用で、実質論文の体を成していないものだったはずです。小保方氏はこの論文について草稿を間違って出したと言い訳して、早稲田の調査委員会は本来出そうとしていた完成版を確認したと述べていますが、本当に確認したのかな、本当にそんなのあるのかなと正直言って疑います。そもそも草稿の時点でコピーした文章を貼り付けること自体が私にとっては有り得ないとしか思えず、こんな言い訳で納得する人間というのは学問に関わってはいけないようにすら感じる次第です。
 
 そして一番肝心なのは、この時コピペ論文を出した小保方氏は後年、STAP細胞論文で加工した画像を出すは、そもそも内容自体が捏造としか言いようのない実験結果を出すなど、大きな問題を起こしているという点です。仮にこの博士号取得の段階で彼女を学界から追放していれば、博士号などやらなければ日本科学会の歴史と信用に泥を塗ることもなく、理研のかねてから問題ある体質も明るみに出なかったと考えると早稲田理工学部は小保方氏を致命的な点で助長させたとしか思えません。言ってしまえば、本来排除すべき人間を世に送り出してしまったというべきか。
 
 聞くところによると早稲田発の論文では小保方氏以外にもコピペの疑われるものが多数見つかっているとのことで、今回の子の小保方氏への対応はほかの人間への影響拡大を恐れてのもの、処分を広げないためのものとみて間違いないでしょう。しかしそれが許されるかと言ったらそんなわけもないし、そもそもそういう質の低い人間が教育を担っているということが分かったのだから潔く落ちぶれるのが本来あるべき姿ですし、そういう意味でこんな問題起こしておきながら早稲田理工学部に入ろうとする間に対して私ははっきりと軽蔑します。
 
 この問題に限るわけじゃないですが、どうしてどの組織もよりによってこんな無責任な奴がと思える人間が責任を負う立場に上るのか不思議でしょうがありません。大分前に皮肉って「日本じゃ無責任な奴が昇進して責任のある奴は落とされる」と書きましたが、あながち間違ってないし、また日本人も世の中そうあるべきだという態度が少なからず見えます。

2014年7月16日水曜日

不死身の弁護士

 以前ネット上で、「國松長官ってタイラント並にタフじゃね?」という議論が起こりました。この國松長官というのは1995年に何者かに狙撃されて三発の銃弾を受けた國松孝次元警察長官のことで、この事件で使われた銃というのが「コルト・パイソン」という口径の大きい弾を使用する銃だったのですが、國松元長官は手術中に三度も心臓が停止するなど危険な状態となりながらも無事回復を果たしました。
 この時使われた「コルト・パイソン」なのですが、この銃は有名なホラーアドベンチャーゲームの「バイオハザード」にも出てくる銃で、ゲーム中では強力な威力を誇る銃として出てきます。その威力たるや雑魚のゾンビだったら確実に一撃でふっとばし、ラスボスである前述の「タイラント」という敵にも有効な武器となります。こんな銃から発射された弾を三発も受けていながら生還したということで、「ゾンビ<國松元長官≒タイラント」という妙な図式が成り立ち、上述の様な議論となったわけです。
 
 なおこの事件ですが、実行犯は結局逮捕されないまま現在では時効となったものの、事件当時に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教が警察の捜査をかく乱するために実行したのではないかと疑いの目が向けられていました。実際はどうだったのか、現在公表されている材料からだと私には正直判断しかねないものの、時効となった際に警察幹部が、「それでもオウムが怪しい」と主張したのはちょっと負け惜しみもひどいのでは、犯人を捕まえられなかったのにいうセリフなのかなとやや不審に感じました。
 ただ警察がオウムを当時に疑ったというのは無理もない話で、実際にオウムは地下鉄サリン事件以降に警察捜査をかく乱するために物騒な事件を起こしております。そもそも地下鉄サリン事件自体、公証人役場事務長逮捕監禁事件でオウムに捜査の手が伸びようとしたことから疑いの目をそらす、捜査をかく乱するという目的で起こされたものでした。
 
 以前からこのブログで取り上げていますが、オウム事件についてはいずれしっかりとまとめ直して見たいと前々から考えてて密かに当時の事実などを調べているのですが、最初に挙げた國松元長官も相当タフな人でしたがそれに負けず劣らずタフだったというか不死身もいい所じゃないかと思える、滝本太郎弁護士について今日は紹介します。
 
滝本太郎(Wikipedia)
 
 滝本弁護士はオウム真理教が殺人を含む暴力的な手段を用いるきっかけとなった坂本弁護士一家殺害事件の被害者である、坂本弁護士と旧知の間柄だったことからオウムの被害対策弁護団に加わり、まだオウムが世間に広く認知される前の段階から脱会者の救済を行いながらオウムに対し激しい批判を繰り返しておりました。そうした活動の中には麻原彰晃が超能力を持つ証拠だとして空中浮遊をした写真を出していたことから、「空中浮遊なら俺も出来る」と同じような写真を撮影して信者らに見せるというなかなかユニークな行動もあり、こういった活動から滝本弁護士が関わった信者の大半は脱会していったそうです。
 ただこうした滝本弁護士の姿勢はオウムにとって目障り極まりなく、自然の流れというかオウムの殺害対象リストに載ることとなります。そして実際に暗殺計画が実行されたのですが、なんと滝本弁護士はオウムに4度も暗殺が仕掛けられながらも無事に生きながらえるという驚異的なタフネスぶりを見せています。その内訳は「滝本太郎弁護士サリン襲撃事件(Wikipedia)」に詳しいですが、簡単にまとめると下記の通りです。
 
1、駐車中の車のフロントガラスにサリンが噴霧され、一時視力が落ちたものの命に別条なし
2、車のドアノブにVXガス(液状)が塗布されるも、手袋をはめてたのでノーダメージ
3、同じく車のドアノブにVXガス(液状)が~以下同文
4、ボツリヌス菌が塗られたコップにジュースを注がれ飲むがノーダメージ
 
 どれをとっても「これでどうして死ななかったの!?」と思うくらいガチな暗殺が仕掛けられていますが、滝本弁護士は悉く切り抜けて現在においても元気に存命されています。無論、オウムという危険な団体を相手にしていたことから滝本弁護士は日頃から対策などを取っていたでしょうけど、それにしてもこの危機の潜り抜け方は不死身と言ってもいいんじゃないかと思います。逆を言えば、カルト団体やヤクザ団体を相手にする警察官や弁護士関係者は、常にこのような危険と隣り合わせで仕事をされているのだということも示唆しており、これらの仕事をされている方には本当に頭が下がります。
 
 なおもはや私の趣味と言っていい赤軍派など極左団体の関係史においても、警察官が刺されたり撃たれたり、果てにはその家族が爆殺されるといった悲劇が70年代前後には頻繁に起こっていました。そう考えると戦争がないだけでも十分に大きいですが、近年の日本は本当に平和というか安全になったと思えます。これは時代が変わったためか、それとも社会が成熟したためか、どちらであるかについては議論の余地がありますが、どっちにしろ社会をいい方向に持っていこうという努力は続けなければと思う次第です。と言っても、そんなの思うの私だけか。

2014年7月14日月曜日

他の家電を吸収するi-Phone

 上記の写真は上海にある某ショッピングセンターで撮ったものです。それにしても何故トーマスが戦車に、これでは「戦車トーマスじゃん」といいながら撮影しました。
 あとこのブログで部屋の騒音がマジヤベェって中学生ばりに吠えてたら最近やたらあちこちから「騒音大丈夫?」って聞かれます。正直に言って大丈夫じゃなく、聞こえてくるのは午後7時から9時までの二時間であるものの、この間全力で壁を叩くような低音が部屋中に鳴り響いて椅子に座っていても音波の振動を確実に感じられます。日本だったら経営者を半殺しにしても許されるレベルだ、本気で早く引っ越そうかな。
 
 話は本題に入りますが、先週土曜に上のトーマスが待っているショッピングセンターに上海忍者とともに訪れて携帯電話を買ってきました。今まで使ってたのは2010年に買ったおもちゃみたいなlenovoのフューチャーフォンで、今回勝ったのはサムスン製ですが私にとって初めてスマートフォンです。行く前は日本にいる友人が気にしている「小米(シャオミー)」というこのところシェアを急拡大しているスマフォにしようかと考えていましたが、改めて商品を見比べてみると結構サイズが大きい上に角ばってて、ポケットに入れていると不都合が起こりそうだと思えたので直前でサムスンの比較的小サイズの電話にすることにしました。なお価格は1300元(約22,100円)のところを1180元(約20,060円)にまけてもらいました。
 
 店頭ではi-Phoneも勧められましたが、みんな持っているのを自分が持つことは宿命的に多分許されないので買わなかったものの、このi-Phoneについて先日、訪問先の会社社長から面白い話を聞くことが出来ました。聞く人からしたら何をいまさらあたりまえなことをと思われるかもしれませんが、その話というのも「i-Phoneがすべての家電を吸収した」というものです。
 
 その会社では電子部品、具体的にはプラスチックで作る射出成型品とその金型を製造するメーカーなのですが、周辺にある同じような金型メーカーはここ数年で日系を含め大分撤退というか清算をしたと話していました。かくいうその社長の会社も結構じり貧で大変な状態らしいのですが、その原因の一つとしてi-Phoneによって家電部品の大半は消えてしまったからだとおもむろに話してきました。
 社長曰く、「かつてはラジカセがあり、デジカメがあり、テレビがあり、ビデオプレーヤーがあり、携帯電話があったが、これらの家電の機能は現在、i-Phone一つですべて代替できる」と話し、それまでバラバラに機能が別れていた家電がi-Phoneというかスマートフォンに集約されたため、部品メーカーからしたらたくさん作る必要のあった部品が必然的に少なくなり、仕事も自然と減っていったとのことです。考えてみれば当たり前ですが今の今までこういう視点がなかっただけになかなか新鮮に感じられ、その後も話を聞くと、もはや家電という弱電分野の業界自体がフォックスコン(ホンハイ精密)など一強を除いてもう駄目なのかもしれないとまで言い出し、セットアップメーカーのパナソニックやシャープもこの分野じゃもう立ち直り効かないのではとも話してました。
 
 改めて内容をまとめると、それまで映像を見るならテレビ、写真撮るならカメラ(デジカメ)、ネットするならノートパソコンをそれぞれ買う必要がありましたが、現在に至ってはもう全部i-Phone一つで済んじゃうのも事実です。写真にこだわったり自分みたいに毎日馬鹿みたいに長い文章をブログに挙げて騒音の愚痴吐く人間ならともかく、人並みにこれらの機能を使う人間からすればi-Phone一つでもう十分でしょう。となるとほかの家電なんてもういらないって話です。
 これは私の予想ですが、こうした他の家電や電子機器の機能をスマートフォンが吸収していく流れは今後もしばらく続くと思います。差し当たって起りそうなのは最早完全吸収したカーナビの機能に加えてETCもスマフォで済んじゃうようになり、果てにはクレジットカードの機能も奪うかもしれません。多分、画面のタッチパネルで指紋認証式が普及したら十分いけるのでは。
 
 家電業界というのはやっぱ種類があってナンボで、種類が減るということはすなわち市場そのものが小さくなることと同義で、特にパーツメーカーからしたら死活問題としか言いようがないでしょう。実際に私が今所属する会社もまだ自動車業界向けの販売は堅調なものの、弱電分野はもう目も当てられないといった状態です。一番悲惨なのは折り畳み式のガラケーに使ってた折り曲げることのできるヒンジ作ってた会社だけど。
 
 この流れが良いか悪いかという判断で行ったら良いも悪いもないというのが正直な感想です。ただ言えるのは時代の流れということで、少なくとも青少年たちには弱電分野を志すというのであれば覚悟を持っておけよとだけ伝えておこうかなと思います。

2014年7月13日日曜日

創業家列伝~塚本幸一(ワコール)

 自分は男なのでもちろん女性用下着をつけることはありませんが、知り合いの女性に「ワコールってどんなん?」って聞くとほぼ必ず、「高い。けど確かに質はいい」という答えが返ってきます。そんなワコールの下着は中国のお店にもよく並んで広告も見たりしますが、やっぱりこっちで売られてるのも高いです。
 
塚本幸一(Wikipedia)
 
 そんな日本の女性用下着メーカーの代表たらんワコールを創業したのは上記リンク先にある塚本幸一です。ワコールの創業は戦後の1946年に塚本が「塚本商事」を設立したことに端を発しますが、日本では明治維新後、日清日露戦争後、二次大戦後がいわゆる創業ブームに当たって現在を代表する多くの大企業が生まれており、このワコールもその例に洩れません。
 
 ワコールを創業した塚本幸一は生まれこそ宮城県仙台市ですが育ちは滋賀県の東近江市で、両親はこの地域に多い繊維問屋を商っておりました。なお豆知識ですが関西商人と来ると関東の人は大阪の人を思い浮かべがちであるものの、真の意味で商売がうまい関西商人とは紛れもなく近江人こと滋賀県民で、滋賀にルーツを発する創業家は実は多かったりします。
 
 塚本は1920年の生まれなのですが、この時代に生まれた日本人男子の宿命として二次大戦にも従軍しております。ただ塚本の場合は一線を画していたというか、あの忌まわしきインパール作戦に従軍しておりました。インパール作戦については以前に記事にした「猛将列伝~宮崎繁三郎」の中で気合入れて説明しておりますが、二次大戦中に日本軍が体験した戦闘の中でも最も熾烈且つ苦難に満ちた戦いで、従軍した兵士はいい加減な作戦を強制された上に補給もなく、文字通り全滅に近いほどの大損害を受けました。
 塚本はその熾烈な戦いを無事生き残り帰還することが出来ましたが、彼が所属した小隊では全55人中で生還者は塚本を含めわずか3人しかいなかったとのことで、塚本自身もこの体験を後年に至るまで深く影響を受けたと述べており、「自分は生き残ったというよりは生かされたのだろう」などと振り返り、どうせ拾った命とばかりに安定を求めず起業したと回想しています。この辺はダイエーの中内功の話しとも共通します。
 
 こうして日本に帰国後、起業した塚本ですが、取り扱う商品は恐らく両親が繊維問屋を営んでいたという影響もあったのでしょうが女性用アクセサリーから始めました。当初は細々とした商売だったものの、1949年に取引先からこれからは西洋の衣装が流行るとブラ・パットを持ち込まれたことから転機が生まれます。これは売れると考えた塚本はパットを固定するための紐をつけてブラジャーを開発し、従業員や生産工場を整備した上で現在のワコールの源流が出来たわけです。
 当時の塚本の状況について昔にテレビ番組で特集が組まれていたのを見ましたが、中内功が「物がたくさんあるということが豊かなことだ」と主張したのに対して塚本は、「女性が美しく着飾れる時代こそが豊かな時代だ」として女性用下着・衣類の生産販売に従事したとのことです。どちらも成功した後から格好いいこと言っただけなんじゃないかと思うものの、両者ともに凄惨な戦争体験を持った上で話しており、なおかつ「豊かさとは何か?」を述べているのは現代人とは別の哲学を持っていると感じます。あと創業間もない塚本についてその番組では、「奥さんと共に毎日ちゃぶ台でブラジャーを弄り、ああでもないこうでもないなどと商品開発にいそしんだ」などと取り上げてて、周囲からはやっぱ変わった人みたいに見られてたようです。こっちは日清食品の安藤百福とおなじだな、向こうのが明らかに変な人だったけど。
 
 話は戻りワコールの成長史ですが、ブラジャーの販売を始めたもののやっぱり当初はうまくいかず、初年度には赤字も在庫もかさみいきなり大ピンチを迎えます。さすがに塚本も憔悴していたそうですがここから妙な負けん気を持ち出して、まだ従業員が9人しかいないのに、「今後50年で世界制覇だ」とばかりに、五ヶ年計画成らぬ五十ヶ年計画をぶち上げます。そのやる気が天に届いたのか徐々に業績は拡大していきますが、1962年には労働争議が起こり生産も停滞化します。ここでも塚本はまた妙なやる気を出して、「わかりました、それじゃあこれからは労組の要求を100%飲みます」なんて言い出し、逆に労働組合の方が焦って塚本の提案受け入れを渋ると、「やるかやらないか、やる時はすぐ決めるんだ!」と怒鳴り返して争議をまとめたという、自分も今まで聞いたことのないような荒業をやってのけてます。
 
 その後も折に触れてワコールの苦難はたびたび訪れ、自分は生まれてないのでわかりませんが1970年にはユニセックスなどの思想が入ってきて「ノーブラ運動」が起こり、売上げが一気に減少したそうです。ただこの時も塚本は強気に、「落ち着け、この流れは一時的だ」と主張して社内の動揺を鎮めます。どうでもいいですが、現代において「ノーブラ運動」を女性から提唱しようものなら痴女みたいに見られるでしょうが、男性からは深い支持を得られそうだ。
 その後、ノーブラ運動は塚本の予想通りにしぼみはしましたが、今度は1973年にオイルショックが起こり原材料費が一気に高騰します。ここで塚本が取った行動はまたも破天荒な、「お値段据え置き」こと、値上げ凍結でした。ほかの物価が高騰する中で従来価格を維持したことからワコールは大きな支持を得ましたが、その背景では徹底的なコストカットに取り組んでおり、こうした経営体験が「失われた十年」という不況を越え続く現代のワコールの原動力になっているかもしれません。もっとも現代では冒頭に述べたように「ワコールの下着は質はいいが高い」と認知されてますが。
 
 度々の危機を潜り抜けた塚本は1987年に社長職を退任しますが、その後も京都、並びに関西財界で有力人物として振る舞い、松下幸之助とも親しく付き合っていたそうです。中でも笑えるのは京都府知事をしていた蜷川虎三とのエピソードで、内心では認め合っていたようですが何故か顔を合わすと仲が悪く、塚本はわざわざ玄関に虎の毛皮を敷いて通るたびに3度踏んだり、蜷川も蜷川で塚本のことを「女のふんどし屋」などと呼んでいたそうです。恐らく、本当は仲が良かったんじゃないかなぁこの二人。
 なお「ふんどし屋」というワコールの呼び方ですが、これは実際に今の京都人も「パンツ屋」などと呼んでいます。京都は新参者に厳しい風土があり任天堂も「花札屋」等という蔑称をまだ受けています。京都のお菓子屋の組合に所属するには「創業100年以上」という条件があるそうで、ワコールも任天堂ももうちょい年期経たないと認めてもらえないかもしれません。
 
 塚本に対する私の評価を述べると、なんだかんだ言いながら女性用下着一本を貫き通して社業を成長させたことと、「ワコール」というブランドを日本はおろかアジアにまで広げたその手腕は疑うものがありません。また個人的にワコールという会社が行うマーケティング調査というのがなかなか面白く、以前に見た物だと「胸を小さく見せたい女性は少数ながら存在する」という結果から胸を小さく見せるブラを作って成功したり、都道府県別平均バストの統計を作ったりと、こういってはなんですが視点が非常に面白いです。
 会社の歴史というか塚本の決断を見ていると全体的にユニークな印象を覚え、それがしっかり会社哲学に根差したことこそがワコールの強みだと個人的に思える次第です。
 
 
  参考文献
「実録創業者列伝」 学習研究社 2004年発行

2014年7月11日金曜日

ベネッセの個人情報流出事件について

 今日暗い部屋を照らすためにパソコン使用時に使う電気スタンドを買いに近くのショッピングセンターへ会社帰りに寄ってきましたが、なんかセールをやってたのと金曜の晩ということもあってか人でごった返してました。その中で目を引いたものが二つあり、一つは中国で生産された「あきたこまち(袋にはちゃんと日本由来と書いてある)」4kgが20元(約340円)で売ってたことと、もう一つは床にところどころで見られる黄色い水たまりでした。後者は目の前で水たまりが出来る過程もしょっちゅう見かけるし、この前も地下鉄内で子供が洩らしたあとに何も知らない乗客がその床の上を歩くという、見ていて真実を教えたくなる場面に同僚と遭遇しました。まぁなんていうか、日本じゃこの辺りは考えられないだろうな。
 
 話は本題に入りますが、児童教育雑誌で有名なベネッセが大量の、というか現代の日本にいる子供の8割くらいに当たる個人情報を流出した件で株価が面白おかしくなったりしてて中国から見ていても非常に楽しい状態です。皮肉っぽい言い方ですが自分はニュースというのは経済ニュースも政治ニュースも殺人事件もすべて娯楽だと考えており、逆に娯楽としてニュースを楽しめない奴は好きじゃないので臆面もなくこういうことを言うことにします。もうそんな気兼ねする立場でもないし。
 
 話は本題に入りますが、今回の情報流出事件は情報が流出したベネッセのみならず、その流出した個人情報を基にDMなどを送っていたとみられるジャストシステムに対しても批判が高まっており、株価も仲良くストップ安になるなど非常に楽しい経過を辿っております。当事者らにとってはたまったものじゃないでしょうが一応今は他人の身分なので好き勝手言わせてもらうと、私は今回の事件でベネッセとその会長の原田氏に対しては同情を覚えるものの、ジャストシステムに対してはいい機会だからこの際、流出した情報を使ったものの末路として構成語り継がれるようなモデルになってもらいたいなどと考えています。
 
 報道によると今回の事件はベネッセ本体よりも情報の管理・運用を委託されていたIT企業の関係者の手から流出した可能性が高いとのことで、私も状況から考えるにその説が有力だと考えております。こういう情報というのはどれだけセキュリティを高くしても内部の人間が色気出したらどうあがいても流出してしまうもので、逆に言えば企業を破滅させる目的で敢えて流出するという自爆テロみたいな行為をされることもあり得ると考えたら完全な防衛手段はないと言っていいでしょう。そんな中で今回はベネッセという企業内部ではなく外部企業の間からとなるとベネッセはいわば被害者で、世間から批判をされるのは仕方ないにしろ私個人としては運が悪かったなどと思え同情心を覚えるわけです。
 
 一方、ジャストシステムに関しては内心いい気味だと思えると共に、その対応の悪さはベネッセとは雲泥の違いと言っていいでしょう。ベネッセは情報流出の事実を発表するとともに毎日、恐らく確信犯でやってるのでしょうが1日おきに対応オペレーターを増やしたとか、外部からの流出の可能性があるとか、実はもう大体誰が流出したかわかっていると順を追って詳細を発表し、この問題に取り組む姿勢を見せています。何よりも批判覚悟ではっきり謝罪して妙な言い訳をしなかった点は危機対応として及第点でしょう。
 それに対してジャストシステムの方は木で鼻をくくったような対応と言ってはなんですが、「悪意を持って流出した情報を使用した事実はない」という文言で反論し、暗に情報は名簿業者から買ったものでベネッセからの流出した情報とは知らなかったという言い訳を展開しています。しかしこの言い訳は通じるはずもなく、名簿業者から個人情報を購入してそれを販促手段に使っていたということは、正当な手段で取得したわけでもない個人情報を商売の具にしていたと同義です。まぁどこもやってることなのですが、ジャストシステムは事態をわかっていないというか危機対応についてテレンス・リーにでも講義でもしてもらったらどうかななどと思えるくらい呆れた対応です。
 
 中国来て始めて給料入った週末のせいもあって文章のリズムがいいですがこのままもう少し続けると、この事件で救済すべき被害者は誰か、そして真に首をくくべきは誰かということをこの場で問いたいです。最大の被害者は言うまでもなく個人情報が流出した児童、そしてその家族であることは間違いありません。では二層目の被害者は誰かというと、察しが付くでしょうが私はベネッセだと考えます。
 なら加害者は誰か?ベネッセの情報を持ち出した人間なのか、その情報を売った名簿屋なのか、これらももちろん加害者に入りますが最大の加害者となると私はそれはジャストシステムだと断言します。
 
 かつて個人情報保護法案が成立した際、この法律の運用や概念を巡って当時は大きな議論が起こりました。ただその議論はどれもプライバシー保護はどうするのか、自治体はどう情報を管理するとかいう運用面の話が多く、私がガチで一人で吠えてた誰を加害者にするのかという議論はあんまり盛り上がっていませんでした。
 この法案は言うまでもなく個人情報の保護を企業や自治体などに求める目的で作られ、流出させた組織は相応の責任を取ることを求めております。しかし私は当時から組織内に不心得者が混ざるとどれだけ防衛策を講じても情報は流出してしまうと考え、情報を管理する側に責任を求めるのであればむしろ、流出したと思われる情報を使用した者を片っ端から罰するという、いわばインレットではなくアウトレットを叩く法案にすることで個人情報はより防衛しやすくなると主張しており、当時の大学の授業でもマジで一人で熱く熱弁してました。
 
 何度も繰り返しますがどれだけ努力しても情報は流出してしまいます。しかし流出した情報、言い換えれば本人の同意なく所持し運用した業者は例外なく処分出来るのであれば誰もそんな危ない行為に手を染めることもなくなるのではないか、というのが私の考えでした。しかしこんな主張するのは私以外にはあんまいなかったようで、今回の騒動を見ていてもこういう意見を述べる人はまだ見かけません。
 仮に現行の個人情報保護法案に沿って考えるのであれば、被害者への対応や保証はベネッセかその委託先企業が追うこととなるでしょう。それに対してジャストシステムは、なんでもやっていいなら偽計業務妨害を追う可能性があるかもしれませんが、少なくとも個人情報保護法に基づく処罰は受けることはないでしょう。ほかの人は知りませんが、これっておかしくねと私は思うわけです。
 
 そもそも法人向けならともかく個人向けのDMとか余計な広告、電話勧誘は非常に鬱陶しく、須くこういうことやる業者は叩き潰されるべきでしょう。なお昔話をすると、私が通っていた中学校では同じ学年の人間が予備校に500円で生徒名簿を売ったという噂が流れていました。実際その生徒は私も知っていましたが如何にも名簿を売りそうな奴で、なおかつ中学生をたぶらかす大人もいることだからどうやったって抑えようがないよなと当時に感じたことが先のアウトレットを叩けというつながったのだと今は思います。にしても、安定さという意味では現在の自分のが上だが、やっぱり学生時代の方が問題や関心に対する鋭さというか勢いは凄かったなぁ。