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2017年1月20日金曜日

最近好きな俳優

 また例年の如く同僚から、「寒くないの?」と言われるようになってきました。決して誇張ではなく、今までの人生で一度も背広の上にコートを着たことはなく、今後もずっとこのスタイルが続くでしょう。

 さてあまり書く話題もないので俳優について少し書こうかと思いますが、昨年の大河ドラマ「真田丸」は近年の大河としては比較的高視聴率で終わったと聞きます。生憎私は見ていないのですが真田丸と同じ三谷幸喜氏が脚本を書いた大河ドラマ「新撰組!」は学生時代に通してみており、この時によく友人らとの間で、「一人飛び抜けた俳優がいるよね」と話していました。想像がつくでしょうが、その俳優こそ真田丸で主演を演じた堺雅人氏でした。
 新撰組!では堺氏に限らずとも三谷氏がその人脈を使ってかき集めただけあって実力ある俳優(主役に関しては目をつむりました)が集まっていましたが、その中でもそれ以前には知名度があまり高くはなかった堺氏が確実に頭一つ抜けており、一体こんな俳優がどこに隠れていたのだと当時よく話していました。演劇をしていた先輩はさすがにその道とあって堺氏の事を知っており、テレビにはそれほどでないが舞台俳優の中では伝説の人だと当時話していましたが、現在だと「半沢直樹」を筆頭にテレビや映画で引っ張りだこなため、十年一日な感じも覚えます。

 そんな堺氏も凄いと思うものの、地味に今一番評価している俳優は誰かといったら真田丸でお兄ちゃんの真田信之を演じた大泉洋氏です。かつては「ゲゲゲの鬼太郎」であのねずみ男を演じただけあって堂々たるキャリアの持ち主ですが、実はこれまで彼の演技はそれほど見たことがなかったものの、前に「アイアムアヒーロー」という漫画原作で大泉氏が主演を張った映画を見る機会がありました。
 元々の大泉氏の出で立ち近い感じがする役とはいえ、一言でいえば生き写しでした。漫画自体はそれまで読んだことがなかったものの、ネットで漫画の絵と大泉氏の映画の中のシーンを比較する画像を見たところ有り得ないくらいに一致しており、またその細かい表情の使い分けなども、他の俳優を明らかに食ってしまう演技ぶりで見ていてずっと舌を巻いてました。

 特にこの映画で主人公の男は時折妄想をする癖があり、現実とは違ってかっこよくヒロインを助けたりする妄想をするとこも映像化されているのですが、そのかっこいい姿の妄想とやや情けない姿の現実での表情の違いなど、これが同じ人が演じているのかと思うくらい異なっています。この辺の見せ方は大泉氏の演技もさることながら、カットの切り方に監督の妙を感じます。

 前まであまり演技とか細かく気にしていませんでしたが、やはりこの「アイアムアヒーロー」を見て二枚目よりも三枚目を演じる方が明らかに難しく、それを演じこなす俳優はやはり偉大だと思うに至りました。なおこの映画ではお笑いコンビ、ドランクドラゴンの塚地武雄氏も出演していますが、演じる役がキャラクターがあっているというのもあるものの、地味に演技がめっちゃうまかったです。芸人やるより俳優のが向いてるんじゃねぇかと正直思います。

2017年1月19日木曜日

世界の四大監査法人と日本の勢力図

 最近なんかやたらとこの方面の解説を人にすることが増えているので自分の知識整理も兼ねて世界の四大監査法人ことビッグ4とその日本における系列を簡単に紹介します。

4大監査法人(Wikipedia)

<四大監査法人の順位>
1位:プライスウォーターハウスクーパース (PricewaterhouseCoopers) - 略称:PwC
2位:アーンスト&ヤング (Ernst & Young) - 略称:E&Y
3位:デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu) - 略称:DTT, Deloitte
4位:KPMG (KPMG)

 手っ取り早くWikipediaの記述を引用してこちらの記事に書かれているランキング通りに順番を並び替えました。これを覚えておけば明日の試験もバッチリ!

<四大監査法人って何?>
 そもそも四大監査法人とは何ぞやということですが、企業、特に上場企業は年度ごとの業績を市場へ公開するに当たり独立した外部の監査法人から監査を受けなければなりません。その監査を担当するのが監査法人で、その中でも世界でトップ4に入るのが上記の四大監査法人に当たり、そこそこ歴史を持っているのと会計業界の中では明確にグレードが分けられていることによって四大監査法人とそれ以外では色んな意味で大きな隔たりがあります。
 特に近年はグローバル化に伴い大企業は世界各地に拠点を持つのが当たり前となっていますが、監査に当たっては国内だけでなく系列の海外法人を含めてまとめて業績を監査して報告しなければなりません。そうした国際監査業務を担えるだけのグローバルネットワークを持つ監査法人は限られる、というか実質的に上記の四大監査法人以外には処理できないため、棲み分けといっては聞こえはいいですがグローバル企業の監査業務は実質的にこの四大監査法人によってほぼ独占されています。

<グローバルネットワークとアライアンス>
 四大監査法人のグローバルネットワークについてもう少し説明を加えておくと、各国・地域の拠点を業界用語では「メンバーファーム」と呼んでおりますが、拠点同士の人的交流や情報共有はあっても資本関係は一切ありません。あくまでそれらメンバーファーム同士はそれぞれの国・地域の監査法人が「提携」または「連盟」を組んでいるだけであって、航空業界におけるスターアライアンスなどのような「アライアンス(連盟)」関係に過ぎません。とはいっても、利害関係の衝突から分離したりするようなことはほぼないので、普通に見たり聞いたり接したりする分には通常のグループ会社みたいに思っても問題はない気がします。

<日本における四大監査法人>
 経済大国(死語?)である日本にも当然、四大監査法人のメンバーファームは存在しているので以下に各系列の拠点を列記します。

・PwC:PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監査法人
・アーンスト&ヤング:新日本有限責任監査法人
・デロイト トウシュ トーマツ:有限責任監査法人トーマツ
・KPMG:有限責任あずさ監査法人

 上記の各法人名は社会人経験者であっても監査法人と関わる業務の人は案外少ないので列記されてもピンとこない人が多いかもしれませんが、最近は大企業の会計不正事件が多いため中には反応できる方も増えているかもしれません。
 そんな日本における四大監査法人の勢力図はどうなっているのかですが「公認会計士ナビ」がさすが業界専門メディアなだけに非常にわかりやすくまとめているので以下に主たるデータを引用します。

  あずさ 新日本 トーマツ あらた
人員総数 約5,400名  6,284名 6,185名 2,219名
公認会計士数  3,004名  3,386名  3,077名 767名
監査証明
クライアント総数
3,325社 4,084社 3,574社 931社
非監査証明
クライアント数
2,073社 3,583社 3,526社 1,041社
業務収入 83,157百万円 99,175百万円 89,177百万円 33,310百万円

 見ての通り、PwC系列のあらた以外の三法人は割と拮抗する勢力図となっているのですが、あらた一つだけが他と比べて圧倒的に小さい規模となっています。PwCは世界ではナンバーワンなのに何故日本のあらたは四大監査法人ファームの中で最低なのかというと、地味に過去の歴史が影響してたりします。

<あの頃はいろんなことがあった>
 あらた監査法人は実は歴史が浅く、2006年の設立でまだ十年ちょっとしか経ってません。ではPwCはそれまで日本にファームを持っていなかったのかというとそうでもなく、かつて1968年設立の中央会計事務所、2000年に青山監査法人が合併してできた中央青山監査法人がPwCの日本ファームでした。
 中央青山監査法人は世界同様に出来た当初は日本最大手の監査法人でしたが、中央監査法人の頃を含めると担当していた顧客には山一證券、ヤオハン、足利銀行などと、日本の主たる会計不正事件の歴史を彩る面々が顔を揃えていました。特に2005年に発覚したカネボウの粉飾事件では所属する会計士が粉飾を指南していた(その会計士は後に自殺)として、金融庁から監査業務の2ヶ月間の停止が言い渡されるという前代未聞の事態に発展したことからPwCは中央青山との提携を切り、日本で新たに「あらた監査法人」を設立してこちらを日本ファームとすることにしました。

 あらた監査法人の設立に伴い中央青山からは多くの会計士やスタッフが顧客ごとあらたへと移籍しているのですが、ぶっちゃけていうと看板の付け替え以外の何物でもなく、前に話した人も別に否定してませんでした。
 一方、提携を切られた中央青山の方はそっちはそっちで提携を切られた後も存続しており、こっちもこっちで「みすず監査法人」と看板を付け替えはしたものの、再スタートを切った直後に今度は日興コーディアルグループの粉飾を見逃して適正意見を出していたことが明るみとなったのが止めとなり、顧客離れも相次いだことから業務撤退を宣言して解体される事となりました。なおこの際、みすずの京都事務所が独立して出来たのがあらた同様に日本のPwCメンバーファームとなっている京都監査法人です。

<業界変動の波>
 地味に、といっても関係ない人には全く関係ないのですが、最近会計業界では業界変動が起こっているというか結構揺れ動いています。というのもここ数年、日本でも巨額の会計不正事件が頻発し、それによって一社で何十億って金が動く大口クライアントの監査法人が切り替えられたりしているからです。
 最も代表的なのは東芝で、元々新日本監査法人がここを担当していたのですが知っての通り巨額の不正が明るみとなったことで監査業務の依頼先が切り替えられたのですが、この切り替え先が業界関係者にとっては「まさか」と思われたあらた監査法人でした。

会計士から見た「東芝の監査人の交代」について(プロボノ会計士の日記)

 一体何故あらたが東芝を引き受けることに驚かれたのかというと、前述の通りあらたは四大監査法人の日本ファームの中で最も規模が小さく、東芝ほどの巨大グローバル企業の監査業務をピンチヒッターで担当するには圧倒的にマンパワーが足りないと思われていたからです。上記ブログの方もまさにそのような見解だったようで、「以前から、東芝の監査契約を受注するのは人員数的に、トーマツかあずさだと業界内では言われてきました。」という風に言及しています。

 このあらたが東芝を担当する件について知人の会計士に話を聞いたところ、これまた過去の会計不正事件が影響していると教えてくれました。曰く、あずさは以前にオリンパスを担当していたため当局が認めず、トーマツに関してはわからないと言っていたのですが、恐らくトーマツは文芸春秋の報道によると東芝の会計不正処理を指南していたと言われ、それが影響して認められなかったのだと私は考えます。っていうか、新日本に監査業務を依頼していながらトーマツにコンサルタント業務を依頼していた東芝も色々とあれだなと思いますが。

 あくまで噂レベルですが、東芝を担当することなってあらたの方では人員を増やしたり引き抜きをしているとも聞くだけに、今後もこの流れが続くようであれば会計士業界ではまだまだ変動が起こるかもしれません。企業を生かすも殺すも会計次第と言いますが、案外こうした過去の巨額不正事件と照らし合わせて業界の変動を眺めると楽しいものです。

  おまけ
 前に会計業界に詳しい友人が教えてくれましたが、合併淘汰が進み現在の形になる前は「八大会計事務所」という言葉があったそうで、この言葉を使い出したのは八番目の監査法人だったそうです。物は言いようだ。

2017年1月17日火曜日

中国の主要な購買層

 先月、中国に赴任したばかりの広告業界関係者相手にこんなアドバイスを送りました。

「日本において女子高生は主要購買層で彼女らの消費傾向は見逃せない大きな指標だが、中国の場合はそもそも中高生が街中を歩くことすらほとんどないため、購買層としても成立しない」

 説明するまでもないでしょうが日本では女子高生がどういったものにお金を消費するのかというのは、収入がアルバイトとお小遣いに限られているため使用できる金額に上限があるとはいえ、社会の消費傾向を読み解く上では非常に重要な指標です。特にファッションやブランド品においては強い影響力があるだけに、90年代ほどとはいわないものの大きな存在感を持っています。

 しかし中国だと、以前にも一回書いたことがありますがこっちの中高生はマジで勉強漬けのため、休日とかでも街中歩いていて中高生らしき少年少女を見ることはほぼありません。そのため社会で彼らが取る消費行動はほとんどないというかほぼないって言っていいくらいで、学用品ならまだしも消費傾向を図ろうと彼らを観察した所で得るものはほぼありません。
 この説明に上記の広告業界関係者も納得していて我ながらいいお土産持たせられたなと悦に入っていましたが、ここからさらにもう一歩話題を進めるとするならば、ならば中国ではどういった層が主要な購買層なのかということになります。結論から述べると、未婚の十代から二十代の女性と、事業家として成功したおっさん連中がやはり二大購買層であると私は睨んでいます。

 未婚の十代から二十代の女性、というよりOL層は日本でも主要な購買層として認識されていますが、こと中国においては日本以上にこの層の購買力が桁違いに高いとすら思います。というのも就労して賃金を得ながら育児費などといった消費科目がなく、実質的に家賃を除けばすべて自由に使えるお金になるからです。その上、中国だと最近は(昔から?)女性に貢がないと男は結婚できないという風潮になりつつあり、比較的貢がれやすいため男の収入すら吸収して消費するという購買力を持っています。
 またこれは私自身も驚いたのですが、案外こっちの若い女性は独身ながら住宅を購入して所有しているというケースが案外多いです。もちろん銀行などの融資を受けているのですが住宅バブルの追い風もあって購入した家を下取りに出して、よりグレードアップした新しい家の購入をしたりしていて、転売を繰り返して地味に億万長者なOLとかもいたりします。日本でも一時期は都内のマンションを購入するOLが見られましたが、最近はどうなんだろうな。

 もう一つの主要購買層の事業家のおっさんは、これまた日本とも共通していて、一発当てた成金だと思ってもらえばいいです。この層が成功してお金が余るようになってからまず買うのは決まって高級外車で、ランク的には数千万円するようなクラスです。そんな金あるなら従業員に還元してやれよと思うのですが、彼らも成功した証としてなんか儀式の様に高級外車を買い漁るのでとやかく言うべきではないのかもしれません。

 これ以外の購買層については大体は日本と状況が一緒で、子持ち夫婦であれば子供の育児費や教育費に家計支出の大半を取られるため一般消費品の購買力は先の二者に大きく劣ります。ただこの記事書いてて閃きましたが、日本だと知っての通り婚姻率が極端に落ちて独身世帯がかつてないほど多くなっており、この層が男女ともに大きな消費力、っていうか層別にみたら最高クラスに消費力持ってるんじゃないかという気がしてきました。もっとも三十代四十代の収入はずっと落ち続けているから、相対的な意味でしかないでしょうけど。

2017年1月15日日曜日

関ヶ原における謀略合戦

 決戦という単語を聞いて私の中で浮かぶのはワーテルローですが、日本においてはやはり関ヶ原が一番多く思い浮かべられることだと思います。実際に戦国最大規模の大兵力同士の野戦であって、参加兵数で言えば後の大阪の陣の方が上であるものの、日本史のその後の趨勢を決めた戦であることを考えると日本史上最大決戦といっても間違いないと思います。
 その関ヶ原の帰結ですが、知っての通り石田三成率いる西軍は小早川秀明を筆頭とする西軍参加武将の相次ぐ裏切りを受けて瓦解し、わずか数時間で東軍勝利の結果を迎えています。この結果について多くの解説などでは、「石田三成に人望がなく、また徳川方の激しい切り崩し工作を受けたことによって裏切りが相次いだ」と評することが多いように思えます。書いてある内容に間違いはないと思うものの、少し見方が違うというか「謀略」の下りについて言えば、実際には西軍側も激しく工作を行っていたことを考慮に入れるべきだと思います。

 上記に書いた通り関ヶ原の合戦ではあらかじめ徳川方から内応の約束を受けていた武将らが相次いで離反したことによって西軍は瓦解しましたが、その西軍の側でも実際には東軍側の武将に内応を求める謀略を手広く行っていたのではないかと思います。実際に何人かの武将にははっきりと西軍参加を要請する書状が届いていたことが確認されており、関ヶ原の直前においても東軍同様に頻繁な密書のやり取りがあったのではと私は考えています。
 しかしその時に西軍との間でやり取りされた東軍武将の密書は恐らく、大半が世に出ることなく処分されたことでしょう。というのも仮にそういった密書が残っていて徳川家に見つかりようものなら謀反の疑いをかけられお家取り潰しにも遭う可能性があり、日の目を見る前に内密に燃やされた密書が実際には相当な量があったのではないかと思います。

 これは三国志の話ですが曹操と袁紹が争った官渡の戦いが曹操側の勝利で終わった後、袁紹側の野営地から袁紹側への寝返りを約束する大量の手紙が見つかったそうです。実際には袁紹側から曹操側へ寝返った人間が多かったのですが当時の情勢ではどっち勝つかわからず、むしろ曹操側が圧倒的に不利に思われていたこともあり、曹操側でも多くの武将が身の安全を求め袁紹側とコンタクトを取っていたそうです。
 ただ曹操はそうしたきわどい状況であったことを口にして、「みんなもいろいろ大変だったと思うから今回は不問にする」といって折角見つけた手紙を中身を改めずに全部燃やしたそうです。もっとも、私が思うに曹操の性格からしたら既に中身は改め終っており敢えてデモンストレーションとして見てない振りして燃やしたのではないかと思いますが。

 話は関ヶ原に戻りますが、当時の日本の情勢もどっちが勝つか全く予見できない状況で、恐らく多かれ少なかれこの日本を二分した戦いに参加した武将は身の保全を考え、冷静にどちらが勝つのかを分析した上で、どっちが勝っても生き残れるような保険をかけていたと私には思えます。親子間で東軍西軍それぞれに参加した真田家のような例もありますが、他の武将も東軍に参加しつつ西軍にも連絡を取ったり、その逆に西軍に参加しながら東軍と連絡をみんな取っていたと考える方が自然な気がします。
 そしていざ本番の関ヶ原に至るわけですが、こうした「勝ち馬に乗る」という戦略であったためか関ヶ原の序盤は非常に局地的な戦闘にとどまっています。西軍側では宇喜多隊、島左近隊などほぼ三成の直参部隊だけが戦っており、東軍側もこちらは徳川家直参の井伊隊のほかは福島隊、藤堂隊くらいしか真面目に戦おうとせず、東軍の側にもどうも日和見のような姿勢を取っていたと感じる武将がちらほらいるように感じます。もっとも家康もその辺を知ってか、そうした裏切る可能性のある武将を敢えて前面には出さず後ろに控えさせたのかもしれませんが。

 結果的には小早川隊の離反を口火に西軍で続々と願える部隊が現れ崩壊したわけですが、それこそほんの少しのかけ違いによってはこれと同じことが東軍にも起こっていた可能性があると思います。少なくとも石田三成、徳川家康の両大将はその辺りをあらかじめ認識していた節があり、味方の武将が事と状況次第では裏切る可能性があると考慮した上で戦闘に臨んでいたと私には思えます。ただ西軍にとっては、小早川隊の離反はある程度想定していたものの毛利隊が全く動かなかったというのは誤算だったでしょう。

 そうした点を考慮すると徳川家の直参でないにもかかわらず積極的に戦闘に参加した福島正則、藤堂高虎の二人の存在は東軍にとっても非常に大きかったことでしょう。藤堂高虎は恐らく家康が勝つ方にブックして臨んだ結果でしょうが、福島正則について言えばやはり三成憎しで動いた結果だったと思います。加藤清正については近年、猪武者ではなく理知的な人物でもあったという評価が広がりつつありますが、福島正則は未だ猪武者然とした評価が続いているのもわけありです。

2017年1月12日木曜日

上皇呼称に関する報道について

 最近ジャーナリズム論ばかり書いているので今日は張り裂けそうになるような話でも書こうと思っていた矢先、また毎日がやらかしました。

<退位後称号>「上皇」使わず 政府、「前天皇」など検討(毎日新聞)
天皇退位後「上皇」に 政府検討 秋篠宮さま「皇太子」待遇(日経新聞)
天皇陛下の譲位 政府首脳、毎日新聞の「前天皇」報道を否定(産経新聞)

 これは全部今日出たニュースで、見ての通り毎日だけ明後日の方向向いています。恐らく「上皇」という言葉を使いたくない人間が適当なことを吹いて、細かく確認しないまま毎日だけが躍ったのがこの結末でしょう。場合によっては、毎日自身が話を作った可能性も毎日なだけにあり得ます。
 仮に「上皇」という呼称が好ましくないという証言者がいたとしても、それをそのまま伝えるということはその証言者を利するだけの結果を生むだけに、本来やってはならない報道です。それこそ政府や別の委員に事前確認してそういう議論があるのかを確かめるなど裏付けを取った上で、「上皇呼称に抵抗示す声も」などと書けばいいのに、はっきりと上皇はアウトみたいなこんな見出し作るなんてアホ以外の何物でもありません。また駄目な理由についても「上皇は歴史的な称号で権威を与えかねず」といっていますが、それ言ったら天皇って呼称の時点でアウトだろうし歴史を知らないにもほどがあるでしょうこれ言った人。
 悪いけど毎日はここ数年、滝のように誤報を垂れ流している印象しか浮かびません。

 さてそもそもこの報道で何故ここまで憤っているのかというと、かねてから私の中で評価の低い毎日がまたやらかしたというのもありますがそれ以上に、密かに「上皇」という言葉が復活することを待ち望んで止まないためでもあります。なんでそんなウキウキしてるかって、恐らく歴史好きという趣味もあって単純にうれしいんだと思うのですが、今上天皇が「平成上皇」と呼ばれたりする時代が来るのかと思うとそれだけで楽しくなってきます。
 それだけ待ち望んでるだけあって、私としては退位後の今上天皇の呼称は上皇以外有り得ないと考えています。歴史的にもずっとそうした使われ方がされてきている上、皇室の伝統を維持する上でも呼ばない理由はどこにもありません。

 歴史上だと恐らく後白河上皇と後鳥羽上皇の二人が有名なトップツーでしょうが、まさか現代でこの二人のような権力を上皇が持つなんてはっきり言えば頭のおかしい人しかいないでしょう。むしろ私はこれまでの生活における制約が非常に厳しかったと思うだけに、上皇となられた暁には今上天皇ご夫妻にはもっと自由な生活を与えてあげて、それこそマックにぶらりと現れビッグマック食べたりするような生活を送ってもらいたいものです。
 そういう点を考慮しても、お勤めから解放させてあげるという意味でも生前退位は特別法とは言わず恒久法にするべきだという立場も取ります。

2017年1月11日水曜日

最近の取材なき報道を見て

モーニング編集長が読者に謝罪 朴容疑者は「進撃の巨人」担当ではなく「掲載誌の創刊スタッフ」(スポーツ報知)

 例の講談社の漫画雑誌編集者が逮捕された事件についてそれほど興味は持ってなかったのですが、上記の記事を見て別の意味でなんじゃこりゃと驚きました。というのもこれまで度の報道でも逮捕された編集者は人気漫画「進撃の巨人」の担当編集者だったと伝えられていたにもかかわらず上記のスポーツ報知の報道では、

「『進撃の巨人』の立ち上げ担当と報じられていることは事実でないと否定。掲載紙『別冊少年マガジン』の創刊スタッフで、『進撃の巨人』を担当したことはない」

 と、同じ講談社の編集者のインタビューが載せられてあり、同じ掲載誌の起ち上げに関わったものの「進撃の巨人」自体は担当していないと書かれてあります。そうなると一体これまでの報道は何だったのかと思うと同時に、これまで誰も取材してこなかったのかという意味で二重に驚きました。
 私個人の記者経験から述べると、このような間違いは報道に置いては本来絶対に起こり得ないはずですし、絶対に起こしてはならない初歩的なミスであります。その理由を説明するため、取材を絡めた記事作りの過程を簡単に説明しましょう。

 まず普通の新聞社などでは自前で拾ってきた情報というのは案外少なく、大半のニュースネタは企業が出すプレスリリースや、共同通信や時事通信などの通信社が配信するニュースリリースであったりします。そうしたリリースによる第一報を受け取った後、編集部内で誰が書くか担当者を決めて、決まった後でその担当者は情報を再確認するための取材を行います
 この過程が一番大事なのですが、仮に共同通信のリリースをそのまま使用するというのであれば「共同通信はこのほど~」といったようにネタ元が共同通信であることを示す必要があります。しかしこれではメディアとしてややかっこ悪く、ただの聞き伝えでないことを示すためにもよそが報じているニュースであろうとニュースネタの当事者に取材して、直接話を聞いて情報を得る必要があるからです。そうやって当事者から話を聞ければ、今回の場合だと「講談社はこのほど~」という風に記事が書けるようになります。

 実際に私もそうした取材を何度もやっており、一番多かったのはプレスリリースのない日経新聞のスクープネタの裏付け取材でした。こうした報道だとネタ元は日経新聞しかないため「日経新聞はこのほど~」と書いたりすると非常にかっこ悪いだけに、そのスクープの当事者である企業広報に電話して、「おう、日経がこない報じとるけどほんまかいな?」と聞かなければなりません。その際に気を付ける点として、すべての用語や数字について一言一句確認を取るというのがあります。
 投資話であればその投資額は○百万円で本当に合っているのか、実行はいつなのか、合弁相手の名前は正しいのか、たとえ日経新聞がそれら情報について既に記事で書き記していても絶対に直接確認しなければなりません。ちなみに確認すると意外と相違があったりして、「おいおいちゃんと取材してくれよ日経さん」と言いながら記事書いてました。

 話は本題に戻ります。今回の講談社の事件に関して言えば講談社に対して直接事実確認していれば「進撃の巨人」の担当編集でなかったことは絶対に事前に確かめられたはずです。しかし実際にはほぼすべてのメディアで上記の誤報を掲載しており、中には連載起ち上げに関わった後で現在は担当を外れているという報道もありましたが、一体何故みんなして間違った情報を流してしまったのか。結論から言えば第一報を報じたメディアもしくは警察発表に対し、どのメディアも裏付け取材を行わず、そのまま自分で取材確認しないまま無断で引用して垂れ流したからでしょう。

 上記で述べた通り、私が記者だった頃は既報であろうと必ず裏付け取材を行っていました。しかし今回の一件を見ると最近のメディアはそうした取材をやっていないということになるわけですが、この事件に限らずともこのところの報道見ていると取材したあとが全く見られない報道が多く、真面目に今現場はどうなっているのかと疑問に思うと共に物凄い危機感を覚えます。

 何気にそうしたほとんど取材せずに既報や会社発表だけを垂れ流す昨今のメディア状況に付け込んで書いたのが、昨年末の上海大江戸温泉の記事でした。それ以前に報じられている内容を見ているとどのメディアも取材したあとが全くなく、オープンしているにもかかわらず中に入って詳しくその状況や従業員に話を聞いたりするメディアが見られなかっただけに、「ああこれ突け込めるな」と直感的に思って書きました。
 何気にあの記事、入浴から熊本県庁、日本大江戸温泉への取材、執筆、編集、配信を一日以内ですべてやってのけた記事でしたが、他のメディアは多分、日本大江戸温泉に対してすらもそれまで全く取材していなかったのではないかという気がします。あくまで勘ですが、広報担当が質問に答える時の声が明らかに慣れていない感じしたし。

 私自身、何も取材だけが報道じゃないと考える立場ではありますが、最近のメディアを見ていると必要な取材すらサボっている現状が見られ、記者自身というよりもそれを統括するデスクや編集長などは何をやっているのかと強く疑問を覚えます。二年くらい前ですがテレビ朝日が自分で全く取材してないにもかかわらず週刊誌の記事を無断で引用して報じるということがありましたが、メディアの倫理観とかそういうレベルの話じゃないのに何故こんなことが起きるのか、メディア全体でこの方面についてもっと危機感を覚えるべきでしょう。むしろ取材姿勢について新聞、テレビメディアは、もっと週間誌を見習うべきかもしれません。

2017年1月10日火曜日

記者になるための条件

 たまには世の中に役に立つ情報でもと思いマスコミ志望者、特に記者志望の人たちになるためにはどんな条件が必要かどうかを伝授しようと思います。結論から述べると、字が汚いというのも一つの大きな条件です。

 真面目な話、記者が書く字は例外なく汚いです。誰かに読んでもらおうという意識なんて全くなく、中には漢字なのかアルファベットなのかすら区別つかないようなすごい字を書く人もおり、私が見てきた記者業の方々は例外なく悪筆の持ち主でした。これは男女に限らず、実際に私の同僚だった女性の記者は物凄い字が汚くて、あんだけ字が汚い女性は後にも先にも見たことありません。

 そういう環境にいたもんだからかつて高校時代に習字でクラス最低評価を取ったことがありながら、「編集部内で一番字が綺麗なのは俺だろう」と私は本気で信じてましたし、今でも間違っていなかったと思っています。私もそんな自慢できるほど字が綺麗、っていうか露骨に汚い方ですが、それでもあの連中に比べればまだ読める字を書ける人間でした。

 すこし真剣な話に変えると、字が綺麗というか丁寧に書く人は確かに記者は向いていない気がします。基本的に記者を含めたマスコミ業界は頭脳とかよりも体力で決まる所が多く、それも意味なく急いで仕事をぱっぱ片づける様な人材が向いていると思えるだけに、汚かろうと急いでメモ取るようなそういうタイプの方が絶対的に合っています。なので記者志望であるものの字が綺麗な方については、悪いことは言わないからもっと別の業界に目を向けた方がいいと本気でお勧めします。

 なお今現在はみんなパソコンで記事を書きますが、インタビュー時とか校正時にはやはり手書きが物を言います。インタビューの際はほんとに相手の話を聞きながら必要事項を的確にメモ取らなきゃならないのでたまに自分で書いておきながら判読に時間食うことすらあるのですが、この際に地味にお勧めなのは三色ボールペンで、重要だと思う箇所には色を変えて書くなどすると見返す時に効果を発揮します。
 私も三色ボールペンをよく使ってましたが、黒ボールペンだけで済ますことも少なくありませんでした。で、結構な頻度で物凄い量のメモを取るからすぐにボールペンのインクが切れてしまうのですが、個人的な意見を述べると三菱鉛筆のボールペンは性能が良すぎて駄目でした。というのもインクの出もよくなめらかなのですが、メモ取る際は基本走り書きになるため、なめらか過ぎると書いててブレーキが効かず、読み辛い文字が余計読み辛くなる傾向があるからです。いろいろ試した結果、程よくブレーキが効いてくれるため私は最終的にパイロットのボールペンにたどり着いて今でもこのメーカーのペンを愛用しています。