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2017年3月28日火曜日

この四日間の寝床

 特にこのブログでは書いていませんでしたが、先週金曜から高校時代の友人が上海に遊びに来ていました。それほど大したイベントがあったわけではないものの、その友人には特にホテルを取らせずにそのまま私の自宅へ泊める形で滞在させたのですが、生憎私の部屋にはベッドが一つしかありませんでした。
 上海人の友人からは、「近くのビジネスホテルでも取らせたら?」と提案を受けていたものの、私も友人もそれほど金がないこともあってその案は却下し、代わりに私の部屋の中でもう一つ寝床を作ることで対応しようと決めたわけです。もちろん友人には私が普段使うベッドを宛がったので、私が寝るのはその新たな寝床となりました。

寝床 初期型

  照明が暗いせいかなんかやたらカメラ写りが悪いですが、上の写真が第一日目に使用した寝床です。説明不要で見たまんまですが、リラックスチェアの上に座って、手前のボックス椅子に足を載せて寝るという形式で、例えて言うならばビジネスクラスの航空機座席みたいな寝床となりました。もちろん、載せてある枕は頭に使います。あと掛布団として、これも航空機みたいに毛布を上に掛けます。
 実際に寝てみた感じとしてはビジネスクラスというよりかはもはやエコノミークラスで、地味にエコノミークラス症候群とかにならないかなと思いつつ、姿勢の居心地悪さを感じながら寝てのけました。そんでもって目覚めた直後の感触としても、航空機同様にあまりよくは寝られませんでした。
  
ネドコ MarkⅡ

 前日の反省を生かし、二日目に新たに組んだ寝床が上記写真です。一日目と違うのは左手前にパソコンを使用する際に使う折りたたみ椅子を用意したことですがこれによってどう変わるのかというと、頭をリラックスチェアに、腰(尻)をボックス椅子に、足を折り畳み椅子に乗せることで、系統の異なる三種類の椅子の三段合体によって寝そべることができるのではと発案して作ってみました。
 枕をリラックスチェアに乗せて実際にこれで寝てみましたが、まず一切寝返りがうてない、っていうかうったら確実に落ちるという構造上の欠陥を抱えていたことと、リラックスチェアの先端(通常太腿を載せるところ)がやや反り返っていることもあって、いまいち姿勢が安定しませんでした。そして何よりも、リラックスチェアとボックス椅子の間に空間があることによって背中の一部が宙に浮く形となって、変な風に体重かかったのか寝ている最中も肩の下部付近がめちゃくちゃ痛くなりました。こちらも初期型同様にあまり気持ちよく寝ることは叶いませんでした。

ネドコ MarkⅡカスタム

 前夜の反省を生かし、今度は余ってる枕をリラックスチェアの通常臀部を載せる溝に埋め込んだのがこちらのカスタムバージョンです。溝に枕を置くことで妙な高低差を失くしフラットな感じにさせることで、先端の反り返りによる背中への圧迫を防ごうというのがこのコンセプトです。なおもう一つの枕は溝に置いた枕の上に置き、通常通りに頭を載せます。
 寝てみた感じとしては前回よりはマシになったものの、やはりボックス椅子との空間の存在感が強烈に残り、二日目とあって変に慣れたのか不安定ながらも寝返りをうてるようにはなったものの相変らず重心が不安定で、起きたらやっぱり肩の下あたり、具体的には胸の反対側付近がかなり痛かったです。

Ne-Doco WRX STI Ver.Ⅳ

 試行錯誤を重ねながら最終的に四日目で辿り着いたアルティメットバージョンがこの寝床で、ボックス椅子の位置が前回と異なりリラックスチェアとくっつけた形となっています。リラックスチェアの先端の反り返り以上にボックス椅子との間の空間に問題があると考え、この際無理に足を延ばすことはせず、リラックスチェアとボックス椅子の上で猫のように丸くなって寝てしまおうというコペルニクス的発想から生まれました。
 寝てみた感じとしては、相変わらず不安定であるものの重心はこれまでと比べてずっと安定し、また丸くなって寝ることで比較的暖かく、でもって気持ち脚を伸ばしたいときにはこれまでと同様に折り畳み椅子へ足を乗せれば適うので、確実にこれまでの寝床と比べれば進化を感じました。
 とはいえ、寝返りを打っているうちにボックス椅子の位置が段々とずれていき、最終的には結構離れたりしてしまって前夜同様に肩の下のあたり、具体的には背中の真ん中付近が起きた直後に痛みました。

 そんなこんだがあったものの、今朝友人をタクシーに乗せ空港へ送り出したことから今夜からは普通に元のベッドで寝られることが出来ます。ただ今記事を書きながら冷静に考えてみると、普通に床に何か敷いてそこで寝ればよかったんじゃないかと思えてなりません。なんで椅子三つ組み合わせた不安定な寝床で無理矢理寝ようとしたのか、自分の行動の意味不明さに改めて妙な疑問を覚えます。

 なお友人は今回の訪問中、友人の母ちゃんから中国で世話してくれる友人(=私)はどういう人なのか知りたいから写真撮ってきてくれと頼まれたそうです。ただ私は余り写真を撮られることが好きではないため、一緒に街中歩いている最中に見かけた猫の写真を友人のi-Phoneに撮らせ、「これが俺だと言っておいて」と伝言したので、恐らく友人の母ちゃんは私の事を毛深い奴だと思うことでしょう。

2017年3月26日日曜日

ロジックで考える人の希少性

 今日動画では見ていませんが怪我を押しての強行出場を続けた稀勢の里関が本日、二場所連続優勝を遂げられたとのことで、正直私も一回の優勝で横綱にさせたことについていささか不安を感じていましたが、今場所の優勝についてはその怪我の具合を考慮すると見事としかいうほかなく、日本人横綱としての名を恥ずかしくないものにした立派な功績だと感じました。

 さてそれで本題ですが、以前にも一度書きましたが中国でコナンや金田一といった推理漫画、果てには京極夏彦氏などの小説は中国でも大人気で、特に小説の方は海外文学コーナーに行くと日本人作家の小説がずらりと並んでおり、実質「海外文学=日本文学」と言ってもいいくらいの状態です。こうした日本の文物が受け入れられる背景について中国人の友人の嫁さんが、「中国人にはあんなロジック(論理)は組めない」と分析し、だからこそ受け入れられるという見方をしめしたことがありましたが、確かに中国人に推理小説を書けそうな人ってあまり浮かばないなと思うだけに、妙に納得させられる意見でした。

 ただこうした中国人からのコメントを受けつつも、果たして日本にロジックを理解している人はどれくらいいるのだろうかという問いがこのところ頭をもたげています。この場合のロジックというのは意見や主張の論拠や合理性を筋道立てて説明、理解することを指しており、想定不可能な事態や事故による結果の変動や予測間違いは含みません。
 敢えて私流に言わせれば、「話せばわかる」というのがロジックで考えられる人の定義となります。

 こんな風な疑問を持つのも、単純にロジックが日本社会で通ることが少ないと思うからです。いくらか入る感情の余地を考慮したとしても結構無茶苦茶な、有体に言えば明らかに論理破綻していて誰もが上手くいかないと考える意見が通って、実施して、案の定うまくいかなくなるというパターンは東電の凍土壁を始め世の中いくらでもあります。そういうパターンに多いのは、「声のデカい奴の意見が通る」という情景で、要するに発言力の大きさで採用意見が決まる、意見の中身というより誰が発言したかで決まるという形態です。
 っていうか声のデカい奴が大抵どこでも無能というのが地味に大きなトピックのような気もしますがそれは今回は割愛しましょう。

 こう言う風に言えば、「いや、間違っているのはわかるんだけど相手が相手だけに反論できない」という言い訳をほぼ確実に言われますが、意見に対して何故その意見が誤っているのかなどを論理立てて説明するよう求められても案外その手の言い訳する人は説明できません。なんとなくですが、ぼんやりとその意見は誤っているとは感じつつも、それをきちんと理解するには至れていない感じです。
 こうした傾向は通常の議論でもよく散見され、私が論拠の不備や自分の意見を優位性があるとまでは言わなくとも存在する可能性はあると主張した場合、よう「でもそれは気持ち的に納得できない」などと、反論意見において感情論を主張されることが多いことからもロジックがないなと感じる人は多いです。ゲロ吐くような気持ちになろうが合理性、論理性的に正しい意見は受け入れるというような精神は、大学時代を除くと周囲の人間に感じたことはありません。

 これ以上長く述べててもしょうがないので言いたいことを述べると、案外大学教育でそうしたロジックの組み立て方や議論について学ぶべきものを学んでいないという人がこのところ多いような気がします。特に、議論で負けることを恥だと思い論理的に破綻していながらも主張を曲げないような人を見る度、議論で自分の意見を曲げることは恥ではないということすら学ばなかったのかと感じたりします。
 なお論理破綻を無視して感情論を述べる人間に対しては自分も変な手加減は要らないと考え、そこから感情論に切り替えて相手への攻撃を始めることが多いです。基本的にこの手の感情論の議論は論理を無視しての怒鳴り合い、罵り合いとなるわけですが、話せばわかる人にはもちろんこうした手段は使いません。けど使っていいと思う相手なら遠慮なく使い、でもって年齢と共に声もでかくなってきたので最低限引き分けには持ち込む自身は今の自分にはあります。無論そうした手段がいいとは思わないものの、ロジックを考えない人にむざむざ屈するよりかはという気分で私も感情論を主張するわけです。

2017年3月23日木曜日

大手企業の栄枯盛衰

 WBCは残念ながら負けてしまいましたが、米国もまた見事な野球ぶりであったことを考えると恥じる敗北ではないなと思います。なお敗戦を伝えるニュースについたコメントに、「普段、援護のない菅野ざまぁとか思ってたけど、巨人ファンはいつもこんな気持ちで見てたんだね。もうこんなこと言うのやめるよ」というコメントが心に突き刺さりました。それにしても、国際戦でも「負け運」がついてしまうというか援護に恵まれないというか……。

大手有名企業の2001→2016年度の業績変化がヤバ過ぎワロタwwwwwwwwwwwwwwww(アルファルファモザイク)

 こちら、先日たまたま閲覧したまとめ記事サイトのニュースですが、非常によくまとめられて価値のある情報であるため、ビジネスマンであれば必ず見ておくべき記事内容です。なお別にビジネスマンでなくても、ワンダーウーマンであっても問題ありません。
 内容は見出しの通りに2001年度と2016年度における各大手企業の業績を業界別にまとめてあります。一見すると売上げが大幅に落ちていながら実はものすごい増益をしている会社があったり、目立たないけど着実に増収増益していたり、あまり悪い話は聞いていなかったけど実は結構業績が悪くなっている会社などが割と一目でわかるようになっています。

 友人この記事を見せた際、ちょっと話題になった数字は以下の数字です。

・電機大手その1
【NEC】
売上高 5兆4097億→2兆6800億
営業利益 1852億→300億

【富士通】
売上高 5兆4844億→4兆5000億
営業利益 1897億→1200億

【ソニー】
売上高 7兆3148億→7兆6000億
営業利益 2253億→2400億

【東芝】
売上高 5兆9513億→5兆5200億
営業利益 2321億→▲4100億

 東芝は言わずもがなですが、地味にNECが売り上げが半減化し、営業利益に至っては五分の一になるなど往時の勢いがみられません。友人も、東芝ばかり槍玉に挙げられるが地味にNECの方がやばいのではと言及しており、こうして改めて数字を突き付けられるとなおもその印象が強まります。
 こうした電気系に加えもう一つ気になった会社はこちらです

【JT】
売上高 4兆5017億→2兆1100億
営業利益 1320億→5600億

 噂には聞いてはいましたが、売り上げが半減しておきながら利益は4倍超になるという恐ろしいほどの好業績をJTが叩き出しています。脱タバコ化が上手くいって食品などの事業が好調とは聞いてはいたものの、営業利益率が約4割って普通に有り得ない凄さです。

 このほかに紹介されている企業もどれも一見の価値があるので、自分の方から説明するような蛇足はしないので是非読んでみてください。それにしても、こうした整理された情報ってやっぱり価値があるなぁ。

2017年3月20日月曜日

知られざるたなぼた

 今日昼ごろ、もしも阪神ファンが保育園に落ちたら「保育園落ちた巨人死ね」とか思うのかなと考え、その後もSF好きなら「保育園落ちた日本沈没」、香川県民なら「保育園落ちたうどん食おう」などと妙な言葉を思い浮かばせていました。

永田寿康元議員の自殺について

 それで本題に移ると、上のリンク先は私がかなり昔に書いた記事なのですが実はここ数日間で物凄いアクセス数を稼いでいます。理由は簡単で、例の森友学園問題で民進党が一旦跳ね上がったテンションを落として慎重になりつつあることについて、「かつての永田偽メール事件の反省からか」などと書かれているからでしょう。この事件もかなり昔の事件だというのにこうして現代にも引用され、さらにそれを検索する人がいるというのは私にとっても驚きで、それだけインパクトのある事件だったのだと再確認させられました。
 なおアクセス数がどれくらいかというと、ここ三日くらいで1500ビュー位いってるんじゃないかと思います。普段このブログは全記事合わせて1日500~600ビュー位なのですが、実質この記事一つで1日分のアクセス数を稼いでる計算となります。永田元議員についてはほかにも書いてる人いると思うのに何で自分所来るんだろう。

 それでまた話を変えると、例の森友学園については23日に国会での証人喚問が迫って話題性は嫌が応にも高まってきています。特に籠池氏が安倍首相から100万円をもらったという先の発言が取りざたされていますが、それについて上記の通り民進党は当初でこそそれみたことか世紀末と言わんばかりに大騒ぎしたものの、日が経つにつ入れてトーンダウンしています。

森友学園の「寄付」は籠池理事長の自作自演(アゴラ)

 その籠池発言について、現在までに出ている材料を分析すると上記の池田信夫氏の推論が最も正しいのではないかと思います。っていうかなんかどっかで見た名前だなとか思っていたら私と同じく池田氏もJBpressで定期的に記事を出していました。こういう関係ってなんていうんだろう、連載仲間?

 話は戻りますが上記のアゴラ寄稿記事で池田氏は、100万円の送金云々は森友学園側の自作自演説を唱えています。根拠としては振込の証拠として出された郵便局の払込証憑で、この証憑では籠池氏自らが自分の管理する口座に100万円を振り込んでいることしか立証していません。籠池氏自身はこの時の100万円は安倍昭恵氏から直接受け取った100万円の現金だと言っており、当初は安倍首相名義で振り込もうとしたが郵便局に止められて出来なかったから自分の名前で振り込んだと言っているわけです。
 しかし、普通に考えればツッコみどころ満載で、何の証拠にもならない証憑を取り出して安倍首相からお金もらったと主張するには無理があるでしょう。ではなぜこんなカスみたいな証憑でそのような主張を展開するのかというと、何かしら意図があるとしか思えずこの自作自演説は確実だとはまだ言い切れないもののありうる可能性としては高いのではないかと私も思います。

 では籠池氏は何故このような主張を展開したのか。これも憶測で述べれば安倍首相に対して逆恨みみたいな感情を覚えたが故の嫌がらせではないかという気がします。権利ばかり主張して義務を果たさないタイプというのは往々にして逆恨みが激しく、「あれだけ応援してたのに何故助けてくれない」などと安倍首相に対して反感覚えてやったんじゃないかという風に私は見ています。

 真実はどうであれ、ただ一つ言えることはこの籠池氏は書類の捏造と言い間違いなく山師というか詐欺師の部類に入る人物で、その証言はどんな些細なものでも鵜呑みにすることが出来ない人物です。だからこそ民進党もここにきて慎重になってきたのでしょうが、それにしてもその対応は無様としか言いようがありません。
 仮にこの安倍首相の献金発言を無視して徹底的に、何故国有地がタダ同然で払い下げられたのかを追及していればもっと世論も盛り上がっていたことでしょう。現状見る限り国有地払下げよりも安倍首相献金疑惑の方が話題となってしまっており、いわば攻めたところで価値のない、出口のない袋小路への道に突入してしまっています。ほんまあほやなぁ。

 国有地の払い下げに関しては常識的に考えて何らかの政治的圧力がかかったことはほぼ間違いないでしょう。まだ確証はないもののいくつか黒幕候補は既に出揃っているのですから、それらの黒幕に星をつけつつきちんと質問すればそれなりに民進党はいい結果を出せるはずですが、果たして23日の証人喚問はどうなるのかといったところが今日の感想です。

2017年3月19日日曜日

「レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ」の4巻を読んで

 今更ながらWBCの菊池選手の動画を見て今日ひとしきり感動していました。今まであまり知らない選手でしたが、シーズン中のプレイでも守備位置が明らかにほかの選手と比べ深く、広く、これほど規格外な選手がいたのかと唸らされました。
 さて本題ですが昨日は体力的にも余裕があり(つっても睡眠時間は13時間くらい)、暇だったので新刊チェックしていた所、「レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ」という漫画の最新刊に当たる4巻が発売されていたので購入して読んでました。

レッド (山本直樹)(Wikipedia)

 「レッド」というのは知ってる人には早いですが新左翼団体による山岳ベース事件、そしてあさま山荘事件をテーマにした山本直樹氏の漫画作品です。さきほど4巻と言いましたが当初は「レッド」というタイトルで8巻まで出され、恐らく編集部も中だるみに対する展開の切り替えという意図を持って「レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ」とタイトルを変えて続刊していますが、実質的に両作品は一連の作品です。切り替えポイントはまんま、山岳ベース事件が始まるところです。

 細かい説明は抜きにして最新巻4巻の概要を述べると、この巻で総括が終わります。この漫画には特定人物の頭部付近に○で囲まれた1~15の数字がすべてのコマに書かれているのですが、これはまんま死ぬ順番で、この順番の通りに連載当初からいたキャラクターたちが死んでいきます。これまでにもすでに多くが死んでいましたが、4巻では悲劇的に語られる妊娠八か月だった女性、そして主人公(植垣康弘氏がモデル)と恋仲だった女性、そして最後の総括死亡者である最年長メンバーの男性が死にます。

 元々こうした新左翼事件に興味があったことから読み始めた漫画で、こうして一通りの悲劇が終わるまで足かけ12冊もこの漫画を読み続けていたことからもこの巻は感慨深く、そしてややもすると丁寧に書かれているゆえか展開が遅く中だるみ感を感じていた前半箇所(レッドの1~6巻当たり)と比べると怒涛の如く死人ラッシュが続いた上、警察に追われいよいよあさま山荘へと向かっていく下りがこの巻では書かれていたため、この巻に限れば非常に読みごたえがありました。作者が意図して書いているのかまではわかりませんが、やはり総括当初と比べると登場人物それぞれが、「果たしてこの総括という行為に意味があるのか?」と言わんばかりに疑問を感じつつある表情が増えており、その辺りでも臨場感がありました。

 実際、一人目や二人目の死人が出た頃はともかく、後半になると同じ連合赤軍内部でも総括という行為に明確に疑問を持ち始める人が出ていたそうで、あさま山荘に立て籠もり死刑判決を受けた坂口弘は最後に死亡したメンバーの縄を解いたり、「必ず君を助ける」と述べたシーンも漫画の中で描かれています。もっともこうした行為は当時のリーダーである森恒夫からは問題視され、仮に森があのまま逮捕されなければ坂口が総括にかけられ殺されていただろうと当時のメンバー全員がほぼ一致した意見を出してましたが。
 こうした反応は坂口だけでなくむしろ他のメンバーの方が顕著で、死人ラッシュが続いた後は逃亡ラッシュで、こうした離脱者が出たことから残ったメンバーへの捜査が強まり最終的にあさま山荘へと至っていきます。なお印象に残った逃亡シーンとして、最初からいた男性メンバーが逃亡した後、時計を質屋に出して手に入れた千円で野菜炒めライスを食べ、東京へと帰ったとするシーンです。

 こうした総括シーンもさることながら、森恒夫と永田洋子がついに逮捕されるシーンのモノローグでは、「東京拘置所内で病死」と連載中に起こった出来事が書かれてあってなんともいえませんがふふっとなりました。そしてその後の、残ったメンバーが警察の捜査網から逃れるために妙義山を越える場面で植垣氏が「これはまたどえらい作戦ですナァ」と述べる場面と、それから続く雪の残る妙義山の山嶺を渡っていくシーンは素直にきれいだなという感想を持ちました。さらにその後に続く、「山岳アジトに参加した者37名 逃亡者離脱者8名 乳児1名 逮捕者5名 死者15名(山岳アジト以前も含む)」というモノローグを見て、自分も長くこの漫画を読んできたなぁという感慨を持った直後に「残り9名」というモノローグでこの巻は閉じられています。

 これは実際に植垣氏から私が聞いた話ですが、「ワシがいなかったら山は越えられんかった」と述べており、漫画のシーンだけでもどれだけ困難な山越えをやっていたのかと呆れかえると共に、やはり現代にないアドベンチャーがこの時代にはあったんだなと自分でもよくわからない感想が出てきました。

 自分がこの漫画、ひいては山岳ベース事件とあさま山荘事件に興味を持つようになったきっかけは、作家の佐藤優氏の小菅ヒルズにおける隣人が坂口弘だったと書かれていたことからですが、その後も強い興味を持ち続けているのは果たして自分があの中にいたらどうなっていたのだろうかと未だに自問自答し続けているからです。総括にかけられ殺されていたのか、一緒になって総括をかけて殴打したのか。植垣氏曰く、集団狂気でもなくマインドコントロールでなく、強固な論理構造の上で誰もが正しいと思って総括を行っていたという分析が未だに自分の頭をもたげます。


2017年3月18日土曜日

中国の進歩なき建材について

「イラン人が血だらけで…」路上で若い男性死亡、殺人容疑で捜査 名古屋(産経新聞)

 本題と関係ありませんが上のニュース見て、「名古屋」、「イラン人」だから中東系の顔したうちの親父が刺されたのかと本気で疑いました。ちなみにうちの親父は昔、仲間だと思われたのか上野でイラン人に声かけられたそうです。

 話は本題に入りますが、私が昨年から入居している賃貸住宅は入居直前にリフォームされたこともあって非常にきれいな部屋だったのですが、このところ壁の端っこ当たりを見るとひび割れが見え始めるようになりました。何もこの部屋が欠陥住宅だからというわけではなくこうしたことは中国では日常茶飯事で、総じて建材の質が日本と比べると極端に低い傾向があります。

 特に日本と差が出るのは壁材こと漆喰とコンクリートで、どちらもほんのちょっとの年数や衝撃で簡単にひび割れします。漆喰に至っては少し物が当たった程度でへっこみ、また湿気にも極端に弱いのかびっしりとカビが生えることも珍しくなく、メンタルの弱い日本人はこの程度で軽く鬱になります。コンクリートも同様で、こちらは住宅というよりかは市街地の方が顕著で、中国は大型トラックを走らせることが多いせいか道路は普通アスファルトではなくコンクリを敷きますがしょっちゅうひび割れてはえらいことになってます。また道路に限らず、ちょっとした階段や塀に使われているコンクリも簡単に穴開いたりひび割れたりで、それがこの十年の間で何も進歩がありません。

 一応、高級な住宅地やオフィスだとそういうひび割れは見られないので金懸ければちゃんとした建材というか施工もしてくれるのかもしれませんが、それにしても末端がいつまでもこれではどうか、中国も業界の最低基準とかもうちょいしっかりさせたらどうかと言いたくなるレベルです。
 百歩譲って漆喰は家主の意向で安価なものに需要があると認めるにしても、道路や塀といった公共物に使われるコンクリートに関しては明らかに見ていて不安になるレベルで、コンクリなんて土石物はいい物も悪い物もそれほど単価に差はなく、混ぜ込む際の技法さえしっかり確立させてしまえば後は安定するんだから、なんでいつまでも指導せず放っておいているのか不思議でしょうがありません。

 なおこれ以外の建材を挙げると水道管も日中で大きな差がありますが、これに関しては中国の質が悪いというよりは日本の水道管が異常な水準にあると考えるべきかもしれません。最新の水道管は掘り返さずに破損個所の修復や補修までできてしまうそうで、なんでこういうところにこれほどまでに情熱燃やすんだろうと呆れると共に頼りがいがあります。

2017年3月17日金曜日

中国経済の穏やかな不気味さ

 日本ではそろそろ花粉症の季節だと思いますが、よく駐在員の間では「この時期だけは中国にいたい」と話す人が多いです。というのも中国だと花粉症はなく、心地よく空気吸えるからだそうです。私自身は花粉症ではないので実感はないのですが、よく中国というと空気が悪いというイメージで話されるものの花粉はPM2.5に入らないのかとかいろいろ考えると、この時期に関しては日本の空気もどんなもんかねという気がします。
 さてかなり久々に中国経済の話をしますが、結論から言うとやや不気味さを感じています。そしてその不気味さに気が付いているのは私くらいではないかとも思います。

 まず中国全体の景気ですが、この規模の経済力にしては依然と世界最高水準の成長率を維持してはいるものの、やはり依然と比べるとその速度は落ち込んでいます。これ自体は問題ではないものの、経済戦隊の成長率が鈍化する中、私も以前に取り上げた給与の昇給率に関しては10%弱を維持しており、GDP成長率を上回る数値を維持しています。これがどういうことを指しているのかというと、実体経済以上に所得は増加しているということです

 所得が実体経済以上に増加しているということそれ自体は問題ではないのですが、気になるのは鉄鋼や石炭を始めとした重工業系産業が落ち込んでいるにもかかわらず所得が増加している点です。重工業は雇用吸収力が高い、言い換えれば売上げが大きく雇う従業員が多いことから雇用の安定で重要な要素となるのですが、その重工業は先ほどの鉄鋼、石炭共に中国では物凄い落ち込み方をしているにも関わらず、どこも国有系企業のため統廃合もなかなか進んでいません。
 これはどういうことを意味するかというと、収益が悪化しているにもかかわらず給与が増えているということで、実態に合わない給与支払いが続いているということです。そのため産業転換も進まず、会社自体のリストラも進まずということで、今はともかく今後かなり大きな問題になるのではないかという風に思えてなりません。

 私がこの事実に着目したきっかけは、GDPがこのところ落ち込みを見せている遼寧省の実態に関するニュースをみたことからでした。遼寧省などまさに国有企業の巣窟というくらい国有企業が多く、実際にどこも経営が悪化しているのですが、現場の報道によると市民自体はそれほど切迫感を感じているようでなく、生活もそれほど悪化していないと報じられていました。
 私自身の実感で言っても、二次産業系企業は自動車産業を除きほとんどどこも苦しくなっており街の人も「景気が悪くなった」とよくいいながら、消費それ自体はそれほど落ち込んでおらず、むしろ政府の支援もあってますます盛んになってきています。強いて言えば、「以前ほど大きく昇給しなくなった」といったところで、経営が悪くなっていながらどこも昇給率を抑えつつも昇給自体は続けているようにも見えます。

 具体的に何が言いたいのかというと、二次産業を中心に収益モデルが限界を迎えている、或いはすでに越えているにも関わらず、雇用を維持し過ぎてリストラや再建が全く進んでいないのではないかと言いたいわけです。日本の90年代の様に短期的にはともかく、長期的に見てリストラや企業同士の統廃合は早ければ早いほどよく、遅ければ遅いほど悪影響は大きくなります。
 中国政府も馬鹿じゃないですから「ゾンビ企業」という言葉を使って産業の統廃合を進めようという姿勢自体は示していますが世間から、「リストラ(クビ)にあって生活が大変」なんていう意見はあまり聞こえず、お世辞にもこうした指導は行き届いていない様に感じます。

 全体景気が悪化していて景気が悪いと言いながらもどこが他人事のよう、そんな感じが今の私が感じる街角景気です。割と中国びいきの私ですが、この辺については確かに大きなリスクでもっと強く対策に取り組むべきだと提言したいところです。