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2017年6月4日日曜日

卓球世界選手権の平野選手に関する中国の報道

平野美宇、世界1位・丁寧に完敗 中国の徹底研究に屈し銅メダル 48年ぶりVならず(THE ANSWER)

 自分はテレビ中継を見ていませんでしたが、ドイツ・デュッセルドルフで開かれている卓球の世界選手権での日本の平野美宇選手と、現世界一位である中国の丁寧選手の試合が大きな話題となっています。先のアジア選手権で平野選手は丁寧選手を含む世界トップランカーの中国選手を悉く打ち破り優勝しており、この世界選手権でも「アジア女王から世界女王へ」という期待も高かったのですが、結果は4対1で丁寧選手が平野選手を下し、世界一位の貫録を見せるとともに見事アジア選手権での雪辱を果たしました。

 Yahoo記事のコメント欄を見ると見ていて手に汗を握る試合だったと語る人が多いとともに、平野選手、丁寧選手双方へ賞賛を送るコメントも多くみられます。丁寧選手については、「さすが中国」、「平野選手もすごいが中国の壁は厚い」などと書かれてあり、素直な感想を述べさせてもらうとヘイトなコメントがほとんど見られず熱闘を見せてくれた両者を惜しみなく称えるコメントが多くて中国住まいの長い私としても読んでるだけでうれしくなりました。

 ここでふと中国側ではこの試合についてどう報じているのかが気になり、さっそく中国のニュースサイトを覗いてみました。

日本吐槽:丁宁这次不用写检查 穿旗袍绝对大美女(新浪体育 )
邓亚萍:平野还是经不起研究 一切在丁宁掌握中(新浪体育 )

 さっと見る限りでは、やはり先のアジア選手権での平野選手の躍進もあったからでしょうか、この試合については中国でも注目されていてニュースでも大きく取り上げられています。
 上の記事ではこの試合前、そして試合結果に対する日本側の反応を取り上げており、中でもちょっと驚いたのが「日本の2ちゃんねるでは3つの異なるスレッドが立ち、試合開始からリアルタイムで討論が続けられた」と書かれてあって、実際にその下では第1から第4まで各セット毎に書き込まれたと思われる内容を中国語に翻訳して書かれてありました。
 なお私が見ていておいおいと思った書き込みは、「さすが丁寧の兄貴は王者の風格だ」という記述でした。

 下の記事は既に引退した元オリンピック金メダリストの劉亜萍氏の試合結果に対するコメントで、平野選手については中国も絶え間なく研究していることと、大舞台での経験がまだ足りていないことが今回の敗因だと指摘した上で、最初の3セットはアジア選手権で見せたような状態ではなく、やや緊張していたように見えたとも述べています。その上でこの試合に勝ったか負けたかに関係はなく、今後も相手選手については研究を続ける必要があるとも述べられています。
 平野選手の実力に関しては、非常に高い攻撃力(「殺傷力」と表現されている)を持ち、将来性も豊かな申し分ない選手であるとべた褒めしてくれています。しかし上記でも述べた通りにまだ経験面が浅いことが欠点だと述べ、中国チームは徹底的に一人の選手に対しても研究してくるので今後はそれにどうやって立ち向かうかが重要だとも話しています。

 そのほかのいくつかの記事も読みましたが、こちらも日本での報道同様にフェアに報じられており、丁寧選手が雪辱を果たしたものの平野選手は依然として中国チームにとって恐るべき相手であることに変わりはないなどと、平野選手に対しても惜しみなく絶賛し、「2020年の東京五輪において中国にとっての最大の脅威となるだろう」とまとめる記事もありました。

 私個人としては、やはり日中は距離も近いこともありスポーツ面ではもっと交流し、お互いに実力を高めあっていける関係になれればと願っています。今回取り上げた卓球に関してもそうですし、日中ともに人気なサッカーでも、そしてまだ中国では人気でない野球も、中国が実力をつけてくれば日本も実力を高められると信じています。
 普段私が中国コラムを書くと呆れるくらいにヘイトなコメントに溢れますが、それだけにこうしてお互いを称えあえるコメントを見るだけでなんとなく気分が和らぐ思いがしてくるあたり自分も年を取ったなという気がします。

2017年6月2日金曜日

中国人技術者を日本に招く価値

 最初に断りを入れると、この記事で書く内容は中村紀洋氏並(?)に特殊な経歴を歩んだ私だからこそ書ける内容だと思え、なかなかよそではお目にかかれないのではないかとも思います。

 話は一か月前に溯りますが、日本に一時帰国した際にビックカメラで携帯電話用フィルムを探していたところ、ほしいサイズの在庫があるかを確認しようと店員に声をかけてしばらく話をした後、「もしかして中国人?」と、店員の名札を見て私から聞きました。
 聞いてみるとやはり中国人だったのでそのあとは中国語に切り替えて少し雑談をしましたが、なんでも日本にはもう7年間住んでるとのことで、日本については「暮らしやすい」という風に話していました。

 その後店を出た後で少し考えたこととしては、現在中国へ進出する日系企業の業種はその大半がサービス業で、特に小売りや飲食が目立って多いのですが、日本語の使える中国人は探せば簡単に見つかるものの、更にこうした小売りや飲食といった業種を経験していてノウハウが分かっているという条件を付けるとなるとなかなか見つからなくなるという話を、以前に人材会社総経理から聞いたことがありました。恐らく、いまだと少しは改善されてはいると思うものの、サービス系企業の進出はずっと右肩上がりであることを考えればやはり今でも不足し続けているかと思います。
 それであればむしろ、上記のビックカメラの店員のように日本の大学を出てそのまま日本で就職した従業員を中国に派遣したらどうなのかなという案が浮かんできました。こうした中国人従業員ならノウハウもわかっており、且つコミュニケーションにも問題がなく、そして何よりも日本で研修を受け業務を学んでいるという点が大きなメリットです。唯一の難点としては、中国に帰りたがらない中国人が案外多いということですが。

 まぁ私がこう思うあたり、恐らく実際に日系小売企業とかでは既に上記のプランを実行しているでしょう。むしろ日本国内でそうした中国人従業員をあまり雇っていない企業が中国に進出するのであれば、上記のような大手小売りや飲食系企業の店員をスカウトするのが手かなと言えます。

 ここまで考えた後でふと、「逆はどうかな?」と思いました。つまり日本で働く中国人を中国に送るのではなく、中国で働く中国人を日本に送る、という案です。どうでもいいですが「案です」と入力したら「アンデス」と表示され山脈を思い浮かべました。
 ここでいう「中国で働く中国人」とはそのまんまの意味ではなく、日系企業ではたいている中国人、特にメーカー系企業を指します。先ほど私はサービス業を経験している日本語の話せる中国人を現地で見つけるのは難しいと書きましたが、これがサービス業ではなく製造業であれば話は違い、既に日系メーカーが長年中国で事業を行っていることもあってか工場長をやれるようなクラスであっても日本語を使える中国人はすぐに見つけられます。いわんや技術者もです。

 技術大国日本がどうしてわざわざ中国から技術者を呼ばなきゃいけないのかと思われるかもしれませんが、はっきり言いますが技術者が不足しているのは日本の方です。特に30代から40代の中堅クラスはどの中小企業でもぽっかり穴が空いたように不足しており、企業コンサルしてる友人も「20年後には日本の製造業は成り立たなくなる」とガチで予言されました。

 実際、私自身もそれを目の当たりにしています。冒頭で書いたように私は歪な経歴をしていて貿易事務やってからライターとなり、そのあとでまたメーカーで品質管理やらされるという明日をも知れない経験をしてきました。最後のメーカーのところですが、ここなんかまさに中小メーカー企業というようなところで、上があまりにも計画なかったから無意味に工場で半年も勤務させられましたが、工場内の年齢構成に正直ぞっとしました。
 すでに述べている通りに30代、40代の技術者、工員がほとんどいないにもかかわらず、50代、60代は呆れるほど多く、しかもその一部は確実に老害となっていました。その老害は面倒くさい仕事は数少ない30代と40代社員に投げるせいでこの層は非常に忙しくしてるのに高い給与をもらい、さらにはしょっちゅうトラブル起こすなどで、企業コンサルしてる友人の言は正しかったと確認させられました。

 技術者というといろんなものを開発したり発明したりというのを思い浮かべがちですが、実際にはプレス機の整備や運転、熱処理の管理、金型のメンテナンスなど地味な仕事が多いです。しかしそうした地味な仕事を担うには経験と技術が必要なのは間違いなく、パッと来たばかりの人間に任せられるようなものではありません。にも関わらず本来中核となる30代、40代の年齢層は大手は知りませんが中小ではほぼ絶滅危惧種となっており、技術の継承以前に設備を稼働させたり維持したりする上でも危険な領域にあると断言できます。

 一方、中国では皮肉なことですがまだまだ景気も悪くないこともあって、日系企業が工場内で結構忙しく育成しており、割とこの年代の技術者は豊富にて、しかも日系企業内であれば日本語の使える技術者も珍しくありません。これから日本で若手技術者を育成するくらいならばいっそ、日本での勤務を希望する中国人技術者をこういうところから日本に連れてきた方がいいのではと、真面目に覚えました。

 繰り返し言いますが技術というのは天才的なひらめきではなく経験と知識によって生産を維持する能力の方が重要であり、これは質もともかくとして量も強く求められる要素です。日本は質も最近怪しいですが量の方面は致命的な水準にまで落ち込んでおり、何も中国人技術者に学べとまでは言いませんが、彼らの力を借りる価値がある経済状況にあると思う、というよりもうそうなっています。幸いというか日本国内での勤務に興味を持つ中国人は少なくなく、募集をかけたら家族ぐるみで来ようと思う中国人はいると私には思えるだけに、こうした動きが今度高まっていけばと本気で考えています。

2017年6月1日木曜日

奈良の奥地


 上記画像はネットで拾ってきた奈良県の地図ですが、実によく奈良の実態を表してるなと感じ入りました。この地図に書かれている通り、我々が一般にイメージする奈良とは北部のほんの一部だけであって、あとは上記画像の通り「?」と言いたくなるくらいの未開……というにはさすがになんですが、かなり常識を超えるくらいの山深い地域が広がっています。


 続いてこちらは奈良県周辺丸ごとの航空画像ですが、何故ネットで検索せずとも自分のパソコンに最初の画像ともども入っているのが不思議です。この航空画像で見てもわかる通り、吉野郡とかもやばいぐらい青々としています。でも南北朝時代はここに南朝本部があり、今も人が住んでいる場所すらあるというのだからいろいろすごいものです。
 少しまじめな話すると、やはり奈良北部とそれ以外の地域では地域の帰属が変わるというか、南部の方は奈良県というよりは和歌山県に帰属が近いのではないかと思います。和歌山県の熊野地域と連続するような森林群で、もし道州制とか取り入れるならばそのあたりを考慮して奈良北部は京都、南部は和歌山とするのもアリではないかと思います。

2017年5月31日水曜日

書評「東芝解体 電機メーカーが消える日」

 

 いつもAmazonの商品バナーは下部につけていますがたまには商品説明もかねて上からつけてみようと思います。まず結論から言えば非常に「買い」な本で、日系エレキ業界の現状を量る上では文句なしにお勧めできる内容です。

 この本は私が「総理」というダメ本読んで勧めてくれた友人に文句言った後、「これならどうだ?」と訪問販売のセールスマンのように続けて勧められた本です。著者の大西康之氏はこれ以前にも「会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから」という本を読んでおり(勧めたのはまた例の友人)、その内容と取材ぶりにはかねてから評価していたのでこの本も言われるがままに手を取りました。

 概要を簡単に話すと日系エレキ業界(電機と言わないのはシステムメインの富士通も入ってるから)の成り立ちから現状、そして何よりもその「親方日の丸」な構造について詳しく解説されており、さらに東芝やソニー、シャープなど各大手企業について個別に現状と今後について分析がなされています。長年エレキ業界に携わっていたという筆者名だけあってどのようにして紹介されている大手がのし上がり、そして衰退していったのかについてライブ感たっぷりに描かれてあり、特に富士通のニフティ売却について明確に「悪手」と評した上でその理由と背景を説明している点についてはよそではあまり見られない分析なだけに、読んでて大いに唸らされました。

 そうした個別記事もさることながら、前半部に書いてある日系エレキ業界の構造こそがやはりこの本の肝でしょう。説明されてみるとごくごく当たり前の事実なのですが、逆を言えば指摘されない限りは気づきづらい「親方日の丸」の構造について、NTT(電電公社)と東電を頂点とする親子構造によって説明しており、具体的に述べるとNTTと東芝がそれぞれ通話料、電気料金という自分たちで自由に価格設定できる実質的な税金によって設備投資を行い、それらをNECや富士通、東芝や日立が受注することで成り立っていたと喝破しています。
 しかしいうまでもなくこの構造は既に崩れており、それらがエレキ企業の衰退を招く一因となったと指摘しています。言われてみれば本当に簡単な構造ですが、恥ずかしながら自分は今の今までこうした構造を意識することがなかっただけに強く感銘を受けました。

 このほか見どころとしてはソニーの出井時代について肯定的な評価がなされている点や、エレキの中で唯一の勝ち組と言われている日立の収益構造が先細っているという現状があり、内容的にはおっさんも学生もエレキ業界についてしっかり学べる内容になっています。
 本来は少しは批判したりしないと書評として成り立たないのですが、この本については私から批判できる点は何もありません。前に読んだ三洋電機の本も見事でしたがそれ以上の鋭さを持って書かれており、あとがきにもありましたが著者の集大成的な本だと思えるので興味がある方はぜひ手に取ってもらいたいと思います。

  おまけ
 勧めてくれた友人に感想を伝えた際、第一声は「最初に出てきたお魚さんの絵がいい」でした。何故あそこでお魚さん使ったのかちょいちょい不思議ですが、不思議と私の心はがっちり捉えられてしまいました。

2017年5月30日火曜日

コメダ珈琲上海店

 (邪魔やおっさん)

 (こっち見んな)

 前から噂には聞いてはいたものの足を運んだこととがなかった上海のコメダ珈琲店に一昨日行ってきました。写真下のキャプションは私の心の声です。

 コメダ珈琲とは愛知県在住なら言わずもがな、最近は東京周辺にも増えてきていてマッドシティこと松戸にすら存在する日本の喫茶店チェーンのことです。私自身は名古屋で何度も訪れているだけでなくマッドシティ店にも友人といったことがあり勝手知ったる喫茶店ですが、特段ひいきにしているわけでなくメニューを覚えている程度の店という感覚です。
 なお、やはり喫茶店チェーンで一番評価しているのは京都のイノダコーヒです。あそこは他の喫茶店関係者に聞いても、「イノダには勝てない……」とみんな口を揃えて言います。


(店内は日本とまんま)

 場所は上海高島屋の隣にあるオフィスビル一階で、入り口は正面からではなく高島屋の地下鉄側一階入り口の脇から入った方が近いです。

 レイコー大は32元(約480円)

割と既視感の強いメニュー

 ざっと見た感じは日本の形態をそのまま持ってきている感じで、言い換えれば中国向けのローカライズはあまり見当たりませんでした。なお上記の写真にはありませんがシノワールも置いてあったもののそれ以外の甘味系メニューはほぼなく、ケーキとか食べようと思っていたのでこの点は個人的に残念でした。

 この時所持金が心もとなかったのですが携帯決済することができて一安心であったものの、それ以上はこの日はもうお金が使えず、家にずっと籠ってました。お金がない辛さを学生時代ぶりに思い出してます。

2017年5月29日月曜日

「総理」レビューとジャーナリスト山口敬之氏の疑惑

総理(Amazon)

 つい先日、というか先々週に上記の本を読みました。この本を手に取ったきっかけは友人からの猛プッシュを受けてのことで、「単独の政治本でこれほど好評なレビューが集まることはまずない」とまで言われて購入はしたものの、当時タブレットPCを故障により紛失していたことからなかなか読めず、新たにファーウェイのタブレット(性能めっちゃええけどビックカメラの店員、パスポートのこと聞いてくれたらよかったのに)を購入したことからようやく先々週に読むことができました。
 読了後、上記の勧めてくれた友人にさっそく感想を伝えましたがその内容というのも、「一体何故こんな本を俺に勧めたんだ?」という、自分でもかなりびっくりするくらい辛辣なものでした。さすがにストレートでここまでは言わず、「正直、勧められもののそれほど評価できない。というより、一般に読まれるべき本ではないしむしろ『読むなこんなもん!』というべき対象だ」というくらいやんわりとは言いました。

 私が何故これほどまでに辛辣な感想を持ったのかというと、政治解説本として単純に恐ろしく質が悪いからです。書かれている内容というのも筆者の山口敬之氏と安倍首相、麻生大臣との距離や関係性についてしかなく、途中に至っては、「あの政治的決断は自分が両者のメッセンジャーをやったからなされたんだぞ」という具合ではっきり書かれているところがあり、言い換えれば安倍首相と距離が近いことをあからさまに自慢する内容すら書かれています。

 一応、消費税増税先送りや総裁選再出馬の前後については詳細に書かれてはいますが、これらに関しては他の政治本でも十分把握できる内容だし、後者に至っては安倍首相をよく見せるために露骨なミスリードすらなされています。
 具体的に言うと、安倍首相が何故一度降りた総理の職を再び目指したのかという点について山口氏は、「東日本大震災と中川昭一の死が影響した」と指摘していますが、これは政治家の分析としては大いに間違っていると私には思います。まず東日本大震災について「影響を受けた」という政治家はたくさんいる、というか思想や感情に影響を受けていない人は日本人全体を含めてまずおらず、それた大多数の人たちと安倍首相の間では何が違うのかが書かれていません。強いてあげれば、「被災地訪問に山口氏が同行していた」という点だけが異なり、こう書くことで安倍首相の話を引き立てられるからでしょう。

 次に中川昭一の急死についてですが、確かにこれは安倍首相も少なからず影響を受けていますが、私が見るに現在の安倍首相のメンタリティに最も強く影響させた死は間違いなく松岡利勝でしょう。覚えている人には早いですが戦後初めての現役大臣(農水)の自殺にまで発展し、やはり今の安倍首相を見ていてリスク管理や大臣クラスの失言に対し、松岡自殺事件を意識していると思う節が多々見られます。中川昭一の自殺はお涙頂戴になりますが松岡利勝の自殺は安倍首相を貶める書き方になるから敢えて全く言及しなかったのではないかと私は見ています。

 そのほかこの本の欠点を述べると、安倍首相と麻生大臣しか政治家が出てきません。恐らくこの二人以外にあんま友達がいないのと、だからこそこの二人に利用されたんじゃないかなと思うのですが、文章を読んでいても安倍首相の政敵となる相手、具体的には石破氏に対してはやや辛辣な書き方が見え隠れしています。言い換えれば、安倍首相の忖度を受けて書かれた本じゃないのかなと思えてならず、内容からして読んでて事実を見誤る要素がふんだんに盛り込まれ、必要以上に安倍首相を持ち上げる記述があるため正直言って私は不快感を覚えました。
 唯一評価できる点を挙げるとすると、日本の政治記者というのはしばしば派閥単位で志向を巡らせることが多く、政治家個人単位で分析したり書いたりすることは案外少なかったりします。それら一般の政治記者の本に比べると派閥の話がほとんど出てこず安倍首相個人を中心に据えて書かれているため、観点としては悪くはありません。もっとも派閥単位で書けるほど人づきあいがなかっただけかもしれませんし、安倍首相個人を語る上では彼の御母堂を無視するというのは私の中ではありえませんが。昭恵夫人に対してすらも全く言及されていないし。

 それがためAmazonのレビューで好評意見が多いというのも、私からすればやや奇妙に移りました。何人かは私と同じような感想を持っており上記に挙げた点についても指摘されている人がいましたが、この本を評価した方々についてはもっといい政治解説本があるのだからそっちの方を読んだ方がいいのにと思えてなりません(友人を含め)。
 具体的には、文芸春秋にある赤坂太郎氏の定期コラムが一番簡潔でいいでしょう。これ書いている人は朝日新聞の記者だという噂がありますが、すでに十年以上も同じ調子で書かれていることを考えると複数人のペンネームかもしれません。

「私はレイプされた。不起訴はおかしい」著名ジャーナリストからの被害訴え、女性が会見(BuzzFeed Japan)

 そんな具合で友人に対しても遠慮なく不満をぶつけるくらいフラストレーションたまっていたところ、出てきたのが上記疑惑です。事件の訴え自体はその友人からも知らされていましたがこうしてトップニュースになるあたり本人もニュースな男になったじゃないかと感心しています。
 件の疑惑が真実であるかどうか私には判断する根拠や術はもちろんありません。ただ先ほどの本の内容、特に自分と安倍首相の近い関係をジャーナリストでありながら自慢するという記述の仕方を見る限り、自尊心が高い上に何か自慢せずにはおられず、思想に偏向がある人物のように私は感じたため、疑惑が事実であっても何も驚きがありません。

 繰り返しになりますが、政治家との距離を自慢するというのは私の価値観ではジャーナリストとしてまずあり得ない行為で、友人や記者仲間とかに自慢するだけならまだしも、堂々と本に書いてしまうあたりは正常じゃない気がします。私個人としては、こういう方にはあまりジャーナリストと名乗ってもらいたくないというのが結論です。

2017年5月28日日曜日

今そこにある危機

 中国は5/30(火)の端午節という祝日に無理やり日、月、火という連休に絡ませるため、昨日5/27(土)は出勤日で普通に仕事がありました。この土曜の出勤日分が月曜への振替にすることが国によってきめられているのですが、中国ではこういう妙な祝日の差配が多く地味にむかつきます。
 もっとも連休前とあって土曜は有休をとる人も多い上に社会全体も連休モードのため仕事が忙しくなるということはないのですが、私の方は抱えている案件があったため割と午前中は集中して仕事したものの、午後は手持ち無沙汰になったため次の原稿の調べものとかしていました。

 そしたら突現携帯にメールが来て、見てみると銀行からでした。なんでも三連休中に銀行システムアップデートをやるため連休中はATMでの引き出し等ができなくなるとの通知でしたが、「何故直前の前日に通知する?」というのが気になったものの、敢えて深く考えないようにして仕事に戻りました。
 ただこの時、財布の中身がやや心もとない状態だったことを思い出し、連休中ともなれば何かにお金使うかもと思って一応夜のうちに引き出しておこうかとは気には留めていました。そして仕事が終わってあらかじめ約束していた元同僚と市内で夕食を取った後、夜十時に自宅近くのATMに寄って引き出そうとしたところ、何故かATMの小部屋がロックされてて開きませんでした。

 見てみると張り紙があり、メール通知に書かれていた内容に加えて、「ATMは27日夜8時以降は使えなくなります」という文言が書かれていました。聞いてねぇよこんなこと!
 もっと早く下ろしておけばと後悔先に立たず。しかもこの時困ったことに、ただでさえ心もとない金額だった財布の中身が元同僚との夕食でさらに目減りし、リアルに80元(約1200円)しか残っていませんでした。このままだと連休越せないのではと激しく焦り、何か手はないかと思って試してみたのは携帯電話アプリのウォレットへのチャージでした。

 このアプリとはWe Chat(微信)というLINEをパクった決済機能付き中国アプリですが、銀行カードとリンクさせることで日本のSUICAみたいに携帯からお金をチャージすることができます。早速試してみたところ無事にチャージができ、まずは100元をチャージしました。
 これで少し安心して、連休中に何か支払いがあっても携帯アプリから決済すればいいと思っていったんはそのまま自宅に帰りました。しかし自宅に帰った後、もしかして翌日からはこのチャージや、銀行カード経由での携帯決済もできなくなるのではと思い直し、携帯電話のアプリ内にもっと金額をチャージしておこうと思って追加で300元チャージすることにしました。いったんアプリ内にチャージしておけば銀行カードとは関係なく決済できるので、普段はアプリ経由の銀行カード直接決済を行っているものの、保険としてアプリ内ウォレットへのチャージを追加したわけです。

 結論から言うとこの決断は正しく、翌日からは携帯アプリからも銀行へのアクセスは完全にできなくなりました。仮にウォレットへのチャージを忘れていたら、ガチで80元だけで連休3日間過ごす羽目となっていたでしょう。
 っていうかそもそも何故システム止めるという通知を前日にするのか、もはや怒る気にもなりませんが日本だったらニュースになることが中国ではニュースにならないし激しい混乱も起こらないあたりこの国はおおらかだと思います。それにしても結構冷や汗かいたことはもとより、明日も明後日もあんまりお金使えないから家に引き込まらないとなというのがいろいろ気をもたげます。