というのも物事は基本的に悪い方向へ向かうことの方が多く、またトランプ大統領のこれまでの言動からみても、失敗した政策ほど「これから効いてくる」などと強弁して延々と続ける可能性の方が高いからと感じるためです。
また日本の米国向け輸出への影響ばかり取り上げられますが、もっと気にすべきなのは為替なんじゃないかと密かに見ています。今回の政策で基本的に世界中すべての国で対米貿易量が落ち込むことは間違いなく、この結果としてドルの使用量が落ち込み、ドル安が起こることは確実だと考えています。
日本としてはこれで円高ドル安となり、米国、というかトランプ大統領の「日本は為替操作している」という批判を避けることができる、少なくとも「ちゃんと努力してるよ(´・ω・)」と言い張る根拠ができるので、これ自体は日本にとって悪くないかなと考えています。インフレもある程度の成果を得ているし、物価高を抑えるうえでもこの動きはむしろ日本にとっていい方向に作用する点が多いでしょう。
こうした変化に対し、日本の報道を見ているとなんか受け身というか対応や対策ばかり議論されていますが、むしろこのパラダイムを前向きに利用しようという声が聞こえないのが密かに残念だったりします。
具体的には何かというと、前述の通り今回の政策で世界中で対米貿易というか取引が減ることは間違いなく、これはいいかえれば、米国が他の国に持っている市場を失うことを意味します。この米国が失った分の市場を埋めるように日本が奪取すればプラスこの上なく、今のうちに奪い取れそうな市場や製品を官民揃ってピックアップすべきだとみています。
敢えてここで私の方から挙げるとするなら、医療機器が一番狙い目じゃないかとみています。何故かというと、現在の米国にとって軍需品を除いて最も競争力のある工業製品だと思うからです。
あまり日本の報道では見られませんが、現在世界の医療機器、特に先端分野は米国が圧倒的に強くなっています。かつて内視鏡で一世を風靡した日本ですがこのところはその内視鏡でもあまり振るわず、米国企業とかにシェアを取られまくってます。何気にドイツも、医薬品は依然として強いけど医療機器はそこまで強いというわけではなく、米国の後塵を拝しています。
一体何故米国が医療機器で強いのかというと、金出す金持ちが多いからです。自分の寿命を延ばそうと高額な医療機器でもどんどん金を出すし、研究資金も率先して出します。命は金で買えないとは言うものの、こうした財力は医療機器の開発をもろに左右します。
元々、この手の医療機器は価格が極端に高いものが多く、対抗関税で上乗せされる支払額はさらに大きくなるでしょう。また対抗関税が出されなくとも、米国への嫌悪感から買い控える動きが広がり、この辺の市場に穴が開くのではとみています。
日本の医療機器はこのところ米国に負けていますが、決して実力がないというわけではないため、これを機にいろんな国へもっと売り込みをかけるのも一つの手じゃないかと思っています。もちろん医療機器以外にもあるでしょうが、私が思い浮かべるのはまずこれでした。
なお半導体に関しては、現在もはや米国製品はそこまで強力という印象はありません。実質的にTSMCがいろんな国でインテルの半導体作ってるし、今回の関税でもそこまで半導体に苦労する企業は出てこないのではとも考えています。
ぶっちゃけ、米国が製造業を守るために本気で潰すべき相手はTSMCだったと私は思います。TSMCがいなければCPUは米国がある程度独占し、守ることができたはずですが、トランプの政策では何故かこの手の半導体の議論はあまり出てきませんでした。支持勢力が自動車や鉄鋼というのもあるでしょうが、単純に他の工業製品、特にハイテク製品について政権があまり認知していないというのが最大の理由じゃないかと考えています。