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2015年8月16日日曜日

実録、左遷者列伝~前編

 勤務者、特にサラリーマン男性に対して聞かせて割と好反応が得られやすい私の持ちネタの一つに、「左遷」という言葉の由来があります。この言葉は中国で項羽と劉邦が争っていた時代に成立した言葉で、諸侯が連合して初代統一王朝の秦を打倒した際、主導権を握った項羽は功績のあった武将に領土の分配を行いました。この際に項羽の軍師の范増は劉邦の野心と求心力を警戒し、本来なら首都咸陽(現在の長安)に一番乗りした劉邦には咸陽周辺の領土を与える約束でしたが、下手に反抗できないよう彼を僻地へと送り込むべきだと進言します。最終的には咸陽からさらに西にある、当時としてはかなりの僻地である漢中に封じるのですがこの際に范増が項羽に言った言葉というのが、「劉邦は左(=西)に遷(うつ)すべし」で、転じて僻地へと追いやることを「左遷」と言い表すようになりました。

 こうして成立した左遷ですが、歴史を顧みるとなかなか持って様々な人間が権力争いやら自らの不始末などによって左遷されており、その過程もなかなかドラマチックだったりします。そこで今日は日本で左遷された人物の中でも有名な人物をいくつか紹介kしようと思います。

1、菅原道真
 最早説明不要。日本において左遷といったらまずこの人、「ミスター左遷」と呼んでもいいくらい有名でみんなにとってもお馴染みなのがこの菅原道真です。なんせ彼は左遷されたという事実が日本史の教科書に載せられている上、小中高の授業でほぼ必ず教えられるほど左遷人事がPRされており、その結果というか福岡県の「大宰府市」という地域名を見るにつけ私の中では即「左遷」という言葉が浮かんでくるほど刷り込まれています。多分これは私以外でも同じなんじゃないかな。
 それにしても天神様に対してこういう内容を平気で書く当たり、私の怖いもの知らずもいい所です。もし雷に当たって死ぬことがあれば確実にこの記事が原因でしょうが、天神様の雷波って中国にも届くのかな?

2、森林太郎(通称、モリリン)
 この人物は明治時代に東大を史上最年少で卒業(現在においても)した上に当時としては非常に珍しかったドイツへの留学に派遣され、帰国してからは軍医の幹部として辣腕を振るうという日本史上でも屈指のエリートでした。ただ彼自身の著作においても若い頃から周囲といくらか軋轢があったと思われる節がありますが、1899年に東京から福岡県の小倉市へ左遷人事を受けています。
 わかる人にはもうわかっておられるでしょうが森林太郎というのは文豪、森鴎外の実名です。ただ彼の場合は小倉に左遷されてから三年後に軍医トップの地位に昇進して東京へと舞い戻りましたが、小倉時代を経てからは性格も以前と比べ大分丸くなり、執筆する小説の性格も大きく変わったと言われているだけに本人にとっても大きな転機だったのではないかと思われます。

3、指原莉乃
 AKB48の指原氏といったら既にみんなにとってもお馴染みの人物で、デビュー当初は人気も低く鼻でゴム手袋を膨らまして割るなど地味な活動が続きましたがその後、人気は次第に上昇していき、AKB総選挙でトップを取るなど下剋上を果たしたことでも有名です。そんな彼女ですが2012年、総選挙で当時としては過去最高の4位に輝いた直後に週刊誌発のスキャンダルが明るみとなり、プロデューサーの秋元康氏からAKB48からHKT48にグループ移籍を言い渡されます。ってか、三日天下な当たり書いててなんか明智光秀みたいだ。
 この際に東京から福岡県博多市へと活動拠点が移ることとなったためか、上述の菅原道真と重ね合わされ、ネット上では「指腹左遷」、「太宰権師(だざいのごんのそち)」などと揶揄されることとなりました。現在は活動拠点を再び東京に遷している模様で、最初の下剋上といい、叩いてもなかなか死なない妙なタフさに溢れた人のように思えます。

 以上が今日紹介する三人ですが、見てわかる通りに三人とも左遷地が何故か福岡県に集中しています。確かに福岡県は日本でほぼ西端の土地であり「左に遷す」という意味ではこれ以上ない位置にありますが、左遷された人物の中でもトップクラスに有名な人物三人が揃っているというのもなかなかオツなもんです。天皇の流刑地といったら隠岐の島が有名ですが、多少不謹慎ですが福岡県もなんかこの方面でアピールしてもいいんじゃないかと思えてきました。
 それにしても、菅原道真と森鴎外に指腹氏並べて記事書くなんて恐らく世界で私だけでしょう。なんかこう書くと、指原氏がすごい大物に見えてきた……。

 ってことで、次回は続きとばかりに他に数人の左遷人物を取り上げます。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

劉邦は左遷の語源になりましたが当の本人は勢力を盛り返し、項羽を滅ぼす事に成功しました。
僻地に追いやっただけで安心していると思わぬ逆襲をうけるわけですね。

花園祐 さんのコメント...

 そうそう、まさにそういうことを言おうと思ってこんな記事書きました。折角なので次回の記事でここのコメントを引用させてもらいます(*^^)v