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2023年12月16日土曜日

繰り返される夏のトムラウシ山遭難事故

 一昨日の上海の最高気温は20度だったのですが、今日の最高気温は4度、でもって最低気温はー1度と報じられています。実際、自分の部屋の室温も一昨日まで18度だったのに今日は自分が警戒し始める13度台に落ち、夜は電気カーペットつけないとさすがに寝れないでしょう。
 日本も今日は各地で夏日を記録したそうですが、明日明後日にかけて上海のように劇的に寒くなると思います。この激しい寒暖差は結構体に応えるもので、自分も昨日からやや神経が痛んでいるのか少し前後不覚になり、また前からやたら心臓が動悸をするのでこの前成田空港で買ってきた救心を飲んでたりします。


 話は本題ですが、通勤途中に読むものがなくて以前に購入した山渓文庫の羽根田治氏の遭難ルポを読み直していましたが、その中でもやはり特に印象深かったのがこちらの2009年に起きたトムラウシ山遭難事故です。夏山遭難としては8名の死者という史上空前の大規模遭難で、さほどこの手の遭難物に興味のない人の間でも上記のWikipedia記事はよく読まれているという有名な事故です。
 私自身も関連記事を読み漁り事故の経過や地名などもある程度覚えるようにもなったのですが、実はトムラウシ山ではこの2009年以前にも、夏山シーズンに2名がなくなるという遭難事故が起きています。


 以前はなかったと思うのですがなんかWikipediaの記事ができていたのでリンクをつけます。私自身はこの2002年の事故は前述の羽根田氏のルポで読んでいたのですが、大まかな経緯を話すと台風が接近して天候が荒れ始める中、天気予測を見誤って登山を強行した結果、女性4人パーティのうち1人が亡くなったほか、8人の山岳ツアーで女性客1人が亡くなるという運びとなっています。経緯について詳細に報じられているのは前者の4人パーティの例です。
 この事故は7月に起きていますが、亡くなった二人はどちらも死因は低体温症でした。真夏真っ盛りにもかかわらずこのトムラウシ山では一気に気温が冷え込むことがあり、また降雨があれば風雨を避けられるような森林もコースに少なく、対策となる衣服やテントがなければ急激に体温が低下することがあると報じられています。

 私がこれまで知っていたトムラウシ山の事故はこの二つだったのですが、記事を読み返してネットでほかにも何か関連記事がないかこの前何気なく調べてみたところ、なんともう1件、夏季のトムラウシ山における遭難事故があったことを知りました。


 こちらの事故について上記リンク先のブログの方が、たまたま遭難者と事故直前に鉢合わせていた方と知り合いだったほか、事故現場近くにいた方の証言も得られ、事故詳細について詳しくまとめてくれています。
 その内容によると遭難者は高齢の男性1名の単独登山者で、2015年の7月に悪天候の中で出発を強行したものの途中で動けなくなり、別の登山者が見つけ救助を行ったものの体力が持たず、凍死されたとのことでした。たまたま当時トムラウシ山にいた別の登山者によると、当時の気温の荒れ具合は凄まじく、強風でロープが切れたり、気温はマイナス5度を記録したとのことで、7月にそんな気温が出てくることにただただ驚くことばかりです。

 ただそれ以上に注目すべき点として、上記3件の遭難事故はすべて同じコースだという点です。

 ヒサゴ沼避難小屋を朝出発し、北沼を超えてトムラウシ山へ向かい、トムラウシ温泉へと下りていくというルートなのですが、3件とも夏季に、また天候が荒れ急激に冷え込んだ結果凍死者が出るという経過まで完全に一致しています。もちろん事故の起こりやすいコースや岩壁なんてどこだってあるでしょうが、なかなかに衝撃的な夏山遭難事故がこうも何度も同じ山、同じコースで繰り返すものなのかという点で少し驚きを感じます。
 遭難者の遭難当時の装備に関してはそれぞれ分かれるでしょうが、それ以上に事故原因ははっきりしており、悪天候での強行にあると断言できます。このうち2009年の事故では悪天候から山頂には上らず、下山を優先するためその山腹を迂回するルートを通っていますがそれでも死者を出す事故へと発展しています。この点、やはりどの事故を見ていても、途中で動けなくなった際にビバークする場所がなく、かといってエスケープするルートもなく、そのまま体温と体力を奪われるという結末が多いような気がします。

 もしかしたらトムラウシ山のほかにも同じような事故が多発する場所もあるかもしれませんが、これほどまでに大々的に報じられる遭難事故が過去にありながらさらに事故が起きるという点で、なんか魔性めいたものをこのコースに感じます。そもそも自分は登山なんてしませんが、トムラウシ山のこのコースだけは、薄気味悪さも感じるので何としても避けたいというのが本音です。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ さんのコメント...

トムラウシはアイヌ語です。国土地理院では当て字で「富良牛山」と命名しています。
ですが、この遭難事故が起きた後 ネットでは「弔死山」と呼ぶ人が続出しました。
ここまで遭難事故が続くと、弔死山という当て字も間違っていないのかもしれません。

さて、私は北東北に長く住んでいるので寒気の恐ろしさはよく知っています。北国
では時たま急激に気温が下がる事があります。7月末なのに寒くて車の暖房をつけた
事があります。 8月の夏祭りの時も寒かったので出店でホットコーヒーを頼んだ
事もあります。平地ですら悪条件が重なるとこのような状況になるので、山岳地帯
だと余計ひどい状況でしょう。


花園祐 さんのコメント...

 自分は関東マッドシティ育ちですが、やはり北国での急激な気温低下は実体験がなく、感覚がつかみづらいところがあります。実際、このトムラウシ山の事故の被害者の多くは本州出身者が多く、北海道におけるこのような気温低下をあまり把握していなかった、また帰りの飛行機スケジュールに捉われたという方が多いだけに、気候感覚の差による影響も少なくないといわれています。
 それにしても最初の事故の時点でも深刻な内容だというのに、その後も続いて事故が起きているあたり、この山の不気味さを感じます。この前北海道へ行きましたが、やっぱ本州とは感覚の違う場所だということを感じました。