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2009年7月18日土曜日

何故若者は結婚しないのか

 少子化問題特集シリーズも三回目で、これでようやく完結です。まずはこれまで通りに今までのおさらいですが、前々回の「日本の少子化対策の問題点」の記事で私は日本の少子化の原因として日本人の未婚率の増加が問題ではと分析し、前回の「少子化問題と若者問題」記事で未婚率の増加は現在の日本の若者の置かれている不安定な雇用環境に代表される経済的影響が強く及ぼしているところがあり、いわば少子化問題は若者問題と同一線上にあると分析しました。しかしその一方で出産はともかく文化的要素の強い結婚にまで経済的影響が強く及ぼすのかという疑問もあり、では何故日本の若者は結婚をしなくなったのか、そしてどうすれば結婚するようになるのかということについて私の考えを紹介します。
 最初に結論を言えば、私は経済的影響は実際は言われているほど大きな要因ではなく、若者が結婚をしなくなったのは意識的な要因の方が断然大きいと考えています。そしてその結婚しなくなる意識を作っている主犯はマスコミだと睨んでおります。

 これはもう五年くらい前の話ですが、前東京財団会長の日下公人氏が雑誌上にてこんなことを書いていました。

「昔あるアメリカの学者が、テレビの画質が高画質化するにつれて婚姻率は下がると主張したことがあった。この発言の意図する意味とは視聴者が高画質のテレビを通して容姿の美しい異性の役者や芸能人を見慣れることによって、実際に周囲にいる異性に美を感じられなくなってしまうからだという」

 こう前置きをした上で日下氏は、現実に日本でも婚姻率の現象と共に少子化問題が起こっているので、ここは一つこの問題を解決するためにテレビ局などのマスコミに協力してもらって美形の芸能人の露出を控えてもらってはどうだろうかと冗談めかして主張していましたが、案外的を得ているようにも思えます。ドラクエでいうなら「けんじゃ」に慣れてしまうと「まほうつかい」はもう使えなくなるように、やはり芸能人に見慣れてしまうと現実にそこらにいる異性の容姿では物足りなくなるのもごく自然でしょう。

 こうした容姿の見方の偏りもさることながら、これなんか私も力を入れて以前に「男女が異性に求める理想像のすれ違い」の記事で書きましたが、異性へ持つ理想像と同性像の歪みも見逃せません。詳しくはリンクに貼った前の記事を読んでもらいたいのですが、各マスコミが「こんな風にすると異性にもてるよ」と言っては自分たちのマーケティングに合った適当な同性像を提供するために、異性からすると決してモテるわけでないファッションや振る舞いが流行してしまうことが過去から現在に至るまで多々あります。

 実際に私の視点からしても、別になんか恨みがあるわけじゃないけどどうして浜崎あゆみ氏や倖田來未氏のファッションが女性に持て囃されたのか未だにわかりません。はっきり言ってこの二人のファッションは見た目にもそれほど美しいと思わないし、振舞い方についても浜崎氏の「あゆは~」って自人称にむしろ引いてしまいます。じゃあどんなのが好みかって言ったら私は井上和香氏と多部未華子氏が好みなのですが、何故この両極端な二人が一緒に挙がってくるのか自分でも不思議です。

 それはともかくさらにこうしたモテるであろう同性像の歪みに加え、こっちは贅沢になったというのか分を知らないというのか、相手の異性に求める桁外れな高望みも未婚率に大きく影響しているでしょう。
 特にこれが激しいのが女性が見る男性相手の年収で、このところ世の中に流布しているという「婚活」の特集番組などを見ると、30代くらいの女性の方が平然と結婚相手に求める年収として1000万円以上を主張する方を見たりします。前にも一回書きましたが、少し古いデータ(2003年頃)では年収一千万円の世帯割合は全体の5%弱で、20代や30代でそれほど稼ぐ人ととなるとそれこそホリエモンみたいなの、って言うとちょっとひどいですがそれくらいしか残らなくなります。データを知らないにしてもそれくらい現実離れしたハードルを交際相手に平然と課してしまうのも、結婚情報誌とか週刊誌とかで適当な情報を流しているマスコミの影響だと言わざるを得ません。

 上記のような意識に及ぼす影響こそが現代の若者を結婚から遠ざけてしまう主原因だと私は考えており、これらすべての作為者であるマスコミが少子化を産んでいると睨んだわけです。
 原因がわかったところでじゃあどうすればこの少子化ならぬ未婚者の増加を止めれるのかですが、やはりマスコミのこの様な行為を規制するのが一番でしょう。それこそ最初に挙げた日下氏の提言のように毎日朝から晩まであまり見た目が綺麗じゃない芸能人に出演し続けてもらえば、例に挙げるのも悪いけど最終的には千原せいじ氏のような人でも普通の容姿に思えるようになるかもしれません。どうでもいいけど、ドッキリ番組で素人女性の前にキムタクと思いきや千原せいじ氏が出てきたら、あまりの容姿のギャップに女性が腰を抜かしてへたり込んだことがあったそうです。

 しかしこの方法を実際にするとなると誰もテレビを見なくなる可能性も否めず効果が限定的になる恐れもあり、必ずしも有効とは言える作戦ではありません。じゃあ他にどんなのがあるかといったら、こちらはそれこそ何をしてもいいと言うのなら私がやってみたい方法で、理想の夫婦像を強く国民に見せ付けることです。
 どんな方法かというとそこそこの容姿の芸能人男女一組を秘密裏に選び出し、普通の芸能情報としてその男女が交際していく過程から結婚し、その後の生活までも逐一テレビなどで報道し、「理想の夫婦像はこんなもので、結婚っていいもんだね」っていうのを飽きるくらいまでとことん日本人に見せ付けるやり方です。前回の記事でも書きましたが結婚というのはやはり文化的な要素の強い行為なので、文化的な慣習として色濃く根付かせることこそが単純に効果があるように思えます。

 それこそ戦前までは結婚しなければ男女共に一人前として見られないという世間の見方が結婚に走らせていましたし、「それが当たり前」という認識ほど結婚へ誘導させるのに強い武器はありません。また先ほどの理想の夫婦像を見せ付けるやり方は一見強引な方法に見えるかもしれませんが、はっきりいって戦後の日本人の結婚観は現平成天皇と美智子様をモデルに作られたと言っても過言ではなく、決して前例のない方法というわけじゃないと思います。まぁ皇太子夫婦と芸能人じゃ効果に差があるでしょうが。

 価値観が多様化していると言われる現代ですが、その一方で私の目からすると「こうすればいい」という固まった価値観を現代日本人は欲しているような面もあるような気がします。結婚についてもそうで、「出来ちゃった結婚」が一つのパターンとして確立されたのもそういった流れの上であるような気がし、それであればてこ入れできるところもまだあると思います。そうしたところをお上でもいいし下からでもいいし、とにかく持ってきて黄金パターンとして確立させることが未婚率の減少、ひいては少子化問題の対策になるのではないかという結論で以ってこの連載をまとめさせてもらいます。

2009年7月17日金曜日

Zガンダム風、幸村と家康の対峙

 なんかこの前、自転車を漕ぎながらまたこんなことを思いついていました。

幸村「お前だっ!いつもいつも、脇から天下を狙っているだけで、人を弄んでっ!」
家康「勝てると思うなよ、小僧っ!」
幸村「許さない。俺の命に代えても、体に代えても、こいつだけはっ!」
家康「む、なんだ?」
幸村「わかるはずだ、こういう奴は生かしておいちゃいけないって。わかるはずだ。みんな、みんなにはわかるはずだ」
吉継「焦りすぎだ。だからいけないのだ」
幸村「!?」
勝頼「兵力がダンチなんだよ。そういう時は、どうする?」
  ~~~
幸村「俺の体を、みんなに貸すぞっ!」
吉継「それでいい、幸村」
家康「なっ、真田軍が……。私の知らない部隊でも、編成しているのか!?」
幸村「わかるまい。戦争を遊びにしている家康には、この俺の体を通して出る力が!」
家康「体を通して出る力?そんなものが、三河武士に勝てるものかっ!」
昌幸「幸村はその力を表現してくれる特殊能力を持っている」
信幸(生霊)「"騎馬S"とか"挑発"とかね」
家康「ジジイの声?」
幸村「まだ、抵抗するのなら」
家康「旗本、戻れ旗本っ!何故戻らぬ!?」
幸村「うぉぉぉぉっ!」
  ~本陣急襲中♪~
家康「ぬっ、ぐっ、おおお……」
幸村「ここからいなくなれっ!」
家康「ぐっ……わしだけが、死ぬわけが無い。貴様の心も、一緒に連れて行くぞ……真田幸村っ」
幸村「!? 光が……広がってゆく………」


 大阪の陣の翌年に家康がタイミング良く死んでいることから、もしかしたら夏の陣の幸村の急襲で命を落としてその後は影武者が立っていただけだったのではと思い立ったことからZガンダムにつながりました。どうでもいいけど、Zガンダムは初代プレイステーションで出ていたゲームが内容的にもムービーの演出的にも一番良かったと思います。やけにフォウの入浴シーンに力が入ってたけど。

2009年7月16日木曜日

少子化問題と若者問題

 本当は昨日に書くつもりでしたが、今日の記事は一昨日に書いた「日本の少子化対策の問題点」の記事の続きで、前回に上げた日本の少子化の状況を鑑みて現在の日本でどんな対策が有効であるか私の考えを紹介します。

 まず前回の記事のおさらいですが、まず現象としては出生率の落ち込みなどから少子化は確かに現在の日本で起こっている問題であり、それに対して現在の自民党や民主党は女性の社会進出の補助や教育費の補助などの対策を掲げていますが、彼らが少子化の原因と挙げている経済的問題や女性の問題よりも近年の未婚率の上昇や晩婚化こそが少子化の真の原因ではないかと私は考えています。
 実際に前回で取り上げた福井県の調査においても女性の初婚年齢や未婚率といった要素が少子化に強く相関するとの報告もあり、また全国の調査においても90年代以降は一貫して日本全国で平均初婚年齢が上がっているだけでなく独身層も増加しており、少子化の原因としては一応筋道が通るように思えます。

 では何故日本人は結婚しなくなったのでしょうか。これなんか政治家からワイドショーのコメンテーターまで揃って言っていることですが、80年代までと違って終身雇用制度が崩壊しただけでなくただでさえ派遣切りが常態化し、不安定な雇用、経済環境に若者が置かれているために結婚にまで至れなくなっているのだとされています。何気に出張所の方ではタイムリーにこういった内容のコメントをしてくれた方もいて私も確かに現状の若者の置かれている状況が大きな一因だと考えており、この辺を特に政治家の方々に言いたいのですがやっぱり私は少子化問題と若者問題は切って離すべき問題ではなく、両者を同一線上で議論をして対策しなければ意味がないと思います。言うなれば若者の雇用や生活対策こそが少子化対策に大きく直結するであろうということです。

 しかしそう思う一方、もう大分前ですがこんなコメントをしているのをどっかの雑誌の記事で読みました。

「生活資金が無いために結婚に至れない若者が多いと言うが、出産はともかくそもそも恋愛を始める時点では経済的要素が強く影響するとは思えない」


 著者は残念ながら誰かは忘れてしまったのですが、言われてみると確かにその通りと思わせられた鋭い一言でした。確かに異性と交際したくないと考える若者なんて世の中ほとんどいないでしょうし、会っていきなり相手の年収を聞いて付き合うかどうかを判断する人もそんなにいないでしょう(女性はわからないけど)。そう考えるとこれから生活費用が大きく必要になる出産をためらうことはあっても、「愛さえあれば、お金は要らないの……」と言える間は結婚をためらう理由はあまり見つからず、景気の悪化によって出生率が下がることがあっても未婚率まで多少はともかくここまで急激に上がっているのはなんか違うような気がします。
 さらに先ほどの記事の続きでは、

「そもそも結婚や出産という文化的な領域を、生活資金の補助などというものでどうにか改善しようという考えそのものが間違っている。今の日本人が少子化だというのなら、その現実を受け入れて人口を減らしていくことこそが自然に従った正しい成り行きなのでは」

 というような内容を言われてて、なるほどなぁと思った次第であります。

 しかし私は現実を変えてこそ人間だと思う性質なので、いくつかそうした状況こと日本人が何故結婚しなくなってどうすれば結婚をするのかをといった打開策を考えてみようと思います。本当は今日に一気にまとめて書くつもりでしたが、なんか文章の切れが悪くなるし続きはまた次回に。

2009年7月15日水曜日

今後の政局~小泉チルドレンの処遇

 時期が時期だけにこのところ政治関係の記事を書くのに手一杯です。もう少し間隔を空けて留学体験記を初め他の記事も書きたいのが本音ですが、毎日こんだけ書いてて足りないと言うのだから仕方がありません。

 そういうわけでまたもオーソドックスな今後の政局についてですが、現時点の情勢だと次回の総選挙では奇跡でも起きない限り自民党に勝ち目が無く、それどころか選挙に至るこれからの一ヶ月間でますます形勢が悪くなっていく可能性が高いでしょう。今朝も自ら買って出た割には選挙を直前に控えたこの時期になって突然古賀選対委員長が都議選の敗戦の責任を取るとして辞意を表明し、どこのニュース番組もその報道で持ちきりなばかりかコメンテーターも「自己保身に走った」などと辛口のコメントをしています。また現時点において、古賀氏も別にそうでもなかったけど自民党内に選挙を実質的に取り仕切れる人材も不足しており公示を控えてますます混乱するのが目に見えています。

 なお前回の郵政選挙では小泉元首相の秘書の飯島勲氏が選挙を取り仕切ったと言われていますが、私の見方では飯島氏もさることながら二階現経済産業大臣も大きく関わっていたように思えます。なので二階氏が次の選挙も取り仕切るのならまだマシなのですが、ちょっと今はすねに傷を抱えているので選挙責任者になる可能性は低いのではないかと私は考えています。
 そしてこの選挙の問題で実は今後一番大きくなっていきそうなのが、皮肉なことに前回の郵政選挙で当選した小泉チルドレンたちの処遇です。あまり大きく取り上げられているようには見えないのですが、実は昨日に面白いニュースがほんのわずかでしたが報道されていました。

選挙:衆院選・山梨2区 長崎衆院議員が自民離党 無所属出馬、正式表明 /山梨(毎日jp)

 上記にリンクを貼ったニュースは自民党の現衆議院議員である長崎幸太郎氏が離党し、次回の選挙では無所属で出馬する事を報じているニュースです。この長崎氏は前回の郵政選挙時に郵政民営化に反対票を投じた堀内光雄氏の刺客候補として山梨二区に送り込まれたものの、地区投票では堀内氏に敗北して比例で復活当選を果たした小泉チルドレンの一人なのですが、堀内氏が安倍政権時に自民党に復党したことによりかねてより次回出馬の選挙区について心配されていたところ、案の定自民党から次回選挙での山梨二区の公認を得られませんでした。

 記事を読む限りだと他の選挙区へのお国替えなどを打診されていたのではないかと伺えるのですが、この長崎氏自身が二区からどうしても出馬したいという意向を持っていたことから、自民党を離党して無所属で出馬するのを表明したのが昨日のことで、私もどっかのニュース番組でこの報道を知りました。毎日の記事でも書かれているように地元の長崎氏の支持者らも長崎氏の行動を歓迎していると事で、私が見たニュース番組では自民党支持者3000人がそっくりそのまま長崎氏についていくようだと報じていましたので、多かれ少なかれはあれども同選挙区の自民党支持者に分裂が起きているのは間違いなさそうです。

 元からこの小泉チルドレンの処遇が次回選挙時に大きな火種になると去年から言われていましたが、こうして実際に火が起こってみると改めて問題の根深さに気づかされます。これ以前にも北海道の選挙区において杉村太蔵議員が公認を得られずに涙を呑むこととなりましたし、今回の長崎氏と全く同じ状況にある野田聖子と佐藤ゆかり議員の折り合いもどこまでついているのか未知数です。
 これがまだ自民党優勢の立場であればただ単に小泉チルドレンを切って終わったでしょうが、ただでさえ地方選挙で連敗するなど不人気な今では自民党と決別したりするだけでも脚光を浴びることが出来ますし、またそうやって飛び出したところで当選に至らなくとも自民党支持者を分裂させることになります。

 ここで気になるのが他の野党、特に民主党です。ここは信長の野望じゃありませんが、そういった不安定な立場に立たされている小泉チルドレンたちにどんどんとリクルートをかけて彼らを取り込むことができれば、今後ますます状況が有利になっていく立場になります。もっとも、すでに推薦候補者が決まっている地区では難しいでしょうが。

 私としては次回の選挙で自民、民主の双方がどちらも単独過半数に届かない痛み分けで終わってしまうと、ただでさえ参院が不安定な状況のために日本の政治が大きく停滞して全体にとってマイナスになるという予想から、もはや自民に立ち直りが効かないのであれば政策すべてを評価していないまでもなんとか民主に大勝させなければと考えています。またたとえ民主が政権をとったところで維持できないにしても、一旦野党に下ることで自民党内も森喜朗を初めとした老人らを一気に掃討することさえ出来れば国民として痛みに耐える価値はあると思います。
 そういう意味もあって比較的年齢の若く議員生活もそれほど長くない小泉チルドレンらには、次回の選挙にも生き残ってほしいと陰ながら願っている次第です。

2009年7月14日火曜日

日本の少子化対策の問題点

 日本で少子化が問題だと言われ始めてすでに十年くらい経ちますが、その間あれこれ議論しては小渕優子氏がいかにもマスコットらしく少子化担当相に就いたりいくつか政策を打ち出したものの現在に至るまで少子化の流れは一向に歯止めがかかっていません。こうした状況に対し自民党も民主党もあれこれ少子化対策に予算をつけることで対応しようとしていますが、結論から言わせてもらうと私は両者の政策どちらにもあまり効果があるとは思えず、この問題を根本的な解決へと導くことはないだろうと考えています。今日はそんな私の考えと、ではどうすることが少子化対策になるのかということについてやや長めに解説いたします。

 まず基本的なデータのおさらいとして、現在の日本の出生率を説明します。この出生率というのは正式には「合計特殊出生率」といって、単純にその集団がどれだけ子供を毎年生んでいけるのかという指標だと考えてください。一般的にこの出生率は2.08という数値が一つの基準で、これ以上であればその集団は今後人口が拡大し、逆にこれ以下であれば人口が減少していきます。それで現在の日本の出生率ですが2008年のデータを引用すると1.37と、人口を維持するのに必要な2.08という数字を大幅に下回っており明らかに少子化の状態にあると言えます。なお同年のデータで日本以上に少子化が問題となっている韓国ではこれが1.19となっております。

 では何故日本はここまで少子化に陥ったのでしょうか。自民、民主の政治家はともに揃って、「養育、教育費がたくさんかかるようになったために子供を生もうとしなくなった」のが原因だとして、民主党は子供のいる世帯に無条件で給付金を行ったり高校での学費の免除を行うことが対策になると、マニフェストにまで掲げています。また自民党も若者の不安定な雇用環境が子供を生みにくくしているとして、全くやろうという素振りを見せていませんが女性の社会進出をすすめることで対策になると主張しています。

 確かに両者とも一見するとごもっともな意見を言っているように見えるのですが、私は養育費の問題が子供を生まない原因だとはちょっと思えません。理由はいくつかあってまず第一に子供を生もうとする時点で、人間そこまで考えるのかということです。よっぽど計画的な夫婦ならいざ知らず、小中高の教育費が私立と公立それぞれ概算でどれくらいかかり、大学は文系に進ませるのか理系なのか、はたまた下宿をさせるのか、これだけでも相当なバリエーションがあり、自分の十年単位での賃金カーブと比較して子供を生むかどうかを決める夫婦がいるとはちょっと考えられません。まだ第二子を産む際にこういったことを考えるのならわかりますが子供を生むこと自体そこまで計画的に進められる行為ではないいのもあり、養育費の多さが直接的に少子化に影響を与えているとは私は思いません。

 では一体何が少子化に影響を与えている原因なのかですが、そのヒントとなる格好の材料として福井県の統計調査結果があります。この福井県というのは全国的に出生率が下がる中で近年わずかながらですが出生率を高めている県の一つで、何故出生率が上がっているのかをリンクに張ったサイトでは実に事細かに調べて公表しております。あくまで私の目からですが非常に調査内容も充実しており、一度も行った事ないけど福井県を今回大きく見直しました。
 それでは本題ですが、まずこの調査結果の中で出されている「出生率と相関する指標」の相関係数の一覧を紹介します。この相関係数というデータは数字の正負に関わらず絶対値が大きければ大きいほど元のデータ(今回の場合は出生率)に対する影響度が高く、正であれば比例し、負であれば反比例する傾向を持っていることを表すデータです。出来れば元のサイトを見てすべての相関係数のデータを見てもらいたいのですが、全部紹介すると長くなるので絶対値が0.5以上と、比較的影響度の高い重要な項目に限って紹介いたします。

<出生率に対して0.50以上の相関係数項目一覧>
・女性の就業率:0.59
・共働き率:0.71
・共働き世帯割合:0.70
・労働力率:0.60
・最終学歴が大学卒以上の割合:-0.62
・婚姻率:-0.52
・平均初婚年齢(女):-0.69
・第1子出産年齢:-0.70
・未婚率(女):-0.69
・3世代同居率:0.50
・65歳以上親族のいる世帯割合:0.69
・1世帯当り延床面積:0.53
・住宅の敷地面積:0.55
・公営賃貸住宅の家賃:-0.70
・人口集中地区人口比率:-0.75
・第1次産業就業者比率:0.60
・第3次産業就業者比率:-0.65
・ボランティア活動の年間行動者比率:0.67
・参院平均投票率(補正値):0.70


 上記の相関係数の中でまず私が一番驚いたのは、一番最後の「参院平均投票率(補正値):0.70」です。何故投票率が高いと出生率が高くなるのか最初は全く以ってわからず、政治に厚い地域は子供を何故よく生むのかとしばし悩みました。恐らくこの相関は「投票率」というよりも居住地域への結びつきによって付随する数値で、出生率に真に影響しているのは地域性でしょう。同じく地域との密着性を表す他の相関係数を見ても、

・ボランティア活動の年間行動者比率:0.67
・スポーツ少年団参加児童比率:0.42


 というように、地域との結びつきに比例して出生率が高くなる傾向があります。

 それで肝心の養育費、というよりも経済的環境が少子化に影響するかどうかですが、確かに「公営賃貸住宅の家賃:-0.70」いくつかそれを伺わせるデータもあるのですが、この調査報告書内に「経済的豊かさ」でまとめられている相関係数を見てみると、

・県民所得:0.45
・世帯収入:-0.10
・預貯金残高:-0.49
・教育費割合:-0.24


 という結果で、「預貯金残高」を除くとお世辞にもあまり高い相関が見られません。また民主党らが主張している教育費についても東京や大阪といった都市部と違って福井県のこのデータだけで断言することは出来ませんが「教育費割合:-0.24」と、それ自体は倫理的、教育的にいい政策だとしても私は教育費の補助が少子化対策になるとは思えない結果です。

 では一体何が少子化を加速させている原因なのかですが、結論を言えば私は未婚率だと考えています。
 現在日本の未婚率は「図録 未婚率の推移」にてグラフにして紹介されていますが、見事なまでに右肩上がりの様相をなして現在進行形で悪化しております。実際に福井県の調査データにおいても、結婚に関する項目が下記の通りに報告されています。

・婚姻率:-0.52
・離婚率-0.31:
・平均初婚年齢(女):-0.69
・第1子出産年齢:-0.70
・未婚率(女):-0.69


 ぱっと見、なんで「婚姻率」と「未婚率」が両方とも大きな負の相関をしているのかが未だに良くわからないのですが、この結婚に関する相関係数はどれも大きな相関で、特に「第1子出産年齢」は0.70と高い相関もさることながら常識的に考えて一人目を生む年齢が二人目、三人目に大きく影響するのは当たり前でしょう。また女性の未婚率については2005年のデータによると、全国平均では47.5%に対して福井県は38.4%と大きく差があり、こういったところが福井県の高い出生率に影響を与えているとこの調査報告書でも結論付けられております。

 こうしたことから私は日本人の未婚や晩婚化が少子化の最大の原因だと言いたいのです。これまた別のデータですが「完結出生児数」といって夫婦が生涯に儲ける子供の平均数を表すデータがあり、こちらも近年下がりっぱなしですが国立社会保障・人口問題研究所のデータによるとなんだかんだいって2005年のデータでも2.09あり、結婚した世帯は平均でちゃんと2人くらいの子供を生んでおります。ここに至り、結婚させさえすればぐっと少子化問題は軽くなるのではないかと私はにらんだのです。

 では具体的にどうすればいいか、どんな対策が効果を出すのかと言うことに関してはもう大分長くなったのでまた明日紹介いたします。
 最後に自民党らが主張している女性の社会進出が本当に少子化対策になるのかということについて、福井県のデータと合わせて補足しておきます。福井県のデータによると先ほどの相関係数の上では「女性の就業率:0.59」、「共働き率:0.71」、「共働き世帯割合:0.70」と、報告書の結論でも女性の社会進出が進めば進むほど少子化対策になるとまとめられているのですが、これに対して私はちょっと疑問に思いました。というのも他の就業に影響するであろう相関係数において下記のような結果を出しているからです。

・大学進学率:-0.42
・最終学歴が大学卒以上の割合:-0.62
・第1次産業就業者比率:0.60
・第2次産業就業者比率:0.27
・第3次産業就業者比率: -0.65


 細かくまで説明しませんが、私はこれを見てその共働きしている世帯の女性の職業は福井県という土地柄ゆえに第一次産業が多いのではと疑いました。残念ながら共働きをしている女性の職業が何かまでは報告書に書いてありませんでしたが、今の自民党の主張はどちらかと言えば第三次産業に務める女性の社会進出を助けようとするものばかりで、このデータからだと逆効果を生んでしまうのではないかと思うような節もあります。これまた逆に言えば、女性を農業に従事させることが出来たら食糧問題も人口問題もうまいこと回るんじゃないかと思ってしまいました。そうも簡単に行くわけはないけど。


  参考サイト
少子化と合計特殊出生率について~統計的分析~(福井県統計情報システム)
図録 未婚率の推移(社会実情データ図録)
国立社会保障・人口問題研究所

2009年7月13日月曜日

東京都議選の自公敗北と解散日決定について

 既に報道でもご存知でしょうが、昨日に行われた東京都議選でこれまで与党であった自公は大幅に議席を減らす歴史的な大敗を喫したのに対し、このところの各地方選にて連勝を重ねている民主党は大きく躍進して大勝を収める事となりました。今回の敗戦を受けて麻生首相はようやく来週解散、8/30に選挙を行うことを公にも発表しました。
 まずは長々粘った麻生首相をようやく民主党が解散に追い込んだと言えるのがこの都議選の結末でしょう。もっとも麻生首相は報道によると当初は明日にでも解散を行おうとしたところを周りに引き止められて7/21にしたと言われていますから、これが事実だとしたら最後の最後までみっともない上に、こんな具合だったら又翻心するのではないかと心配させられます。

 ただ今回大勝した民主党も素直に喜ぶべきではないでしょう。と言うのも今回の東京都議選の最大の功労者は私のにらむところ橋下大阪府知事で、次点が東国原宮崎県知事だからです。このところの他の地方選挙に洩れず今回の都議選もそれまで50%台だった投票率が60%に跳ね上がり、こうしたことが投票率が低ければ低いほど有利になる公明党及び協力している自民党の選挙活動に大きな打撃を与えたことに間違いはなく、そのように地方選挙の投票率が何故上がったのかというと橋下府知事のように全国メディアにて強く訴えかける地方首長が出てきたことによるものと考えると決して民主党の力だけで勝ったわけでない選挙だったと私は考えています。
 次点の功労者に東国原知事を持ってきたのは彼も地方選挙の重要性を強く国民に認識させたという点もさることながら、国政転身について最後の最後までもめたことによってマイナスイメージを自民になすりつけた点を評価してです。今日の報道によると、結局転身は止めたそうですけど。

 逆に自民党の視点から言えば、まんまと民主党の土俵に乗ったことが最大の敗因でしょう。今回の都議選は石原都政に対していろいろと争点があり、ここでいくつか上げるのなら新銀行東京の再建問題に始まり東京五輪の招致問題、そしてそのための築地移転問題などいろいろと政策で争う面があったにもかかわらず、生憎メディアを見ている限りではそうしたことはあまり触れられずに自民か民主か、どっちの政党を選ぶのだとことばかり候補者たちも主張していたように思えます。
 はっきり言って政党で選ぶとしたら麻生首相の半端無い失態のせいで勝てるわけが無いのに、かえって鳩山由紀夫民主党代表の個人献金問題を強く突こうとして政党論争に乗って有権者の票をどんどん手放していったのではないかと言うのが私の分析です。この辺が今の自民党の弱さなんだなぁと、改めて納得できるのですが。

 そして今日、麻生首相はようやく解散日を公に発表しました。しかしこのタイミングもはっきり言って最悪以外の何者でもありません。それこそ小沢元民主党代表の西松事件で揺れた四月頃に行っていれば全然今と状況が違った上に、大敗戦を喫した昨日の今日ではいかにも追い込まれた感がしてなりません。仮に昨日の都議選前に結果に関わらず来週に解散するとでも言っておけばまだ格好がついたものの、誰もそのように助言をする人間はいなかったのかとすら思います。

2009年7月12日日曜日

歴史の復讐

 最近こればかりですがまた先週の佐野眞一氏の講演で出た話しをします。
 非常に話題が飛びに飛び回った講演会だったのですが佐野氏は最近の自分の仕事について一体現代の日本は何の上に成り立っているのかを調べるために行っていると話し、そのために戦前の満州や沖縄について調べて本を書いているとした上で現代の日本人には歴史観が不足しているのではないかと言いました。その歴史観という言葉の意味について佐野氏はE・H・カーという歴史学者の著書「歴史とは何か」の一説を引用し、「歴史とは、過去の光によって現代を捉える行為」だと説明しました。

 佐野氏はこれについて更に解説を加え、言うなれば過去の事象に対しては現代のスポットライトを当て、現代の事象に対しては過去のスポットライトを相互に当てることで両者を理解するのが歴史だと説明していました。これについて私の解釈を加えると、これなんて私がくどい位にこだわっていることですが基本的に人間は比較を行わなければ事象を理解することができず、現代を理解するために過去と言う対象物を用意して比較することで初めて現代を理解することが出来ると言いたかったのだと思います。
 そんな目的の元で佐野氏は現代の日本、というより戦後の日本はどうして高度経済成長が出来て今の形になったのかというルーツを追うために満州と沖縄を調べているそうです。

 そういった佐野氏の話とは少し異なるかもしれませんが、よく歴史というのは勉強してもあまり意味が無いと言われる学問ですが私は決してそんなことはないと考えております。例えば現代の経済状況ひとつとっても私も連載で書いた「失われた十年」を知っているか知らないかで何が原因で、何が問題でこんな不況が起きたのか、また今アメリカが行っている金融機関のストレステストや資産査定の意義についても理解の反応や速度は大幅に異なると思います。また日本の総理大臣についても、この辺は今月号の文芸春秋に佐野氏が細かく書いていますが鳩山由紀夫氏、邦夫氏と麻生太郎首相の構図と、鳩山一郎と吉田茂の構造と比較することで見えてくる背後関係もあります。
 基本的に歴史というものは私は現代に対する基礎学問だと考えています。数学でいきなり方程式をぽんと出されてそれを解くために勉強するのと、正数と負数を前もって習っていてから勉強するのではまるで土台が違うように、現代の変化していく動きに対応するために土台となる歴史学というものは私は必要だと考えています。

 そうはいっても、大昔の歴史が現代に対してそこまで影響力を持つのかと思われる方もいるかもしれません。確かに数百年前の話にまで来ると政府間の歴史問題とかにしか出てこないかもしれませんが、ただ単に偶然だったということも出来ますが、明治維新時には歴史の皮肉ともいうべき偶然がいくつも起きています。
 まず第一に言えるのは、二世紀半に渡って日本を統治した徳川幕府を倒したのが薩摩藩と長州藩だったということです。どちらも明治維新から二世紀半前の関ヶ原の戦いにおいてわけがわからない内に西軍に参戦することとなり、敗戦後には大幅に領地を削られております。

 この二藩は西軍側でその後も生き延びたものの関ヶ原の戦いにおいて大きな痛手を徳川家に負わされた藩で、そうした藩が後年徳川幕府を滅ぼすこととなったのは非常な歴史の皮肉と言えます。またこの二藩に限らず藤堂高虎を藩祖とする津藩も明治維新時には面白い行動を起こしています。
 この藩祖の藤堂高虎は存命中に何度も主君を変え、最終的に徳川家に寄ったことから交通の要衝地であった現在の三重県に当たる津藩を任されただけでなく江戸時代においてもその藩祖の功績から津藩は「別格外様」として、外様大名でありながら譜代大名のような扱いを受けていたそうです。

 そんな津藩ですが明治維新時には当初は薩長軍を迎え撃つ幕府軍の軍勢に入ったものの、なんと戦闘中に突然薩長軍に寝返って幕府軍へと砲撃を始めたらしく、「藩祖が藩祖だけに時局を読むに長けている」などと揶揄されたそうです。
 もちろん藤堂高虎のいた戦国時代は裏切ることは珍しくなく彼だって主君を変えていったおかげで大身になれたのですし、明治維新時も津藩に限らず親藩の紀伊藩や尾張藩もほとんど抵抗らしい抵抗をせずに降伏していたのですが、やはり歴史の皮肉と言うか因縁と言うか、周りまわって現代のいろんなところに影響が及んでいるのではないかと思わせられるのが上記のエピソードです。

 言わば歴史に復讐されるというこのようなエピソードで最も代表的なのは「臥薪嘗胆」で有名な中国の戦国時代における呉越の争いですが、詳しい内容はまた明日にでも解説しますが私は人の意思というのは目には見えませんが周り回って自分が撒いた種は自分に帰ってくるのではないかと思います。もちろん、本人ではなくその子孫、関係者へということも含めて。