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2009年7月14日火曜日

日本の少子化対策の問題点

 日本で少子化が問題だと言われ始めてすでに十年くらい経ちますが、その間あれこれ議論しては小渕優子氏がいかにもマスコットらしく少子化担当相に就いたりいくつか政策を打ち出したものの現在に至るまで少子化の流れは一向に歯止めがかかっていません。こうした状況に対し自民党も民主党もあれこれ少子化対策に予算をつけることで対応しようとしていますが、結論から言わせてもらうと私は両者の政策どちらにもあまり効果があるとは思えず、この問題を根本的な解決へと導くことはないだろうと考えています。今日はそんな私の考えと、ではどうすることが少子化対策になるのかということについてやや長めに解説いたします。

 まず基本的なデータのおさらいとして、現在の日本の出生率を説明します。この出生率というのは正式には「合計特殊出生率」といって、単純にその集団がどれだけ子供を毎年生んでいけるのかという指標だと考えてください。一般的にこの出生率は2.08という数値が一つの基準で、これ以上であればその集団は今後人口が拡大し、逆にこれ以下であれば人口が減少していきます。それで現在の日本の出生率ですが2008年のデータを引用すると1.37と、人口を維持するのに必要な2.08という数字を大幅に下回っており明らかに少子化の状態にあると言えます。なお同年のデータで日本以上に少子化が問題となっている韓国ではこれが1.19となっております。

 では何故日本はここまで少子化に陥ったのでしょうか。自民、民主の政治家はともに揃って、「養育、教育費がたくさんかかるようになったために子供を生もうとしなくなった」のが原因だとして、民主党は子供のいる世帯に無条件で給付金を行ったり高校での学費の免除を行うことが対策になると、マニフェストにまで掲げています。また自民党も若者の不安定な雇用環境が子供を生みにくくしているとして、全くやろうという素振りを見せていませんが女性の社会進出をすすめることで対策になると主張しています。

 確かに両者とも一見するとごもっともな意見を言っているように見えるのですが、私は養育費の問題が子供を生まない原因だとはちょっと思えません。理由はいくつかあってまず第一に子供を生もうとする時点で、人間そこまで考えるのかということです。よっぽど計画的な夫婦ならいざ知らず、小中高の教育費が私立と公立それぞれ概算でどれくらいかかり、大学は文系に進ませるのか理系なのか、はたまた下宿をさせるのか、これだけでも相当なバリエーションがあり、自分の十年単位での賃金カーブと比較して子供を生むかどうかを決める夫婦がいるとはちょっと考えられません。まだ第二子を産む際にこういったことを考えるのならわかりますが子供を生むこと自体そこまで計画的に進められる行為ではないいのもあり、養育費の多さが直接的に少子化に影響を与えているとは私は思いません。

 では一体何が少子化に影響を与えている原因なのかですが、そのヒントとなる格好の材料として福井県の統計調査結果があります。この福井県というのは全国的に出生率が下がる中で近年わずかながらですが出生率を高めている県の一つで、何故出生率が上がっているのかをリンクに張ったサイトでは実に事細かに調べて公表しております。あくまで私の目からですが非常に調査内容も充実しており、一度も行った事ないけど福井県を今回大きく見直しました。
 それでは本題ですが、まずこの調査結果の中で出されている「出生率と相関する指標」の相関係数の一覧を紹介します。この相関係数というデータは数字の正負に関わらず絶対値が大きければ大きいほど元のデータ(今回の場合は出生率)に対する影響度が高く、正であれば比例し、負であれば反比例する傾向を持っていることを表すデータです。出来れば元のサイトを見てすべての相関係数のデータを見てもらいたいのですが、全部紹介すると長くなるので絶対値が0.5以上と、比較的影響度の高い重要な項目に限って紹介いたします。

<出生率に対して0.50以上の相関係数項目一覧>
・女性の就業率:0.59
・共働き率:0.71
・共働き世帯割合:0.70
・労働力率:0.60
・最終学歴が大学卒以上の割合:-0.62
・婚姻率:-0.52
・平均初婚年齢(女):-0.69
・第1子出産年齢:-0.70
・未婚率(女):-0.69
・3世代同居率:0.50
・65歳以上親族のいる世帯割合:0.69
・1世帯当り延床面積:0.53
・住宅の敷地面積:0.55
・公営賃貸住宅の家賃:-0.70
・人口集中地区人口比率:-0.75
・第1次産業就業者比率:0.60
・第3次産業就業者比率:-0.65
・ボランティア活動の年間行動者比率:0.67
・参院平均投票率(補正値):0.70


 上記の相関係数の中でまず私が一番驚いたのは、一番最後の「参院平均投票率(補正値):0.70」です。何故投票率が高いと出生率が高くなるのか最初は全く以ってわからず、政治に厚い地域は子供を何故よく生むのかとしばし悩みました。恐らくこの相関は「投票率」というよりも居住地域への結びつきによって付随する数値で、出生率に真に影響しているのは地域性でしょう。同じく地域との密着性を表す他の相関係数を見ても、

・ボランティア活動の年間行動者比率:0.67
・スポーツ少年団参加児童比率:0.42


 というように、地域との結びつきに比例して出生率が高くなる傾向があります。

 それで肝心の養育費、というよりも経済的環境が少子化に影響するかどうかですが、確かに「公営賃貸住宅の家賃:-0.70」いくつかそれを伺わせるデータもあるのですが、この調査報告書内に「経済的豊かさ」でまとめられている相関係数を見てみると、

・県民所得:0.45
・世帯収入:-0.10
・預貯金残高:-0.49
・教育費割合:-0.24


 という結果で、「預貯金残高」を除くとお世辞にもあまり高い相関が見られません。また民主党らが主張している教育費についても東京や大阪といった都市部と違って福井県のこのデータだけで断言することは出来ませんが「教育費割合:-0.24」と、それ自体は倫理的、教育的にいい政策だとしても私は教育費の補助が少子化対策になるとは思えない結果です。

 では一体何が少子化を加速させている原因なのかですが、結論を言えば私は未婚率だと考えています。
 現在日本の未婚率は「図録 未婚率の推移」にてグラフにして紹介されていますが、見事なまでに右肩上がりの様相をなして現在進行形で悪化しております。実際に福井県の調査データにおいても、結婚に関する項目が下記の通りに報告されています。

・婚姻率:-0.52
・離婚率-0.31:
・平均初婚年齢(女):-0.69
・第1子出産年齢:-0.70
・未婚率(女):-0.69


 ぱっと見、なんで「婚姻率」と「未婚率」が両方とも大きな負の相関をしているのかが未だに良くわからないのですが、この結婚に関する相関係数はどれも大きな相関で、特に「第1子出産年齢」は0.70と高い相関もさることながら常識的に考えて一人目を生む年齢が二人目、三人目に大きく影響するのは当たり前でしょう。また女性の未婚率については2005年のデータによると、全国平均では47.5%に対して福井県は38.4%と大きく差があり、こういったところが福井県の高い出生率に影響を与えているとこの調査報告書でも結論付けられております。

 こうしたことから私は日本人の未婚や晩婚化が少子化の最大の原因だと言いたいのです。これまた別のデータですが「完結出生児数」といって夫婦が生涯に儲ける子供の平均数を表すデータがあり、こちらも近年下がりっぱなしですが国立社会保障・人口問題研究所のデータによるとなんだかんだいって2005年のデータでも2.09あり、結婚した世帯は平均でちゃんと2人くらいの子供を生んでおります。ここに至り、結婚させさえすればぐっと少子化問題は軽くなるのではないかと私はにらんだのです。

 では具体的にどうすればいいか、どんな対策が効果を出すのかと言うことに関してはもう大分長くなったのでまた明日紹介いたします。
 最後に自民党らが主張している女性の社会進出が本当に少子化対策になるのかということについて、福井県のデータと合わせて補足しておきます。福井県のデータによると先ほどの相関係数の上では「女性の就業率:0.59」、「共働き率:0.71」、「共働き世帯割合:0.70」と、報告書の結論でも女性の社会進出が進めば進むほど少子化対策になるとまとめられているのですが、これに対して私はちょっと疑問に思いました。というのも他の就業に影響するであろう相関係数において下記のような結果を出しているからです。

・大学進学率:-0.42
・最終学歴が大学卒以上の割合:-0.62
・第1次産業就業者比率:0.60
・第2次産業就業者比率:0.27
・第3次産業就業者比率: -0.65


 細かくまで説明しませんが、私はこれを見てその共働きしている世帯の女性の職業は福井県という土地柄ゆえに第一次産業が多いのではと疑いました。残念ながら共働きをしている女性の職業が何かまでは報告書に書いてありませんでしたが、今の自民党の主張はどちらかと言えば第三次産業に務める女性の社会進出を助けようとするものばかりで、このデータからだと逆効果を生んでしまうのではないかと思うような節もあります。これまた逆に言えば、女性を農業に従事させることが出来たら食糧問題も人口問題もうまいこと回るんじゃないかと思ってしまいました。そうも簡単に行くわけはないけど。


  参考サイト
少子化と合計特殊出生率について~統計的分析~(福井県統計情報システム)
図録 未婚率の推移(社会実情データ図録)
国立社会保障・人口問題研究所

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 福井出身の友人と結婚について少し話したことがありました。僕は「やっぱり、結婚するよりも独身でいたいよね~。楽だし。まあ、そのうち焦燥感や将来への不安から結婚してしまうかもしれないけど。」と言ったところ、その友人は「何を若いくせに。俺は結婚して子供3人は欲しいな。」と言っていました。ちなみにこの人はパチンコや酒など僕よりもはるかに出費が激しく、金銭にかけては計画性のない人だと思われます(笑)。

 スポーツ少年団にも兄弟3人とも加入し、実家は農業をしていて、高校は不良のたまり場みたいなもので、授業は結構いい加減でほとんどの人が聞いていなかったみたいです。だから、大学に進学した人は少なかったみたいです。一応進学校だったみたいですが。まあ、この人だけではわかりませんがちょうど花園さんの記事に一致したので紹介しました。

 僕の個人的な意見ですが、こういう環境で育った人が若いうちからデキ婚し、その計画性の無さから、子沢山な家庭をつくっていくのかなと想像しました(笑)。これ見られたら怒られるかも・・・(笑)。

花園祐 さんのコメント...

 みごとに今回の福井県のデータとその人が一致してて面白いですね。ちなみに一番パチンコにお金をかけるのは一見大阪府かと思いきや、なんと宮崎県らしいそうです。私のあった宮崎県人も、やっぱり博打っぽい人生を歩んでいたのでさもありなんでした。

 出来婚については賛否両論ありますが、現代においてはもはやこれくらいしか結婚を行う一打がなく、私はあまり批判するつもりはありません。育児についてよっぽど無計画ならともかく、日本人って無茶な状況に追い込まれるほどなんとかやりくりしてしまうところがあるので、離婚さえしないのであればそうやって結婚するのもありでしょう。

 またちなみに私のある友人のところは6人兄弟で、計画的というよりお母さんががんばったんだなぁと思う一家です。