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2016年11月14日月曜日

中国人と大阪人に共通するDNA

 時は2010年。中国に初めて現地採用で渡る直前の私は姉の結婚式で会った従姉妹から、「あんた中国行ったら中国人に殴らるれんちゃう?」と、心配そうに声をかけられました。「いくらなんでも中国人もそこまで野蛮ではない」とやんわり否定しましたが、多分今でも中国に来たことがなければ、中国で日本人だとばれると殴られたりするのではと思っている日本人は少なくないと思います。

 時は変わって2012年、杭州にあるファッキンなハーネス組立工場を4ヶ月で辞めて上海にある日系新聞社で経済記者を当時やっていた私は今後日本は観光産業を柱にする必要があるとの信念から日本政府観光局(JNTO)の上海支部を訪れ取材を行っていました。どうでもいいですが星野リゾートの採用面接時にこの時の話したらすごいつまらなさそうに聞かれた上に落とされました。
 その際に快く取材に応じてくれたJNTOの方から、「こんなこと言うと日本人からすればおかしいと思われますが、中国人たちは日本に行くと日本人に殴られるとか本気で信じてるんですよ」ということを教えてくれました。この話は決して誇張ではなく本当の事実で、私自身も中国人から話を聞いているとそう考えていたという人が非常に多く、それだけに中国人が旅行で日本を訪れたら日本が思ったより、っていうよりかなりまともな国で拍子抜けするということをよく聞きます。

 話はJNTOへの取材時に戻りますが上記の話を聞いた際に私は、「そんなこと絶対あるわけないのにねぇ」と言葉を返しつつこの時一瞬、(大阪じゃあるまいし……)という言葉が密かによぎりました。

 大阪の名誉のために一応言っておきますが、いくら大阪でも路上で突然ぶん殴られたりするようなことは多分ないと思います。ただ昔、スーパーファミコンで発売した「初代熱血硬派くにおくん」という大阪を舞台にしたゲームでは路上にいるヤンキーはおろか、サラリーマン、OL、おばちゃんなどが脈絡なく主人公のくにお君に絡んで襲い掛かってくるので片っ端からなぎ倒さなくてはならないゲームがありました。しかもミナミに近づくほど敵が強くなってくるなど妙な所でリアルでしたが、発売当時に特に大阪からクレームが出たという話は聞いていません。

 私はかねてからこのブログで中国人と大阪人は気性が似ていて何故か馬が合うということを主張し続けており、具体的に共通する特徴としては「せっかち」、「思ったことをすぐ口に出す」、「声がでかい」、「目先の利益に飛びつくなど」、「なんでも大袈裟」などがあり、これらは中国人にも大阪人にも確実に当てはまる特徴ではないかと個人的に考えています。

 それで話はまた戻りますが、実は先日に民族系統に詳しい知り合いからちょっと面白い話を聞きました。その話というのも日本人の民族系統に関するDNAについてで、日本人は大きく分けて縄文系、弥生系の二種類にDNAが別れており、このうち弥生系は近畿地方に集中していて近畿地方から離れれば離れるほど縄文系のDNAが濃くなるとのことです。このDNA分布は暗に近畿地方の人間は大陸から日本列島へ渡ってきた渡来系のDNAが濃いことを示しており、系統的にもやはり近畿の人は大陸に近いと考えられるそうです。

 そのように考えると私が主張するように中国人と大阪人の気質が近いというの案外的外れなものではなく、DNA的にも似通っている影響と考えられるかもしれません。また最初の「路上で殴られる」と思ったことも、案外このDNAの相似が影響していたのかなとふと今日思いました。

  おまけ
 上海人の友人に聞いたところ、先に上げたゲームを含む一連の「くにおくんシリーズ」を遊んだことがあったそうです。もしかするとかつて日本の小学生たちがゲームを通して、「インド人は手足が伸びて火を吹く」と勘違いしたように中国の子供たちもくにおくんシリーズを遊んで、「日本人は相手が死ぬまでドッヂボールをぶつけ合う」、「水泳中に鉄アレイを投げつける」、「アイスホッケーではスティックで殴り合う」と勘違いしたことが上記の「路上で殴られる」という勘違いに繋がったのかもしれません。

2016年11月11日金曜日

小池都知事のかわいいインタビュー

「朝日だわねえ…」小池百合子が苦笑 AERA編集長が聞いた“タカ派”の真意(AERA)

 また手抜きな記事ですが今日見たこの記事が面白かったので紹介します。
 前に固い記事で私は小池百合子都知事が以前に文芸春秋に寄せたコラムが面白く、なかなかに分析力のある人だと感じてそれ以来ずっと評価していることを書きましたが、今回のこのインタビュー記事でも切り返し方が上手く、具体的に挙げると、

「──都庁や都議会をブラックボックスと断じました。

 ブラックボックスを開く前に、エンプティーボックスが見つかっちゃった(笑)。」

 というようなやり取りがあり、やっぱり頭いいなぁこの人と改めて感じさせられました。
 ただそれ以上に面白かったのは最後にある、「小池都知事に聞きたい20の質問!」みたいなコーナーで、「Q1.尊敬する政治家は?」に「サッチャー・英元首相、サダト・エジプト元大統領」と挙げていて、「お、サダトやったら俺と同じやな」と思って続きを読んで行ったら、「Q2.好きな戦国武将は?」という質問に対して、「蓮如」と答えており、「武将じゃないじゃん!」と心の中でツッコんでしまいました。
 その後も時たま妙な回答が出されており、

「Q7.休みの日は何をしていますか?
寝ている

Q8.「眠る」以外のストレス解消法は?
ただただ眠る」

 と睡眠に対してやけに深いこだわり方を見せたかと思いきや、「Q17.今の職業以外では何になりたかった?」という質問に対して、「子供の頃はデパートでプレゼント用にきれいに包装紙で包む人」と、また妙にかわいらしいというか変に細かい職業を挙げてきてやっぱこの人只者じゃないと思いました。

2016年11月10日木曜日

江戸時代の化け猫騒動に関する誤解


 上の写真はまたネットから拾ってきた江戸時代の化け猫を描いた絵画ですが、猫の表情がなかなか良く捉えられており個人的に気に入っているので何故か保存してしまいました。私の感覚だとこの表情はなんとなく機嫌がいい時で、普段はじゃれないくせにこういう時は何故か自分からじゃれてくるような時だと思います。
 話は本題に入りますが江戸時代に猫と言ったらそりゃもちろん鍋島藩の化け猫騒動ってことになるので今日は現代人が考えている化け猫騒動に関する誤解を指摘しようと思います。

化け猫(Wikipedia)

 一般的に認知されている化け猫騒動と言うと、江戸時代のとある武家の主人がつまらない理由で手打ちにされた後にその母、もしくは奥方が後を追って自殺し、その家で飼われていた猫が主人を手打ちにした上役の武士に復讐するため化けて出るというのがよくあるパターンです。
 こういった化け猫話のオリジナルは江戸時代に作られた講談からなのですが、出版されるやあまりの人気ぶりから芝居にも取り上げられて非常に流行したそうです。その講談の中で舞台となる地名には「嵯峨野」という実際に京都にある地名が使われているものの、これは暗に「佐賀の」と読めるようになっており、当時佐賀を治めていた鍋島家が実質的な舞台だと当時誰もがわかってたそうです。

 そもそも何故鍋島家が化け猫騒動の主役に据えられたのかと言うと、戦国から江戸時代にかけて鍋島家が成立した背景に理由があります。鍋島家の実質的な開祖とされる鍋島直茂は元々、北九州一帯に勢力を広げた龍造寺家の家臣でした。しかし龍造寺家の当主であった隆信が島津家との戦いで戦死してしまい後に残された若い世継ぎとともに直茂は自分が家宰を仕切って隆三氏家を盛り立てようとしましたが、豊臣秀吉や徳川家康といった時の権力者からは高く評価されていた直茂の方が実質的な領主であるように扱われ、龍造寺家も直系の跡取りが妻を殺した上で自殺してしまったことにより成り行きから直茂が引き継ぐこととなり、龍造寺家を引き継ぐ形で鍋島家が大名となりました。

 この過程は当時からも龍造寺家を鍋島家が乗っ取ったと見られており、鍋島家には龍造寺家の怨念が向けられているなどとよく噂されていたそうです。この噂に乗っかる形で化け猫騒動の講談が作られて大ヒットしちゃったもんだから、はっきりと名指しこそされてなかったものの鍋島家が、「非常に迷惑なんですけど!」と抗議を入れたため芝居の方は上演中止となったのですが、これが返って「やっぱりあの話ってマジだったんだ!」と、余計に真実味があるように思われてしまい、「鍋島=化け猫」という図式が広く定着してしまったそうです。

 なので鍋島家で実際に化け猫が出たという事実はなくあくまで講談の中のお話なのですが、同も聞くところによると北九州では、「うちは化け猫騒動の鍋島家ゆかりの家だから昔から猫を飼うことが出来ない」などと主張する輩が現代にもいるそうです。具体的に名前挙げると漫画家の柴田亜美氏が自分で言ってますが、そもそも化け猫騒動は現実には起きてない架空の話なので猫を忌避するという伝統が江戸時代とかにあったとは正直思えず、どちらかといえば箔をつけるために明治以降から使われだしたレトリックなのではと個人的に考えています。

 この例と同様によく瀬戸内海沿いの村上性の人が「うちは村上水軍に連なる出身だ」などと言う人がいますが、当の村上水軍は戦国時代に解散されたことを考えると真実味はやはり薄く、その動機としたらやっぱり家名に箔をつけるためでしょう。大体、歴史的な家系をきちんとした根拠なしに主張する人の大半は、そんなに悪意はなく主張してるのだと思いますが基本的には疑ってかかるべきでしょう。


 化け猫は存在しないと言っておきながらですが、こんな場面に遭遇したら、「こいつ化け猫なんじゃないか?」と疑ってしまうことでしょう。にしてもバランスいい猫だ。

米国の大統領選挙結果について

 前説は不要だし今日もちょいちょい世を忍ぶサラリーマンとしての仕事が遅かったのでとっとと本題に入りますが、今日開票結果が出た米国大統領選挙で「ヒラリー氏優勢」という日本の報道とは異なりかねてから暴言で世界中からいろんな意味で話題となっていたトランプ氏が次期大統領に当選しました。

 この結果、というより日本の事前報道については木村太郎氏が述べている通りに日系メディアの国際報道はかなり偏りがある上に結構レベルの低い人がやっていることが多く、私自身も信用できないものと考えているためトランプ氏が優勢かどうかはわからないもののヒラリー氏が優勢という報道は必ずしも正しくないと信じていなかったので、「想定外の番狂わせ」という日系メディアほどの驚きは現在抱いていません。むしろ選挙戦に入って以降、ヒラリー氏が演説をすればするほどアンチ層が増えているように感じていたため、トランプ氏が勝つ可能性も十分にあるのではという気もしていました。
 なお職場では今日、大統領選の結果を受けて市場が円高へ急激に振れたことにより出向できている日本人社員らが悲鳴を上げていました。

 話は今後に移りますが、まず市場については誰が言い出したか知らないけどうまいと思う「もしトラ」こと「もしもトランプがアメリカの大統領に当選したら」というトランプショックが取り沙汰されており、実際に今日は日経平均株価が大暴落しました。ただ私個人の予想ではこの株価の下落は一時的なものでむしろ下落した今は株を購入するチャンスだと思え、円高はしばらく続くかもしれませんが私自身は比較的楽観視しています。
 このような予想をする根拠として私自身は、トランプ氏が大統領選挙中に主張していた過激な政策はどれも現実離れしていて実際には実行できないだろうと見据えているからです。トランプ氏自身は政治家を含む公職には一度もついておらず行政経験は皆無に等しく、また選挙戦でのツッコミに対する対応などを見ている限りだと政治的、国際的知識にも薄いことは明白です。となると彼が大統領に就任した後は誰が政治を運営するのかと言ったらこれまで通りに「ホワイトハウス周辺の政治プロ」達しかおらず、今後の政策もこれまでから大きく軌道修正されることはないと見ています。

 逆に、比較的行政に長けたヒラリー氏が当選していれば話は違っており、しかも彼女は初めて大統領選に出馬した際には同じ民主党内で指名候補を争っていたオバマ大統領を共和党以上に激しく非難し続けていたことがあり、私の中のイメージだとどうも一つの内容に意識が集中して周囲が見えなくなる傾向があるように思え、こういう人が大統領に来られるとやり辛いよなぁとすら考えていました。それに比べるとトランプ氏であれば周辺にどんな人物が来ているかで方針が見え対策も立てやすいだけに、言ってることは過激でもいちいち相手にしなければ日本側としてはやりやすい相手だと思えるだけに比較的安心できます。逆を言えば、政治的にやり辛い相手と言うのは「次に何するかわからない」ような人間で、具体的にいえばプーで始まる大統領です。

 恐らく明日の報道ではトランプ氏が大統領になってどうなるのかなどという特集が各所で組まれるでしょうが、私がここで声を大にして言いたいことは「一般市民にとっては何も影響はない」ということで、要するに必要以上に実現するかどうかも分からない未来に右往左往するのは勿体ないっていうことです。恐らくどこも危機感を煽るようなことばかり書いてくるでしょうが、トレーダーならまだしも関係ないのに「これからどうしよう」などと心配するのは気苦労が増えるだけだし、「なんや面白いおっさんが大統領になってこれから面白くなりそうやな」程度に眺めるのが精神衛生上にもプラスで、なおかつ余計なフィルターに実像をぼかされるのを防ぐやり方だと思います。
 なお最後に一つ皮肉を述べると、今回の大統領選の結果に一番うろたえたは政府関係者でもトレーダーでもなく、沖縄で基地撤廃運動を煽っている連中じゃないかと思います。最初に書いたようにトランプ氏の主張はどれも実現性はなく沖縄からの米軍全面撤退も実際には有り得ないことですが、今後この主張は明日の新聞などを通して広く影響力を持ち、日本人全体で国防についていろいろ考えるきっかけにはなると思え、それが連中にとっては望ましくない結果だろうというのが今日の私の意見です。

2016年11月8日火曜日

各国の国家的精神

 このところこのブログで頻出ですがマーブルヒーローのキャプテンアメリカは改めてみると日本にはないタイプのヒーローだなという気がします。そう考えるのも彼の行動原理で、彼は「アメリカ」という国家の名称を冠してはいますが米国政府に必ずしも従うわけではなく、彼が信じる米国の「自由」という国家的精神を守るために行動し、その自由を侵そうものならば敢然と米国政府にも立ち向かう当たり組織というもの全く疑いを持たずむしろ組織に染まってしまいがちな日本人には作り出せなさそうなキャラだなと考えるわけです。
 さてここで出てきた「自由」という概念ですが、なんだかんだ言いつつもやはりこれは米国の確固たる国家的精神で、少なからず米国民も「他の何を差し置いてでも優先すべき概念」であるという信条を持っているように見えます。具体的に言えばウォーターゲート事件やスノーデン事件で、ああした事件に対して米国民が見せる態度からは「自由のためなら自国の政府も倒す」という意思が感じられます。逆を言えば、米国民ほど日本人はそこまで自由という概念にこだわりを見せないとも言えるわけです。

 では日本人は米国にとって自由のような、国家的精神は存在するのでしょうか。あくまで私個人の意見で述べると敢えて同じように漢字二文字の単語を選ぶとしたら「天皇」と「平和(憲法)」だと思います。前者は言うまでもなく日本という国家そのものを代表する概念で、たとえ憲法で禁止されていたとしても天皇を守るためなら日本人はためらいなく戦争への道を選ぶと断言してもいいです。
 その天皇に次ぐとはいえ、「平和」も現代日本人にとっては最重要な国家概念であるのではないかと思います。日本の国家議論は突き詰めて言うと、平和をどう解釈するのかという議論にまとめ上げられ、平和を軸にして与党と野党が言い合っているように感じられ、その議論の手段が憲法にあるという風に感じたためこの言葉を挙げることとしました。
 また国民レベルでも如何にして平和を維持するかという価値観が何よりも優先されているように思え、極端な話、ISISが世界中でどれだけの人間を殺害しようと日本が戦争に巻き込まれないのなら全く気にしない、というか下手に係ると戦争に巻き込まれる種になりそうだから無視しようとする態度も透けて見えます。

 最近やたらと短い記事が多いのでなんですがもう一つこうした国家的概念を私が挙げられるとしたら中国で、中国の場合だと私の中では「拡張」という言葉が来ます。意味することは領土の拡張、中華文明の拡張、宇宙開発の拡張と、有史以来の中国人がやってきたようにとにもかくにもこの国は拡張というか「デカいことはいいことだ」を素で信じており、国民レベルでも誰もそれを疑ってない気がします。それこそ拡張できるなら何人国民が死のうが、政府が横暴しようがどんと来いと言わんばかりで、やっぱり周辺からするとはた迷惑な国だなともいえるでしょう。

今日驚いたニュース記事

女性の足なめた疑い、男を逮捕 京都(京都新聞)

 マジでさっぱり意味がわからないニュースで、頭の中には「妖怪足なめ」という妙な単語が飛び交っていました。そういえば水木しげるが亡くなって今月でもう一年か……。

スズキ中国進出の象徴「長安鈴木」業績好転、救世主は鈴木修会長(ZUU online)

 第三パラグラフの冒頭で、「スズキは1933年に長安汽車と合弁契約を結ぶなど、早期に中国進出を果たした。」と書いてありますが、1933年って言ったら戦前で、しかもその頃まだスズキは自動車を作っていなければ長安汽車も設立されていません。何が恐ろしいかってこの記事、こんなとんでもないミスが残ったままアップロードされている点で、誰もチェックしなかったのか、チェックしてたらしたで誰も気が付かなかったのかなどと思うと空恐ろしい記事です。
 なおこの箇所に限らずこの記事は全体に渡ってとんでもなくレベルの低い内容で、見出しに掲げている鈴木修会長ですがただ長安鈴木を訪問したとしか書いておらず、具体的に何かに貢献したという事実は書かれていません。おまけに業績面でも2016年Q3だけの業績見せられても業績回復してますねはいそーですかという奴はタダのアホでしかなく、このデータだけでは何とも言えません。書いた人コンサルタントらしいけど、わざわざ自分の無知を晒しだしてどうなのと言いたくなる記事でした。

2016年11月7日月曜日

業種によって異なる付加価値に対する意識の違い

 このブログで何度も書いている通りに私は数年前に経済紙の記者をやった後で一旦日本に帰り、去年末まではプレスメーカーに品質管理として働いていました。勤務先もオフィスとかじゃなくリアルに油臭い工場で毎日作業着てはノギス片手に計測してましたが、今こうしてブログを書いている自分が一介のライターだとするならば、メーカーでの工場勤務経験を持つライターなんて普通はいないだけにかなりレアな経歴を持つに至ったと思えます。
 まぁゼネコン出身の記者もおり、何気にこの前日本であった人と共通の知人だったのでビビりましたが。

 鼻にかけるつもりはありませんが工場勤務を経験したことによって、完全に理解したとは言えないまでもマスコミ側では異なるメーカー側の視点もある程度得られたという自負があり、この視点はほかのライターと比較する上ではなかなかの差別箇所になると考えています。そんな自分に言わせるとマスコミとメーカー、というよりはサービス業従事者と製造業従事者の間にはある一点で明確に視点が異なっており、もったいぶらずに述べるとそれは付加価値に対する意識です。
 より具体的に述べると、サービス業従事者は業務において如何に付加価値を高めるかに意識が向く一方、製造業従事者は付加価値に対してほぼ全くそういった意識はなく、如何にコストを下げるかに意識が向きます。言ってしまえば前者は付加価値は変動するという価値観であるのに対して後者は付加価値は固定で、変動するのはコストだという前提があるのでしょう。

 実際に両者の業務を見比べてみれば一目瞭然でしょうが、サービス業ではコストといえるようなコストは基本的に人件費しかなく製造業とは違って設備費や材料費といった原価を意識することはほぼ皆無です。逆に製造業は常にそういった原価の変動に頭を悩ませる一方で、自らが製造して販売する商品は一旦契約で仕切値が決まると価格は固定されてしまい、仮に付加価値を高めようと品質の改善をしたところで客先からは「だから何?」と一蹴されて値上げ交渉なんて以っての外です。なもんだから自然と両者で付加価値に対する意識は乖離していくのでしょう。

 恐らく認識はしていなくても、上記の意見は勤務経験のある人間ならストンと納得して、意識の差に対する程度の違いは有れども異論を挟む人はいないと思います。私が見る限りは両者の差を「クリエイティビティがあるかないか」などと言う人はいますが、付加価値に対する意識を軸にする人は多分自分以外いないと思われます。
 その上で私からもう一言言えば、この事実を真に知るべきなのは就活やってる学生たちでしょう。大体の人は就職後に徐々にそれぞれの意識に染まっていくでしょうが、この業種によって異なる付加価値に対する意識を事前に知ることで自分が現時点で向いている職種なり業界なりをある程度絞ることができ、キャリアプランなども設計しやすくなる気がします。でもって中には、どっちか片っ方の意識しか持てない人間も確実に存在しており、そういう人なんかはまさにこの点に気をつけて職選びしないとえらいことになるでしょう。

 私なんかまさにそういうタイプで明らかに学生時代からサービス業向きでメーカーとかは全く向いておらず、でもってマスコミ業界がやっぱり合っていたと周囲からもよく言われます。ただそんな自分ですら工場で手に着いたらなかなか引きはがせないえらくねっとりした潤滑油をプレス機に注入してたりして数年間(しか?)働けたんだから気持ちの持ちようによってはどうとでもなるのかもしれません。

 最後に上記に上げた付加価値、というより付加価値とコストのどちらに意識を置けるかについて、両方に意識を置ける人間というのはどうのかという問いについて私なりに答えると、はっきり言ってそんな人間は普通に存在せずいたとしたら超人でしょう。私のようにある程度は逆方向の視点を持つことはできるかもしれませんがベースとなる視点はやはりどっちか一つに偏り、敢えて表現したら今の私もサービス業の視点から製造業の視点を覗いているに過ぎません。
 なおこと創業者に関して言えば間違いなく、メーカーにおいても付加価値意識の高い人間が多いと言えるでしょう。