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2018年1月3日水曜日

紅白に対する評価の分かれる記事

 日本にいる人は今日まで休みでしょうが、中国では元旦だけがお休みで、既に昨日今日と出勤しています。といっても、まだ今年は12月30、31日が土日だった分マシでしたが。

NHK、紅白大成功の裏で今年のしかかる重圧
紅白視聴率、2年ぶり40%割れ 安室&桑田出ても歴代ワースト3位 民放1位は「ガキ使」(どっちもスポーツ報知)

 さて出勤しながら見ていた日本のニュースで気になったのがこちら。どちらもスポーツ報知ですが上の1月1日に出た記事の見出しを読んで、「えっ、あんな紅白で大成功だったの?」と疑問符を持っていたところ、翌々日に出た下の記事では視聴率はワーストすれすれで大物効果もなくと書かれてあり、なんやねんと正直思いました。視聴率がこんだけわんさか悪いというのに、「これだけ盛り上がってしまうと次回へのプレッシャーになる」なんてセリフがよく出てくるな。

 恐らくですが、上の記事はあらかじめしたためていた準備稿をほとんどそのまま出した記事だったんじゃないかと思いまうs。紅白が大成功したという前提で準備稿を書いていたため、後半になって視聴率はワースト近かったと見出しと真逆の内容を書くという、かなりおかしな構成になっています。まぁだったら書き直せよな。

 なお私は31日に友人と上海にある居酒屋で最初の方だけ紅白を見ていましたが、はっきり言って非常につまらなく感じました。一部だけ見ておいて言うのもなんですが、出場予定の歌手がほぼみんな「誰それ?」という感じで、楽曲に至っては一度も聞いたこともないようなものばかりでした。ずっと中国にいるということも大きいでしょうが、単純にスターや大物が不在過ぎる構成に思え、だからこそ最初の記事で「大成功」と書かれていたことに違和感を覚えたのでしょう。
 一緒にいた友人も、「これなら過去の大物とか、流行歌を出した方がいいのに」と言っていましたが、全く以って同感です。逆を言えば、誰もが知るような流行歌が近年はほとんど生まれず、この紅白の低迷する視聴率はNHKの番組編集というより、ヒットソングの生まれない日本の音楽界不況が主犯であるように思えます。この点について、ネットで見る記事では誰も指摘していないのがやや不思議です。

 なお居酒屋ではあとからやってきた親子によってチャンネルを「ガキの使いやあらへんで」に変えられてしまいました。個人的には、ベッキーがタイキックされたところが一番面白かったです。

2018年1月1日月曜日

アイドル会計論 その二、償却

 今朝目を覚ますと、中二病患者のように「ぐっ……静まれ、この右手!」と言いたくなるほど右手首が痛かったです。原因は昨日に「THE IDOLM@STER MUST SONGS 青盤」遊び過ぎたせいだと思われます。知らない人ように説明すると、このゲームはいわゆる「太鼓の達人」のアイマス版で、PSVitaで遊ぶとどうしても手首を変に曲げながらLRボタンを連打するため手の健を痛めやすいです。
 なお「中二病」という単語は中国でも深く認知、浸透されており、そろそろ思春期の男子特有の精神疾患として国際学会とかで正式に病名として入れるべきだと思います。さらに言えば、自らの中二病体験をきちんと語れるようになって初めて男は一人前で、未だに過去を隠そうとするような奴は未熟者だとも思います。私の友人は中二病の際、「クーロンズゲート」というゲームの影響で風水師になろうと一時考えたそうです。

 話は本題に入りますが、何故年末年始にかけてアイドルを資産扱いしたらどうなるのかというわけのわからない会計論を展開しているのか私にもわかりませんが、前回「アイドルは資産なのか?」という命題について書きましたが、今回はある意味本題の「償却」の概念と方法について思いのたけを書いていきます。

 そもそも償却とは何かですが、会計に関わった人間ならみんな分かってて当然であるもののいまいちよく知らない人に向けて説明すると、発生した費用を複数期間に分割して計上するという概念を指します。これによってどうなるのかというと、費用発生以降に得られる収益と時期を合わせることによって税効果(課税額の減少)が得られることになります。
 なお不要かもしれませんが書いておくと、有形資産に対する費用分割を「減価償却」、無形資産に対する費用分割を「償却」と呼びます。英語だと減価償却は「depreciation」、償却は「amortization」なのですが、日本語だと言い方が似てるからややこしいです。

 実際の運用についてモデルケースを一つ出すと、例えば取得時に一括で費用(100万円)を支払わなければならない無形資産によって、取得から5年間にかけて毎年20万円の収益(売上げ)が得られるとします。仮にこの無形資産の取得費用を取得した年度(第1年目)に一括計上するとこうなります。

  取得費用を一括計上した場合
<第1年目>
・計上費用(経費):100万円
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):-80万円
・法人税費用:0円

 純損益が-80万円という赤字のため、この場合この会社は第1年目には法人税が課税されることはありません。しかし、第2年目になると、

<第2年目>
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):20万円
・法人税費用:6.76万円

以上のように純損益が20万円となってこれが課税額となることから、日本の現行一般実行法人税率(地方法人税を含む)33.8%を適用すると、6.76万円の法人税が課されることとなります。
 一方、費用を取得時に一括で計上するのではなく、そのリターンに合わせて5年間にわたり償却するとしたらどうなるのかが以下の表です。

  取得費用を5年にわたり償却した場合
<第1年目>
・計上費用(償却費用):20万円
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):0円
・法人税費用:0円

<第2年目>
・計上費用(償却費用):20万円
・収益(売上げ):20万円
・差し引き(純損益):0円
・法人税費用:0円

 このように毎年の売上げに相当する金額の償却費用(税控除額)を計上できるため、一括で計上する場合と違って2年目に6.76万円の法人税を支払わなくて済みます。これは実質、6.76万円の収入を得るも同然で、こうした帳簿上の節税メリットのことを税効果と呼びます。

 前置きが長くなりましたが、アイドルとは前回にも書いた通りにいざ実際にデビューするまでには歌唱やダンスのレッスンや、プロモーションや売り込み活動を長きにわたり受け続けなければなりません。そうしたいわゆる初期投資費用を費用が発生するそばからいちいち計上していては、デビュー後に入ってくる収益と期間がどんどんずれていき、収益費用対応一致の原則から外れるだけでなく投資という観点から言っても不利です。
 ならばどうするかということで、無形資産の研究開発プロジェクトのようにアイドルも償却したらこの辺のバランスが取れて、経営上も税制上も割かしすっとするのではないのかなと考えたのがそもそものきっかけでした。なお研究開発プロジェクトのこの辺の会計処理の違いでは、日本会計基準は中国や欧米と比べて非常に不利で、現状では日本国外で研究開発した方がメリットが高くなっています。後々、この差は大きくなってくるでしょう。

 話はアイドルに戻しますが具体的にはスカウト後、アイドルを一つの資産と見なして大まかに育成プロジェクト予算を立て、それを実際の発生費用に合わせて徐々に償却していく形にしてはどうかなと考えています。これによってバラエティ系かドラマ系かなどと売り出し方や方針に合わせて育成方針も固めやすく、その経営見通しもしやすくなるのではないかと期待しています。
 ひとつ例を出すと、15歳のアイドルの卵を発掘後、ドラマ系アイドルとして売り出す方針を決め、演技レッスンや改造手術(整形、豊胸)を最初の5年で行い、次の5年間でそれを回収するという計画を立てます。この場合、償却期間はアイドルの卵が15歳から25歳になるまでの10年ということとなり、最初の5年間に発生すると見込まれる予算を10分割して毎年償却費用として計上することで、発生のそばから費用を計上していくケースと比べれば売り出し成功後に得た収益に対しても税額控除が可能となるため、プロダクション側は後半5年間にも税効果が得られるということになります。

 ここで一つ問題となるのが、償却期間の設定です。償却期間の設定自体は恣意性がある程度認められているものの、15歳のレッスン生と25歳のレッスン生に同じ償却期間を設定するのは誰がどう見ても無理があるでしょう。一つの目安としては「この年までにデビューできなかったら目がない」とする年齢で、15歳のレッスン生なら25歳まで(10年)、25歳のレッスン生なら28歳まで(3年)にデビューできなかったら事務所を辞めてもらうといった計画方針ならありかなとか勝手に考えています。
 もっともこれを言ったら、子役とかどうすんだろう。

 先にも述べましたが、仮にこうした会計処理ができるのであればプロダクションとしては税効果が得られるとともに、「いついつまでにアイドルを訓練し、デビューさせる」という計画が立てやすくなり、グループ単位でもそれ一つでプロジェクトを組めば、こうした処理法が行けるのではないかと思います。さらに言えば、こうした会計処理を行うことでアイドル単体に投資を募集しやすくなるのではないかと思え、それこそクラウドファウンディングみたいにデビューさせたい子にファンがみんなでお金を投資し、デビューの暁にはリターンを公正に分配することも可能になるのではないかと考えています。まぁ机上の空論ではありますが。

2017年12月31日日曜日

2017年の所感

 別に恒例企画というわけではありませんが、年末ということもあるので今年1年をまた項目別に振り替えようと思います。

・一番ハマったゲーム:討鬼伝極
・今年からはまったもの:アイマス

 ゲームに関しては文句なしに「討鬼伝極」が、中古で980円で買った割に長い時間かけて遊びました。今現在「討鬼伝2」をやっていますが、つまらなくはないもののやはり1と比べるとキャラの魅力やストーリーの盛り上がりで物足りなさを感じる上、モンハンなどと同じく「完全版商法」なためゲームに不完全要素が多いにもかかわらず未だ完全版の続編が出ていない点と言い、前作を超えてはいません。
 2番目のアイマスとは、知ってる人には早いですが「IDOLM@STER」です。私はこのゲームというかプロジェクトについて稼働当初の「とかちつくちて」は知ってはいたもののそれ以上深みにはまることなくここまで来ましたが、ある日「F-18ホーネット」をベースにしたカスタム機体「まほーねっと」の機首に「神」と書かれているということを知り、「何それかっこいい!」と思ってその由来とか調べ始めたこときっかけにのめり込みました。軽い所感を述べると、メーカー側とファン側の双方によって育て上げたプロジェクトだと思え、両社から強く愛されているとともにメーカー側のファン対応の高さに感心しました。
 なお日本のダークファンタジー漫画の金字塔たる「ベルセルク」の作者である三浦建太郎氏のウィキペディアの記事内では、「アイマスでは千早推し。休載の際にXbox360ごとゲームを買った」という事実が記載されてます。

・今年のベスト記事:EV時代を前に、中国が世界の「車載電池」工場に

 今年は何度も深刻な体調不良からブログ記事の投稿が滞った一方、コラムを連載しているJBpress内ではありえないくらい取材した記事をそこそこ出せたと思います。中でも上記の車載電池市場について取り扱った内容は後日に日系関係者にも関係しましたが、この記事の後追いをしたことを認めていました。
 非常に重要度の高い市場なら誰も取り扱わなかった内容なだけに我ならいち早く手を付けられたと思うと同時に、この記事の中では日系の電池メーカーがどのような種類のリチウムイオン電池をこさえているかもまとめてあるため、自分でも完成度の高い記事であると感じます。どちらかというとアクセス数より、業界関係者に高く評価してもらえたことの方が感じるところが多いです。

・ブログ内ベスト記事:日本料理の歴史は何百年?

 コメント欄の議論が非常に白熱したとの、割と自分でも面白い問いかけをしたので上の記事が一番気に入っています。「日本料理が世界でブームだ」などと書き立てる記事は非常に多いですが、「日本料理とは何ぞや?」というメタな問いかけは意外と少なく、「醤油の味付けが基本ベース」である一方、それ以外の独特な調理法についていろいろコメントで指摘してもらえたのがうれしかったです。

 これ以外特に書くこととか決めていませんでしたが、来年についてはJBpressで歴史系の記事を意識的に増やしていこうかなと考えています。元々、経済記事が専門かと言ったら果たしてそうなのかというところがあり、むしろ自分の知識と文章力を最大限に活かすのであれば歴史記事なのかもなぁという漠然な考え方からですが、経済記事は中身がよくなればなるにつれてアクセス数が落ちると思う面があり、この点で歴史記事はどうなのかなというのを確かめてみようと思います。
 あと来年度の目標としては、今年は特に決めておらず、去年は思い上がらないことしていましたが、来年はより具体的に「会社を辞めない」かなと今考えています。別に今何か会社ともめてたり不満があるわけじゃないですが、今の今まで2年半以上同じ会社に在籍したことが一度もなく、最長記録をとりあえず更新しようという程度の考えです。っていうか今借りている上海の部屋も来年1年住めば満3年になりますが、会社同様に同じ部屋に2年以上住むということはこの10年近くでほぼなかったため、こちらでも記録更新となるか問われるところでしょう。

 なおこれまで2年以上同じ部屋に住むことがほぼなかったため、引っ越し回数があまりにも多いことから家具とかほとんど購入してきませんでした。今の部屋は割と続くのかなと思い始めた今年下半期から家具を段々増やし、今座っている椅子など買うようになりました。今一番悩んでいるのは上海高島屋で売っている蒔絵箱で、ほしいけど活用方法がうまく見つからず、もうコレクションと割り切って買ってしまおうかとも考え始めています。

2017年12月30日土曜日

アイドル会計論 その一、資産種類

 ある日勤務中、「アイドル育成時のレッスン料などを設備投資や研究開発投資みたく償却できないのかな?」とふと思い、アイドルを資産と見立てた会計論が気になって仕方なくなりました。

 私がここで説明するまでもなく、巷間のアイドルというのは渋谷でスカウトされていきなり世に出てくるというわけではなく、実際の圧倒的大多数はスカウト後、長きにわたり演技やダンスレッスンを受け、一定の養成がなされた後で売り出されます。ある意味これは投資と言ってもよく、売れるかどうかわからない対象であるアイドルの卵に多額の資金を投資して、いざ実際にデビューしてからその投資資金を回収した上でリターンを得るというビジネスモデルです。
 仮に投資対象がアイドルではなく有形/無形資産であれば、そのキャッシュフローが得られるまでの投資段階にかかった費用は減価償却/償却といって、あらかじめ定めた期間内、実質複数年度にわたって少しずつ計上していくことで、税効果といって納税額を減少、調整させることが出来ます。アイドルも特許などの研究開発資産みたくリターンを得るまでに長い年数が必要になるのではないかと思え、それならば償却を認めるような会計処理があってもいいと思ったわけです。

 そもそもまず、償却を行うというのであればまず資産として認定するか否かが重要になってきます。そこで最初に審議する上で、「アイドルは資産なのか?」という疑問が出てくるわけです。
 資産の定義について細かく書くと非常に細かくなりますが、ごく単純にまとめるなら以下の二点に集約されると私は考えます。

・それ自体が価値を持ち、有償で取引される。
・運用、活用されることによって新たな利益(キャッシュフロー)を生む。

 具体的なイメージとしては農業における土地が分かりやすく、売買可能でありながら、土地を使って栽培することによって農作物という商品が作れ、販売することによって利益を生み出せるといった具合です。
 この定義をアイドルに照らすと、まさに資産じゃんと私は言いたくなりました。移籍金が支払われての事務所の移籍なんか当然あるし、また投資、育成することによって無から有を生むかの如く利益を作っていきます。事務所の観点から見て、アイドルは商品というよりは継続して運用されることから資産の方がより適切でしょう。

 以上のような脈絡のない考えに従ってアイドルは資産だとすると、次にもたげてくる疑問としては「有形資産なのか無形資産なのか?」です。地味だけど非常に重要。

 有形資産とは読んで字の如く実体が存在する資産のことで、先ほどの土地や工作機械といった設備、あと不動産などの建物もこれに属します。一方、無形資産は特許や商標など実体がないものの、所有者や許諾者に運用が独占された上で利益を生み出す資産を指しています。
 バーチャルアイドル(最近減ったな)なんかは実体ないんだから無形資産かもしれませんけど、現実に存在するアイドルはみんなの前で歌ったり踊ったりもすれば、プライベートでスキャンダルを起こしたりすることもあるので、普通に考えれば有形資産で間違いなしでしょう。また工作機械といった設備のように、整形や豊胸などの改造手術によって性能や耐用年数をアップグレードすることも実質可能で、こうした諸条件を考えるとやはり有形資産かなと当初は思いました。

 しかしデビュー後の運用を考えたところ、有形資産で行くという考え方にブレーキがかかりました。実際のアイドルの収益獲得方法を考慮すると、コンサートで歌って踊ってチケット代を稼ぐのなんかは確かに工作機械で製品作るかのような運用に近いと思いますが、実際のアイドルの収入はイメージ販売に負うところの方が多いような気がします。
 具体的にはCMなどのイメージキャラクターやグッズの販売です。これらはアイドル本人がその場にいなくてもどんどん売り上げが上がっていくシステムとなっており、またこうした販売はほぼすべて「イメージの使用許諾契約」を経て実行されるため、商流としては特許や商標の権利使用許諾に近い、というか実質同じものです。
 また「アイドル」という言葉自体が「偶像」という言葉からきており、「イメージを売る」という意味が内包されています。会計的、特に償却などを考える場合は収益の獲得プロセスの方が重視される傾向があり、また工作機械と違ってアイドルは稼働時間によって減価償却できるかと言ったらなんかそれも違うように思え、やはり無形資産のように一定の使用期間にわたって定額法とかで徐々に償却していく方が無難な気がしてきます。

 結論を述べると、どっちかと言えばアイドルは無形資産に属すのではないかと思います。一方、その存在の実体性や投資過程、稼働後の追加投資(豊胸、整形)の観点から言えば有形資産に近く、有形資産的要素も含む無形資産というのが私の見解です。
 なおアイドルが事故などで骨折した際の治療費は、工作機械の故障時の修理費みたいに費用として処理するのかななどと考えた際、「完全にアイドルを物扱いしているな」と自ら自分をツッコミました。

2017年12月28日木曜日

あまり報じられないC919の現状

中国でスマホを紛失したら、どれだけ恐ろしい事態になるか(ダイヤモンド)

 いつもは批判しかしないダイヤモンドの記事ですが、上の記事について決して他人ごとではなく身をつままされる話が書かれてあり、久々に興奮しながら読ませてもらいました。なおヤフコメでは「長すぎてだるい」とか書いている人いましたが、私の記事もよくそういうこと書かれますが感覚としては1000文字超えた時点でもうこの手の人は記事が読めなくなるんじゃないかと思うのと、長い記事読めないならいちいちコメントに書いて恥晒さなくてもいいのにとか考えています。

 さて本題ですが、C919と聞いてすぐに何か想像できる人は相当な中国マニアでしょう。

COMAC C919(Wikipedia)

 C919とは中国の国有というか実質国営企業が生産している中型ジェット旅客機です。日本の三菱重工が開発しているMRJと同クラスの中国製旅客機はARJ21なので、C919は競合機種というわけではないものの、割と順調なその開発ぶりにはどうしても目を奪われます。
 確か先週くらいだったと思いますが、このC919の顧客納入期の2機目が引き渡されたかなんかのニュースが出ていました。言うまでもなくこのC919は既に開発が完了しており、量産段階にも入りつつあります。またその市場規模から中国国内だけでもペイできる代物でしたが、米国市場の型式免許もなんか取れるんじゃないかと最近言われつつあり、仮に実現したらかなり大きな商品に化ける可能性があります。

 私は航空機市場はそんな詳しくないですが、それでも今のMRJの現状は憂慮せざるを得ません。ちょうど2年前にもMRJの現状というか先行きを懸念する記事を書いていますが、当時は開発が進んでいると日系メディアは盛んに報じては明るい見通しばかり書き綴っていたものの、現状においては「本当にこれ完成するのか?」という疑問形に近い報道のが多くなっているような気がします。実際、神戸製鋼や三菱マテリアルの不良品出荷問題などで揺らいでいる上、当初の計画がずるずると何度も延期され続けた上、とうとう注文キャンセルも出ているのだからこれで楽観視する方が頭おかしいでしょう。
 おまけに競合機種を持つエンブラエルがボーイングと統合交渉を始めたとのことで、仮に実現したら世界の航空市場に割って入るのは非常に苦しくなるでしょう。っていうか現時点で、MRJが成功する未来が私の中では描けず、三菱重工は客船でも失敗したばかりでこれからどうなるんだろうかとマジで心配になってきます。

 一方で中国の方は、話して細かいスペックとか故障率などは全く把握していませんが、一応こうやって形にして出しているだけでも十分立派だと思います。MRJの競合機種に当たるARJ21もさっき調べてみたら、今年だけで4機の試験機を作って順調に試験飛行を進めているとのことで、多分さは大分開いているんじゃないかと思います。
 MRJを応援するのはそりゃ日本だから当然でしょうが、こうした海外の競合機種に関する報道がやはり日本は少ない気がします。っていうか今書きながら思ったけど、この辺の事情はあまり報じられてないし、データ多くて書きやすそうだから次回のJBpressで使おうかな。

2017年12月27日水曜日

漫画業界のデジタル化

 「エルフェンリート」で知られる漫画家の岡本倫氏が以前に巻末コメントかなんかで書いていた内容ですが、かつては同じ部屋に漫画家とアシスタントが集まってみんなで一緒にカリカリしながら漫画を描いていたが、現在はそれぞれの自宅でパソコンに向かって作業し、原稿データを交換しながら作業を進めるようになったとのことで、制作環境が大きく変わったということを書いていました。
 自分は出版業界関係者でもなければ漫画業界関係者でもないことから実態を見聞きしたわけでないものの、実際に最近の漫画業界におけるデジタル化はこのところ進んでいるようで、もはや作画も紙の上ではなくペンタブ使ってパソコン上で書くことが一般化しつつあるようです。そしてアシスタントの方も、ある程度これらデジタル作業に通じていないと全く仕事にならないそうです。

 以上のような話を聞いてまず思ったこととしては、カメラのデジタル化によって幽霊が心霊写真から淘汰されていったように、漫画業界でもデジタル化進行による淘汰が起こっているのだなということと、一番煽り食らっているのは画材屋かなということでした。

 こうした漫画制作現場のデジタル化とはまたすこし話が違うかもしれませんが、私がデジタル作画というものに初めて触れたというか衝撃を受けたのは、寺沢武一氏の「コブラ」でした。
 現実に寺沢武一氏はコンピューターグラフィックスを漫画に持ち込んだパイオニアで、時代的に非常に早い段階、私が知る限りだと90年代前半にはすでに取り込んで作品を作っていました。当時私はまだちっちゃい子供でしたが、本屋に並んだコブラの表紙はまるでアニメ画像の写真のようで非常に大きな衝撃を受け、中身を読むことこそなかったもののこの作品名は小学生の時点で覚えてしまうほどのインパクトがありました。

 その寺沢氏以降、パソコンが一般家庭に普及するのに伴ってCGを使ったイラストを公開する人もだんだんと増えていきましたが、真の意味での漫画のデジタル作画を実現させた人物ともなれば「GANTZ」の奥裕哉氏を置いてほかにいないでしょう。
 奥氏はデビュー作の「HEN」の時点で大ヒットを飛ばした作家でしたが、その次の作品の「ゼロワン」にてCGを使ったデジタル作画環境を本格的に整えていきます。なんでも奥氏はこの作品を制作するためにコンピューター導入やスタッフ育成に多額の投資を行い、なんとあれだけ大ヒットした「HEN」で稼いだ資産をほぼ全部使い果たしたとのことです。もし奥氏にインタビューする機会が得られるなら、一体何故資産を使い果たしてまでもデジタル作画環境を作ろうとしたのか、その執念について詳しく聞いてみたいものです。

 そうまでして制作に取り組まれた「ゼロワン」ですが、現時点で見てもその技術の高さや画力には圧倒されるレベルの作品だと思えます。作品内容自体が3D格闘ゲームに情熱を注ぐ少年の物語なだけあってそのデジタル作画との相性は抜群で、奥氏の元々の写実的な画風と相まって読んだときには強い感動を覚えたのを今でも覚えています。ただ、制作途中で資金が枯渇したとのことで作品は途中で打ち切りみたいな感じで唐突に終了しており、一個作品として見るならばその完成度は低いと言わざるを得ません。

 そんな「ゼロワン」の次に満を持して登場したのが、奥氏の代表作でもあり現時点でもデジタル作画された漫画としては恐らく最高傑作と言える「GANTZ」でした。こちら連載初期からほぼリアルタイムで私も読み続けてきましたが、唯一無二と言っていいその画風はもとより、衝撃的なまでに激しい暴力描写と異彩放つストーリー内容には非常に興奮して読んでいました。

 なお暴力描写という観点で見たら、現時点でもこの「GANTZ」こそが漫画史上最大レベルではないかと私は思います。というのもデフォル化されたキャラクターが手足切り落とされたり頭吹っ飛ばされたりするのと違い、先ほどにも書いたように奥氏の画風は非常に写実的であり(女性キャラの体格も写実的かと言われたら回答に困りますが)、また技術的に更なる成熟度を増したデジタル作画によって背景などの描写がほぼ現実そのままなレベルにまで高められており、漫画でありながら異常なくらいの現実感を醸しているからです。
 そんな現実感あふれる絵で登場キャラクターが片っ端から老若男女主役脇役問わず手足ねじ切られたり、体のあちこち吹っ飛ばされたりするもんだから、最初読んだときは下手なホラー漫画よりずっと怖く、同時期に出ていた「殺し屋イチ」なんてまだかわいかったなんてリアルに思ってました。なお「GANTZ」の中国語タイトルは「殺戮都市」で、割と内容に合ったネーミングだと思います。

 「GANTZ」はその最終回について賛否両論、どっちかというと否定論の方が大きかったですが、私はああいう最終回もアリだと評価しており、なによりもそのデジタル作画による驚異的な技術力は一漫画作品として見逃すことのできない功績だと見ていることから、2000年以降に完結した漫画作品から最高傑作を挙げるとしたらこの「GANTZ」か、弐瓶勉氏の「シドニアの騎士」のどちらかかだと考えています。
 ただ残念なことに、「GANTZ」の登場以降に奥氏のフォロワーと呼べるような高次元のデジタル作画を手掛ける漫画家は、私が知らないだけかもしれませんが見られないということです。もっとも奥氏のように資産使い果たすくらいの執念がなければあんなのできないでしょうし、実際にデジタル作画環境が整った後も奥氏はヘリコプターをチャーターして空撮したりするなど激しい投資を続けていることから、並の作家では実現できないだけなのかもしれませんが。

 なおフォロワーが出てこないという意味では、私がもう一つの最高傑作と考える「シドニアの騎士」を描いた弐瓶勉氏も、諌山創氏のようにファンだという人はいてもその画風や作品傾向を受け継ぐ作家を見ることはありません。弐瓶氏はまさに奥氏の真逆というか、非現実的と言えるほどに巨大な人工物を描いた背景が最大の特徴で、あの書き込みや構成は真似しようと思う人の方がおかしいレベルですからそれも仕方ないかもしれません。逆に見れば、奥氏も弐瓶氏もフォロワーが出てこないほど唯一無二の特徴を持っていると言えるでしょう。

  おまけ1
 弐瓶氏が招待先のオーストリアのコスプレ会に行ったところ、同行した担当編集はあるコスプレイヤーを見て「すげぇ、ガンツだ!」と言ったそうですが、この時に弐瓶氏は、(ガンツじゃないよ、サナカンだよ)と、自分の作品のキャラのコスプレだとは言えなかったそうです。

  おまけ2
 学生時代にガンツについて友人と話していた際に友人が、「っていうかこの作品、主役とか関係なしにガンガン死ぬけどレイカとか死んだらどうなるかな?」というので、「レイカが死ぬなんてありえない、っていうか考えたくない。もしそうなったら読むのやめる!」と当時の私は答えましたが、案の定レイカはその後死にました。しかも二回も。

  おまけ3
 ガンツにおいて主人公に次ぐ最重要キャラクターの西丈一郎について、ある日偶然、意図せず彼のモデルとなった人物の写真を目撃することがあり、そのあまりの容貌の近さに「ひぃっ」と妙な悲鳴を本当に上げました。「HEN」の時点でも同性愛をテーマにするなどタブー知らずな作者ですが、ここまで似せるのかと本気でぞっとしました。

2017年12月26日火曜日

大阪限定の「にんげん」という教材について


 上の画像は先日ネットで見つけたものですが、一目見て「なんじゃこりゃ?」と全くその存在意義というか内容が伺うことが出来ませんでした。それこそ路上で油すましに遭遇したかのような得体の知れなさで、決して話を作っているわけではなく、この表紙を見て最初に想像したのは「妖怪人間ベム」でした。なんていうか、右手の指の形が微妙におかしい点といい……。

にんげん(Wikipedia)

 種明かしをすると、これは大阪府下限定で配布されていた同和教育用の教材だったようで、関東育ちの私が知らないのも無理ではありません。逆に大阪出身者からすれば見慣れたもののようで、「あったねーそんなの!」的な冗談に最近は用いられるそうです。
 すでにこの教材の配布は予算の都合から廃止されていますが、1970年代から大体リーマンショックの頃までずっと大阪府の予算で購入され、小学生から中学生までに配布されていたそうです。中身については解説を見てもないし読んだこともありませんが、あくまでこの表紙画像だけをみて好きなことを言わせると、表紙の内容と同和教育という目的に一致性が見い出せず、中身もそんな感じだったんじゃないのかなと疑っています。

 そもそも「にんげん」というタイトルからして微妙です。上にも書いた通りこの表紙から私はリアルに「妖怪人間ベム」を想像しましたが、いわゆる差別の歴史を学ぶという目的で「にんげん」というタイトルはいくら何でもおおざっぱすぎないかという気がします。それなら「公平」とか「平等」とかの方がまだ私の中でしっくりきます。
 さらに言えば、通常の社会科科目でも同和差別についてはある程度教えることからも、わざわざこんなどっち向いているのかわからないような表紙の教材を用意する必然性も感じません。いくら関西が部落差別が根強い地域だと言っても、なんとなく手段がおかしいのではないかと思えて仕方ありません。それくらい無駄にインパクトの強い表紙だと上の画像は思います。

 なおかつて大学時代の友人は、「農業という生産手段から土地に縛られていた昔と違って今は自由に引っ越すことが出来るのだから、差別されるのが嫌だったら誰も自分を知らない土地に引っ越せばそれでいい。それすらしないで差別を受けていると主張するのはただの甘えだと思う」と言ってましたが、私もこの意見に同感です。民族差別のようにどこ行っても(特定の領土範囲で)差別されたりするのは確かに対策が必要だと思いますが、関東圏なら部落差別はほぼないし、第一関西圏よりも関東圏の方が仕事も多いのだから、普通に考えたらもうこの手の差別はなくなっていてしかるべきだとも私は考えています。
 私に至っては日本を離れて中国で働いていますが、目前の環境が嫌だというのならそれを変える努力をすべきで、それすらしないで不平はおろか妙な要求までするというのは言語同断でしょう。部落出身者でありながら野中広務氏も既存部落団体をよく批判していますが、私自身もああした団体が妙な活動をするから余計に差別が広がるのだと思っています。