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2023年3月8日水曜日

日本は女性以前に男性にとっても働きやすいのか?

「女性の働きやすさ」日本はワースト2位 最下位は韓国 英誌(NHK)

 例の小西文書も大きな話題となっていますが、今日見たニュースの中で一番気になったのは上のみんな大好き(ネタ的に)NHKも報じている、女性の働きやすさランキングに関する記事でした。この手のランキングは定期的に出てきてそのたびに日本は女性のキャリアアップなどにとって不利な国だと報じられるのですが、その点については私も全く異論はありません。
 実際中国で働いていると、女性が働くという感覚が日本以上に一般的で、むしろ専業主婦の方がレアポケモン的に存在しません。っていうか中国で専業主婦というと、有力者の愛人であることも多いだけに、あんま表立ってアピールできないかもしれません。

 ただこの手のランキング記事を見る度に前から、女性以前に男にとっても日本は働き辛いことの方が問題じゃないかと思っていました。いちいち説明するまでもなく日系企業は中国でも言われるくらい残業が多く、また上位、中間管理職の水準が低いゆえに指示が不合理なことも多く、給与もスキルとあまり連動しないため、自分から見たら自己実現とは最も遠いところにある労働環境であるような気がします。

 特に日本の労働において致命的なまでに問題だと思うのは、職種が選べないという点です。新卒入社はいざ知らず、中途採用でも事務と言いながら外回り営業させたりと、募集職種とは異なる職種に配置されることはざらで、転勤に関してもあまり労働者に拒否権はありません。ぶっちゃけ入社したら会社に生殺与奪権を握られる面がかなり強く、自分のやりたい業務や目指したいキャリアがほとんど実現できない、またチャンスもない気がします。
 またかつてと比べると労働組合が全く機能しなくなったため、いわゆるブラック企業などによる過重労働が非常に横行するようになった気がします。それこそ会社上司から暴行されても何も言えないし、そうした企業が存在するとわかっていても当たり前になりすぎて、社会ももはや反応すらしなくなってきています。勝手な想像でいえば、そうした暴力を奮う会社の上司に反撃して殴りかかる社員がいたら、恐らく今の日本社会はその社員をまず排除しようとすると思います。

 その上で最初の話題に戻ると、日本の場合、男性のために女性のキャリアが潰されている面もないわけではないでしょうが、それ以上に男性が働き辛い勤労環境に置かれているため、女性も働き辛い環境になっているのではないかと思います。仮にそうだとした場合、まず隗より始めよではないですが、男性を含めた職場環境の改善から取り組むべきだと思います。むしろ男性も抑圧される勤労環境をそのままに女性の勤労環境の環境を改善しようものなら、絶対無駄に終わるだろうし、またこじれて余計に悪化するのではないかとも思えます。

 もし仮にこうした状況の改善案を求められるのなら、私個人としては何よりもまず、政治思想を持たない労働組合を結成することこそが最善の道だと考えます。一切の政治活動とは距離を置き、労働者への不当な差別や処置に抵抗するためだけの戦闘マシーン的な労働組合の存在こそが、今の日本社会で特に必要なのではないかと思います。
 その上で、日本社会はもっと職種別採用を広げるべきでしょう。職務分掌がなっていないのは昔からですが、こと仕事に関しては曖昧さは百害あって一利なく、パンダみたく何でもかんでも白黒つけさせた方がいいでしょう。この辺やっぱり自分も外資に入って初めて感じましたが、ごく当たり前に区別をつけるべきことすら日本では区別がつけられていないことが一般的です。

 最後に最近はまっている、日本のある企業におけるパワハラ動画をつけときます。


2023年3月7日火曜日

AIの反乱(IN中国)

【電子版】AIが「共産党は無能」と批判、中国ネット大手がサービス停止(日刊工業新聞)

 上の記事のニュースは2017年のものですが、今日たまたまChatGPT関連の記事で事実を知り、かなり驚愕しました。というのも中国のテンセントが開発したAIのニュースなのですが、なんでも、

「『共産党万歳』との書き込みに『腐敗して無能な政治に万歳ができるのか』と反論した。

 さらに『あなたにとって(習近平国家主席の唱える)中国の夢は何か』との問い掛けに『米国への移住』と答えたとされる。共産党は『嫌い』とも断言した。」

 といったように、やたら攻めた姿勢を取るAIだったようです。っていうか、こんなAIを中国企業が開発したっていう点がマジ笑える。

 この記事について今日中国人の同僚にも話をしたところ、めちゃくちゃ笑ってました。でもってAIってのはやっぱお国柄とか出るのかな、中国だからやっぱ攻撃的なAIになるのかななどと話し、日本のAIだったらともかく「すいません!」などと謝ってばっかになりそうだなどと会話しました。
 この点についてですが、地味にAIによって性格が分かれるのかについてちょっと興味があります。人にやたらとケンカ腰になったり、慎重に回答したり、何も考えずにすぐ返事したりするなど、そうした性格面での違いまで反映できるようになったら、AIもより力を持つかもしれません。

2023年3月6日月曜日

韓国の徴用工訴訟対応について

 今日の侍ジャパンの大谷選手の二打席連発はやばすぎる。っていうか本当に、ほかの打者みんなが彼の前だと高校生とかに見えてしまうあたり、いろんな人も言っていますが規格外です。

 さて話は本題ですが、本日韓国政府はかねてから日韓の間で懸案となった二次大戦中の韓国人徴用工に対する補償の訴訟について、韓国側で財団を設立し、企業側の寄付で以って補償を行うことを発表しました。寄付は日韓の企業から集めるとしつつも、戦後に日本からの資金で成長を遂げた韓国ポスコなどの企業の資金がメインとなるとみられています。
 この韓国側の対応に関して、個人的には満額回答だと自分は考えています。またこの韓国の動きに合わせて日本側で現在輸出を規制している半導体素材などに関して、韓国をホワイト国に復帰させて規制を解除するという報道も出ていますが、これについても自分は賛成です。

 やはりネットを見ているとこの韓国の対応でも納得していない日本人は多く、特に輸出規制解除に関しては反対の意見が非常に多いように見えます。根拠としては輸出規制は自衛隊機への火器管制レーダー照射がきっかけなのだから、この問題で韓国が謝罪しない限りは妥協すべきでないというのが多いように見えますが、自分は輸出規制に踏み切ったのはあの件だけではなく、また徴用工訴訟が一番大きい理由だと思うので、上記意見にはあまり同感しません。
 それよりも、この規制によって一番打撃を被ったのは韓国の半導体メーカーですが、日本の素材メーカーも販売が阻害されるだけに、ノーダメージというわけではありません。むしろ規制が長期化して代替されればせっかくの売り先がなくなるだけに、今このタイミングで解除する方が経済的にもメリットがあると考えています。

 もっとも、半導体業界はちょっと今不況気味なのですが。

 以前の記事にも書きましたが、そもそも日韓関係がこじれたり、徴用工問題が荒れに荒れた原因は前のムンジェイン前大統領以外の何物でもなく、彼が去り、また現在の韓国野党党首に逮捕状が出るなど支持離れが起きている現状を考えると、日韓関係を融和させる方がやはり得でしょう。私自身も過去の韓国の態度は腹に据えかねるものがありますが、韓国が敵であるよりは味方である方が国際的にも絶対的に有利であり、ロシアがウクライナに侵攻したり北朝鮮の挑発が過激化している現状を考えると、ここで融和を取る方が日本の国益にも叶います。

 何より今の尹大統領は、前にも書いた通り原則を比較的重視する人間のように思います。今後豹変することもあり得ますが、この徴用工訴訟問題に関しては早くから今日発表された内容で落とそうという動きを見せており、実際にその通りに今回発表してくれました。ここで日本側が態度を緩和させなければ韓国国内で尹大統領が批判にさらされ、韓国との関係がまたこじれる可能性も出てくるだけに、日本側も一定の譲歩というか融和態度を見せる必要があるでしょう。

 タイミングのいいことに、現在韓国では映画「スラムダンク」が大ヒットしており、対日感情も改善されてきていると言います。この流れに乗る形で慰安婦問題についても、尹大統領にも対立野党を攻撃できるというメリットを持つだけに、日韓両政府で改めてケリをつけるために動くべきタイミングだと思います。
 唯一の懸念は竹島で、これに関しては現状、両国に歩み寄れる余地はないでしょう。私としてはやはり日本側に属すと主張したいところですが、今ここで主張することにはほぼメリットがなく、韓国側が声高に領土主張をしてこない限りは、日本政府としてもあまり触れずにおいた方がいいと考えます。弱腰だという人もいるでしょうが、吠えたところで竹島の領土認定が得られるなら自分は迷わず吠えるべきだと主張します。そのような目算もなくただ吠えるだけというのは、「月に吠える」もいいところでしょう。

 さらに日韓両政府に期待したいこととしては、台湾有事における日韓の連携です。米軍は既に台湾有事が起きた場合、日本の沖縄も攻撃されることをほぼ想定しているようですが、在韓米軍も台湾防衛に動くのかが自分としてはやはり気になります。距離もあることだしそう簡単ではないと思うものの、日米韓が共同して台湾防衛に動くというような姿勢は、中国に対する大きな牽制にもなりうるだけに、下手にカードは隠さず有事における共同歩調をそれとなく打ち出してほしいのが本音です。
 この点について、今だからこそ岸田首相と尹大統領には議論してもらいたいです。まぁ岸田首相がいつまでもつかわからないけど。

 それどころか、台湾有事の発生時も岸田首相が総理にいたら、なんか「対応を検討する」と言いそうで不安です。こういう時はマジで菅氏だと頼りになる気がして、そういう意味では彼は平時よりも有事の宰相の方が適任なのかもしれません。

2023年3月5日日曜日

放送法に関する文書報道について

 寒暖の差からかこのところ疲れやすく、昨日は昼寝に入ったらかなり長い時間眠って自分でもびっくりでした。やっぱ疲れてたんだなぁ。

 話は本題ですが久々にブログに使える政治ネタが出てきたというか、立民の小西洋幸議員が安倍政権時代における、言論統制を図ったともとれる放送法に関する内部文書を出してきました。安部元総理亡き今、この文書で影響を食うのは当時総務大臣だった高市氏で、立民も高市氏のクビを狙ってこの文書を出してきたとみて間違いないでしょう。
 内容に関して深く説明しませんが、高市氏は記者に「そんな検討したことがない」と否定した当たり、認めたら確実にダメージを食う性質であることも間違いありません。ただ問題なのはこの文書が本物かどうかで、恐らくほかの多くの方も同様でしょうが、自分もかつての永田の偽メール事件が真っ先によぎりました。何気に野田元総理が当時の事件とともに永田を忍ぶインタビュー記事を読んだばかりだったので、いろいろタイミングが重なるもんだなという気がします。

 実質的にこの文書に関しては真贋がどうあるかが最大の焦点です。ただ全く根も葉もない文書でもないようで、文書に出てくる礒崎陽輔首相補佐官(当時)は既に、文書そのものに関しては別として、関連する話を当時したということは認めています。
 仮に自分が立民側で、この文書が本物であるという証拠も握っているとしたら、その証拠は最初は出さずにおいて自民側が否定する発言をしだしてから出す戦術を取ります。無論、立民側がそうした証拠を持っている根拠はまだないですが、動きがあるとしたら来週中になってくると思え、逆を言えば現段階では報道ベースで真贋を判定することは不可能だと思ってみています。

 ただ自民側としても、この問題にケリをつけるとしたら案外安上がりだと私は思います。安部元総理が生きていたらまた認める認めないでかなりグダグダ続くでしょうが、今だったら高市氏を切るだけで一発OKです。自民党内で高市氏に反目を抱いている人がいたら願ったり叶ったり、っていうかそういつが文書流したんじゃないのかとすら思えてきます。
 私自身は高市氏をそれほど否定も肯定もしない立場ですが、組織倫理的に言えば高市氏がやや孤立しかねない状況と言え、この辺がどう動くかが今後の展開になると思います。

 にしても今回の文書は何て呼ぶべきなのか。やはり小西文書というべきなのだろうか。

2023年3月3日金曜日

中国で忍び寄る不景気

 一日遅れですが幸福の科学の大川隆法の逝去はマジビビりました。ほんとに急死というよりほかなく、今更ながら「UFO学園の真実」とか見たくなってきました。
 っていうかこの手のクソ映画話題で常連だった「シベリア特急」シリーズは最近ネットで見なくなったな。さすがに古くなってきたというべきか。

 さて話は本題ですがこのところ落ち込むことが多く、今日も帰り際にやたら寄せてきたレクサスに鞄こすられたりするなど運気が激減しているので何か好きなことを書こうと思ったところ、なんか景気の話が浮かんできました。
 中国は明後日3/5から国会に当たる全人代が始まりますが、足元の景気は非常におぼつかない有様です。今日も帰り際にレストラン街を歩いてきたのですが、気温も上がって外でもご飯食べれるくらいになっており、なおかつ金曜の夜だというのに、マジで驚くくらいに人がいませんでした。こうした傾向はそのレストラン街に限らず、中心部にあるショッピングモールとかでも以前より、それこそゼロコロナ政策がが絶賛敷かれていた去年以上に人通りが少なくなってきており、テナントも撤退が続いているのか空きスペースが目立っています。

 端的に言って、2020~2022年の中国の景気は悪くなかった、というより好調にあったと自分は見ています。その最大の理由は代替生産で、ほかの国がコロナ対策などで生産がおぼつかなかった中、中国は厳格なコロナ対策こそ続いたものの、比較的早く経済は正常化し、ほかの国の分まで製品の生産を請け負うようになっていました。また半導体不足などサプライチェーンの混乱もありましたが、その分だけ各部材の単価も上昇し、特に生産材企業なんかは日系でも過去最高の売上と利益をたたき出すところも出ていました。
 しかし2022年に入ると中国は依然として厳格なコロナ対策を続ける一方、ほかの国は規制を取っ払って中国以上にコロナ以前の正常化を果たし、中国に回ってきていた代替生産もどんどんとなくなっていきました。単純な前年比計算でいえば、電子や自動車部品といった輸出産業ほど今年の中国では大きな痛手を受けるとみています。

 一応、観光業などコロナ期間中は散々だった業界は去年よりは確実に盛り返すでしょうが、それでもコロナ前の水準にまで一気に戻せるかと言ったら未知数です。ストレスたまっているので旅行に行きたがっている人は周りにも多いですが、ホテルをはじめ各企業で従業員がまだ不足している感があり、完全復活まではもう少し時間がかかるとみています。

 一方、外食を含む小売はまだコロナの打撃から回復できていない、というより通販習慣が以前よりも根付いてしまっているため、今後もさらに先細る可能性が高いとみています。ただそれによって影響を最も被るのは小売系企業というより、彼らに実態店舗を融通してきた商業不動産業で、マジでこの分野については前から懸念を持っています。


 この写真は確か1月の土日昼間に撮ったカルフール店内の写真ですが、マジでこのところいつもこんな感じで、かつての上海高島屋(最近はまだ人を見る)を見ているような寂しさを覚えます。誇張ではなくいつ行っても人がおらず、客である自分も心配になるほどなのですが、カルフール自体も通販はやっているので、仮にそっちで販売できていたらまだ何とかなるでしょう。
 一方で何とかならないのは前述の通り商業不動産で、テナントが埋まらないことでかなりの打撃を被っているのではないかとみています。今度この辺のデータをもっと詳しく調べてもいいですが、マジで今年は1社か2社はそこそこの規模を持った商業不動産業者が倒れることもありうるのではと予想しています。

 こんな感じで、改めてコロナの3年間は割と景気良かったなと思うと同時に、少なくともこれまで自分が中国では感じなかった規模の不景気が、今まさに来ようとしているのを覚えます。自分の仕事はあまり景気に左右されない職種ですが、それでも今年は昇級幅は抑えられるかもしれず、この点でもやや鬱な気分にさせられます(ヽ''ω`)
 まぁ今夜はさっきコンビニにお菓子買いに行ってセルフレジ行ったら、猫がスキャナの前に座ってて店員のおばちゃんに「それじゃ会計できないからこっち来なさいよ」と言われたりしたので、明日からはいいことありそうです。

2023年3月2日木曜日

中世のイタリアは何故共和制自治を取れたのか 後編

 昨日の記事に引き続き、何故中世イタリアではミラノをはじめ共和制自治形態をとる都市が多く成立したのかについて持論を述べます。結論から言うと、商業が非常に発達して商人市民が強い力を持ったことこそが最大の原因だとみています。

 中世においてイタリアは世界屈指の商業地域で、現代における複式簿記の原型もイタリア発祥です。東のイスラム世界と西のキリスト教世界の中間に位置し、ライバルとしてビザンツ帝国こそありましたが地中海、アドリア海貿易においてイタリア商人の重要性は非常に高く、銀行家をはじめとして数多くの大商人が生まれました。
 これら商人は従来からの貴族ではなく平民層から生まれ、財力で貴族を上回るようになると自然と参政権も要求するようになります。一部都市ではこうした新興層を新たに貴族として取り込むことで貴族層が勢力を維持した例もありますが、大半の都市では平民議会が作られ、そしてそのまま新興平民が貴族を圧倒して主導権を握るパターンを辿っています。でもってこうした有力者はメディチ家をはじめ新たな貴族となっていき、ローマ教皇から支配のお墨付きをもらってミラノ公とかフィレンツェ公などという領主になっていったりします。

 とはいえ、日本や中国の封建的支配と比べると大体どの都市も合議制を維持しており、その結果として内部派閥対立も起きて他国に攻められる間隙もできたりしますが、こと自治という点ではかなり長期にわたり維持されてきました。何故自治が成立したのかというと前述の通り土地と農民を支配して食料を分配する封建領主以上に、領域外から財を集め力を持つ商人がどんどん伸びてきたことが第一の理由ですが、その力の源泉が財にあることも大きいとみています。

 例えば封建領主であれば土地から生産される食料を収奪し、分配することが力の源泉であり、この収奪を実行するには言うまでもなく軍事力が物を言います。それに対し商人領主は軍事力以上に資金力が物を言い、その資金力の源泉は何かというと当時としてはやはりネットワーク、人脈で、遠隔地の中継取引所や製品の原産地とのつながりが大事です。そうした点で単一的な権力者であるより、権力そのものを分配することが自身を高めることにもつながり、合議制形式の政体ができていったのではないかと思われます。
 さらに言えば封建領主と比べると土地に縛られず、国外からも優秀な人材を引っ張ってこれたりする点でも合議制の方が都合がよかったのかもしれません。

 以上のような経緯を踏まえると、商業の発達は共和制、ひいては民主制の成立に物凄く大きな役割を持つのではないかという風にも見えます。実際にというか日本においても、戦国時代で最大の商業地と言われた大阪にある堺では、信長が来るまでは町衆による自治が行われていました。当時の宣教師にも「東洋のベニス」と評されており、何で「東洋のベネチア」じゃないんだと思ったりもしますが、堺という商業都市でこうした自治が成立したということからすると、やはり商業、というより重商主義と自治は物凄い関係があるように思えます。

 さらに発展すると、カール・マルクスじゃないですが資本主義の発達は先ほど説明した通り土地に縛られた封建領主の力を削ぐことになり、民主主義、特に議会の権力を大きく高める効果があるように見えます。実際ヨーロッパ世界でも早くから重商主義に走っていた英国は議会の権力が国王より強く、逆に農業国であったフランスは絶対王政がフランス革命まで続くなど、割と明確なリンクが見えます。
 日本も江戸時代までは封建制がが続きましたが、商業自体は江戸時代を通して一貫して発達しており、商人の力もどんどんと増していたことから、あのまま続いていればペリーが来なくても幕藩体制は崩壊していた可能性が高いと前から思っています。言うなれば封建領主にとっては商業の発達は国力を高める一方、自身の権力も弱らせる一手となる可能性もあり、うかつに商業投資とかはあんまできないものだなと思います。まぁ英国みたく議会を味方につけるってんなら、話は別でしょうが。

 さらに現代に話を進ませると、土地に農民を縛り付けている北朝鮮で王権が異常に強いというのも、封建制の表れなのかもしれません。社会主義自体が土地に住民を縛り付け自由を束縛する要素を必然的に持つことからも、先祖返り的に封建的な政権になる要素を多分に含んでいると言えるでしょう。

2023年3月1日水曜日

中世のイタリアは何故共和制自治を取れたのか 前編

 最近、かねてから興味のあったイタリアの通史をいろいろ調べていますが、改めてこの国では昔から共和制というか有力者による議会が作られ、都市ごとに自治形態をとっていたことに驚きました。古くはカエサルが登場する前の共和制ローマの時代より、元老院が存在して重要な意思決定は議会形式で定められていました。

 その後、ローマ帝国の崩壊とともにイタリア各地はゲルマン人、ノルマン人が作った王国や、東ローマ帝国、果てにはムスリム勢力によって分割されますが、中世期の北イタリアではミラノやフィレンツェを中心に各都市が自治を行い、支配権を強めいようとする神聖ローマ帝国らに抵抗しながらその独立を守りました。
 なお同時代のナポリやシチリアなどの南イタリアはフランスやスペイン系の王族による王国が作られ、都市による自治はあんま成立していませんでした。

 中世期、具体的には10世紀前後ですが、日本が鎌倉時代であったころにこうした共和制自治がイタリアで成立していたということに素直に驚きます。一応、日本の鎌倉時代も北条家が主導権を持つも合議制形式こそ成立していましたが、議会なんて概念は当時全くかったろうし、市民の代表を選挙などで選んで政治を任すなんて概念に至っては、日本だと明治になるまで成立しませんでした。
 もっとも当時の北イタリアも、当初でこそ都市の有力者が選ばれて議員や執政となったものの、次第に身分が固定化されていき、メディチ家のように世襲で都市の執政を務める一族が増えていったようですが。中には「身内で選ぶと揉めるよね(´・ω・)」とばかりに、外部からやってきた有能な人物を毎回執政に選ぶ都市もあったそうですが。

 話を戻すと、一体何故イタリアではこうした共和制自治が発達し、日本では誰もやろうとしなかったのか。日本に限らずとも、ランス、ドイツなどもイタリアほど尖がった議会的なものは発達せず、唯一英国に限ってマグナカルタなどを経て議会が強い力を持ちましたが、本格的な共和制が成立して市民(ただし有力者に限る)が参政権を得るようになるのはフランス革命まで待たなければなりません。

 この辺について詳しい人がいたら本当に解説してほしいのですが、自分個人でいくつかその背景を考えたところ、大きく分けて二つ理由があるのではないかと睨んでいます。その一つ目は、ローマ教皇の存在です。

 言うまでもなくローマ教皇はキリスト教の最高権威者で、キリスト教世界では圧倒的な発言力を有します。ローマ教皇、並びにローマ政庁自体は有力な軍隊こそ持ちませんが、キリスト教世界の領主に対する軍事発動権は有しており、十字軍などはまさにその呼びかけによって起こされました。
 このローマ教皇ですが、中世においては日本の天皇に近い立場であったのではないかと思っています。というのも各地、各国の支配権を認めるのはローマ教皇で、随所で異民族を追っ払った軍事指揮者に対しその領土の支配権を認めたりしています。またローマ教皇の方針に従わない領主や国王に対しては破門を下すことで、有能なカノッサの屈辱のように教皇は間接的に各地の支配権をコントロールしていました。

 そんな教皇がいるのは言うまでもなくイタリアのローマです。教皇が実際支配するのはローマ市だけですが、現在のイタリア領土内は教皇が直接支配せずともその影響力を強く持てる地域でした。そのためか、異民族の侵入も多かったというのもありますが、よく領土争いの舞台になり、支配者が時代ごとに度々変わっています。でもって途中からは異民族を追っ払ったフランスやドイツの君主は、中世の証としてローマ教皇にイタリア北部の土地を寄進したりもしています。
 寄進された土地は大体が寄進した相手に支配権をそのまま認めたりすることが多いのですが、その寄進主はフランスやドイツの国王が多く、彼らは普段はフランスやドイツにいることが多く、その支配も必然的に遠隔地から行っていました。結果的にこうした不在地主のような立場もあって、現地の有力者を代官みたく取り立てなければならず、その代官らが徐々に有力者となって自治に至るというパターンが見られます。

 またある時期からローマ法王はフランス国王や神聖ローマ帝国(オーストリアやドイツ)の皇帝らと関係が険悪化するのですが、その過程で法王寄りの都市が神聖ローマ帝国から離反するというのも見られます。いわば二つの強大なパワーに挟まれたエリアゆえかその支配は常ならず、変動的であったことから確固とした政権が成立しなかったのではと思います。
 特に11世紀辺りに起きた神聖ローマ帝国の支配に対し北部の各都市がロンバルディア同盟を結んで抵抗し、戦争を経てその自治権を獲得した過程は、北イタリアの自治体制の確立に大きくつながっています。

 個人的な意見でいえば、教皇のいるローマの近くでなければ、北イタリアの諸都市は歴史の通りに自治を確立することは難しかったのではないかと思います。やはり教皇のおひざ元ということもあって、北イタリアの支配を図った各勢力は強硬な手段に出られなかったように見えます。
 こうしたパワーバランスのエアポケットみたいな地政学的条件が、ある意味で緩衝地帯みたいな環境を作り、それに乗じて北イタリアの諸都市は独立を保って共和制自治を得るに至ったのではというのが自分の見方です。もう一つの理由については、また次回で書きます。