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2024年2月11日日曜日

中国でツケを払うのはどこか?

 今日は午後からタミヤの370Z(Z34型フェアレディZ)のプラモを作っていましたが、フロントがボンネットとバンパーで分割されており、ボディへのはめ込み時に一番テンションのかかる部分が接合部なため容易に接着箇所が割れるというキットで、作っててずっとストレスためました。デカールも大きめのサイズなのにやばいくらい破れやすいし、インレットシールも経年劣化かもしれませんが異常にはがれやすく、これまで一度も失敗したことがないのに今回は何枚も貼り損ねました。
 ひとつ前のZ33型フェアレディZのキットは車のキットとしては過去最高なくらいに楽しかったし出来合いもよかっただけに、この370Zのキットに関しては強い失望を感じます。っていうかフロントライトのカバーガラス埋め込みって、何考えてこんな仕様にした?

 話は本題ですが前回の記事で自分は、中国の文字通りなバブル崩壊は2020年8月に始まったとしたうえで、現在はいまだに崩壊を認識できず、傷口を広げている段階だと指摘しました。崩壊はすでに始まっており抜本的立て直しが必要だと気付くのは恐らく早くて来年だと私は見込んでいますが、その際に議論となるのは、一体誰が不動産バブルのツケというか不良債権の損失を負担するのかということです。

 日本のバブル崩壊時は主に住専問題で議論され、最終的には住宅金融専門会社の母体行である銀行が主に損失を負担しました。この際、銀行に損失を負担させるにあたって短期的なショックがでかいとして税金から公的資金が注入されたものの、北海道拓殖銀行をはじめ一部銀行は破綻し、また現在の3メガバンク体制に至るその後の銀行業界の大再編にもつながりました。

 当然、中国でも不動産バブルのツケを払うと言ったら、不動産会社に融資を行ってきた銀行が真っ先にやり玉としてあがるでしょう。ただ仮に銀行が主にツケを払うこととなった場合、日本のようにはいかないことはほぼ確実だと思います。何故かというと中国の銀行はアリペイやWeChatペイなどIT系決済企業によって多くの金融関連業務を奪われており、金融決済の手数料収入がかつての日本と比べると極端に細くなっているからです。融資業務に関しては不景気なので言うに及ばずです。
 なおかつ、すでに現時点で中国の銀行の多くは体力を奪われており、多くの銀行で給料カットやリストラが激しく行われていると言われています。中国4大国立銀行の中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国工商銀行ならまだマシかもしれませんが、地方銀行や都市銀のレベルでツケを払うこととなった場合、破綻する銀行も確実に出てくると予想され、その場合大規模な取り付け騒ぎも発生することになるでしょう。また銀行だけが負担するという構図が、そのまま認められるかも怪しいです。というのも中国の不動産開発資金は銀行だけではなく、地方政府もリソースとなっているからです。

 日本の感覚からすると理解しがたいですが、中国の地方政府は集めた税金をそのまま財テクに利用しており、普通にデベロッパーに出資したり、場合によっては自らが主体となってマンションとかビルを建てたりしています。税金を原資に不動産開発を行っており、実際地方政府(自治体)が建てたホテルとかもざらにあります。でもって採算が取れなくなったり、建設途中で放棄された不動産とかもこの中にあります。

 こうした地方政府が開発して不良債権となった不動産(資産)はどうするのか。普通に考えれば地方政府がその損失を負担すべきでしょうが、中国の地方政府はここ数年のコロナ対策(検査費、都市封鎖費用)などで財政がすっからかんで、公務員ですら給料の遅配が起こっている状態であり、とても損失を負担できる状態にありません。
 またこうした地方政府の不動産開発には結構というか当たり前に汚職も盛りだくさんなため、表立っての処理を嫌って隠そうとすることから、不良債権化がますます進む恐れもあります。場合によっては、責任を銀行に擦り付けてくることも十分ありうるでしょう。

 このように考えると、バブル崩壊、不良債権を認識したところでそのツケを支払う宛てと原資が、過去の日本以上に中国はないように思えます。分担するにしても銀行、地方政府ともにかなりお手上げな状態であり、国庫が直接負担するにしても、かつての日本は約6兆円だったのに対し、今の中国の不良債権は100兆円を超すと言われていることを踏まえると、文字通り国が傾く規模の金額です。

 順当に行くのであれば、国立銀行ともいうべき中国4大銀行に中国政府が公的資金を注入し、不良債権を引き取らせて処理させるのが最も確実かつ順当な処理法だと思います。ダメージはもちろん大きいですが、地方政府や地銀に負担させるよりは、この方法が最も混乱が小さいように思えます。
 ただこのやり方でも果たして処理しきれるかと言ったら、正直未知数です。また不良債権から免れても、融資の道が閉ざされた地銀がその後も経営を維持できるかと言ったら疑問な点もあり、端的に言えば今は不動産業界で騒いでいますが、数年後は金融業界が混乱の中心になってくるのではないかと予想しています。

 どちらにしろやるなら早い方がいいので、中国政府には早い決断をしてもらいたいものです。決断をしてから最低3年間はかつてないほどの不況に見舞われるでしょうが、対応が遅れれば遅れるほどこの期間は長期化するとみられるだけに、やるなら今でしょと言ってあげたいです。
 唯一、この状況を脱出する方法があるとしたら、自分が考え得る限りで思いつくのは墾田永年私財法じゃないかと思っています。まぁさすがに無理だろうけど。

2024年2月10日土曜日

中国のバブル崩壊はいつ始まったのか?

 春節連休1日目の今日は家で昼寝して過ごそうとしたところ、なんかあんま睡眠の質よく眠れず中途半端な過ごし方となりました。明日から本気出す(´・ω・)

 話は本題ですが絶賛大不況な中国の現況について、これまで「中国のバブルは今すぐはじける、間違いない!」などと過去に話していた人達は今回、あまりこの手の「バブル崩壊」という単語をいつもより使ってない気がします。使わない理由としては彼らが過去に何度も吹聴してはその後も中国経済が成長し続けたため狼少年ケンみたいに扱われたことが何より大きいでしょうが、日本の報道を見る限りだと今の中国の不況感を現場で感じていない、というより中国現地を直接見聞きしていなくて実感を感じていないせいじゃないかと思います。ただはっきり言うと、これま中国バブル崩壊否定論者でしたが、中国のバブルはとっくに崩壊していると言い切っていいでしょう。

 ではここでクエスチョンですが、中国のバブル、具体的には不動産バブルはいつ崩壊したのか。結論から言えば2020年8月、「三つのレッドライン(三道紅線)」が出された時期と断定してもはやいいのではないかと思います。

 この「三つのレッドライン」とは、加熱、高騰化し続ける不動産市場を鎮静化、というより住宅価格を抑えることを主な目的に出された規制策で、大まかな内容としては不動産企業の現金保有高、自己資本比率などに基準を設け、この基準を上回った場合は直ちに新規の借入などを認めないという内容でした。端的に言えば、身の丈を超えた借入を行って過度な不動産開発に没頭する企業を抑えようという目的だったと思いますが、発表当時より「急進的すぎないか?」という声が自分の周りでもよく聞かれました。

 以上の内容を聞いて某錬金術師みたいに勘のいい人なら気づくでしょうが、内容的には日本のバブル崩壊の最大の原因というかきっかけとみられている総量規制と被っている、っていうかほぼ同じ展開といっていいでしょう

総量規制(Wikipedia)

 総量規制について簡単に説明すると、日本国内で加熱していた不動産開発を抑えるため、1990年に銀行を対象に不動産開発向け融資の全体規模を国が基準を設けて規制した行政指導です。この規制をきっかけに日本の不動産市場、ひいては全体景気が一気に後退するようになり、あまりの影響の大きさにこの規制もわずか1年9ヶ月で打ち切られましたが、その後も日本はデフレ不況へと猫まっしぐらな感じで落ちていきました。

 三つのレッドラインも総量規制も、不動産以上の過熱鎮静化を目的に出され、その内容のあまりの急進性ゆえに不動産市場はおろか、若干こじつけもあるかなとは思うものの全体景気すらも大きく落ち込ませた点で共通している気がします。また中国の場合ですと、コロナ規制の真っただ中だった2020年にこの規制を実施したというのも、ただでさえ逆風下だった中国不動産市場を一気に追い詰めた感があります。

 なお総量規制が日本のバブル崩壊のきっかけ、というかバブル崩壊そのものが認識されたのは1994年から1995年にかけてで、それまでは日本人の大半は当時の景気を停滞程度にしか認識していませんでした。中国でも2020年から2022年まではそこまで不況感を感じておらず、不動産市場はともかくコロナ下でほかの国から受注が移って製造業は比較的活発だったため、あんま不景気だと認識していませんでした。
 やはりそれがひっくり返ったのが2022年中ごろより各地で行われた、上海ロックダウンを含む各地での過度なコロナ規制による都市封鎖以降で、2023年に至っては若者の雇用率が下がるなど、目に見えて不況を実感するほどに世の中全体がおかしくなっていました。その元をたどるとすれば、前述の通りコロナ下で堂々と行われた三つのレッドラインの2020年がターニングポイントだったのではないかと思うわけです。

 なお日本では、自分の理解だとバブル崩壊のツケの大半を銀行に負担させたものだと考えています。この時銀行を助けるために公的資金も注入していますが、それでも多くの銀行は経営不振に至って新規融資をためらうようになり、いわゆる貸し渋り問題が90年代後半にかけて起こることとなります。
 何で急にこうして昔話をしだしたのかというと、今後増え続けるであろう不動産会社の破綻に際して、その負債を中国はどう処理するのかがもはや議論の対象になっているのではないかということ言いたいわけです。日本は上記のように、ある意味当然ですが銀行に負担を押し付けて最終的に処理していますが、中国はそれができるかと言ったら実は結構怪しい点があります。この点についてはまた次回にでもまとめていきます。

 ロジカル的にここまで簡単に至れると思うのだけれど、同じこと書いている人がほかにいないという点で若干違和感を覚えます。仕方ないからこうして自分が書いていますが。

2024年2月8日木曜日

三井住友銀行発足時に起きた驚異の逆さ合併

 明日は旧節の大晦日にあたり、例年ならこの日から中国の7日間にわたる春節休暇が始まります。ところが今年は何故かこの大晦日が出勤日に設定され、明後日2月10日の旧節元旦より休暇スタートということで、自分も明日まで出勤しなくてはなりません。
 一応有給はあるけど、チームメンバー全員が先に休暇を取ってきたので自分が出ざるを得なくなりました(´;ω;`)ウッ…

 その代わりというか休暇日数は土日含めて毎年7日間のところを今年は8日間になっています。個人的には日数以前にやっぱり大晦日から休ませてほしいというか買いだめとかしたいのが本音で、なんで今年はこんな変則的なんだと言いたくなり、やはり不況のせいかと勘繰ってもしまいます。

 さてその中国の不況、何度もこのブログでも書いているし日系メディアもいろいろ報じてはいますが、少なくとも自分が見ている限りで日系メディアは中国現地の状況を伝えきれていないと日々感じます。記事に書かれている以上に中国の街中では失望ムードが強く、株価低迷もあって不景気そうな面をみんなでしています。さすがに自分の直接的知り合いではまだいませんが、失業者も増えているといい、大卒者も内定先がなく苦労しており、感覚的には「バブル崩壊」という単語が出始めた1995年くらいの空気感です。
 仮に私の空気感が正しいとしたら、中国は最低5年間はこれから不況に苛むという計算になります。もっとも日本の場合、1995年からの5年間において不良債権に一切手を付けず、無駄に財政出動して借金だけ増やし、景気は一切回復しなかったのですが。

 何度もこの記事でも書いているように、失われた30年という人もいますがやはり小泉政権の前後でいったんは区切るべきだと思うことから私は「失われた10年」という言葉を使うべきだと思います。その失われた10年が一体何故区切りを迎えたのかというと、小泉政権下で竹中平蔵氏が不良債権処理に一気に動かしたことが間違いなく最大の理由です。
 当時、竹中氏は3年で日本の不良債権を半減化すると見えを切り、野党はそんなのできっこないと批判しましたが、実際に2年半でこれを達成しました。これを受け、ちょうどデジカメや大型テレビなどの新たな家電品が登場して消費も上向いていたこともあり、日本の景気は2005年の郵政選挙を皮切りに間違いなく上げ潮に乗りました。

 なおこの時の小泉政権下では財政支出を増やすどころか減らす緊縮財政を取っており、これは金融環境がズタボロ時に、金をいくら市場に投入しても無駄という教訓として非常に重要な例だと勝手に思っています。

 話は戻すと、一応中国もようやく財政出動に動き始めていますが、根本的には社会における不良債権をどうにかしない限りはいくら財政出動しても一時的なカンフル剤にしかならないと思います。というより、完全に日本の失われた10年のトラックを追うことになるので、内心ではやめた方がいい、そんな金あるなら不良債権を削れと私は言いたいです。特に地方債務。

 その不良債権に関連してつい最近知ったのですが、上記の竹中氏が不良債権処理を推し進めて銀行に対し厳しい自己資本比率を設定していた際、三井住友銀行はとんでもない方法でこれを達成していたらしいです。

わかしお銀行(Wikipedia)

 このわかしお銀行がどんな銀行か知っている人は恐らく現代にはいないと思います。じゃあどんな銀行家というと、現在存続する三井住友銀行を買収し、親会社となった銀行です

 わかしお銀行は元々、三井財閥系のさくら銀行の子会社でした。そのさくら銀行も破綻待ったなしな状態になった際、住友銀行と合併することとなったのですが、さくら銀行と住友銀行が合併しても依然として自己資本比率は要求される基準に達しませんでした。
 そこで当時の住友銀行頭取だった西川善文はなんと、

1、住友銀行とさくら銀行が合併して三井住友銀行を作る
2、できたばかりの三井住友銀行をさくら銀行の子会社であるわかしお銀行に吸収買収させる

 という、いわゆる逆さ合併と呼ばれるスキームを当時組んだそうです。これによってどうなるのかというと、文字通り「小が大を飲む」吸収合併となるので、吸収する側のわかしお銀行はその合併時に会計上で大きな資産評価プレミアムを得ることとなります。わかりやすく言うなら、本来の価値よりずっと安い代価で三井住友銀行を買うこととなるため、その本来の価値が上回っている分だけ含み益(のれん)をわかしお銀行が得ることとなります。
 このスキームによって合併再編の完了後に三井住友銀行は大量の含み益を手にすることができ、これを使って不良債権を一掃して、自己資本比率を基準に到達させたそうです。この手法に関しては行内からも邪道だと批判する声も多かったそうですが、当時の待ったなしな状況で最も適切な解決手段であると西川が考えてかなり無理くりして通したそうです。本人曰く、反対は覚悟していたし、信念のある決断だったからこそ、その後の結果も好転したとのことです。

 自分はこの話を西川の「仕事と人生」という本で知りましたが、こんな裏技的手法で不良債権を一掃していたことにマジビビりました。なおこの手法は企業合併には簿価基準で行うようになった現代ではできないそうで、まさにあの時代限りのウルトラCだったそうです。
 敢えて例えるなら、選挙に勝つため子供を政党の党首に据えるようななりふり構わぬ手法であり、そうまでして不良債権を削ろうとした西川の凄みがいまさらになって感じ入ります。しかしこれを見て、今の中国に必要なのはこれくらいの気迫で以って不良債権を削る意志だろうとも思わせられました。

 そんな具合で先の見えない中国でまた年越しですが、連休中はなるべく明るく過ごすようにしようと思います。買いだめしてるプラモも作らないと(´・ω・)

2024年2月6日火曜日

うなりくん

 先日忘年会で育児について語る同僚に対し別の同僚が、「パパ活熱心ですね(´・ω・)」といってました。多分彼は「イクメン」といいたかったんだろう。

 話は本題ですが先々週に日本行ってた際、地元なのにこれまで一度も行ったことがなかったのでまたソ連人民の敵であるうちの親父と成田山新勝寺に行ってきました。相変わらず周辺は千葉特有の雑木林ばかりで景観悪かったですが、新勝寺自体は関東の寺にしては非常に大きく、また境内も手入れされてて思ってたより感動しました。
 その際、興味本位でお土産屋を回っていたところ、「なんだこの珍獣は?」と思うものが目に入りました。


 その珍獣とは上の動画に出てくる、成田のゆるキャラを名乗るうなりくんというキャラクターです。いつ頃から活動しているのか知りませんが、自分が彼を知ったのは今回が初めてでした。

 まず第一印象から語ると、SUICAのペンギンとリアルに見間違えました。っていうかどう考えてもこのペンギンの亜種にしか見えないのですが、キャラクターとしてはうなぎがベースで、それに成田空港があることから無理やり飛行機とくっつけ、元ネタがわかりづらいからまた無理やり「成田」という名札を付けたような感じです。
 なお中国人の同僚にこれ見せたら「鳥?」といわれました。少なくともうなぎよりは鳥に近いと思うし、鳥よりもペンギンに近く、うなぎだと一発で看破できる奴はまずいないでしょう。なおその同僚にはそのあとハゲのAAをまとめたサイトを見せたら爆笑してました。

 このうなりくんで自分が一番奇妙に思った点を述べると、何故今の今まで彼の存在を自分を知らなかったのだろうかという点です。これでも一応千葉県のマッドシティ周辺に実家あるし、長く住んできたし、日本行くときは羽田じゃなくほぼ成田で降りるというのに、このうなり君をこれまで一度も目撃したことがありませんでした。
 成田山の近くの土産物屋であればたくさんグッズを売っているのを見るものの、ここまでマイナーなもんなのかなと思って上海へ帰る前に成田空港を見て回ったのですが、一番のおひざ元である成田空港というのに、うなりくんグッズを売っているお店は第2ターミナル内に1か所しかありませんでした。多分これが、マイナーたるゆえんだと思う。

 ただ明らかにマイナーな存在ではあるものの、そのとてもうなぎには見えないキャラクターと胸の「成田」という漢字のアクセントは強く、変に興味を持ち続けて今これを書いています。中国人も漢字がわかるだけに興味を持つかもしれないので、次回に日本行った際はこの際だからうなりくんの小さいぬいぐるみを大量に買って中国人に配ってみようかなとも検討しています。まぁ中国で人気出たところでなんだって気はしますが。

2024年2月4日日曜日

知られざる北条家のあれこれ

 先々週に日本に行った際、比較的近場ながら一度も行ったことがなかった小田原城と、その先にある戦国時代の北条家のふるさとこと伊豆半島を回ってきました。このうち小田原城に関しては城の中が博物館となっており、なかなかお金をかけてきれいにされている上に展示内容も素晴らしく、一見の価値がありました。中でも解説に関しては、それまで自分でも知らなかったような記述も多く、参考になる点が数多くありました。

 そんな小田原城の解説の中であの三角形を三つ重ねた北条家の家紋について、あの形は「三つ鱗(みつうろこ)」と呼称するという説明がありました。これで何が納得いったかって、いろいろ事業やってていまいち本業がなんだかわからないけど、一応エネルギー事業が本業であろうミツウロコという会社が、何故ミツウロコと呼ぶのかが非常に得心しました。子供のころからよくここのガスボンベを目にしてたけど、北条家と同じ三つ鱗の家紋を会社商標にしているあたり、これがその名用の由来で間違いないでしょう。

 このほか北条家、というより小田原城について知らなかった事実として、よく小田原城は街ごと堀で囲んだ日本にしては珍しく非常に大規模な城郭であった背景がありました。私はてっきり小田原城は初めからそのような総囲い(総構え)だと思っており、だからこそ上杉謙信に攻め込まれても持ちこたえられたんだろうとも思っていたのですが、実はこれは間違いでした。
 小田原城が総構えとなったのは実は秀吉の小田原攻めの直前だったそうです。それまでは確かに敷地の広い城だったけど総構えっていうほどではなく、秀吉が来るってんで防御機能を高めるためあのように総構えになったそうです。

 そんな小田原城を見て学んだあと、そのまま親父と伊豆方面へとドライブに行ったのですが、改めて思ったこととして伊豆半島はやはり交通事情が悪いということでした。熱海までなら割と行きやすいですがそこから伊東に行くならハトヤ、じゃなくて伊東まで行こうとなると海岸沿いの道だと有料道路となって距離の割に結構お金がかかり、海沿いの切り立った崖の道を延々と走ることとなります。
 この崖沿いの道だけでなく、山間部を縫うようにして源頼家も暗殺された修善寺を経由するルートもあるのですがこちらも道が険しく、周りは覆うような山ばかり。なお山の中でもおわん型した大室山は遠目にもわかり一見の価値があります。親父が高所恐怖症のため、上までリフトで上らなかったけど。

 このような伊豆半島を巡ってみて思ったこととして、現在地震の影響で交通が寸断されている能登半島と同じく、半島の交通の険しさというもの改めて感じました。元々、半島というのは地盤が隆起または沈降してできることから、必然的に海側は切り立った崖ばかりとなり、陸地は大小の山々で平地が寸断される形状となりやすいです。能登半島は訪れたことがないのですが、報道や今回の伊豆半島周遊を巡ってみて考えると、その交通手段というか移動路はかなり限定されていたのではないかと思えます。
 それだけに、道が限られていることから源頼家が修善寺に押し込められたのもよく理解できました。道がないので出ようとしても関所に阻まれるし、逃げようとしても山に阻まれるので幽閉にはうってつけだと思います。かのように半島というのは道路において制限が多いと痛感するとともに、北条氏が韮山から小田原へ本拠を移したというのもよく理解できました。

2024年2月3日土曜日

伊東選手を巡る週間新潮報道を見て思いだされる赤報隊事件誤報

 文春の松本人志氏の報道に続こうとしたのか週刊新潮は先日、作家日本代表の伊東純也選手が性加害を過去に起こしていたとする報道を行いました。この報道を受け対応が一時二転三転したものの日本代表チームから伊東選手は離脱することとなり、その影響は彼本人だけでなくサッカー日本代表にも及んでいます。
 一連の報道に関して伊東選手は事実無根だとして被害告発者に対し提訴を行い、これを受けて新潮側は加害を認めず逆に相手を貶める行為だとして、伊東選手への批判を強めています。双方ともに自らの認識に対し強い自身と証拠を持っていると主張しており、今後は報道よりも裁判を通して事実関係を争っていくことになるでしょう。

 その双方の根拠や証拠などを詳しく拝見していないため、現時点ではどちらの言い分が正しいのか、または真実味があるのかについては判断しかねるのですが、今回の報道を見て自分が真っ先に思い出したのは、2009年に週刊新潮がやらかした赤報隊事件に関する誤報です。


 上の記事はまさにその誤報があった当時に自分がまとめた記事ですが、赤報隊事件こと朝日新聞社襲撃事件について犯人が名乗り出たとして、週刊新潮は2009年にこの犯人に対する記事を掲載しました。しかしその実態は全く無関係の人物に新潮側が報酬となる金を渡して犯人に仕立て上げていたにすぎず、荒唐無稽な主張を繰り返し続けたものの当事者である朝日新聞を含む世間の批判を受け、最終的に誤報を認めた事件です。
 なおこの時に犯人と自称した人物はこのすぐ後に自殺しています。

 この事件は初報掲載時より新潮を買って自分も追っていましたが、初報時の時点で違和感のある内容が多く、朝日新聞の批判に反論する形で出した第二報の時点ではっきり誤報というか捏造であることが素人目にもわかる内容でした。自分のブログ記事にもある通り、悪だくみがばれた後に新潮は「自分たちも犯人自称者に騙された」という論調を取り、担当編集者は飛ばしましたが明らかに捏造を主導した立場であったにもかかわらず、新潮側も被害者であるというスタンスを取り、反省から程遠い態度を見せていました。

 言うまでもなく、この赤報隊事件の誤報は今回の伊東選手の報道とは全く無関係であり、結び付けるべき内容でもありません。ただ新潮には上記のような前科があるということは事実であり、それだけに自分も文春と比べるなら新潮の報道に対しては、記事内で明確な根拠が示されない限りは額面通りには受け取れません。
 それにといっては何ですが、伊東選手側の反論に対する新潮の弁明を見ていると、何となく赤報隊事件の時と同様に反論内容を否定するのではなく、被害者に対する配慮がないなどと、論点をずらすような主張のように見え、印象的にもなんか苦しそうな逆反論でした。まぁあくまで私の印象ですが。

 そのうえで、赤報隊事件も射殺された記者の遺族がいるにもかかわらず恥知らずな報道でしたが、今回の伊東選手に関しては現役のスポーツ選手であるということを考えると、ことによっては赤報隊事件の誤報以上に誤報であったら取り返しがつかないほどの事態に発展すると予想します。
 それを踏まえ新潮に対しては、変に世論におもねる(期待する)のではなく、あくまで記事内容で勝負し続ける、即ち論理的根拠を持った報道できちんと勝負すべきだと言いたいです。

2024年2月1日木曜日

映像化され原作改変で揉めた過去の事例

 昨日夜にまた上海の自宅に戻りましたが、霧で飛行機がディレイして予定より帰宅が遅れたためまたブログの更新サボってゲームしてました。どんだけ疲れても、ゲームする気力は残ってる。

 それで本題ですが、せっかく国会が開会したというのに岸田総理の施政方針演説なんてまるでニュースにならず、世間は先日からマンガ「セクシー田中さん」の作者の自殺を巡る騒動でもちきりです。
 この騒動は同作のドラマ化にあたって作者が、未完であることから原作に忠実に従って作成し、改変する場合は事前に話し合うという意向をあらかじめ伝えていたところ、実際にはほぼ無視される形で原作改変が続いていたということを作者自身がネットで明かしたことでヒートアップしました。しかし騒動が大きくなった直後、特定の人物を批判する意図でなかったとする発信を最後に作者自身が自殺をしたことで、映像化にあたり原作が一方的に改変されるという現実と、作品を守りたい原作者の意向がクローズアップされ、その他の漫画家なども声を上げるなど、世間の関心もどんどん高まっています。

 上記の「セクシー田中さん」の騒動に関しては私自身は原作もドラマも見ていない立場ゆえコメントする気もないのですが、この騒動を見た際に映像化の際に原作者と原作改変で揉めた過去の事例でいくつか思い当たるものがあり、それを今回まとめることにします。

・ネバーエンディングストーリー(ミヒャエル・エンデ)
 米独合作で1984年に公開されたこの映画ですが、原作はミヒャエル・エンデの「果てしない物語」となっています。大筋の話としては原作通りでその幻想的な世界を映像化した点は評価されたのですが、作者のミヒャエル・エンデは一部のストーリー改変、特に最後に主人公が竜(モフモフ犬にしか見えないが)に乗っていじめっ子に仕返しするシーンは激しく批判し、映画会社に対し賠償を求め提訴までしています。
 なおエンデの提訴は最終的には棄却され、彼本人も「ヒットした映画によって自分の作品をより多くの人に知ってもらったのはよかった」と態度を軟化させています。

・ヘルシング(平野耕太)
 現在も現役の超人気作家である平野耕太氏の代表作ともいえるヘルシングですが、かつて深夜アニメ枠でテレビアニメが放映された際、作者の平野氏は「アニメは見なくていいです」という発言を当時していました。元々過激な発言で知られる平野氏ですが、自身の作品を原作としたアニメ作品に対しても容赦なく批判していました。
 実際、この時作られたアニメ版は漫画版の内容から大きく逸脱しており、それだけの改変をしておきながら一般からの評価も高いものではなかっただけに、擁護の仕様がなかったと私も思います。っていうか、ナチスの出てこないヘルシングってもはや何の作品だというレベルだし。
 ただ救いだったのは原作が超人気作品で作者自身も強く望んだことから、後に原作に忠実なOVA版が制作され、こちらは作者も視聴者からの評価もともによく、現在でヘルシングのアニメとくればOVA版を指すようになっています・

・いいひと。(高橋しん)
 今回の「セクシー田中さん」の例に最も近い例としては、私が知る限りこの「いいひと。」なのではないかと思います。この作品は元SMAPの草彅氏の主演でドラマ化され、放映当時は非常に高い人気となって草彅氏の出世作にもなったのですが、「主人公とヒロインだけは改変しないでくれ」という作者の意向が無視されて制作されたことにより、作者の高橋しん氏は非常にショックを受けて放映途中に「原作」から「原案」に立場を変えた上、この改変によるショックがきっかけで連載中だった漫画作品も連載を終了させています。
 その後に高橋氏は「最終兵器彼女」で再びヒットを飛ばしますが、「いいひと。」と比べると非常に鬱度の高い作品で、私自身は「最終兵器彼女」をあまり面白いとは思っていません。反対に「いいひと。」はサラリーマン漫画としても十分評価でき、非常に優れた作品だと今でも思うだけに上記の経緯を後年知った際は私も落胆しました。

 映像化にあたって原作者と揉めた例として以上三つを挙げましたが、「いいひと。」のように放映途中で原作から原案へと立場を変えた例としては山田芳裕氏の「へうげもの」もあります。また「スケバン刑事」の和田慎二も、ドラマのシリーズ2は絶賛しつつも、シリーズ3に関しては作品の根幹部分が崩れているとして強く批判していました。
 これらの例を挙げて一体何が言いたいのかというと、古今東西地域を問わず、このように原作改変は過去何度も起こっているということです。もちろん原作に忠実に作ったところで売れなければ話にならないし、映像化にあたって妥協しなくちゃならない点もあるでしょうが、そうした点を事前に作者との間で合意を得るか、得られないなら制作を見送るとかといった対応がこれまでなされているかといえばかなり疑問です。これだけ過去に何度も問題化しているというのに。

 私自身もメディア業界にいた際、これほど契約を舐めた業界はないなと当時思っていました。基本的に口約束で報酬額まで決まってしまうだけに、取り決めや合意に関する意識が非常に希薄で、だからこそ以上のような原作者との紛争が頻発するのだと思います。
 ちなみに今は反対に、普通の業界以上にコンプライアンスや契約意識が厳しい業界に身を置いているので、たまにメディア関連の仕事すると「コンプライアンス的にやばくね(;´・ω・)」などと一人で焦ったりします。

 最後にゲームの「新スーパーロボット大戦」の原作改変例について触れます。この作品ではGガンダムのキャラクターである東方不敗を、原作を無視して宇宙人という設定にしています。この原作改変に関してプロデューサーの寺田氏は勝手な改変だと自覚しつつも、脚本担当の意見を通したことに長年悩んでいたそうなのですが、Gガンダムの生みの親である今川監督はこの原作改変を知った際、

「その手があったか( ゚д゚)ハッ!」

 などと納得した上、むしろこの設定改変に理解を示したそうです。これを聞いて寺田氏もほっと胸をなでおろしたといいますが、こう言っては何ですが改変することに悩むほど人が良くできた寺田氏だからこそ、今川監督も理解を示してくれたんじゃないかと思います。ゲーム業界の人は世間知らずで放言する人が多いですが、マジでこの寺田氏は見るからに温厚で、且つ気配りのできる珍しい人だと密かに評価しています。
 まぁスパロボの原作改変というか、原作の枠を超えて大活躍しているキャラを挙げるとしたらダイモスの三輪長官だと思うけど。出演作品がダイモスではなくダンクーガだと誤解されるのはもはやご愛敬なくらいだし。