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2013年12月28日土曜日

欧州の騎兵の歴史

 最近興味を沸いたことから、ウィキペディアの「騎兵」の項目をやけに調べていました。日本で騎兵というと武田騎馬軍団がすぐ出てくるでしょうがこれは実際にどれほど運用されていたのかがやや不明瞭であるのに対し、サラブレッドの本場である欧州ではかなり面白い使われ方というかごく近い時代まで主力の舞台として使われていたようです。

 騎兵は騎士道が発達した中世、具体的には十字軍の時代には早くも戦場の花形となっており、重装騎兵隊による突撃は当時最強の戦術の一つに数えられました。しかし重装騎兵は十字軍以降はどうも鳴りを潜めたようで、火砲の発達とともに徐々に軽装、というより機動力を重視した騎兵隊が編成されるようになり、騎兵自身が火砲を持つ銃士や竜騎兵というものも登場してきます。
 騎兵が全盛となるのは近世から近代、具体的にはドイツ30年戦争が行われているあたりからナポレオン戦争の時代までです。この時代になると騎兵は胸を覆うプレートを付けるくらいで完全に機動力重視となり、またサーベルを持って突撃したりするなどとどめの一撃などに主に使われたようです。

 で、実際に騎兵がどれほど戦場で活躍したのかというと、ナポレオン旗下で騎馬隊率いりゃ当時の欧州一と呼ばれたミュラなどは敵軍が鉄砲を撃ってくる中でも果敢に突撃し、しょっちゅう敵陣を崩したり敗走する敵軍を散々に打ち負かしていたと言われます。当時の鉄砲はまだマスケット銃もいい所で、一回撃ったら弾込などタイムラグが必要なため、200メートルくらいの距離であれば相手が打ち終わった隙に一気に間合いを詰めて突撃することが出来たようで、勝敗の趨勢を決める一撃として各軍で温存し、活用されていました。

 この騎兵突撃なのですが、その効果は馬の圧力による威力と共に心理的な効果も非常に高かったと言われます。冷静に考えてみると、でかい馬に乗ってサーベルや鉄砲持った人が猛スピードでこっちに向かってくるわけですから、実際に向かい合った兵隊からすると恐怖以外の何物でもないでしょう。また仮に向かい合えるだけの勇気を持っていたとしても、隣の兵士が恐怖に臆して身を引こうものならあっという間に自分だけ踏みつぶされるわけですから、騎兵が近づいてくることでばたと陣が崩れていくというのもよくわかります。
 そのように19世紀初頭まで普通に活用されていた騎兵ですが、その退場の歴史は鮮やかだったというかあまりにも突然でした。きっかけは機関銃の登場で、どれだけ突撃をかけても突破することのできない兵器によって騎兵はあっという間に衰退していきます。

 これは最近知ったのですが、一応今でも騎兵は警備隊みたいな形で残っているのですが、第二次大戦の頃のポーランド軍には普通に騎兵が編成されており、ナチスドイツの戦車部隊に突撃していたという話がまことしやかにネット上で出回っております。これはポーランド人は馬鹿だということを示すエピソードとしてよく使われるそうですが、実際に当時騎兵が編成されナチスドイツの機甲部隊と戦闘したことは事実であるものの、真正面から突撃したわけではなく側面や後方から攪乱したりなどして上々の戦果を挙げたというのが事実だそうです。とはいえ、現代においてはもはや通用しないだろうな。

 最後に騎兵が退場することになった機関銃のエピソードを見て思ったことなのですが、それ以前の戦争はあくまで人間同志が武器を用いて戦う戦争だったのに対し、機関銃の登場からは兵器同士がぶつかり合う戦争となり、むしろ人間はその兵器を取り回す部品みたいに変わってしまった印象を覚えました。現代においてはむしろその傾向が顕著で、兵数は補給など後方部隊ならともかく、もはや戦争の勝敗を決する要因としては非常に小さく、どれだけ質の高い兵器を保有しているかどうかの方が大きな要因となっています。そのうち兵器はどんどん無人化するでしょうが、チャーチルが言った、「二次大戦はもはやナポレオンが戦った頃の戦争とは異なる。今の時代の英雄は戦場で指揮するものではなく、会議室でミサイルの発射を許可する人間だ」と話したのもうなずける話です。

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