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2014年11月18日火曜日

トヨタの燃料電池車とそれに関わる雑多な報道

 今日はラーメン屋で晩飯食べてましたが、店内で猫が座ってたので手招きしたらすぐやってきて、撫でてたらすぐ膝の上に載ってきて、結局ラーメン食べ終わるまでずっと膝の上で寝てました。えらく人懐っこい猫だったなぁ。
 話は本題に入りますが、本日トヨタが新開発した燃料電池車「MIRAI」を正式発表しました。この件について先日、友人に簡単な講義を行ったのと今日出た報道を見ていて物足りなさを覚えるので、素人ながら生意気にも報道関係者にちょこっと苦言を呈そうかと思います。
 
 
 まず燃料電池車とはそもそも何なのかというと、何らかの化学反応を起こすことによって電気を発生させ稼働する充電する電池を搭載し、その電力で走る車を指します。名称を英語にすると「Fuel Cell Vehicle」となり、頭文字を取って「FCV」と表記することがマスコミの間でもう出来上がっており、友人にはこの略称と由来を確実に覚えるようにと伝えています。
 今回トヨタが出したミライは水素を外部燃料としていて空気中の酸素と化学反応を起こすことによって電力を発生させる仕組みで、この過程で二酸化炭素(CO2)は生まれず後に残るのは酸素と水素が結合してできる水だけです。
 なお先に注意しておくと、水素を燃料とする車としては過去にマツダがRX-8をベースに「水素自動車」というものを出しておりますが、これはミライとは異なり水素をそのまま燃やして走るという全く異なる車で、技術的にもエコ的にも何も残らない車だったらしく完全に消え去っています。間違って同系列で語ると恥ずかしいので注意しましょう。
 
 話は戻りますがトヨタのミライは走行中、排出するのは理論上は水だけです。その水から再び水素を取り出せれば完璧なエコ循環が出来て素晴らしい車だ、なんて書く記者もいますが、そんなうまい話有るわけねぇだろと突っこむ記者は私が見る限り少ないようです。
 まず現時点で言えることとしては、燃料電池車のコストは非常に高いです。原因は燃料電池を作るのにレアメタルが結構いるためで、今回トヨタが出すミライの車両価格は税込で約720万円、購入に際して国から200万円の補助金が出ますがそれでも500万円以上で、これだけあればプリウスは二台買えます。コストが高いのは販売価格だけではなく、環境負荷も決して低くありません。
 
 私が今日いくつかの記事を見ていて非常に気になった点として、どこも燃料となる水素の生産方法を熟知していない点があります。水素というのは空気にも含まれているためメジャーな作り方としては空気を極低温にまで下げる過程で蒸留するというやり方なのですが、これだと温度を下げる過程で電力をバンバン使うため、最終的なCO2排出量で見たらFCVは間違いなく電気自動車はおろかハイブリッド自動車にすら劣ると見られています。一応、水素を作るにはほかにもやり方があって重油などといった化石燃料の精製過程に発生する水素を集めるというやり方だとコストも比較的抑えられますが、これだと実質化石燃料の量によって取れる量が決まるため、完全循環型とは言い切れないのかあまりトヨタも紹介してません。
 
 あと肝心なこととして、事故った時はどうなるのかという不安が私の中にはあります。水素というのは言うまでもなく簡単に爆発するアセチレンに次ぐくらい危険な気体でもしも車体に搭載する容器から洩れたりしたらどうなるのか、そういった事故対策についての言及が今日までの発表に少ないのは残念です。
 それとともに、今回ミライに搭載される水素貯蔵容器には700気圧分の水素を入れられるのですが、参考までに日本で使われる一般的なガスボンベの貯蔵容量を述べると、こちらは大体500気圧です。500気圧のガスボンベでもほんの少し穴が空いたら百キロくらいあるボンベは内部気体の噴出で確実に吹っ飛び、数十メートル先にまで飛ぶことがあります。もし走行中にミライの貯蔵容器に穴でも開いたら、確実に車両ごと宙に舞うでしょう。もっとも、ミライの貯蔵容器はマグネシウム合金使ってるかと思ったらFRPなので穴空くことは確かに少なく丈夫ってことは間違いありません。
 
 以上まではミライの悪口ばかり書いてきましたがフォローポイントを書くと、航続距離などの面においては先行の電気自動車を確実に凌駕する性能を持っております。以下に簡単にまとめたのでご覧ください。
 
  車種/航続距離/充電(充填)時間
トヨタ・ミライ/650km/約3分
日産・リーフ/228km/約8時間(200Vで)
三菱・i-MIEV/120~180km/4.5~7時間(200Vで)
 
 この表をどっかのメディアは作ってくるかなと思ったらどこも作ってないので自分でまとめました。これで見ると新型エネルギー車の中でミライは利便性が頭一段抜けていることがわかります。もっとも電気自動車も急速充電器使えば数十分程度で満タンにできますが、そういう設備が街中では少ないことに加え、ユーザーのレビューを見ていると航続距離は上記のカタログスペックの約半分くらいが実情だというのであまりフォローになりません。
 
 今後の展望として述べると、恐らくFCVは流行らないと思います。トヨタも国に要請されて一応やってるような態度に見えますし、環境負荷や生産コストと見比べると現行のエコカーに対して不利な点が多すぎる気がします。何気に新型デミオが燃費でアクアに肉薄する上、燃料が軽油だから距離当たりの燃料費ではアクアを上回るという事実をもっとメディアは取り上げるべきだと思います。
 
 
 最後に気になった記事として、上記のニュースがいろいろとツッコみたくなります。今日日の内容から言ってトヨタの話かと思ったらホンダのFCVの取組についてまとめた記事で、
 
「『ホンダはFCVのリーディングカンパニー。水素社会の一翼を担う技術開発にチャレンジし続ける』。伊東孝紳社長は15年度発売予定のコンセプトカーを前に力強く語った。」
 
 というホンダの発言に対して、トヨタが今日から販売を開始するというのに何を以って「FCVのリーディングカンパニー」などとほざくと、どうして記者はツッコミを入れないのか不思議に感じます。更におかしな点を突くと、
 
「FCV普及のハードルは価格だ。高価なプラチナを使う燃料電池の製造にコストがかかり、販売価格は700万円程度。政府は約200万円の補助金を出す方針だが、それでも消費者には手が届きにくい。」
 
 この引用に出ている700万円という販売価格についてなのですが、ホンダは現時点で来年発売するとしている(どうせ延期するだろう)FCVの予定価格を一切明らかにしていません。にもかかわらずどうして700万円という具体的な数字を出せるのか、ってかこれトヨタの販売価格だよねと言いたくなりますがこの記事ではトヨタの名前は一切出てきません。折角FCVの特集なのにホンダより先行しているトヨタの現況について何故触れないのか、触れないくせに参考価格だけは黙って引っ張ってくるのはどういう心境なのかと問い詰めたくなります。
 仮に自分が前の会社でこんな記事書いて出してしまったら、確実に上司から「この数字の根拠はどこだ、てめぇぶっ殺すぞ!」と怒鳴られていたと思いますし、怒鳴られても仕方ない記事だと私には思えます。第一、ホンダはこういう提灯記事を書かせる暇あったらリコール減らせという気になります。ハイブリッド技術でもプリウスが出る直前まで、「うちがリーディングカンパニー」とか抜かしてたけど。

2 件のコメント:

上海忍者 さんのコメント...

BYDの電気自動車はどう思いますか?

花園祐 さんのコメント...

 量産化にまでこぎつけたのは確かにすごいが、充電インフラと人気が持たなくて今じゃ過去の産物扱いになってるな。