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2016年11月29日火曜日

蛇頭は何処に?

 この前に上司とした会話に、「中国人ってやたらフード被りたがるよね(室内でも)」という一言があったのですが、その際に「アサシンクリード」という単語を思い浮かべていたことは口にしませんでした。フードっつったらもはやこれでしょ。
 話は本題に入りますがその上司とは別の機会に、

「そういや蛇頭(じゃとう)って最近どうしてるんすかね?」
「だよね。最近聞かないよね」

 というのもあり、ちょっと気になる意味も込めて今日記事にします。

蛇頭(Wikipedia)

 蛇頭についてはその上司に限らず、その前にも中国に詳しい人とも話題になり、何故か二人して「あいつらどこいったんだ?」と軽く盛り上がりました。そもそも蛇頭とは何なのかですが、端的に言って福建省辺りを中心とした中国マフィアで、主なシノギは人身売買を含む密航ブローカーと言われている組織です。現代において日本で中国マフィアといったら中国残留孤児二世や三世を中心に形成された「怒羅権(どらごん)」が最も有名ですが、90年代末辺りで中国マフィアといったら誰が何と言おうと蛇頭しかなく、新宿歌舞伎町周辺を題材に取ったルポや小説、漫画には必ずと言っていいほど彼らが登場していました。
 なお自分が読んだルポだと、作者とタイトル忘れちゃいましたが取材者が蛇頭の構成員に飯屋で取材してたら突然テーブルに置いていた時計にナイフを突き立てられて、「あんま火遊びするなよ」的なこと言われたりしてて、なんや中国人ってこわそやなぁと思った十五(当時中三)の夜でした。

 話を本筋に戻しますが、蛇頭というのは一応は中国マフィアって括りですがその実態については諸説あり、日本の山口組の様にトップが強い権力を持つ上意下達のがっちりした組織ではなく個々の反社会組織がシノギのために緩い連帯で連合を組んでいる組織ではないか見られています。そのため蛇頭に属す、かかわりのある組織や構成員はどれだけいるのかわからず、実態としては組織ではなく業界団体的なものではという見方が強いです。

 その蛇頭が日本で一番話題に上がっていた時期は上記の通り90年代末の頃で、場所も上記の通り新宿歌舞伎町周辺でした。具体的に蛇頭が何をしていたのかというと中国人の日本への密航斡旋で、日中の賃金格差が今とは比べ物にならないくらいの時代もあって日本でしこたま稼ごうとする中国人密航者を日本へと運び仕事を斡旋し、稼いだ金を日本へ送るという頭の先からしっぽまでをカバーするフルな密航サービスを展開していました。
 密航者を扱うということから基本ブラックなことに関わることが多く、特に大きいのだと殺人の請負というのもあったそうで、密航者にわずか数万円の報酬を渡す代わりに日本人(主に暴力団)から依頼を受けてターゲットを殺害させるということもよくやってたそうで、これには日本の暴力団も、「あいつら常識がなくやることなすこと無茶苦茶だ」と相当まいってたそうで、当時の裏社会系ルポではよく蛇頭を含む中国人マフィアについて「黒船」と表現し、組の垣根を越えて奴らに対抗しようなどと明治維新みたいな論調で「日本(の裏社会)を外敵から守れ」と書かれてました。なんていうか今こうして書いててすごく懐かしい。

 しかし、そうした蛇頭を含む中国人マフィア関連の話は大体00年代中盤辺りからほとんど聞かれなくなりました。一番大きな要因だと考えられるのはやはり暴対法の思考で、中国人マフィアはおろか日本の暴力団も厳しく規制されたことにより活動し辛くなったというのが何よりも大きいでしょう。そしてもうひとつ考えられる要因としては、中国が急速な経済成長を遂げたことによって国内でもそこそこ収入が上がり、日中の賃金格差も劇的に縮まり、単純に日本へ密航してくる旨味がなくなってしまったことから自然消滅したのではないかと私は睨んでいます。

 とはいえ、いなくなったらいなくなったで寂しいというかあんだけ一時期ブイブイ言わせてたのに今だと本当にもういなくなったのかと気になります。そんなこともあって最近やたらと、「蛇頭ってどうしてるのかな」と周囲に聞きまわっているのですが、傍から見るとやっぱ変な人に見られてそうです。
 そこで、日本国内の情報はこの際置いといて本国である中国ではどうなのか先程調べてみたところ、いくつかヒットするニュースがありました。それらニュースによると一応まだ健在だそうで、韓国へ中国人不法就労者を送ろうとしたり、港湾付近の違法案件で捕まった中に蛇頭関係者数人が混ざっていた等と報じられるている中、少し気になったのは「欧州内の難民移動で蛇頭が50億米ドル儲けている」というニュースもあり、この辺はさすが密航ブローカーなだけあるというか日本を飛び越えワールドワイドに活動している模様です。

 しかし、全体としてはこういう蛇頭関連のニュースはやや少ないように感じました。「蛇頭」と検索してもマフィア関連でヒットするのはわずかで、大半は「草むらから突然蛇の頭が飛び出してきた」とか、「蛇の頭を切り落とした後で胴体が動いてびっくり!」みたいな生物としての蛇関連のニュースが多く、期待してたより蛇頭の実態に迫るような報道や解説はありませんでした。

 マフィアが減るってことはもちろん素晴らしいことですが、減ったのではなく目に見えなくなっただけであれば逆に危険です。そういう意味でこうした方面の情報にはたまに気を配る必要があると思うと共に、文字通り命はってこういう裏社会ネタを取材する記者たちには強い敬意を覚えます。自分なんて絶対こういう取材はやりたくないし、ネット使ってちまちまデータ弄る取材の方が性に合っています。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

もしかしたら蛇頭も 日本の暴走族のように 若い世代が入ってこないので高齢化している
かもしれません。

花園祐 さんのコメント...

 日本の暴走族もこの前40代のおっさんが捕まってましたし、案外世界規模で少子高齢化は問題なのかもしれませんね。