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2017年3月9日木曜日

日本史の暗黒時代

 余り頭使う余裕のないのでしばらくは趣味の話でもと思ってまた歴史話です。
 さて暗黒時代と一言でいうとなんとなく苦難に満ちた時代を想像しがちですが、歴史学においてはむしろ資料などが少なく詳細がはっきりしない時代の事を指します。日本史においてそのような暗黒時代の定義に当てはまる時代を挙げるとすれば私の中では二つあり、一つはこれは公にも一致するでしょうが弥生時代から飛鳥時代(推古朝)に至るまでの期間がそれに当たります。

 正直、そろそろ弥生時代と縄文時代という区別をつけるのはやめるべきだとは思うのですがそれはひとまず置いといて、魏志倭人伝で邪馬台国と卑弥呼の記述が書かれて以降、日本に関する記述は推古朝に至るまで全くなくなります。その理由というのも中国が三国時代以降、異民族が中原に侵入して五胡十六国時代という大混乱期に入って安定した政権が生まれず、外交など周辺国に関する記述が全く残されなかったからです。
 中国で再び日本について触れられるのは隋書においてで、日本から外交官の小野妹子が派遣されたことが書かれてあります。この記述というか小野妹子の存在は日本側資料でも一致していることから自然と彼を派遣した聖徳太子についても実在性が確認され、推古天皇が本当に天皇だったのかなどについてはまだ疑問符がつくもののそのような形態の政権は当時の日本にあったことが史実であると検証されています。

 この間の日本はどうだったのか、大和朝廷というか天皇家は存在していたのかなどいろいろ議論はあるもののはっきり言って詳細は全く分からず、あるのは日本各地に作られた古墳だけです。その古墳も詳しく調べれば色々わかるというのに、宮内庁が妨害しているせいで歴史の検証が妨げられるなんて今時中国じゃあるまいしとすら思います。もっとも中国は古代史研究に関しては割と真面目で、また陸地が広いことから恐竜の骨も多数出土することもあって白亜紀時代などの発掘研究では地味にメッカとなりつつあります。
 上記の日本の暗黒時代を敢えて言葉にするならば、「前飛鳥時代」ともいうべきで、近畿に安定した王朝が生まれる前の日本がどのような形だったのかは今後の研究を待たなければなりません。そんな前飛鳥時代と並んで日本史において暗黒時代と呼ぶべきだと思う時代を私の方からもう一つ上げるとすれば室町時代中期、というよりは戦国時代初期がそれに当たると考えます。

 戦国時代とくればある意味日本で最も研究の盛んな時代でありますが、その初期、具体的には1467年の応仁の乱以降しばらくの時代についてはほとんど語られることもなく、大枠についてすらもあまり調べられていない気がします。一体何故この時代が手垢が付けられていないのかというと、先ほどの中国の五胡十六国時代と同じく当時の日本も室町幕府がガタガタで安定した政権がなく、きちんと整備された資料が少ないということに尽きます。
 また資料がない以上に、この時代は日本全国でカオスな時代で、ファイナルファンタジーで言えば「無とはいったい……うごごご」(CV:エクスデス)みたいなくらいわけわかんない状態となったため、存在する資料を眺めてもまるで把握できないことも原因として大きいかと思います。

 あくまで私見ですが私の意見を述べると、この戦国時代初期の日本の中心はそれ以前の中心であった京都というか近畿ではなく、関東にあったかと思います。というのも当時の関東地方では足利家一門の古河公方、堀越公方と呼ばれた各棟梁がそれぞれ武士団を率いて主導権を争っていたかと思えば、本来ならばその配下であるはずの関東管領職にある武家が主人を差し置いて勢力を伸ばした挙句に主家とも敵対して、さらにはその関東管領の上杉家の家中でも一門同士が争ったりするなど、カオス極まりない状態でありました。
 それだけカオスなだけあって外からもよくわからない流人が一旗揚げようと侵入してきて北条早雲が躍進したり、近在の今川家や長尾家なども介入したり、百戦百勝と呼ばれた名将の太田道灌が上杉家の配下として出現したものの警戒されて主家によって暗殺されたりと、書いてるだけでもうお腹いっぱいです。

 当時の関東地方がめちゃくちゃカオスだったのは間違いありませんが、ほかの地域も似たり寄ったりで下剋上が繰り返されたのと、時代を把握、読み解く上での主役的人物、たとえば後の織田信長のような主導権を取る人物がいないため、極端に読み解くのが難しくなっているのがこの戦国時代初期です。それゆえか小説などの娯楽に取り上げられることもほとんどなく、普通の人が文物として触れることもほとんどないこともあって実質的に「何があったのか全く分からない」という暗黒時代になっていると私は考えています。
 何度か私も、古河公方と堀越公方を中心に解説記事とか作ろうかなと思ったのですが、生半可な気持ちでこの時代に当たろうと思ってもほんとに理解するのが難しく、やろうと思ってから現在に至るまでなんか全力疾走的に忙しくなっているため未だに着手できていません。ただこの時代を読み解かない限りは室町時代と安土桃山時代の間に明確な断絶が起こるため、誰かがきちっとカバーしないといけない時代であることは間違いありません。願わくば誰か頑張って歴史小説を書いて、この時代に対する興味を世間一般で高めてもらいたいというのが個人的な意見です。

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