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2017年10月15日日曜日

中国電子マネー普及の「偽札が多いから」という理由について



 最近金遣いが荒く、昨日は上の写真にあるキーボルダーをダイソーで10元/個で大人買いしてしまいました。でもって今日も果たして必要なのかなと思いながらも、掛け布団カバーとモップ用雑巾を購入したのですが、一部決済には電子マネーによるモバイル決済で済ましており、自分もほんとこういう支払い方に慣れたなという気がします。

 こうした電子決済は中国では感覚的に2015年頃から普及し始め、2016年には使わない人はいないくらい爆発的に広がりました。現2017年に至ってはもはや完全なインフラと化しており、今更電子決済禁止にもなろうものなら社会はきっと大混乱に至るでしょう。
 こうした中国の電子決済事情は日本のニュースでもよく取り上げられているのを確認できますが、読んでて気になることとして「中国で電子決済が普及した理由は社会に偽札が多いからだ」というものがあります。結論から言えばこの理由については違和感があるとともに恐らく間違いだと思われ、何故こうした根拠が挙げられるのかと言えばむしろ日本側にとある理由があるからではないかと睨んでいます。

 まず前提として、確かに中国では偽札が非常に多いです。一方で日本とは違って各商店や銀行などでの偽札チェックは非常に細かく、大体100元、50元札(約1,600円、800円)単位で偽札チェック用の機械にかけられるので、仮に受け取ったとしてもすぐにそれが偽札だと消費者も提供者も気づきます。小売各店ではもしかしたらこうした偽札被害を掴まされることも多いかもしれませんが消費者側においては、地方だとわかりませんがそんなしょっちゅう掴まされることはなく、よほど怪しい露店主や変なおじさんからでない限りは偽札かどうか疑うことはありません。

 その上で電子決済が普及した背景について周りの中国人に話を聞いてみると、ほぼ異口同音に「便利だから」の一言しか返ってきません。私自身としてもこの便利だという理由の一点のみで電子決済を利用しており、飲料自販機など小銭出したりするのが面倒な支払いにおいては実際便利この上ありません。
 もっとも、電子決済だとお金を使った気がせずついつい消費が増えてしまいがちなので、100元超の支払いに関しては私は敢えて現金で支払うように心がけています。

 政府や商店主側の立場であれば確かに偽札対策の意味合いも込めて電子決済を奨励、取り入れているのかもしれませんが、こと普及の立役者たる消費者側においては偽札云々は電子毛債を利用する理由どころかハナから眼中にもありません。仮に、「政府としては偽札対策の意味合いも込めて電子決済を社会に奨励している」という書き方であればまだ理解できますが、「中国は偽札が多いから電子決済が好まれる」という書き方だと実態とかけ離れている印象があり、はっきり言ってしまえば現実を見誤らせる、ミスリードさせる書き方になると断言できます。

 では何故日系メディアはみな判で押したかのように偽札について触れるのでしょうか。やや深読みしすぎかもと自分でも思う部分もありますがそれでも敢えて言うと、「便利だから」という理由しかない現実を認めることができないからではないかと思います。
 これはどういうことかというと、「非常に便利で誰もが一気に飛びつき社会でばっと普及した日本にはないサービスが中国で流行っている」とは書けない、書きたくない、書いたら反発食らうかもという事情がライター、メディアの間であるのかもしれません。だからこそ、「偽札が多い」という特殊な事情背景をつけ、さも「日本とは条件が違うから」という理由というか言い訳が求められたのかもしれません。

 今この記事を読んでいる方は違和感を持たれるかもしれませんが、私自身は大真面目に偽札が多いという理由を頑なに繰り返す日系メディアの主張がいつも不思議に見えてならず、また中国人の友人らに話しても、「普及したのはただ便利以外の何物でもないじゃないか」という返事が返ってきます。そのような、便利この上ない日本にはないサービスが中国で生まれ、普及したという現実を、もしかしたら無意識的に受け入れられない、もしくは反発があるのではと、誇張するわけではなく本気で私は思っています。

 どう受け取るかは勝手ですが、少なくとも言えることは電子決済普及に関して「偽札が多いから」というのは絶対的にNGであり虚報もいいところです。この言い回しを使うメディア、ライターについては現地の実態を見ていないか、別の思惑があるかを疑った方がいいでしょう。
 その上で、私がこのような挑発的な言い方をするのはほぼ毎回理由なくやることはまずないと、今回はサービス的に事前予告しておきます。それでも反論がある方は心待ちしているので是非お寄せください。

 以前こちらで私の記事の読者とも会って話しましたが、現在中国事情について取り上げる日系メディアは星の数こそあれども、実際私のように中国現地で生活しながら書いている人は意外と少ないという指摘がありました。この指摘には私も同感で、日本にいながら中国のことについて書いている人の方が圧倒的に多いと思います。
 私も威張れるほど中国の草の根の生活に身を置いているわけではありませんが、この点においては他のライターと比べても一日の長とは言えるでしょう。

13 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

日本で電子マネーが普及しない一因には決め手となるような、どこでも使えるものがないから
ですね。 私の住んでいる所では、ホームセンターではedyしか使えず、スーパーではIDと
クイックペイしか使えません。バスはいまだに現金支払い(又はあらかじめバスカードを買う
しかない)です。 私の住んでいる所が地方都市だという事情を差し引いても、電子マネー
だけでは生活(支払)できません。 なので、いまだにジャラジャラ小銭を持つ羽目になって
います。

花園祐 さんのコメント...

 規格が統一されていないというのが、日本の電子マネー普及を妨げている最大の要因であるのは間違いないでしょうね。かつて日本は業界で規格を統一するのが得意だったと言われていますが、今の日本見ていてホラちゃうかと疑いたくなるくらい規格の乱造が目に余ります。
 ゲームセンターとかでも、どの店でもメダルが交換できるカードとか作ってくれれば便利なのになぁ。

酷道マニア さんのコメント...

>もっとも、電子決済だとお金を使った気がせずついつい消費が増えてしまいがちなので、100元超の支払いに関しては私は敢えて現金で支払うように心がけています。

規格の統一以外にも、この消費が増えがちなところが、日本で普及しない一因な気もします。

花園祐 さんのコメント...

 ちなみに逆パターンというか、あまり大きな声で言えませんがゲームの賭けで大敗した際はまさにこの電子決済で2000元(約26000円)を払いました。現金と比べてハートへのダメージは少なく、もし現金だったら三日くらい夜眠れない日が続いたと思います。

上海忍者 さんのコメント...

「高速電車、モバイルマネー、mobike、internet shopping」は中国新四大発明と言われております。

花園祐 さんのコメント...

 モバイク以外は中国発祥というわけじゃなかろうに。
 ちなみに中国四大発明と聞いて自分が真っ先に思い浮かんだのは、「冷凍毒餃子」、「ダンボール肉まん」、「下水油」、「カドミウム米」だった。

まっちぼう さんのコメント...

なるほど。
確かにそのように思えます。

自分で使う感覚として、電子マネーはすごく便利です。小銭をじゃらじゃらさせる必要もありませんし、サービスによっては、どれだけ使ったかもアプリやwebサイトで見ることができます。
普及しない要因の一つとして、現物でないため信頼できないというものがあると思います。ソフトウェアを軽視しているのか、仮想上のものを怖いと思うのか分かりませんが・・・
また、小さなお店側としては、インフラとして導入する敷居が高いのかもしれません。クレジットカードですとお店が手数料を払うことになります。

2次元バーコードの方式が普及すれば、また違うことになるのかもしれませんが。
先に導入されて洗練されていると思われる中国の企業にとられてしまうかも・・・

花園祐 さんのコメント...

 まっちぼうさん、コメントありがとうございます。
 日本で電子マネー決済が普及しない要因としてはおっしゃられている通りに、電子マネーへの怖さが大きいと私も思っています。
 ちなみに言及されている「手数料」についてですが、中国の電子マネー決済はクレジットと比べて手数料が低く設定されていることもあり、小売企業もこぞって導入する要因となっているそうです。日本もその辺りの理解が進んだりすれば導入に前向きになる会社が増えてくると思うのですが。

まっちぼう さんのコメント...

 一つ気になったことがあるのですが、携帯電話を持っていない人は、買い物が大変になってませんか?また、バッテリーが切れた場合もお金を払えなくなりませんか?
 それと露店の場合でも電子マネーが一般的になったのでしょうか。
 もしよろしければ教えていただきたいです。

花園祐 さんのコメント...

 一つ一つお答えしましょう。

>携帯電話を持っていない人は買い物が大変になってませんか?
 電子決済が普及したとはいえ、現金決済を拒否するようなお店はさすがにないので買い物ができなくなるということはありません。ただ、電子決済の方が割引効いたりして有利であることは間違いないですが。

>バッテリーが切れた場合もお金を払えなくなりませんか?
 払えなくなります。もっとも、中国の電子決済システムは中国で統一されたシステムで運営される銀行カード決済機能がベースとなっており、銀行カードさえあれば基本どの店のレジでも決済できます。
 なおこれは余計ないちゃもん付けてきた人間をはめ倒すために敢えて本文で語らなかった点ですが、中国で電子決済が普及した背景にはこの銀行カードこと、銀聯カード決済がすでに普及していたということが最大の背景です。携帯電話以前に、カードでの電子決済が中国では当たり前となっていました。

>露店の場合でも電子マネーが一般的になったのでしょうか?
 露店は電子決済が一般的になったというよりかは、電子決済にも対応するようになったというのが実態でしょう。レジとかなんかなくても、店側も携帯電話一つさえあれば電子決済出来ちゃいますし。

まっちぼう さんのコメント...

お答えいただきありがとうございます。
 電子マネー決算の普及の背景には土壌があったのですね。そう考えると日本での普及はまだまだ時間がかかりそうに思えます。電子機器やソフトウェアに抵抗のない人の数が大多数になるまでは、広まっていきそうにないですね。
ttps://squareup.com/jp
こういったサービスが普及したらと以前は思っていましたが、QRコードで決算できるようになるともっと気軽に決算ができ、便利だと思いました。

匿名 さんのコメント...

自分の海外旅行時は偽札なんて気にならなかったのに、電子マネーに関しては毎回偽札云々言われるものの根拠が不明な為気になって調べました。
勉強になりました。

花園祐 さんのコメント...

 コメントありがとうございます。
 割と海外報道だと日本国内の人間には検証できないことから、いい加減な憶測を垂れ流す人間が少なくないです。もっとも一部の連中からは私もそのような人間だと疎ましく思われていることでしょうが、自分を疑うのならそんな難しくもないのだから検証してみろよと内心言いたいところがあります。
 旅行時に偽札は気にならなかったとのことですが、その感覚がやはり正解でしょう。私も普段の生活で偽札被害に遭うことなんてほとんどないです。