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2017年10月25日水曜日

怪しいからこそよく売れる

 今日ふと尾上縫とかどうしてんだろうと思ってネットで調べてみたら、3年くらい前に死んでいたそうです。

尾上縫(Wikipedia)

 多分私と同年代でこの人知っている人は知らないでしょうから簡単に説明すると、尾上縫というのはバブル期に世間を騒がせたいわゆる詐欺師です。具体的にどんな詐欺したのかというと金融機関からの不正融資引き出しなのですが、その経過というのが時代を反映していて個人的には面白く、私も名前まで覚えてしまいました。
 元々は料亭の女将だったのですが株や競馬の予想が悉く当たると評判になったことから次第に占いが本業となっていき、一時期は大手証券会社や銀行の社員がこぞって通い、「当たるぞよ~」とか「今は待つぞよ~」など怪しさ満点のお告げを繰り返しては来場者から尊敬のまなざしとともに平伏されていたそうです。

 しかし資産運用がうまかったというよりかは時代が良かっただけで、自ら運用していた株はバブル崩壊とともにどんどんと焦げ付き始め、Wikiの記述を引用すると、「89年の延べ累計額では借入が1兆1975億円、返済が6821億円で、270億円の利息を支払った。」とのことで、この年の運用損益は実質約-50%という状態でした。
 それにしても上記の金額を見ていると、いくらバブル期とは言え個人で数千億の融資を得た上で運用できたとはアホな時代だなと思えてなりません。まぁそんなあほな時代を経たから今審査とか厳しくなったのでしょうが。

 こうした有様はもちろん表向きは隠していたものの金融機関もだんだんと怪しみ、融資に慎重となっていきます。そこで尾上縫は懇意の金融機関関係者と組んで架空の預金証書を作り、これを担保とすることで新規融資を引き出すという詐欺を繰り返しながらどんどんと焦げ付かせていき、ある日ガツンとばれて牢屋に入ったわけです。なおその後留置場で自己破産手続きを取り、負債総額は4300億円と個人としては当時の史上最高額を叩き出したそうです。
 そんな尾上縫ですが今年包装されたテレビ番組の調査で2014年頃に亡くなっていたことが確認されたそうです。まぁなんていうか、悪い奴は結構しぶとく生きるなって感じです。

 個人的にこの事件で面白いと思うのは、変なガマの像に向かって祈ったりするなど怪しさ満点なおばさん相手に、高学歴の証券マンとかがこぞって通って平伏していたという事実です。しかも彼らがお告げと聞いていた内容はおばさんの場当たり的予想にしか過ぎず、実態から根拠、背景に至るまで何一つ合理的なものがなく滑稽窮まりません。
 しかし逆に言うならば、怪しいからこそみんな信じたのかなとも思うわけです。

 古い話を出すと、原爆投下直後の広島では人骨の粉末がケロイドなどに効くというデマが流れて実践する人も多かったそうです。もちろん人間の骨にやけどを治すような効果はなく、これ以前に同じような意見が提唱されたわけではないのですが、パニックもあったとはいえ何故かその時の現場では信じられたそうです。
 こうした例に限らず、一見すると怪しさ極まりないものの、時と条件とかが合ってしまうと何故か根拠なく信じられたり、商品も売れたりする傾向がある気がします。いわゆる疑似科学などはこの典型で、効能などの宣伝とかマーケティングとかではなく怪しいからこそ売れるんじゃないかとひそかに見ています。

 このように考えると商品やサービスに対して、いくらかの怪しさを付け加えたり意図的に醸し出したりすることはマーケティング上でも有用なのではないかとも思えてきます。それこそいかにも素人っぽい芸人に、「これ効くよ、ほんとほんと、お願いだから信じて!」みたいに訴えさせたりとか。誰かこういう「怪しさマーケティング」について専門的に研究してくれないかな。

 なお最近でこういった怪しさ満点な商品とくれば、露骨な疑似科学商品ですが「水素水」でしょう。ただ私としてはちょっとこのネーミングはシンプル過ぎるような気もして、もっと仰々しい名前の方が売れたような気がします。
 敢えて私が売り出すとしたらそれこそ、「超水素水」、「伝説巨神水素水」、「ハイメガ水素水」などともっと凝った名前にしていたことでしょう。

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