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2009年10月24日土曜日

北京留学記~その十九、フェイシア

 今日もまた私の留学中のクラスメート紹介です。あまり反応ないから読まれている方にとって面白いかどうかはわかりませんが、一応昔に書いたものなので表に出させてください。

 今日紹介するのは、フェイシアという名前のフランス人女性です。詳しい場所までは聞きませんでしたが、出身地はフランスの中でも恐らくパリとは違って田舎の方だと思います。というのもこのフェイシアは外見からしてフランスの上品なイメージとはほど遠いごつい体格をしており、また性格の方も見かけを裏切らずに思った事をすぐ口にする性格で、なんていうか見ていて大阪のおばちゃんを髣髴とさせる人でした。

 そんな彼女のエピソードの中で今でも強く印象に残っているのは、彼女が乗ったタクシー運転手との会話です。なんでもフェイシアが中国であるタクシーに乗った際に運転手が彼女が北京語言大学の学生だとわかるや、

「俺はあそこにたくさんいる日本人と韓国人は絶対に乗せたくないんだ」

 と言ったそうです。その話をフェイシアは授業中にて紹介し、以下のように付け加えました。

「本当にひどい運転手だわ。私が会う日本人はみんな礼儀正しくていい人ばかりなのに、あのタクシー運転手は絶対に間違っている。でもま、韓国人ならしょうがないわよね┐(´ー`)┌」

 ということを、思い切り言ってのけてしまいました。
 その日はたまたま韓国人留学生が誰も授業にきていなくて先生もほっとしてましたが、その後のWカップの期間中に韓国の予選リーグ敗退が決まった翌日にもフェイシアは朝からえらくテンション高く、

「ざまぁみろ韓国が。Wカップで勝とうなんざまだまだ早いのよ( ^∇^)」
「それを僕の前で言うの?(´д`;)」

 と、この前紹介した韓国人の李尚民が、苦笑いを浮かべながら対応に困っていました。もちろんお互いに冗談だとはわかっていますが。

 こんな具合に歯に衣着せぬフェイシアでしたが、その見かけどおりにどうも姉御肌な性格なのか周りの気配りは非常によく、テスト後で授業の空いた日にクラスで映画を見る日にはわざわざ自分でクレープを焼いて持ってきてくれました。また後述する表演会の練習も非常に熱心で、自ら進んで太極拳の型を覚えていき、練習の後半ではまだフリを覚えきれていないほかのクラスメートの指導も懇切丁寧に行っていました。

 そんなフェイシアと私の交流はというと、こんなことがありました。
 授業の休み時間の合間、フェイシアは別の日本人男性に「エクセルサーガを知っているか?」と尋ねているのを私は聞いてました。その聞かれた当人は知らなかったのですが、それから数日経ったある日に私からフェイシアに、

「前にエクセルサーガを知っているかって、○○さんに聞いてたけど、俺は知ってるよ」
「えっ、あんたオタクだったの!?」

 ここで出てきたエクセルサーガというのは、六道紳士という漫画家が書いている漫画作品の事です。詳しい内容まではここで説明しませんが、こんなタイトルをわざわざ日本人に聞いて来る上に日本のアニメが大ブームとなっているフランスゆえに、もしかしたらフェイシアは日本のアニメに相当は待っているんじゃないかと思って聞いてみたら案の定そうでした。

「私は今、一番はまっているのは「Fate・stay・nights」って作品なんだけど、あれは本当に面白いいわね」
「それを作った連中が前に作った「月姫」なら友人が持ってるけど、まだ俺は見ていないんだ」
「私はそれももう見たわよ。早くあんたも見なさい( ゚Д゚)ゴルァ !」

 という具合で、どっちがオタクなんだよと言いたくなるような会話を交わしました。もっとも日本のアニメマニアはフェイシアに限らず、北京語言大学に来ているドイツ人などでも比較的沢山いましたが。

2009年10月23日金曜日

企業が国家より大きくなる日~後編、多国籍企業の弊害

 前回の記事の続きです。前回では国家の力を上回る企業の存在としてアメリカの軍需産業について簡単に触れましたが、こっちはそっち以上にもっと深刻であるにもかかわらず意外にもあまり知られていない多国籍企業について解説します。

 まず読者の方には多国籍企業と聞いて、一体どんなものを想像するか考えてもらいたいです。一般的な回答となるとそれこそトヨタやソニーといった優良な企業が思い浮かび、国際的な企業活動を幅広く行っているというような華やかなイメージを持たれるかと思います。それはある意味正解なのですが、彼ら多国籍企業の弊害というのは他国ならともかく日本ではほとんど報道されていない現実があり、出来る事なら文系の学生には知ってもらいたい思いがあるのでいくつか私の知っている事実を紹介させてもらいます。

 私がこの多国籍企業がどのような弊害を持っているのかを初めて知ったのは、スポーツグッズメーカーとして有名なナイキの不買運動からでした。この事件はリンクに貼ったウィキペディアの記事の中でも書かれていますが、ナイキという企業は製品のデザインはアメリカで行うものの自社工場は持たず、製品の生産はすべて海外に委託して行っていました。現在の日本のメーカーのほとんどが行っているように海外の発展途上国の工場で生産すれば人件費も安いため、経営上のメリットが非常に高い事からナイキはかなり以前からこのような生産体制を敷いていたのですが、1997年にあるNGOが公表したナイキ製品の工場の実態はその製品のイメージからはかけ離れたものでした。

 主に東南アジア諸国にあったナイキの工場では18歳未満の児童労働者が数多かっただけでなく、工場現場の労働環境も非常に悪く、それでいて賃金は非常に安く抑えられていました。今日参考したサイトによると、アメリカで一足300ドルで売られているシューズ一つ当たりの製造報酬は3ドルにしか満たなかったそうです。
 アメリカ本国では労働法で禁止されている児童労働や過重労働を、他の発展途上国で行って不当な利益を得ているとして、この事実が公表された当時はアメリカや欧州ではナイキの不買運動が巻き起こったそうですが、日本はこの時期にあまりそのような反応はしませんでした。

 このナイキの例のように多国籍企業は利益を追求しようとする組織の姿勢からか、時に個人の倫理概念からは考えられないような行為までも行ってしまうことがあります。いくつか今でも実際に起きている例を出すと、国内では規制されている汚染物質の廃棄をそのような規制のない外国では行ったり、大資本に物を言わせてその国の競合企業をすべて打ち負かして市場を独占したり、その国の経済を歪むだけ歪ませた後に儲からないからといって撤退したりなどと枚挙に暇がありません。

 このような行為を行うこれら多国籍企業で何が一番問題なのかというと、彼らの横暴な行為を世界中で規制する事が出来ないという事です。それこそ本国内であれば国民の選挙によって組織される政府(=国家)を通して規制をかけることができますが、ナイキのように海外に工場を持っているところまで規制をかけようものなら相手国への内政干渉になりますし、またこういう企業ほど規制を強めようとしたらキャノンの御手洗みたいに、「だったら他の国に移って税金払わないよ」なんて平気で国に脅しをかけてきます。だったらとっとと日本から出ていけよな、キャノンは。

 しかもこの上に厄介なのは、多国籍企業は国家とは違って情報公開の義務がない事です。多国籍企業同様に人間の集団単位として非常に大きな国家も、二次大戦前のナチスドイツや日本帝国のように暴走を起こし非倫理的な行為を犯すことはありますが、それでもまだ国家の場合は民主主義でさえあれば情報公開の要求や原則が作用した上で選挙によって暴走を止める事が出来ます。しかし企業については現在においてすらも「企業秘密」とすることで情報公開を遮る事が出来、見えないところでどんな不正をやっていようがある程度隠し通せてしまいます。

 ちょっとややこしくなってきたので、私が考える多国籍企業が持つ弊害を以下に簡単にまとめると、

・複数国で活動するため、一国家ではその不正すべてを規制することができない。
・情報公開の義務がなく、影で何をやっているか見えづらい。
・国家や国民を無視し、資本原理で自分たちの好き勝手な行動を取る。(キャノン)

 このような多国籍企業は、グローバル化の潮流の中でこの十年の間は数多く跳梁跋扈していました。

 私は国家の枠、というより国境を越えた交流はどんどんと行っていくべきだと考えています。そのような交流を通して他国の人間を理解する事が戦争の回避につながり、ひいては世界共同国家の実現に続いていくと考えるからです。
 しかし個人での国境を越えた交流ならともかく、今回挙げた国境を越えた企業の活動というのは未だ基本的なルールが定まっておらず、発展途上国においては多国籍企業のやりたい放題になっているのが現状です。そんなやりたい放題な状況下で歪みきった世界経済の成れ果てというのが、今のリーマンショック後の世界なのではないかと私は考えています。

 自分も貿易屋の一人ということで私は頭から国際取引を否定するつもりはありませんし、むしろ本当に必要な貿易はもっともっと促進していくべきだと思いますが、全くルールなき現在の状況下で国家のコントロールを全く受けない多国籍企業を野放しにさせるのは世界にとってマイナスでしかなく、グローバル化が進んだ今だからこそ企業にとっての国境とは何かをもっと真剣に議論する必要があるのではないかと考えております。

 なおこれは余談ですが、佐藤優氏は自分が国家というものを強く主張するのは、これから世界が統合していくには必ず国家を媒体にしなければならないと自分の体験から考えるからだそうです。国際交流という観点で見れば国際NGOによる個人の交流、そして外交官同士の国家の交流、そして今日取り上げた貿易を通しての企業の交流など手段はいろいろありますが、少なくとも企業の暴走を止める手段が余りない現在においては、私もまだ国家が媒体になった方がマシかと思います。

企業が国家より大きくなる日~前編、アメリカの軍需産業

 一ヶ月くらい前に古いゲームですが、「アーマードコア3」というゲームを購入しました。このゲームはロボットを操る傭兵となってミッションをクリアするゲームなのですが、私はこのゲームをあの伝説のクソゲー「デスクリムゾン」にちなんでプレイヤー名には「コンバット越前」、機体名には「クリムゾン」にして現在も楽しくプレイさせてもらっています。

 さてこのデスクリムゾン、じゃなくてアーマードコア3ですが、世界観はロボットゲームらしく近未来の世界を舞台にしており、そのストーリーに大きく関わってくるのは変なマッドサイエンティストや拳王ではなく巨大企業なのです。というのもこの世界では国家以上に企業が大きな影響力を持っており、あれこれ環境破壊やら住民のコントロールなどをしてはテロリストらからしょっちゅう攻撃されております。

 このアーマードコアシリーズほどではないですが、同じように近未来SFで国家以上に企業が大きな力を持つ世界を描いている作品として、こちらは漫画の「攻殻機動隊」が上がってきます。こちらはアーマードコアシリーズほど露骨ではありませんが部分々々で巨大企業が暗躍し、それに対してテロリストらが反抗し、国家に属す主人公らがその駆け引きに関わってくるという話がよく展開されております。

 このように利益追求を主是とする企業が社会集団として非常に大きな単位である国家以上に力を持つというのは、なにもSFだけの話ではなくすでに現実で起きている問題です。それが最も如実に現れているのはほかならぬ現在の世界覇権国家であるアメリカで、巨大な兵器企業や小売業を筆頭にアメリカの覇権維持、ならびにアメリカの国家運営は彼らによって為されていると言われております。

 あくまで噂の範囲である事を前提にしていくつかのアメリカの政策に大きく影響を及ぼしている企業を挙げると、まず第一に挙がってくるのは世界最大の売上を誇る「ウォールマート」です。この企業はその売上額が世界最大であることからアメリカの財政政策はもちろんのこと、流通業であるという事から食料政策まですべて舵を握っていると言われ、アメリカの政策はホワイトハウスではなくウォールマートの役員会議室で決められているとまで言われております。ちなみに、現ヒラリー・クリントン国務長官も一時期ここの役員に名を連ねておりました。

 このウォールマートと並んで悪名高いのはボーイングやロッキードといった軍需産業系企業、言うなれば武器商人です。彼ら武器商人が儲けるのに一番いい方法というのは他でもなく戦争が起きる事で、一度戦争が起きたら本国であるアメリカに限らず敵国にも武器を売れればそのまんま二倍の儲けとなります。
 いくらなんでもそんな馬鹿なと思うかもしれませんが、時間差を考えなければ現在も続くイラクやアフガニスタンの騒乱などまさにその構図です。アメリカとこれらの武器商人は冷戦期、イランやソ連への牽制のためにサダム・フセインやタリバンに対して一貫して援助を行っており、その中には兵器授受や戦争訓練などの軍事支援も含まれていました。そうして軍事組織として育てられた彼らは冷戦後の現在にはアメリカと対峙してくれてアメリカ軍に武器を買うように仕向けてくれているのですから、彼ら武器商人には願ったり適ったりでしょう。

 このようにアメリカという国は選挙で選ばれる大統領や政治家などよりも、資本主義の国らしくずっと企業の方が政策決定力が大きいとかねてより言われております。といっても軍需産業は国家防衛という大きな政策に関わるため、国家権力と一体となる割合も多いのではと思う方もいるでしょう。しかしアメリカ、ひいては他国においてすらも近年は軍需産業にとどまらず国家の統制を受けないばかりか無視する企業こと、多国籍企業の弊害が徐々に現れてきました。

 私は前回の記事のまとめに、「国家以上に企業が国境を跨ぐというのは今の時代には早い」と書きましたが、それはまさにこの多国籍企業のことを指しており、彼らの暴走の末に引き起こされたのが去年のリーマンショック以降から続く不況、いやそれ以前からの世界の貧困問題だと考えております。このまま連ちゃんで書きますが、次の記事では多国籍企業が何故問題なのかを解説します。

2009年10月22日木曜日

グローバル化時代の処方箋

 最近すっかり経済関係の記事を書かなくなって久しいので、今日は久々にこの方面の話を一つ書いておこうと思います。といっても内容は他の記事の紹介で、引用するのは今月の文芸春秋に寄稿されている浜矩子氏の「平成グローバル恐慌の謎を解く」です。それにしても文芸春秋ではこの浜氏に限らず、荻原博子氏など女流経済評論家の経済記事ばかり目に付きます。どちらもいつもすごく面白いのですが。

 浜氏は昨年度のリーマンショックより続く今回の世界的大不況について、まずこの不況を乗り越えて安定した経済に立て直すためには現状をしっかりと分析をして、問題の発端となった原因を洗い出してその対策を行わなければならないとこの記事で強く訴えています。それを踏まえて浜氏は今年始めに配られた定額給付金などはまずお金をばら撒くという結論ありきで進められた政策であって、それが一体どのように景気対策になるのかという根拠などなく、それがゆえに麻生政権はこの政策の意義を説明できなかったのだとチクリと批判しています。

 では今回の不況の根本的原因は何かというと、それは周囲も述べているように浜氏も過剰なグローバル化が原因だと断言しています。クリック一つで大金が国境を越える投資に使われ、トイレットペーパーから衣服までそうした物資がまだ普及しきっていない中国で作られたものが世界中で消費されるなど、二十年前と現在とを比べると世界の距離というのは明らかに縮まりました。こうしたグローバル化は様々な安価な商品が消費者に届くようになった一方、製造業を初めとして企業は世界中の企業と競争相手となり、ほぼすべての国と産業においてその構造が大きく歪められる事となりました。

 そうして出来た歪みの中でも最も目に見える形になって現れたのが労働体系で、安価な中国の労働力の影響を受けた日本でも正社員の給料の削減から派遣労働の実施などが広がり、特に派遣労働ではそれまで聖域とされていた肉体労働現場においても派遣労働者が使われるようになりました。この派遣については私もかつて皮肉りましたが、昔は最低の労働環境と揶揄されていた自動車工業での期間従業員ですらも派遣労働者などよりずっと高待遇であると言われる始末でした。

 と、ここまでだったらそんじょそこらの自称経済評論家などがよく言っている内容なのですが、浜氏の面白いところはこの日本のグローバル化はどのようにして始まったのかを分析している点です。一見すると投資ファンドなどの金融企業を放任して外国企業の買収を次々と繰り返していき、今回のリーマンショックの発信源となったアメリカがグローバル化を世界に推し進めたと思いがちで、事実私もそのように考えていたのですが、浜氏は事実は逆でむしろ日本自らがグローバル化を推し進めていったと評しております。いわば今回の大不況を引き起こした原因となるグローバル化は、外からでなく内からやってきたというわけです。

 浜氏によるとかつての村上ファンドの村上正彰氏やライブドアを率いた堀江貴文氏などむしろ日本人の中から「ハゲタカファンド」と呼ばれるような投資家が次々と現れ、彼らに呼応するかのように他の日本企業も「株主重視」を叫びあうなど、むしろ日本企業は率先してグローバル化を推し進めていたと述べています。
 この浜氏の見方に私も同感で、私も「失われた十年」の連載にて書いていますが、90年代後半の日本企業はどこもこのままでは世界に負けてしまうなどと自ら不安を煽っては、成果主義や株主重視主義、そしてなによりも国内で売り上げを伸ばす事よりも海外での売り上げ向上ばかりを目指すようになっていた気がします。

 浜氏もその点について指摘しており、その代表例としてトヨタ自動車を挙げていました。リーマンショック前は純利益で二兆円以上もの空前の業績を叩き出していたトヨタでしたが、リーマンショック後はまさに天国から地獄とも言うべき四千六百十億円もの赤字に転落し、どうやればここまで業績をひっくり返せるのかと思うくらいの凄まじい落ち込み振りを見せました。このトヨタの失墜原因は分かっている人には自明ですが、かつての空前の利益の大半は日本国外での販売、いわばグローバル化によってもたらされた益であり、日本国内での販売に限ればかねてより赤字であったと言われています。

 つまり日本を代表する企業のトヨタがあれだけの利益を叩き出していたのは、自らが率先して海外進出を図ってグローバル化を推し進めていたからだと暗に浜氏は述べているのだと思います。しかしそうして推し進めたグローバル化はリーマンショックによって文字通り反転し、今度は逆にトヨタを苦しめる原因となっているというのはなかなかに考えさせられる話です。

 浜氏は結論部はややぼかして、

「私はリーマン・ショック以後の世界は、「国破れて山河あり」の時代だと考えている」

 とまとめております。
 ちょっとこの意味は私にもはかりかねるので敢えて余計な当て推量はせずにおきますが、私自身はかねてよりアンチグローバリストを自称しており、今後は如何に「国境」というもの定義するかが重要だと考えております。少なくとも、国家以上に企業が国境を跨ぐというのは今の時代には早いと思います。

2009年10月21日水曜日

北京留学記~その十八、クォシャオレイ

 また本店のトップページにアンケートツールを置きました。前からこんな長ったらしいブログを読む年齢層が気になっており、もしよろしければ自分がどの年齢層にいるのかをお答えいただければ幸いです。私の予想では、案外40代が多いんじゃないかと勝手に想像しています。まぁその層が答えるかどうかまでは微妙ですが。

 話は本題に入りますが今日もまた留学記の人物紹介で、前回の「クゥオスダー」の回でも出てきたクォシャオレイについてです。ちなみにこの名前は、中国語での発音です。
 クォシャオレイは年齢は二十台半ばくらいの眼鏡の似合うドイツ人男性でした。授業の出席率も高く、全く寡黙というわけではありませんでしたが如何にもドイツ人らしく落ち着いており、遠めに見ていてクラスメートの中で私が一番一目置いていた人物でした。

 そんな彼のエピソードの中で一番強烈だったのは、前回登場したウクライナのいたずらっ子ことクゥオスダーとの絡みです。この二人はどういうわけか仲がよく、というよりもクォシャオレイにクゥオスダーが一方的に絡み続けただけだったのかもしれませんがよく一緒に行動しており、授業中でもしょっちゅうクゥオスダーの作文にクォシャオレイが登場してたりしました。

 その事件が起きたのは、12月の寒い日でした。その日はクラスメートのアンナというロシア人女性の誕生日で、北京語言大学の隣にある中国地質大学内のレストランの一室を借りてみんなで誕生日会をやっていました。ちなみにこのときにアンナの友人の中国人も一緒でしたが、この中国人は私に会うなり物凄い勢いで話しかけてきたのでもう少しゆっくり話してと言ったところ、
「君は中国人じゃないのかい?」
 と言われました。別にこんなこと言われるのはこの人に限るわけじゃないけど。

 誕生会自体は他のクラスメートも多く参加して終始和やかに執り行われていましたが、宴もたけなわとなる終盤になんと一挙に三つもでっかいバースデーケーキが運ばれてきて、これみんなで食べられるかなぁなどと言い合っていると、

「ヘイ、クォシャオレイ!( ゚∀゚)ノ」
「ウェ、ウェイッ、ウェーイット!Σ(゚Д゚;)」


 この日の誕生日会に同じく参加したクォスダーがなにやら突然立ち上がると、運ばれてきたケーキ一切れを掴むや不敵な笑みを浮かべていきなりクォシャオレイの顔面目掛けて投げつけてきました。しかも全然手加減なんてしないもんだから、投げつけられたケーキはクォシャオレイの顔面に当たるや見事に四散して周囲の人まで巻き添えを食いました。
 これに対して普段は静かなる男クォシャオレイもさすがに怒り、負けじとケーキを掴むや投げるなんてことはせずに直接クォスダーの顔に擦り付けてきました。しかも二度も三度も。

 こんな事があったせいで借りた一室の壁は見事にケーキまみれになってしまい、みんなで頑張ってふき取った上でお開きにしました。とはいえ誰も誕生日会が台無しになったとは言わず、えらいハプニングがあって面白かったと言い合いながらその日は家路に着きました。私もこの時、初めてケーキが空飛ぶのを見たわけだし。

 こんな感じで年がら年中クゥオスダーに絡まれ続けたクォシャオレイでしたが、ある日学内のカフェでばったり会い、せっかくだからとテラスで二人でコーヒーを飲みながら雑談した事がありました。当時はWカップの開催直前という事でお互いにサッカーの話題を行っていましたが、前から気になっていたドイツの事情について尋ねてみました。

「前から気になっていたんだけど、クォシャオレイの出身地は元西ドイツ? それとも東ドイツ?」

 こう聞いたのも、授業中の彼のある発言からでした。
 ある日の授業で先生が我々外国人留学生から中国人を見るとどう思うかと尋ねると、真っ先にみんなで「行列に並ばない」と答えました。すると先生はじゃあ何で中国人は行列に並ばないのだろうかと再び聞いたところクォシャオレイが真っ先に、

「並んでも、欲しいものが得られないという事がわかっているからだ」

 と答えたことがありました。先生もその通りといって、文化大革命期のそのような文化が未だに残っているのが原因だろうとまとめてくれました。

 私はこのクォシャオレイの発現を聞いたとき、ひょっとしたら彼は元東ドイツ領内で生まれたのではないかと思いました。東ドイツもかつての共産圏の一角でその崩壊するずっと以前から食糧などの物資不足がよく起こっていたと聞いていたので、だからこそあのときに真っ先に正解を言い出すことが出来たのではと考えたからです。
 ただ残念ながら彼の出身地は元々西ドイツ領内で、現在も旧東ドイツ領内の都市との経済格差などが大きいなどと教えてくれました。

 また彼の出身地のほかにも、ドイツの徴兵制についても確認を取ってみました。この留学に来る以前から私はドイツにも徴兵制があると聞いており、ただドイツの場合は二次大戦でのナチスの反省から、外国で一定期間ボランティア活動に従事すれば徴兵が免除されると聞いていたので、この事実は本当なのかと尋ねてみました。
 この私の問いにクォシャオレイはそうだと頷き、自分はそのような海外ボランティアの方が面倒に思ったので素直に徴兵に行ったと答えてくれました。さすがに、期間までは確認しませんでしたが。

 このように常に紳士的な態度でいろいろ教えてくれ、また授業中にもキラリと光る発言をよくしていたことから最初に述べたように私は彼に一目置くようになったわけです。

2009年10月20日火曜日

西川日本郵政社長の辞任について

日本郵政社長が辞意を表明「もはや職に留まることはできない」(YAHOOニュース)

 民主党に政権交代した事からかねてより去就が注目されていた西川善文日本郵政社長が、本日辞意を表明しました。

 この西川氏の経歴を簡単に説明すると、「日本最後の大物バンカー」とも言われるほどの叩き上げの銀行家で、出身銀行の住友銀行(現三井住友銀行)にて頭取を務め、その後の三井銀行との合併の際には豪腕で持って社内の合併、組織改革に辣腕を振るったと言われております。そんな西川氏が何故民営化後の日本郵政社の社長になったかというと、郵政の民営化を推し進めた小泉元首相と竹中平蔵氏が西川氏に強く要請したからで、何故この二人が西川氏を推したのかと言えば単純に自分たちの思惑に都合がよかったというのもありますが、それ以上に他にあまりなり手がいなかったというのも原因とされております。

 私の記憶する竹中氏の発言を紐解くと、郵政は民営化後も各郵便局の存続を保ちながら様々な面で民間と競争する厳しい立場に置かれるとし、そんな難しい環境で能力もあって経営を引き受けてくれるのは西川氏だけだったそうです。この竹中氏の見方に私も共通しており、インターネットでのメールが発達した現在において郵便というのは今後縮小する一方で、言うなれば郵政自体が大きな不良債権化するのは目に見えています。しかしそのまま潰れてしまっては現在郵政で働いている従業員、そして必要とされる地方へのネットワークは一挙に喪失してしまう恐れがあります。ではどうすれば郵政は存続できるのかといえば、現在においてもダントツのシェア率を誇る「貯金」を筆頭とした簡易保険などの金融部門での収益を強化するより他がなく、そういう意味で元銀行家の西川氏に白羽の矢が立ったというのもあながち間違いではなかった気がします。

 しかしあまり郵政の現在の内部事情を見ていないでなんですが、伝え聞くところによると年末の年賀状の販売において各窓口ごとにノルマとなる枚数を作ったり、散々鳩山邦夫氏と大喧嘩になった「かんぽの宿」売却問題など、就任後の西川氏の経営方法に疑問を感じる点も少なくありません。私自身は先ほどの理由に財政投融資の問題性から郵政民営化には賛成でしたが、あのかんぽの宿のオリックスへの一括売却問題はもっと精査するべきであったと思います。

 そして前回の選挙にてかねてより郵政民営化に批判的だった民主党が与党となった上に絶対反対を貫いていた国民新党と連立した事により、西川氏は遅かれ早かれ社長職を辞めさせられるだろうということは目に見えており、今回のマスコミの報道もさも規定路線だったかのようにそれほど驚きなく報じられているように感じます

 私としては民営化は維持するべきであっても西川氏がこのまま続けるのにはちょっと抵抗があり、辞めてくれるのならばそれはそれでいいと考えております。以前に参加した佐野眞一氏の講演会において佐野氏も、西川氏というのは銀行家として表には現われない裏の仕事を取り仕切ってきた男で、それゆえに鳩山邦夫氏のような根っから正義感の強い純粋な人間とは合わなかったのだろうと評しており、言われてみると私も西川氏にそのような雰囲気を感じてしまいます。

 ただこれはあくまで私の印象ですが、今日の辞任会見での西川氏の表情を見ているとあまり現職に執着するような表情が見えませんでした。元々小泉元首相が無理を言って就任したのだから本人も本音ではあまりこの仕事をやりたくなかったとも解釈できますが、私にはどうも西川氏が、自分を切ったとしてもかわりの人材はどうせいないだろう、というような余裕があるように見えました。
 現実問題として民営化見直しを主張している民主党が次に一体誰を郵政会社社長に据えるのか、現在のところ全く思い浮かびません。これという候補も自分が知る限りいません。強いてあげるとしたら亀井静香氏がやりたがっているように見えますが、さすがにそれは民主党も許さないでしょう。

 西川氏のかわりに誰を立てれば郵政は維持できるのか、また民主党がどのような見直し案を持っているのか、はっきり言って私にはまだ何も見えてきません。この郵政民営化は9.11選挙において国民がはっきりと選挙行動にて出して支持しただけに、舵取り次第によっては大きな問題になってくる可能性もあり、場合によっては自民党の復権につながってくる可能性もあるかもしれません。
 皮肉な話ですが、今一番この関係の評論を私が聞いてみたいのは民営化の立役者である竹中平蔵氏です。

2009年10月19日月曜日

北京留学記~その十七、クゥオスダー

 留学中の私のクラスで一番はっちゃけていた人間の出身国はどこかとなる、恐らくアメリカやブラジルといった国の人を連想するかもしれませんが、私のクラスではなんとあるウクライナ人が毎日際立つ行動をしてはクラスの間で毎日騒動を起こしていました。そんなウクライナのいたずら猿こと「クゥオスダー」について、今日は紹介しようと思います。

 まず彼の特徴として美男美女の産地として有名な東欧出身らしく体格は小さかったものの非常に美形で、年齢は確か21歳くらいだったと思いますが好奇心旺盛な性格をしており、同じクラスの私に対して日本人である事から、

「PS3の発売日はいつになる?」
「日本酒のアルコール度数はいくらだ?」


 などと言っては気さくに話しかけてきてくれました。
 しかしそんな気さくなクゥオスダーですが、気さく過ぎるというか空気を読まないというか、毎回際立った発言や行動をとっていたのでクラスの中で付いたあだ名は「猴子(猿)」で、本人もそう呼ばれ始めてからは自ら猿の真似をするくらいノリノリな人物でした。

 そんな彼が具体的にどういうことをしでかしていたのかいくつか例を挙げると、学期末でテストも終わり、特にすることもない空いた授業時間にみんなで中国語の映画を見ようか先生が提案し、それじゃあみんなで何を見ようかと言うやクゥオスダーは間髪入れずに、

「黄色電影(ポルノ映画)!( ゚Д゚)/」

 と言い出し、そんなのを放映したら私がクビになると先生を困らせましたが、

「でもクォシャオレイ(同じクラスのドイツ人)は喜ぶよ(・∀・ )っ」
「馬鹿っ、こっちにまで話振るな!Σ (゚Д゚;)」


 という具合で、隙があればいくらでもなんにでもふざけようとするする人間でした。ちなみにさっきに出たクォシャオレイは彼の相方みたいなもので、なんでもかんでも悪い事が起きたらクォシャオレイのせいにしようとしていました。

 授業中ですらいつもこれなのですからプライベートでの彼の行動は更に常軌を逸しており、クラスで北京の激しく危険な交通事情について話していた際にクゥオスダーがバイク通学している事が話題になり、北京市では交通法に規制があってバイクは許可制なのですがちゃんと許可を取っているのかと先生が尋ねると案の定そんな許可は取っておらず、しかも、

「こいつはそもそも本国ウクライナでもバイク免許を持っていない(´д`)」

 という、とんでもない事実までもクォシャオレイに暴露される始末でした。

 こんな具合で主にクォシャオレイを筆頭に年がら年中クラスメートにちょっかいかけたりしていましたが、そのひょうきんな性格から誰からも恨まれる事はなく、私としても同じクラスメートとして一緒に勉強できて非常に楽しかったです。特に一番楽しかったのはこれまた同じクラスメートであるロシア人のアンナの誕生会での出来事でしたが、それはまた今度別の記事で紹介します。なんにしても、見てて飽きない奴でした。

 ちなみに彼とのプライベートでの付き合いでは夜に一回ほど学内のBARに誘われ、そこで彼のつれてきたロシア人ともども酒盛りをしました。さすが酒豪大国出身なだけあったクゥオスダーもそのロシア人も店に着くなりビールをがばがば飲むと、持参してきたウォッカもどんどんと開けて飲んでいきました。
 その際、酒に弱い私も多少の興味があってウォッカを飲ませてもらいましたが、思っていたほどきつい味ではなく、喉越しもそんなに悪くない酒でした。後で私の相方に当たるウクライナ人のドゥーフェイによると、ウォッカというのは元々二日酔いや頭痛といった悪酔いを起こさせる酒ではないそうで、事実私もその晩はきちんとまっすぐに歩きながら寮に帰っていきました。

 ただアルコール度数はやはり高いだけあって、寮に戻った後にシャワーを浴びようと服を脱いだ瞬間、自分の体の異変に気が付きました。なんと体のあちこちに紫色の斑点が出来ていて、腕なんかそれこそ蛇みたいな見事なまだら色になってました。ただそうした変化はその日一日だけで、次の日には二日酔いもなくその斑点も消えて、特に変な事にはならずに済みました。

 最後に彼の発言の中で私が印象深く聞こえたもののとして、「ロシアとウクライナは兄弟だ!」という発言があります。現ウクライナ大統領のユシチェンコ氏は反ロシア色の強い政治家ですが、歴史的にはウクライナとロシアは歩調をともにしていることが多く、このクゥオスダーの発言からすると必ずしもウクライナ人全員が反ロシアではないと確認出来ました。