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2011年10月2日日曜日

内需拡大によるメリット、デメリット

 昨年に日本を追い抜いて中国のGDPが世界二位になった際、「これほどまでの経済大国となったからには、中国はこれまでのように大量生産による輸出中心の経済モデルでは経済を維持できなくなる」などといった評論をする経済家がたくさんいましたが、どうしてそうなるのかきちんと説明していた人は皆無と言っていいいくらいにいなかったので、当たり前と言ってしまえば当たり前の話ですが今日はどうしてそうなるのかを簡単に解説します。

 まず現在の中国がどうしてこれほどまでに経済力を成長させることができたのかですが、その原動力となったのは保有する世界最大の人口とその人口に裏打ちされた豊富で安価な労働力です。言うまでもなく労働力が安ければ同じ材料で同じ製品を作ったとしても値段が安くても利益が出るので、繊維商品を筆頭とした軽工業品は中国国内はもとより、「メイドインチャイナ」が世界で当たり前になるくらいに他国にもバンバン輸出されていきました。そのためこれまでを含め現在の中国経済は、輸出販売をメインとすることで成り立っております。

 今現在の日本では輸出が多いということはとにかくいいことだというような言われ方をしておりますが、確かに輸出量が多いということは一面ではいいものの、必ずしもいいことづくめではないと私は考えております。具体的な例が卑近で助かるのですが、一国の経済消費における輸出割合が高いということは、自国の都合と関係なしに他国の都合で突然大きな影響を受けやすくなるというデメリットが存在します。具体例を挙げるとまさに今起きているリーマンショック以降の不況で、それまで好調に売れていた商品が他国で急に売れなくなると輸出産業にかかわる業種では売上が突然に減少します。また不況に限らずとも相手国との関係悪化に伴いセーフガードなどといった貿易対抗策や輸出規制が敷かれても同様で、毎月1000万円あった売り上げが突然に10万円に減少することだってありうるわけです。無論こうなったら従業員も雇い続けることが出来なくなり、下手すりゃ一発で廃業です。

 またこれ以外にも、輸出依存の経済体制にありがちなのは貧富の拡大です。これも単純な話で輸出産業にかかわる業種では自国の経済(=値段)に関係なく価格を決定することができるため、国内向け産業の人たちと比べて大金が得やすいです。現実に今の中国では昼食や散髪が100~200円で済む一方、大型トラックや建設機械は海外に数百万円で輸出されております。
 無論このような状態を維持し続けながら経済成長を保つということは理論上は可能ですが、行き着く先は言い方が悪いですが韓国社会のようなものだと私は考えています。韓国は輸出産業を極大化させることで経済を維持していますが、その弊害というかサムスンやヒュンダイといった財閥企業に属していなければまともに生活できないほど一般庶民の所得は低く、貧富の差は日本とは比べ物になりません。おまけに今現在起こっているようにウォン高になるだけでそれらの財閥企業も途端に経営が苦しくなることもあり、底堅い経済とは言い切れません。

 ではこうした輸出依存のデメリットに対しどのような対策が必要なのかですが、一つはよく言われるように内需を拡大させることです。内需はあくまで国内のみの消費ですので不況時にも国家である程度コントロールすることができます。日本の場合はコントロールするために借金に借金を重ねた挙句が今の状況ですので、一概にとは言えませんが。
 ただ内需を高めるために何が必要かというと、なによりもまず一般庶民の所得の向上です。それまで毎月10万円もらってた人が20万円に上がればそれだけ使えるお金が増えて内需は増えるわけですが、こうなると何が起こるかというと労働力コストが上昇し、これまでのように輸出で大儲けすることが出来なくなるどころか大量生産、輸出モデルが崩れることになります。見方によっては貧富の差が縮まるとも言えますが。

 話は戻って今の中国経済ですが、順番的には以下のような形で内需拡大策を現在取っております。

・安価な労働力を武器に輸出産業を中心として経済成長達成
  ↓↓↓
・経済成長こと達成したものの、貧富の差が拡大し不満が増加
  ↓↓↓
・不満解消のために全体の所得を底上げする必要がある
  ↓↓↓
・所得が底上げされると、これまでのように安価な労働力だけじゃやってけなくなる
  ↓↓↓
・減少するであろう輸出消費の埋め合わせとして、内需を拡大させる必要がある


 もちろんこれだけが理由じゃなく世界経済がリーマンショック以後に不況となったのもあって内需化拡大にかじを切ったのもあるのでしょうけど、「中国がこれまでのようにはいかない」という理由というのはざっとこんなもんだと私は考えています。
 現実に先週、私も会社で記事を書きましたが、労働コストの上昇などによってこれまで軽工業品の輸出産業中心地であった浙江省温州市で、今年に入ってから経営者の夜逃げが相次いでます。経営者が夜逃げした企業の業種を見てみると、ライター、メガネ、靴といったメーカーで、これは日本も歩んだ道ですがもうこれらの大量生産は中国でもやっていくことはできないでしょう。

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