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2017年8月17日木曜日

歴史解説記事の裏側

「応仁の乱」よりも前から鎌倉は戦国時代だった
かつて湘南ビーチは合戦の舞台だった!(どちらもJBpress)

 昨日今日とまたJBpressで自分の書いた歴史記事を配信してもらいました。普段中国ネタの記事ばかり書いているのになんで今回歴史ネタなのかというと、先週の安倍内閣改造の記事をそのニュースとしての鮮度を考慮し、定期ペースから一週間繰り上げて掲載してもらったところ、「来週も行ける?」と聞かれて、「密かに準備していたこれなら出せる」といって出したところ使うことになりました。そんな感じで、実はこの記事は7月くらいから準備していた物でした。
 なんで準備していたのかというと、急病や帰省などで記事が出せなかった時の保険として用意していて、歴史ネタなためもし向こうで使えないと言われたらブログに使おうとも考えていました。

 このブログの読者なら私が歴史ネタの記事を書くのに慣れているのはご存知でしょうが、今回戦国時代初期の関東を何故選んだのかというと、ちょっと理由があります。一つは最近応仁の乱ブームでこの時代にスポットが浴びていること、二つ目としては全く手垢がついておらず日本史におけるエアスポットみたいな時代と場所だったからです。
 戦国時代、それも初期の関東は太田道灌を始め面白い武将が数多く登場して戦乱も多分当時としては全国一なくらい激しくて面白い時代ですが、この時代について知識なり理解がある人は極端に少ないでしょう。何故面白い時代のに少ないのかというと理由はごく単純に理解し辛いからで、この時代を学ぼうと興味持った人を悉く挫折させてしまうことはおろか、ある程度理解している人でさえその複雑さから解説にあぐねるような特徴があり、いわば「登り甲斐はあるけど険しすぎるし、説明し辛い山」みたいなもんでした。そうした背景からざっとみたところ誰もまだきちんと解説できてないように思え、「俺の腕ならなんとかなるだろう」という妙な自信と勝算とともに手を付けたわけです。

 真面目に今回の一連の記事は、自分の「複雑な内容をわかりやすく解説する」という職人技が光った記事だと思います。Yahooの記事コメントでもわかりやすいとしてくれる人が存外多く、そこそこ苦労しただけあっていくらか報われました。

 そもそも何故この時代の関東が複雑で理解が難しいのかというと、まずやたらと登場人物が多いのと、その登場人物の名前がみんなに通っているからです。この時代は「偏諱」といって、有力者の名前から一字をみんなもらうため、例えば足利義満の時代であればみんな「満」の字が入ってたりして紛らわしいです。その上、利害関係というか対立構図も複雑で、前まで一緒に戦っていたもの同士が争い合ったり、遠くの同じ苗字の一族が突然出てきたり、挙句には下剋上も起こってもう何が何だかだんだんわからなくなってきます。
 そうした背景から、今回の記事では何よりもまずわかりやすさを追求し、いろいろと小細工を弄しています。

 具体的にはまず焦点を絞りました。前編では鎌倉府の成り立ちと、足利幕府と鎌倉府の対立のみにスポットを当て、本筋と関係ない話はなるべく排除しています。こうした考えから「上杉禅秀の乱」は当時の関東においてそこそこ争乱の規模が大きい事件ではあるものの、本筋からは外れるし理解を妨げる恐れがあることからバッサリカットしました。この判断は間違いなく正しいでしょう。
 次にやった小細工としては、登場人物を極力抑えたことです。一番この時代でやらしいのは上杉家の人物が何度も、多数出てきて、一体どこの上杉さんか途中で分からなくなってしまうところがあります。そこで前編、後編ともに登場する上杉さんは原則一人に抑え、後編では当初は享徳の乱まで入って解説しようかと思いましたが、そしたら上杉さんを量産せざるを得なくなるため、本筋をあくまで「足利成氏の生い立ちとその立場」に据え、享徳の乱直前でストップをかけました。当初は意識してませんでしたが、成氏についてその存在を強調したので今後においてイメージを植えるのには役立つ気がします。

 それこそ、文字数の制限がなければいくらでも詳しく書ける時代ではありますが、詳しく書けばわかりやすくなるかといったらそうではありません。割とこの辺、歴史マニアが良くやらかすのですが、自分はわかっているからといって詳細に書いてしまうと初心者があまりついてこれず、誰も得しない解説記事になってしまいがちです。かといって短くまとめてしまって内容が薄くなってしまえば元も子もありません。
 突き詰めれば解説記事は「内容の深さ」と「文章の簡潔さ」のバランスをいかにうまく取れるかが重要であり、このバランスをいい方向へ誘導させるのが上記に挙げた「焦点を絞る」という作業だと思います。文章全体で中心線を常に意識して書き、場合によっては余計なものは排除するというのが重要となってくるわけです。その上で、簡潔にとはいっても結果だけを羅列するのではなく、何故その結果に至ったのかという過程をしっかり捉え因果関係を強く明示するのもテクニックでしょう。

 以前にも何度も自慢していますが、こういう複雑で難しい内容を解説するのを私は得意としており、内容が複雑であればあるほど真価を発揮するライターだと考えています。ただ今回の記事について友人は、「とても上海在住の人間が書く内容とは思えない」といってて、ちょっと前にも書いた通り脈絡のなさでも自分はライターとして無駄に高い位置にいる気がします。

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